環境ビジネス情報

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環境経営の現場から

リゾート事業を通じて地域を活性化し、美しい海と豊かな自然を次世代へ 株式会社かりゆし 代表取締役会長 兼 かりゆしグループCEO 平良 朝敬 氏

御社が環境問題に取り組まれた経緯について教えていただけますでしょうか。

 環境問題を強く意識したのは今から25年前、恩納村でオーシャンスパの開発を計画した頃のことです。当時は、ビーチリゾートを中心に事業を展開していたのですが、その頃から沖縄では大雨が降ると、赤土が流れ込み海が真っ赤になってしまう現象が起きていました。赤土が流れ込むと海底に堆積して海の透明度が落ち、溶存酸素量が不足してさんごの死滅を招く恐れがあります。ビーチリゾートにとって、海の汚染は深刻な問題ですから、我々は対策を検討するためこの原因を調査しました。その結果、赤土流入の背景に日本の農業政策の問題があることがわかりました。農業改革法によって森や山を開拓し、農地を広げていったのですが、その際に窒素分を含んだ水がどこへ流入するかまでは考えられていなかったのです。

 ところが、折しも世間ではリゾート開発が環境汚染を招くという風潮が広がり、赤土などの発生もリゾート事業者の責任であるかのような批判が起きていました。美しい環境がなければリゾート事業は成り立たないというのに、自身の手で環境を破壊するなどありえないことです。しかし、オーシャンスパの開発計画を発表すると、地元から反対の声が上がりました。このような逆風があったからこそ、あえて我々は徹底的に環境に配慮した本物のビーチリゾートをつくらなくてはならないと考えました。本物のビーチリゾートは、環境を破壊するどころか、自然の豊かさを取り戻し、むしろ環境保全に貢献するのだという事実を知っていただきたいと考えたのです。

 このような思いを込めて誕生したのが、「沖縄かりゆしビーチリゾート・オーシャンスパ」です。

具体的な環境保全の取り組みについてご紹介をお願いします。

 オーシャンスパでは、目の前の問題への対応ではなく、将来にわたって環境保全に貢献することを目指し、計画段階からさまざまな環境配慮の仕組みを取り入れています。

 わかりやすい例としては、施設全体の配置計画です。オーシャンスパは敷地内の施設を客室、レストラン、宴会場など7棟に分け、配電や光熱、水道などを分断できるように設計しました。その目的は、オフシーズンなど稼働率の変動時にエネルギー効率を最適化することです。稼働率の低いときには、機能を一部の棟に集中させ、稼働していない施設の電源を切ることでエネルギー消費を抑制できるようにしたのです。これによって年間を通して最適なエネルギー利用ができるようになりました。

 他にも、「エコアクション21」を取得したり、生ごみを肥料化して自社農園で活用したり、自家発電システムを導入してエネルギー効率を高めるなど、さまざまな環境配慮の取り組みを実践しています。

 また、開発当初の懸念材料としてお話しした赤土対策にも取り組んでいます。雨が海に流れ込まないよう新たに貯水池を設けたほか、自社中水処理施設を導入し、ホテルのトイレ用水や散水用に利用するシステムを構築しました。オーシャンスパには、約9万坪の敷地がありますから散水だけでも膨大な水量になります。降雨量が少なく水資源が貴重な沖縄では、この中水処理システムは環境保全に大きな貢献を果たしています。

「かりゆしさんごの森再生プロジェクト」についてご紹介をお願いいたします。

 近年、環境問題は社会の大きな関心事となっていますが、海の環境問題についてはあまり論じられてきませんでした。ここ数年、ようやくさんご礁のCO2吸収効果が注目されるようになるなど、徐々にその保全への意識と理解が得られるようになりました。かねてから海の環境問題に取り組んできた我々もより多くの方々にさんご礁保全の推進を図るため、2008年の「国際さんご礁年2008(IYOR)」に賛同し、独自に「かりゆしさんごの森再生プロジェクト」を始めました。このプロジェクトは、沖縄県内2カ所を拠点としてさんごの植え付け活動を行うというものです。大きな特徴はIYORの「知ろう、行こう、守ろう」に加え、独自に「育てよう」というキャッチフレーズを掲げたことです。この「育てよう」こそ、さんごを守る重要なキーワードだと考えています。

