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SAFE EYE



予防原則というバランス感覚

 住宅地に設置された携帯電話基地局の電磁波で健康被害を受けているとして、周辺住民が通信事業者を相手取り、基地局の運用停止を求めた訴訟の判決で、第一審の地裁支部が原告側の請求を棄却したという新聞記事に接した。

 この記事から15年ほど前、欧州で「エレクトリック・スモッグ」という言葉を初めて耳にしたときのことを思い出した。相手はスイス人だったが、「もし、電磁波と健康被害の因果関係が明らかになれば、これは今世紀最大の環境問題になる」と真顔で話してくれた。

 日本の裁判所における今回の判断では、「電磁波と健康被害の因果関係について、医学的、科学的観点から立証は不十分と言わざるを得ない」と指摘したという。

 焦点は、そのあとの思考であろう。英国では、健康保護庁が、この4月に「携帯電話技術に関する包括的な検証作業は健康影響に対する確固たる証拠を見つけられなかった」とするリリースを出しているが、その中でも、あえて「携帯電話技術は相対的に新しい技術であり、予防原則アプローチをとることを助言し続ける。子どもによる携帯電話の過度な使用は推奨されないし、携帯電話販売時には局所的電力吸収量を明示すべきである」と書いている。

 「白と言えない限りそのリスクを言い続ける」予防原則を、役人の責任回避の常套手段だと批判することはたやすい。それでもなお、上のような表現がバランスに優れているという感覚が3.11以降、筆者にはなおいっそう、強まっている。こうした思考を、企業側も受け入れることができるか否か。CSRの本質が問われる試金石である。

(株式会社日本総合研究所 足達 英一郎)


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