企業の社会的責任(CSR)


まず主催者を代表して、株式会社三井住友銀行 橘 正喜(代表取締役兼副頭取執行役員)が開会挨拶を行いました。女性の活躍を推進することが企業価値向上のためには重要であり、三井住友銀行においても多様な人材が定着するよう制度を拡充するとともに、行内にクロス・ファンクショナル・チームを立ち上げ、日本の成長を支える大事なキーワードとして「女性の活躍」を掲げ、第一号の施策として「なでしこ融資」の提供を開始するなど、事業と結び付けて女性の活躍推進に取り組んでいることをご紹介しました。


村木 厚子様「政府における女性の活躍促進施策」(厚生労働省 顧問)


1.女性の活躍推進をめぐるわが国の現状

日本の合計特殊出生率は、平成17年の1.26を底としてやや持ち直しの傾向が見られていたが、平成26年は1.42と9年ぶりに低下。出産適齢期の女性人口が減っているため、少子高齢化が進んでいる。将来の労働力需給の低下が見込まれるなか、子育てなどを理由に離職する女性を減らし、出産・子育て等を理由に離職した女性の再就職を促すことが、労働力の供給を増やすために必要である。

日本のジェンダー・ギャップ指数は、142か国中104位である。健康や教育はトップクラスの評価だが、経済への参画、政治への参画の評価は低い。女性に多額の投資をしながら、能力が活かしきれていないという現状が窺える。

第1子の出産を機に離職をする女性の割合は、54.1%であり、いまだに離職をする人の方がやや多い。育児休業は法律で保証されているものの、育児休業から復帰した後の勤務時間の長さが、男女ともに仕事と育児との両立を難しくし、女性が離職する原因の1つになっている。夫の家事・育児時間が長いほど、妻の就業継続割合が高いことに加えて、第2子以降の出生割合も高い傾向が見られることから、男性の勤務時間の長さは少子化の問題にも関わりが深い。共働き世帯の割合は増加傾向であり、家族を持っている男性の働き方を考える必要がある。


2.政府の取り組み

税と社会保障の一体改革を推進しており、消費税の引き上げによる税収を、高齢化対応に加えて子育て対策費に充てることを政府の方針としている。保育所の増設、育児休業給付の充実(50%から67%へ増加)、次世代育成支援対策推進法の10年間の延長を実施。さらに、来年4月1日からは女性活躍推進法が新たに施行される。女性活躍推進法は、組織が女性活躍推進に向けたPDCAを確立するための法律であり、女性の活躍状況について現状を把握し、それを改善するための行動計画の策定及び届出、行動の実行、実績の開示を要請している。

女性が活躍できる企業の共通点は実感として3つあげられる。1つ目はトップの意識の高さ、2つ目は、働きやすさと働き甲斐という2つの座標軸を持っていること、3つ目は、男女問わず皆が制度を使えるように制度を普遍化することができている企業である。

後輩へのメッセージとして、「考えすぎないように」という言葉を伝えたい。子どもができると力を十分に出すことができないが、それに悩むと出せる力がさらに小さくなってしまうので、「考えすぎないように」してほしい。ただし、会社との貸し借りの感覚だけは忘れないようにすることが必要である。そのように心がけることで結果として、周囲の人からの支援も得られる。子どもを持つことはその人自身を成長させる良い機会である。職場の先輩、後輩のインフォーマルなネットワークは女性にとって助けになるため、企業には、そうしたやわらかい仕組みを作ってほしい。

人口が減少すれば生産性は下がるが、一人ひとりの生産性を上げれば、それを補うことができ、日本では生産性を上げる余地は十分に残っている。ワーク・ライフ・バランスの実現を通じて女性の活躍が進めば、組織のなかで活躍する女性が増え、男性のみで組織を構成することに比べると、優秀な人材が確保でき、生産性を上げることにつながると考えられる。

