コラム

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環境経営のヒント:わが社の取組をWEBサイトでアピールしよう! 新日本サステナビリティ研究所 常務取締役 沢味 健司氏

1.環境経営のために何から手をつけるか

 仕事柄、様々な業種、規模の企業の方々にお会いします。いつも実感することは、はた目には順調に見える企業経営者・責任者であっても色々な悩みをお持ちだということです。環境経営を進めることも、そうした悩みの一つであり、何をどのように実施すればよいのかなかなか理解されにくいものです。最近では、新製品がいかに環境面で優れているかをアピールするために壮大なキャンペーンを展開する大企業は少なくありません。よくできたコマーシャルをみると、なるほどと感心させられることもあります。

 しかしながら、経営資源の制約が大きいミドルクラスの企業にあっては、より効果的な分野を絞ってヒト、モノ、カネを投入していく発想が必要です。本稿では、Webサイトをほんの少しだけ充実させることを提案します。


2."わが社は何も取組んでいない"の真実

 ミドルクラスの企業で環境活動を尋ねると、大抵は"何も特別なことはやっていないですよ"などと謙遜なさいます。仕方がないので少し詳しく質問してみますと、リスクコントロールの観点では、ISO規格でなくても、エコアクション21やKESの環境マネジメントシステムの認証を取得していることや、そもそも認証の有無にかかわらず、自社の業務上で環境影響が懸念されるポイントは熟知されており、環境法令へのしっかりとした対応が当たり前になされていることがわかります。またビジネスチャンスを獲得する観点においても、"コスト削減のためです"や"取引先の要請です"などとやはり謙遜しながら、実に細部にわたるまで、省エネ・省資源を追及し、はたまた廃棄物を削減する努力をされていることを語ってくれます。つまり、驚くほどの創意工夫を凝らした取組をしているにもかかわらず、それが世間に知られずにいるのがミドルクラス企業の実態なのではないでしょうか。


3.情報開示の必要性とWebサイトが有効なワケ

 内閣府の調査によると「企業が環境や社会的によいとされている価値に関して配慮しているかどうかによって、その企業の製品やサービスを買うか買わないか決めて」いる人の割合が48.2%に昇ります*。また環境省の調査によると「取引先(請負業者、納入業者等)の選定に当たり」73.6%の企業が環境に関する選定基準を設けていることが示されています**。これらの結果は、おそらく読者の肌感覚とも一致するものと思われますが、消費者や取引先企業に自社の取組を説明し理解してもらうことの重要性は統計上でも明らかです。

 環境報告書はコミュニケーション手段として有効ですが、コンテンツを充実させるため、主な環境パフォーマンス情報を集計し、特徴のある編集を追及ししていくと、ミドルクラス企業にとってはやや荷が重くなる可能性があります。前出の調査をみると、「商品やサービスを買おうと思った時に関連情報を探すためにインターネットを活用して」いる人の割合は、「よく使う」と「たまに使う」の合計で65.1%です*。企業間取引では事情が異なるでしょうが、3人に2人がインターネットを利用している事実は見逃せません。


4.まず手始めにWebサイトの充実を

 Webサイトを充実させるためのコンテンツは、環境報告書のように主要な情報を網羅するのではなく、優れた"わが社の取組"をまず強調します。環境報告書の作成は、将来の楽しみに取っておけばよいでしょう。

 例えば、リサイクル率の高い企業では、そのために原材料を慎重に選別し、工程設計や手順に知恵を絞っているのではないでしょうか。そうした取組をわかりやすいフロー図やリサイクル率のグラフとともにWebサイトに開示してみてはどうでしょうか。さらに、なぜ高いリサイクル率を目指しているのかの理念を社長の言葉で掲載すれば、企業姿勢が伝わり説得力が倍増すること間違いなしです。


(参考文献)

*平成21年2月25日「平成20年度国民生活モニター調査結果」(内閣府国民生活局)より設問の一部と集計結果を引用した。

**平成21年12月「環境にやさしい企業行動調査結果(平成20年度における取組に関する調査結果)」(環境省)より設問の一部を引用し、集計結果を基に筆者が算定した。

プロフィール

沢味健司(さわみけんじ)
新日本有限責任監査法人パートナー。新日本サステナビリティ研究所の常務取締役を兼務し、環境金融、環境情報開示、気候変動対策、環境定量評価など、企業のCSR・環境経営の促進と信頼性向上を専門分野とする。