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炭素収支取引制度の斬新さ

 2008年10月、賛否両論を折衷させ、我が国でも形の上では温室効果ガスの「国内排出量取引制度」の試行が始まった。多様な意見と思惑を盛り込んだため、かなり複雑な制度になったことは否めない。ところで、この制度が固まった2日後、お隣りの中国から「炭素多排出問題の効果的な解決のため、中国は炭素基金、生態補償基金を主な内容とする全国的範囲の炭素収支取引制度を確立する」という報道が飛び込んできた。

 国家林業局の説明では、「炭素排出の空間を一つの貴重な資源とし、炭素吸収能力を一種の収益手段として、地域間の炭素排出量と炭素吸収量の差を利用し、交換形態を通して、合理的な取引価格を形成し、生態系サービスを無償から有償に移行させるもの」と解説されている。

 具体的には、ある省・自治区・直轄市の炭素排出総量が炭素吸収総量を上回った場合には、その上回った部分の比率で現金を全国炭素基金管理機関に直接納入しなければならず、それは炭素吸収での貢献が大きい地区への補償および国のクリーン生産計画と節エネ・排出削減の技術革新などに充てられるという。試算では、雲南省、青海省とチベット自治区が炭素吸収補償を獲得でき、陝西省は均衡線上で、その他の省・自治区・直轄市はそれぞれの比率で炭素基金を納めなければならない。

 これは、いわば自治体単位の排出量取引制度といえる。カーボン・ニュートラルという理想像に照らして、この制度は合理的である。地域間所得再分配を、炭素排出量と炭素吸収量をもとに行うという発想は斬新だ。実は、日本でも10年以上前に、都道府県別の温室効果ガス排出量を算定した研究があった。また現在は、地方分権や財源委譲が我が国の喫緊の課題と認識されている。顧みて、我が国の制度設計において、こうしたダイナミックな発想はあったのだろうか。中国を国別総量削減目標を拒否し続ける国とだけ見るのは妥当ではない。学ぶべきものには学ぶ姿勢が、今求められている。

(株式会社日本総合研究所 足達 英一郎)


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