 具体的なプロジェクトの内容は、地元の漁業協同組合とタイアップしてさんごの苗をつくり、それをお客さまに購入していただき、我々が苗を植え、育てていくというものです。種類によりますが、さんごは1年に2、3ミリしか育たず、きちんと固定しても流されてしまうこともありますし、海が汚れれば死んでしまいます。植えただけで育たないのでは、このプロジェクトは意味がありません。プロジェクトに参加したお客さまは、自分が植えたさんごが大きく育ってほしいと願っていますし、だからこそ海をきれいにしなくてはいけないという意識を持ってくれるのです。お客さまの思いが込もった大切なさんごを育てるため、弊社では年間を通じて、ビーチスタッフがさんごを観察・保全していく体制を整えています。

 また、ホテルに面したビーチで「かりゆしビーチさんご植え付け教室」も行っております。この教室では、参加者にさんごの苗を購入、植え付けを体験してもらうだけでなく、さんごの生態や環境への影響、私たちが生活する上で大変重要な役割を担っていることなど、オリジナルの教材を使用して学習し、グラスボートに乗って海中観察を行っていただきます。これらのプロジェクトを通して、2010年10月までに参加人数1,478人により1,158苗のさんごを植え付けることができました。これからも、かけがえのない美しい海を後世に継承するため、より多くの人々と共に「海」「さんご」「環境問題」に取り組んでいきたいと考えています。

御社が取り組んでいる「観光文化事業」のご紹介をお願いいたします。

 沖縄の美しい海を後世に残し、当県のリーディング産業である観光を持続可能にしていくには、人々の意識の芽生えが重要です。「どうやったら環境保全と観光事業を両立させられるのか」「沖縄の魅力をもっと発信していくにはどうすればいいのか」ということを、柔らかな発想で考えていかなくては、持続可能な観光は実現できません。そこで、我々は沖縄の将来を担う子どもたちに「観光」を意識してもらうことを思い立ちました。こうしてはじまったのが「おきなわの観光」をテーマにした意見発表コンクールと絵画コンクールです。2010年でそれぞれ6回目、9回目を迎え、毎年、県内全域を対象に多くの児童、生徒から応募をいただいています。子どもたちの感性の豊かさに我々も刺激を受けることが多く、毎回、開催を楽しみにしております。入選した絵画は、県庁や銀行、弊社ホテル内に展示、受賞作文は作品集を作成して県内の学校や公共図書館に寄贈しています。こうして地域全体を巻き込むことにより、一過性のイベントとして終わらせるのではなく、子どもたちをはじめ、ご家族や県民の皆さまに観光を理解していただき、地域全体に波及効果が及ぶことを期待しています。

 また、沖縄ならではの素晴らしい文化や芸能を後世に継承することも、観光の裾野を広げる要素だと考え、エンターテイメント事業への取り組みも始めました。琉球舞踊、エイサーなどの沖縄の伝統文化をはじめ、さまざまな才能を持つ人材を登録し、弊社リゾートのステージを活躍の場として提供しています。単に伝統文化を継承するのではなく、ハワイアン・フラダンスやクラシック、ゴスペルなどとコラボレーションする機会を設けることで、多くのお客さまの関心を集め、現代的な解釈の中でエンターテイメントとしての魅力を増やせるような支援を行っています。

環境保全に関する今後の取り組みについてご紹介をお願いいたします。

 弊社が今後力を入れていきたいのは、地産地消の取り組みです。現在、自社農園の「かりゆしファーム」を展開するとともに、恩納村を中心に沖縄全域の農家と直接契約を進めるほか、農業大学校とも提携し、ホテルの食事に新鮮な地元野菜を提供しています。今後、契約農家をさらに増やし、できるかぎり100%に近い地産地消を実現したいと思っています。さらに、3万坪の敷地を使って果樹の栽培にも取り組みはじめました。短期間で栽培できる葉野菜と異なり、果樹は苗を植えてから収穫できるまでに何年もかかるので、これまでは地元農家が手を出しづらい分野でした。その収穫できるまでの基礎部分を弊社で整備すれば、地元農家が安心して新しい農業分野へ参入でき、地域経済の活性化につながると考えています。

 私は「観光」というのは、もっともっと裾野の広い事業分野だと考えています。ホテル事業にとどまらず食、教育、アクティビティ、エンターテイメントなどさまざまな領域があり、その各分野で新しい取り組みを進めることが、自然を豊かにし、地域を活性化し、リゾートの魅力を高めることにつながっていくのだと信じています。

会社概要

社名
株式会社 かりゆし
所在地
沖縄県那覇市泉崎1-10-7
資本金
1億円
事業内容
ホテル業
TEL
098-861-0381
URL
http://www.kariyushi.co.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.86(2010年11月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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