企業の社会的責任(CSR)


基調講演に続くパネルディスカッションには、和田惠里子様(株式会社アソシエ・インターナショナル代表取締役)、立山恵子様(株式会社金羊社取締役社長室長)、水谷和美様(ソフィアメディ株式会社代表取締役)の3名がパネリストとして参加しました(モデレーターは小島明子(株式会社日本総合研究所創発戦略センターESGアナリスト)が務めた)。


1.女性が活躍することによる企業のメリット

和田惠里子様(株式会社アソシエ・インターナショナル代表取締役)(以下、和田様)
保育の現場は、女性を起点に職場づくりを行っている環境である。保育士の仕事は、子どものしつけから健康管理まで行う仕事であると同時に、保護者との信頼関係を構築していくことが重要である。女性ならではの感性、アンテナがあってこそできる仕事だと思っている。一方、本部でも多くの女性が活躍しているが、女性はお互い助け合いながら働き、女性のリーダーは女性ならではの積極性とパワーで職場の人たちを動かすため、それらも女性が活躍することによる企業のメリットだと思っている。

立山恵子様(株式会社金羊社取締役社長室長)(以下、立山様)
当社は製造業であるが、男性ばかりの職場に女性が入ることで、男性の笑顔が増えるなど会社の雰囲気が変化するという実感がある。右肩上がりの高度成長のときは、同じ方向で同じものを作っていたので、男性の方が優位だったが、日本の人口構造、経済変化に伴って現在はイノベーションが求められている。女性は、組織のトップという立場でなくても、共感すればお互い一緒にやろうという雰囲気になるので、女性が起こすイノベーションに期待している。

水谷和美様(ソフィアメディ株式会社代表取締役)(以下、水谷様)
我々の医療サービス、介護サービスを行うなかで、女性によるお客様サービスのレベルが高いという実感がある。相手本位、内容本位、先行き本位、逆境本位、という4つで見たときに、女性の方が男性よりもそのような姿勢が強いと思っている。また、年間単位、月間、週間単位で数字を管理しているが、女性の労働生産性は高い。女性は、家事や子育てなどもしながら働いているので、時間内で仕事を終わらせるための管理や、やりくりが上手であると感じている。

2.女性が活躍するための制度や施策について

和田様
保護者が8時間以上お子様を預けるため、保育の現場では、早番、遅番のシフトを組んでいるが、子育てや介護等の事情で、早番や遅番もできない女性もいる。シフト外の固定勤務を認める他、子育て中の短時間勤務制度の制度化や、勤務地の限定、準職員から正社員への転換制度を設けている。正社員、準社員、嘱託社員という雇用形態を設け、多様性のある働き方を可能にしている。準職員と正社員の待遇面と収入面の差を明確にすることで、社員が準職員よりも正社員で働きたいと思える仕組みを作っている。また、年に2、3回は面談を行い、丁寧なフォローを行うことと、適正な評価で報酬を決めることも大切だと思い取り組んでいる。

立山様
女性のマネジャーを育てるために、3年前から社内で4つの委員会(例:おもてなし委員会)を立ち上げて、女性をリーダーにしている。社内の委員会はあくまでも改善業務なので、失敗への恐れを持たずに取り組むことができる。マネジメントを経験したことがない女性たちがメンバーということもあり、部長をオブザーバーにつけ、マネジメントの疑似体験の場にしている。経験を通じて、自分で立つ自立、自分で律する自律、最後は自分で走る自走ができる人材になることを目指しており、3年目となる今は自走の段階であると認識している。

水谷様
社員の働き方として、年俸制と回数制という2つの制度を設けている。安定的かつ長期的に働きたい志向の社員は年俸制を選んでいる。一方、回数制は、例えば週3日間だけ9時〜17時で働くといった働き方ができるため、主に家庭の事情で制約のある社員が選んでいるが、回数分働くことで収入が増えるため、短期的に多くの収入を得たい人も選んでいる。年俸制と回数制の選択は半年程度を区切りとして選択ができるようにしているので、年俸制の社員が、子育てを理由に回数制に変更して、子育てが安定すると年俸制に戻ることもできる。そのほか、転居支援金や、シングルマザーに対する子育て手当なども制度として設けて支給している。

