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話題の環境本

私のおすすめ Eco Book

ドミトリーともきんす◎ ドミトリーともきんす

高野 文子 著 中央公論新社

 読みかけの本があるときに、自分のいる世界が少しだけ違って見えることがある。本から顔を上げても、その余韻が自分のいる世界に残っている。読んだ本のことは、確かに自分のいる世界と意識の一部になっていく。この感覚を描いた高野文子のコミック『黄色い本』(講談社)は、とても印象深い作品だった。

 最新作『ドミトリーともきんす』では、20世紀の科学者と彼らの味わい深い筆致の著作が紹介される。高野文子は、日本の原子力開発の出発に携わった1950年代の科学者たちを描いた朝永振一郎の『プロメテウスの火』(みすず書房)について、「科学者としての責任を問うた彼の言葉が、3.11以降、原発問題に揺れる現在の日本に、生きた言葉として響いた」と記す。また、「日本の優れた科学者たちが残した言葉を、いま読み直すこと。わたしたちはそこから何を知り、気づき、立ち止まるのだろうか」とも。

 『ドミトリーともきんす』を通じて、そして科学者たちの著作を通じて、今一度、私たちのいる世界について、科学について、環境について、考えを巡らせてみたいと思う。


推薦人:ジュンク堂書店 池袋本店スタッフ 木戸 幸子さん


新刊紹介

◎ 新世界ザル 上・下
アマゾンの熱帯雨林に野生の生きざまを追う

伊沢 紘生 著 東京大学出版会

南米の熱帯雨林に生息する広鼻猿類(新世界ザル)についての研究を、上・下巻にわたって紹介する。

新世界ザル 上・下 アマゾンの熱帯雨林に野生の生きざまを追う


◎ 企業が伝える生物多様性の恵み
〜環境教育の実践と可能性〜

石原 博ほか 著 経団連出版

「生物多様性民間参画パートナーシップ」に加盟する企業が行う環境教育の現状をまとめた一冊。

企業が伝える生物多様性の恵み 〜環境教育の実践と可能性〜


◎ 粘菌
偉大なる単細胞が人類を救う

中垣 俊之 著 文藝春秋

粘菌が持つ高い能力を実証してきた著者。研究を通じて得た物事の捉え方があたたかく印象深い。

粘菌 偉大なる単細胞が人類を救う


温故知新 〜今こそ、古典を〜

グスコーブドリの伝記◎ グスコーブドリの伝記

※『新編 風の又三郎』所収

宮沢 賢治 著 新潮社

 イーハトーブの森の中で幸せに暮らしていた少年ブドリは、大冷害を機に家族を失います。その後も、地震、噴火、干ばつによって、ブドリの人生は翻弄され続けます。

 学問と出会い、火山局に入り、人々を災害から守る技師となったブドリは、ようやく幸福な日々を過ごせるようになります。しかし、あるとき、再び大冷害が来ることを知ります。火山を噴火させ、大量の炭酸ガスを放出させれば温暖化現象で冷害を防げるかもしれない。そう考えたブドリは、自らの命と引き換えに、イーハトーブを冷害から守るのです。

 一読して驚かされるのは賢治の先見性です。作品が発表されたのは1932年ですが、そのころ、温暖化のことを知っていた人は、一体、どれだけいたのでしょう。物語の中では、潮汐発電も実現していますが、世界初の潮汐発電所がフランスにできるのは、そのおよそ30年後のことです。

 「私のようなものは、これから沢山できます。私よりもっともっと何でもできる人が、私よりもっと立派にもっと美しく、仕事をしたり笑ったりして行くのですから」。最期にブドリにこう言わせた賢治は、翌年、亡くなります。私たちは、ブドリ=賢治の最期の願いにどれだけ応えられているのでしょうか。


推薦人:株式会社日本総合研究所 マネジャー 井上 岳一


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