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環境経営の現場から

廃タイヤを有効活用した画期的な振動伝播防止工法を開発 株式会社オーク 代表取締役社長 樫本 孝彦 氏
「人と自然の調和」を掲げ、基礎工事専門企業として長年培ってきた技術を応用して環境保全事業を推進する株式会社オーク。同社は、廃タイヤを有効活用した画期的な振動伝播防止工法「Ti-TAN(タイタン)工法」を開発。これまで有効な対策を講じることが困難だった、道路や鉄道、工事現場などから発生する地盤環境振動を低減することに成功しました。タイタン工法は、振動に悩む住民の生活環境を改善するとともに、国内で年間約9,000万本※も発生する廃タイヤの有効活用策として注目されています。タイタン工法の有効性と同社の環境への取り組みについて代表取締役の樫本孝彦氏にお話を伺いました。※2009年度の実績(出典:社団法人日本自動車タイヤ協会)

御社の沿革と事業概要、環境問題への取り組みを始めた経緯についてご紹介をお願いいたします。

 長年、建設業界で土木工事に携わり、1994年に株式会社オークを設立しました。会社を設立する以前から、私は土木工事に伴う騒音や振動などの環境公害を防ぐ方法はないかと常に考えていました。その思いを具現化したのが、弊社が独自に開発し特許を取得した「OAK-DASH(オークダッシュ)工法」という防音・吸音システムを採用したエアーハンマーです。これは土木工事に欠かせない杭を打ち込むハンマーの空洞部に特殊な吸音材を充填し、金属音・打撃音を8?15デシベル低減する画期的な工法です。この技術を開発したことで、市街地や住宅地での土木工事に活路が開けました。弊社は、OAK-DASH工法に限らずさまざまな手法・技術を開発して環境への影響を低減する土木関連事業を進めてきました。

廃タイヤを有効活用するタイタン工法についてご紹介をお願いいたします。

 廃タイヤを地面に埋設して振動を吸収する工法は、私が創業当初から温めていたアイデアでした。廃タイヤは、国内だけでも年間に約9,000万本、重量にして約95万トンも発生しているものの、廃棄やリサイクルに膨大なコストがかかるため業界の負担になっているという問題を抱えています。廃棄物処理法が施行される以前は、不法投棄が横行し社会問題にまで発展したこともありました。私が考案した廃タイヤを活用した振動防止策は、道路・鉄道周辺などの振動発生地帯の住環境を改善するだけではなく、廃タイヤの不適正な処理を防ぐ有効策になるとわかっていたのですが、埋設後の土壌への影響が懸念されたため実現は難しいと手を付けずにいたのです。

 ところが、2002年にタイヤを埋設しても土壌汚染の影響はないという社団法人日本自動車タイヤ協会による調査結果が発表されたのです。私はすぐに同協会へ連絡し、研究結果の事実確認を行いました。そこからタイタン工法への取り組みがスタートしたのです。

 当初は、廃タイヤの空洞部をコンクリートなどで埋めて鋼管に連結する方法で実験を開始しました。社有地に廃タイヤを埋設し実験を始めましたが、道路や鉄道周辺で発生するような振動を人工的に発生させることが難しいなどの壁に直面し、思うような成果を得られませんでした。試行錯誤を続ける中、立命館大学で交通振動対策などを研究されている早川清教授と出会い、そこから道が開けました。早川教授の尽力により、兵庫県「産学連携新産業創出支援事業」の認定を得て共同研究を実施することになりました。共同研究の開始により、振動発生装置の問題などをクリアすることができ、タイタン工法の防振効果を具体的な数値で裏付けることができました。また、廃タイヤの空洞部をコンクリートで埋める方法から鋼管の周りに積層した廃タイヤを圧縮する手法に変更したことにより、生産コストを下げることにも成功しました。その結果、従来の工法より約4倍の廃タイヤを利用できるようになったのです。

