環境ビジネス情報

印刷用ページを別ウィンドウで開きます



環境経営の現場から

水、住まい、農業、自然の4領域で取り組む豊かな環境づくり 渡辺パイプ株式会社  代表取締役社長  渡辺 元 氏

御社の事業内容をお教えいただけますか。

 弊社の歴史は、上水道などに使用される管工機材の販売から始まりました。1953年の創業以来、顧客第一主義を掲げ、水の領域から住まい、農業へと事業を拡張し、現在は「ライフライン事業」「ライフスタイル事業」「グリーン事業」の3つを事業ドメインとしています。

 ライフライン事業とは、私たちの暮らしに不可欠な上下水道を支えるビジネスです。水道資材などの管工機材や一部電設資材を取り扱っています。

 ライフスタイル事業では、住宅設備機器・建材などの資材の供給を通じて、住宅リフォーム店や工務店のバックアップを行っています。両事業での我々の強みは、これまで専門問屋でのみ扱われていた資材を一括して提供する商品供給力です。たとえば、住宅の建築には、管材、電材、内装材、外壁材、さらには洗面台や給湯器などの住宅設備機器に至るまで多種多様な資材が必要になり、従来は種類別に各メーカーや専門問屋に発注されていました。弊社では、こうした煩雑になりがちな発注業務を解決するため、2,000社以上のメーカーなど仕入れ先と取引きを行い、30万点以上の商材を取り揃え、ワンストップでの資材供給を実現しました。さらに、物流においては、全国270カ所を超えるサービスセンターからなるネットワークを整備し、お客さまが必要とする商材を直接現場へお届けできる体制を整えています。

 また、グリーン事業では、農業に貢献する総合グリーンデベロッパーを目指し、グリーンハウス(温室)とその関連資材をフルラインナップで提供しています。

近年、食の安心・安全や食料自給率の向上など、農業に関わる問題が社会的に大きな関心を集めています。グリーン事業を展開されている御社のお取り組みについてご紹介いただけますか。

 農業が抱えるさまざまな課題を解決するには、農業を再び活性化するための対策が不可欠です。現在、多くの企業や研究者らが新規就農の促進、高付加価値作物の普及、植物工場など、新しい農業の在り方を模索しています。これに対し、弊社では、新しい農業ビジネスの方向性として施設園芸の拡大を提案しています。農業先進国のオランダでは、すでに1棟で20ヘクタールに及ぶ大規模なガラスハウスが建設され、世界に向けて高品質な農作物を大量に供給しています。我々は、日本においても高度な施設園芸を提供することで、国際競争力の高い農業ビジネスを確立できると考え、こうした将来を見据えて「グリーン事業」を展開しています。

 同事業では、グリーンハウスおよび、その付帯設備である換気装置や灌水装置、肥料、栽培システムなど、施設園芸に関わる資材をトータルで提供しています。我々は、このグリーン事業を通じて農家の皆さまが抱える不安や問題を吸い上げ、安心して農業を営んでもらうためのさまざまなソリューションを開発してきました。

 その1つが、「グリーンハウス3年補償」サービスです。これは、弊社が設計・施工したグリーンハウスと付帯設備に対して掛け金なしで3年間の災害補償を行うものです。一般に、気象条件の影響を受けやすい露地栽培に比べ、施設園芸は安定した収穫が得られると思われていますが、実際は台風や豪雪などによるグリーンハウスへの被害が後を絶ちません。グリーンハウスが倒壊すると、設備投資が無駄になるばかりか、収入の道が断たれてしまい、農家の方々にとって死活問題となってしまいます。弊社の「グリーンハウス3年補償」サービスは、天災や不慮の事故で倒壊したグリーンハウスの修理・建て替えを補償することで、農家の皆さまの不安を解消するサービスです。同サービスは、2003年の開始以来、たくさんの支持をいただき、現在、施工数が累計8,000棟を超えるまでになりました。

 また、補償だけではなく、天災に負けない強固なグリーンハウスの研究開発にも積極的に取り組んできました。徹底した構造計算や実証実験、素材メーカーとの共同研究の末に誕生したのが、屋根面に革新的なトラス構造(図)を採用した「トラスハウス」と、素材の軽量化と強度向上を実現した「タフパイプ」です。タフパイプは、パイプ厚を従来の1.2ミリメートルから1.0ミリメートルに軽量化しながら、独自の高強度設計を施すことによって1.4倍以上の引張強度を実現しました。このタフパイプをトラスハウスの骨組みに使用することで、強耐候性とコストパフォーマンスに優れた施設を提供できるようになったのです。

 グリーン事業では、こうした施設園芸に関わる設備の提供だけでなく、農業全体を活性化するための研究や、提案活動、コンサルテーションなどにも取り組んでいます。たとえば、各地の大学の農学部や農業試験場と連携し、新しい農業ビジネスに寄与する研究開発に取り組んだり、異業種間の連携により設立された「次世代農業コンソーシアム」に参画したり、流通の改革や高付加価値作物の開発を行ったり、さまざまな取り組みを推進しています。

