環境ビジネス情報

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環境経営の現場から

バイオガスの普及を通じて環境と農業、エネルギーの問題解決に貢献 コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド 代表取締役専務 渡辺 隆雄氏

事業の概要と環境経営の方針について、ご紹介をお願いいたします。

 創業は今から150年前、文久元年(1861年)に遡ります。当時、24歳だった英国人フレデリック・コーンズが、絹や茶を主要品目として貿易事業に取り組んだことが弊社の起源となっています。その後、先進性と高品質の提供を理念として、保険や自動車、海図、生活用品、エレクトロニクス、農業設備など、時代の変化に伴い多様な分野で事業を展開してきました。

 環境経営に関して、弊社ではサステナビリティが重要なテーマだと考えています。サステナビリティには2つの意味があり、その1つは企業や社会、文明の持続的な発展です。人々の暮らしを豊かにする上で経済の発展や社会の成熟、文明の高度化は欠かせません。弊社の事業もその一端を担うものと位置づけています。しかし、一方でサステナビリティのもう1つの側面である、美しい自然、限りある資源を子孫に残していくことにも配慮しなければなりません。現代は、あまりにもハイペースで経済発展を進めすぎたため環境が破壊され、2つのサステナビリティのバランスが崩れてしまいました。弊社では、経済・社会・文明の持続性と地球環境の持続性、この2つのサステナビリティを両立できる事業展開を目指したいと考えています。

バイオガス事業に取り組み始めた経緯を教えていただけますでしょうか。

 弊社は、1968年に設立したグループ会社のコーンズ・エージーを通じて、自動搾乳機など酪農関連の設備およびシステムを輸入・販売・サポートし、国内酪農の近代化を支援してきました。弊社では、常に世界中の農業動向を注視し、優れた機械や設備、システムをいち早く国内に導入することを目指しています。そうした活動の中で、1990年代後半からドイツで環境問題への取り組みが活発化し、バイオガス・プラントへの注目が高まっていることを知りました。ドイツは日本同様、エネルギー資源を他国に頼っているため、ナショナル・セキュリティの観点から自前のエネルギー資源を持つべきという意識が高く、その流れに環境意識の高まりが融合し、太陽光発電や風力発電、バイオマスなど再生可能エネルギーの取り組みが加速したのです。特に、ドイツは農業が盛んであることからバイオガス・プラントの導入が急速に進みました。

 北海道を拠点に酪農の近代化を支援してきたコーンズ・エージーは、こうしたドイツの状況を調査・分析し、国内にも需要があると判断しました。当時、国内の酪農場の大半は家畜ふん尿をコンポスト処理か野積みしていました。しかし、環境・臭気対策として野積み禁止の方向が示されたため、処理方法に頭を悩ませていたのです。この問題の解決を目指し、弊社はドイツのシュマック社と提携し国内でバイオガス・プラント事業を開始しました。そして、国産化が可能となり、2008年にバイオガス・プラントの設計・施工・管理を行う社内カンパニー、コーンズ・バイオガスを設立しました。

バイオガス・プラントの仕組みを解説していただけますでしょうか。

 バイオガス・プラントは、家畜ふん尿や食品残渣等の有機廃棄物を発酵槽に投入し、嫌気状態(酸素がない状態)で微生物により分解して廃棄物を処理し、バイオガスを発生させる施設です。得られたバイオガスにはエネルギーとして利用可能なメタンガスが大量に含まれています。弊社のプラントでは、このガスを用いて発電機やボイラーで発生させた電気と熱を、施設の電力と発酵槽の加温に利用しており、余った電気は売電、余った熱は温室(ビニールハウス)等で有効利用します。また、発酵の過程で併産される消化液は、窒素、リン酸、カリ等が含まれた速効性のある良質な液体肥料として活用されています。