人口減少のなかで危機意識を持って全員参加を実現する、参加をした一人ひとりが自分に合ったポジションにはまって最大限力を発揮する、女性だけではなく、仕事を通じて一人ひとりが成長する、その成長が企業の成長と社会の成長につながっていくという好循環がアベノミクスの目指すところである。


松山 一雄様「経営戦略としてのダイバーシティ」(サトーホールディングス株式会社代表取締役執行役員社長兼最高経営責任者)


1.これまで実施してきた取り組み

時代・ニーズの変化とともに経営戦略が変わり、ダイバーシティへの取り組みもそれに伴って変化をしてきた。1940年から1990年までは、ものづくり主体の会社であったが、1990年代前半からソリューション主体のビジネスモデルに変わろうとしていたとき、ダイバーシティの創生期(フェーズ1)が始まった(※ 当時、ダイバーシティという言葉は使われていない)。当時の経営者は、男性のみに頼ることに対する経営の危機意識から、全社員が一丸となって活躍できる会社を経営ビジョンとして掲げた。1993年には、女性4名で構成されるシール営業の部隊を立ち上げた。現在は、女性44名が所属する部隊にまで大きくなり、後発で行った事業ではあったが、グローバルビジネスになりつつある。さらに1998年には、女性初の管理職が誕生している。

2000年頃から、女性が長く働ける環境づくりを始めた(フェーズ2)。制度の充実・整備を図り、女性の抜擢人事も行い、2000年には、バーコードシステム営業を行う女性が初めて誕生し、2004年には初の女性社外取締役、2006年には初の女性執行役員が誕生している。しかし、女性の営業職の離職率は平均60%台後半になり、試行錯誤をした時代でもあったといえる。

2011年から昨年にかけては、グローバルで戦って勝っていくために、ダイバーシティを経営戦略として折り込んだ(フェーズ3)。2011年にダイバーシティ推進室を発足し、現在は、社長直轄の推進委員会体制とし、グループ会社の社長をダイバーシティ委員にして、現場に根付いたダイバーシティを推進。男性比率100%であった保守・メンテナンスサービスのなかに、女性の保守チームを発足したが、きめ細やかなサービスが受けられるとして、顧客からの評価は高い。


2.今後の方向性

現在は、人、モノ、情報をつなぐ最後の1cmを担うグローバルのソリューション企業として、ダイバーシティをどのようにリーダーシップ、グローバルビジネスの展開に結び付けていくかを考えているところである(フェーズ4)。役員構成では、12名の取締役のうち、社外取締役は6名である。取締役会では、執行を兼務していない取締役が議長を持ち回りで行っている。執行役やカントリーマネジャーには外国人の女性も含まれており、社歴の長さ、国籍、性別を問わず、ベストな布陣で結果を追求している。従業員に対しては、男女問わず、良いアイデアがあって、コミットメントのある人がいればチャンスを与えて活躍してもらうことを徹底している。現在は、女性が起案者となり設立した新事業会社(デザインプロモーション株式会社)が、ラベルに加えて、デザインやプロモーションまでをパッケージ化して売上げを伸ばしている。

2015年10月には、内閣府「働く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」行動宣言に賛同し、2025年までに女性管理職を全管理職の25%にすることを目標として設定した。25%という数字の達成は厳しいという認識があるが、経営変革を生み出すためにあえて高い数値目標を出して戦略的に取り組んでいくことで、グローバルに通用する会社を目指している。

私達が考えるダイバーシティは、「経営者が本気で取り組むこと」、「ダイバーシティを『経営戦略』と考え、実行すること」、「試行錯誤して、自分の会社に合ったやり方を見極めること」、「『個の強み』を経営に活かす。女性を1つのグループとしてとらえるのではなく、個性を発見し、伸ばし、活躍の場を作ること」である。20年間取り組んできて、失敗してきたことが80%ではないかと思うが、諦めなかったことが良かったと考えている。今後、会社としてもダイバーシティを強化し、強い意思で取り組んでいきたい。

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