3.従業員のモチベーション向上に向けた独自の工夫や施策

和田様
一人一人の職員を大切に思い、退職した職員も含めて400名のバースデーカードを書き続けている。保育所に行った時などは、バースデーカードがきっかけとなり従業員とコミュニケーションを取ることも多く、信頼関係を作るツールではないかと思っている。 また、制度面では、正社員には、給料に10時間分の残業手当を残業がなくても一律に付与しているほか、保育は体力勝負、気力勝負の仕事なので有給休暇を全部消化できるようマネジメントを徹底している。年に一度自分の大切な日を選んで休めるメモリアル休暇も付与しており、それらの制度は、従業員のモチベーションにつながっていると思っている。

立山様
新しい事業などをやるときは、男女問わず、全社員に説明して公募をするようにしている。皆にチャンスを与えて、チャンスをつかんで自分のものにしていく力強い人になってほしいと思っている。しかし、女性の場合は、外部の研修にしても、一人で参加をするのは怖いという人もいるので、二人ペアで参加をしてもらっている。一人が研修に参加をして社内に戻ってくると、研修を受けていない人とのモチベーションの差が出てしまうが、二人ペアで参加をする工夫で、モチベーションの向上意欲が、他のメンバーにも確実に伝わっていく効果もある。

水谷様
定期的に従業員とレストランで親睦会を行うようにしている。その場で従業員から直接意見を聞くことができるので、従業員から指摘されたことについては、1ヶ月〜2か月以内には対応するようにしている。毎年、年に1回は経営方針発表会を行っており、その場で、トップから事業所の責任者から資格者まで細分化して表彰を行う。その数は、毎年60〜70名にのぼる。また、経営方針書を作成して、私(水谷様)が入社した社員に対して時間を取って直接説明をしている。経営に関わる5年先の数字も含めて、分かりやすく説明している。会社の経営理念、数字を理解して現場に出ることは、従業員のモチベーションアップにつながっている。

4.ジェンダーの特徴を活かしたリーダーシップ

和田様
今の会社を立ち上げる前には、薬剤師として薬局の仕事をしていた。27歳でスタートしたときから、お客様と接客しているのも楽しく、接客をするなかでお客様に対する思いやりや色々な工夫も出てきた。それは女性ならではのアンテナや、感性なのだと思っている。若い頃は女性を武器に仕事をすることは抵抗があったが、今はそれでいいと思えるようになり、女性ならではの感性で仕事をするということは大事なことだと考えている。

立山様
女性や男性にはそれぞれの良さがあり、企業のなかにおいて、違いを持つ男女が組織のなかにいることが大事である。男女の特徴の違いを分かった上で、マネジメントをすると、企業は無駄な説明の時間を使う必要がない。大事なことは、男女や年齢の差があることを前提に、コミュニケーションギャップが起きないように、企業のなかに統一した言葉の定義をつくることである。

水谷様
女性の特徴を活かしたマネジメントという点では、感性を高める教育に力を入れている。例えば、医療の現場は、察知能力が必要とされており、具合が悪いことがすぐに察知できると良い手当ができるので、現場で働く女性の感性を高めることは重要である。また、居心地の良い空間づくりが、そこに勤めている従業員の心地の良さにもつながるため、部屋の色づかいや壁に飾られた絵などには昔から拘りをもつことで、居心地の良い環境づくりを心掛けている。

5.統括

最後に、モデレーターから、女性の活躍を企業の経営に結び付けていくために必要なことして、①制度や施策といった仕組みと、②従業員の気持ちを動かすための配慮や工夫、という2つのヒントが頂けたこと、それらは、経営者、マネジメントを行う方々の人間力から生み出されるものであるということを総括の言葉とし、締め括りとした。

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