自然環境の保護活動についてお教え下さい。

 弊社は、豊かな自然の保全・再生を目指した社会貢献活動に取り組んでいます。その活動の中心となっているのが、北海道苫小牧市の「イコロの森」と長野県の「浅間山麓国際自然学校」です。「イコロ」とは、アイヌ語で「宝物」を意味しています。かつて、苫小牧は、木材を炭焼きにした燃料や紙用の木材チップの生産によって栄えていました。しかし、戦後の林業衰退の影響を受け、「宝物」であったはずの森は荒廃の一途をたどることになってしまいました。イコロの森は、この荒れ果てた森を再生し、失われつつある「宝物」を次世代に引き渡すことを目指した取り組みです。間伐によって森を整備し、切り出された木材を炭焼きにしてバイオマスエネルギーとして活用したり、大型グリーンハウスで花苗の生産を行うなど、森の恵みを再生するさまざまな事業を展開しています。ここで生産された苗は、各地で造園や緑化に使用するほか、自然保護地域に植えることで減少しつつある在来野草の保全にも役立てています。また、イコロの森では、深い緑の中に多種多様な植物で構成した庭を設け、森を楽しむ自然体験などを通じて、森の恵みを実感していただくプログラムを提供しています。

 浅間山麓でも同様に、美しい自然を多くの方々に楽しんでいただく取り組みを行っています。弊社は長年、上信越高原国立公園に属する長野県・高峰高原でスキー場を運営してきましたが、近年、スキー産業そのものが低迷してしまっています。弊社のスキー場も例外ではなく、事業の見直しを進めざるを得ませんでした。事業の見直しを進める中で気づいたのが、高原の自然が持つ魅力でした。今まで利用されていなかった春から秋にかけての高原は、高山植物が咲き誇り、まさに緑の宝庫です。この美しい自然を生かさない手はないと考え、2005年にNPO法人浅間山麓国際自然学校を立ち上げました。同法人は、民間団体として初めて国立公園の指定管理団体として認定され、高山植物のニッコウキスゲをはじめとする地域固有の原生植物などの生物多様性保全に取り組んでいます。また、地元住民約80名をインタープリターとして登録し、彼らを講師として野草や星を見ながら学ぶ自然体験教室や、漬物や味噌を作る暮らしの教室など、都会では体験できない貴重な自然と触れ合えるさまざまなイベントを開催しています。

自然体験は学校教育でも注目されていますね。

 かつて、子どもたちは、日々の暮らしや遊びを通じて自然との付き合い方を学んできました。しかし、最近では、都会に限らず地方でも、子どもたちが自然に触れる場が少なくなりました。私は、昔のように自然と共存する中でこそ、命の尊さや人とのつながりが実感できるのだと考えています。昨今は、ニュースで悲惨な事件を耳にすることが珍しくありませんが、これも自然体験が減ったことが一因なのではないでしょうか。だからこそ、我々のような企業が自然体験のフィールドを多くの人々に提供することが重要なのだと考えています。

 弊社は、子どもたちにもっと自然に触れて欲しいという思いから、自然体験と自然保護に関する人材の育成にも取り組んでいます。子ども時代における自然の重要性は情操教育という観点でも見直されており、文部科学省が自然体験を学校教育のカリキュラムに取り入れる準備を進めています。今後はこうした国の動きとも連携し、1人でも多くの子どもたちが自然と触れ合えるようお手伝いしていきたいと思っています。

「環境」と「経営」の両立についてお考えをお聞かせ下さい。

 世界的な金融危機を引き金に、世の中のパラダイムそのものが大きく変化しました。これは、目先の利益を求めて経済が虚業化した結果といえます。我々はこうした経験から学び、社会全体の価値観を再構築しなければいけません。企業においては、実業の尊さを見直しつつ、こうした社会の変化と経営を連動させていくことが求められるでしょう。特に、最近は国内外で環境問題が大きな注目を集めています。そのため、企業が「環境」や「自然」というテーマに長期的な視点を持って取り組んでいくことは、ステークホルダーからの信頼を獲得し、ひいては企業そのものの総合力向上につながると考えています。

 弊社は、企業の存在意義とは、お客さまをはじめ、取引先、グループ企業、その家族の方々まで、あらゆるステークホルダーの笑顔を生むことだと考えています。本業と自然への取り組みを通じて、1人でも多くの方々に笑顔になっていただきたい、それが我々の願いです。

会社概要

社名
渡辺パイプ株式会社
所在地
東京都墨田区亀沢1-4-7
資本金
15億3,208万円
事業内容
管工機材の販売、住宅設備機器の販売、電設資材の販売、グリーンハウスの設計・施工、販売
TEL
03-3626-3131(代表)
URL
http://www.sedia-system.co.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.83(2010年5月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。

新しいウィンドウで開きます。Vol.83(2010年5月号)


環境経営の現場からトップへ

印刷用ページを別ウィンドウで開きます

このページの先頭へ戻る