国内の導入事例についてご紹介をお願いいたします。

 現在、国内では大規模酪農家や地方自治体などを対象に27カ所のバイオガス・プラントの建設実績があります。

 北海道の鹿追町環境保全センターは国内最大規模のバイオガス・プラントです。鹿追町の集中処理型プラントでは、近隣12戸の農家で共同利用・運営を行い、1日に家畜ふん尿約95トンを処理、年間約167万kWhの発電を行っています。また、余剰熱は隣接する温室に、併産される消化液は有機肥料として酪農家および耕種農家に供給しています。

 新しい分野としては焼酎工場の導入事例があります。焼酎工場では、製造工程で発生する残渣を原料としてメタンガス発酵処理を行っています。工場ではバイオガスによるボイラーの熱を、隣接した温室で利用し、焼酎の原料となるイモ等の苗栽培に活用。併産される消化液は、契約農家に液肥として供給しています。

バイオガス普及に向けた課題と今後の展望についてご意見をお聞かせ願えますか。

 バイオガスは、太陽光や風力など他の再生可能エネルギーより優れている点が数多くあります。まず、バイオガスは単にエネルギーを生産するだけではなく、そのプロセスで廃棄物(家畜ふん尿、生ごみ、食品残渣、汚泥等)を減量化・再資源化します。その結果、自治体や食品工場などで廃棄物の処理コストを削減する効果が生まれます。また、エネルギー生産と同時に得られる消化液を有機肥料として利用できるので、化学肥料の削減や有機農業の発展に貢献します。さらに、バイオガスは燃焼時にCO2を排出しますが、これは家畜がエサとして食べた植物に由来します。植物由来のバイオガスを燃焼させ、CO2を放出しても、発生するCO2量が光合成で吸収した量を超えない限り、大気中のCO2量には影響を与えません。つまり、バイオガスはカーボンニュートラルなエネルギーなのです。

 バイオガスは、これほど優れたエネルギーであるにもかかわらず、国内では認知度が低く、普及もまだまだというのが実情です。普及の障壁となっているのは、効率性とコストです。メタン発酵により得られるバイオガスは、廃棄物の量に依存するため、相応のエネルギー量を確保するには広大なプラントが必要です。また、消化液も処理量に比例して増大するため、膨大な液肥の処理も問題となります。輸送コストがかかるので、近隣に広大な農場がないと液肥を処理できなくなってしまいます。このような理由から、バイオガス・プラントは北海道のように広大な敷地があり農地とプラントを併設できる場所が適地とされているのです。効率性という意味では、売電コストも大きな問題です。現在、バイオガスは売電価格が安いため、多くの酪農家は自施設で使う量以上の発電を行っていません。発電量を多くしすぎると、運用コストが売電価格を上回ってしまうからです。発電できる余力はあるのに、利用を控えざるを得ないというのは大変もったいない状況です。この状況を打破すると期待されているのが、2012年にスタートする再生可能エネルギーの固定価格買取制度です。買取価格が28円/kWh以上に設定されれば、おそらくバイオガスは一気に普及するでしょう。

 バイオガスの普及は、エネルギー問題や環境問題だけではなく、農業問題の解決にも貢献するものです。バイオガスの普及は、原料を生産する農業や酪農の拡大を意味します。先にお話ししたように、バイオガスによるエネルギー生産は効率化が必要となるので、農家や酪農家は近隣で協力し合い共同のバイオガス・プラントを持つようになるでしょう。これにより農家や酪農家は本業以外に売電による副収入を得られ、この資金がコミュニティの維持や後継者問題の解消に役立てられることが期待できます。さらに、農場の大規模化が進み耕作放棄地が再生する効果も期待できます。

 弊社は、バイオガス・プラントの普及を通じて環境保全はもちろん、国家的課題であるエネルギー問題や農業問題の解決にも貢献していきたいと考えています。

会社概要

社名
コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド
所在地
東京都港区芝3-5-1 コーンズハウス
資本金
香港通貨250万ドル
事業内容
外資系総合商社
TEL
03-5730-1660
URL
http://www.cornes.co.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.93(2012年1月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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