タイタン工法の具体的な効果と、環境に与える影響についてご紹介をお願いいたします。

 振動の要素には、デシベルで表される揺れの大きさと、ヘルツで表される周期の2種類があります。従来の振動対策は、コンクリートや鋼矢板の防振壁を用いる方法が主流でしたが、これらの工法は10ヘルツ前後の低周波振動を抑制する効果が低いといわれていました。これに対しタイタン工法は、10ヘルツ前後の低周波の振動にも優れた防振効果を発揮することが実証されています。タイタン工法で防振壁を施工した地盤では、未施工地盤と比較して5〜15デシベルの防振効果があることが実験により確認されています。

 また、タイタン工法は防振対策だけではなく、廃タイヤの有効活用による環境への好影響も期待できます。現在、廃タイヤの約9割はリサイクルされていますが、その大半は燃焼によりエネルギーを取り出すサーマルリサイクルが占めています。廃タイヤは燃焼効率が高いためサーマルリサイクルに適していますが、燃焼時に有害物質が発生するため、特別な設備が必要となり国内では処理コストがかかりすぎるといわれています。そのため近年では途上国などへの輸出が増えていますが、結局海外でもサーマルリサイクルの材料として使われており、途上国のリサイクル現場で有害物質が適正に処理されているのかは確認されていないようです。タイタン工法の普及は、廃タイヤを低コストで再利用する道を開くだけではなく、燃焼処理に伴うCO2や有害物質の排出を削減する効果も発揮するのです。

タイタン工法を普及させるための課題について、ご意見をお聞かせ願えますでしょうか。

 タイタン工法による防振対策は、大阪モノレールの地盤振動防止工事に採用されるなど、すでに実績が生まれ始めています。今後も多くの案件に採用していただくためには、地質に合わせた埋設方法の確立や、経年変化を監視する仕組みなどを開発していくことが必要だと考えています。これについては、今後も実証試験を続けながら研究開発に取り組んでいく予定です。



 しかし、技術開発だけでは解決できない問題があります。それは法的な課題です。産業廃棄物である廃タイヤの利用がタイタン工法のポイントですが、自治体によっては廃棄物の利用が規制され施工許可が下りないことがあるのです。廃タイヤの有効活用は、環境保全やCO2削減という国の重要な政策に貢献することですから、一刻も早くこうした課題が解決されることを望みます。

御社ではタイタン工法以外にも環境配慮技術を研究されているそうですが、その一端をご紹介願えますでしょうか。

 土木基礎工事で培った技術を生かした「家屋復旧用室内杭工法"くいックくん"」という技術を開発しました。これは軟弱地盤に建設された家屋の柱や基礎の直近に小口径の鉄筋杭(あるいは鋼管杭)を打設し、補強する工法です。軟弱地盤に建てられた家屋は、不等沈下によって傾いてしまうことがあります。これまではジャッキで家屋を持ち上げ、傾斜分をモルタルで補強する対策が取られてきましたが、これは対症療法にすぎず不等沈下を止める効果はありません。これに対し弊社の工法は、地盤そのものを強化するため不等沈下を防ぐことができます。しかも、大型機械を使用せず杭を打設するので、生活したまま施工でき、工事中も仮住居に移る必要がありません。この工法は、家屋だけではなく神社仏閣・文化財など移設が困難な物件の基礎補強に最適です。地盤が弱いからといって家屋を壊して建て替えるのではなく、地盤を強化して家屋の寿命を延ばすことが資源の節約や環境保全につながると考えています。

 それ以外の環境分野の技術としては「樹木・植物強制振動育成法」があります。これは樹木や地盤に振動を加えることによって、植物の防衛本能を働かせ、成長を促進する手法です。この技術は、土壌を耕すことができない果樹園に適していると考えています。まだ基礎研究の段階ですので明確な道筋は示せませんが、いずれは荒廃した土地の再生などを通じて緑豊かな地域づくりに貢献できると期待しています

会社概要

社名
株式会社オーク
所在地
兵庫県豊岡市日高町上郷字和田991
資本金
2,000万円
事業内容
総合基礎工事および計量証明事業、環境関連事業
TEL
0796-43-1191(代表)
URL
http://www.oak-co.co.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.88(2011年3月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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