環境ビジネス情報

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環境経営の現場から

30℃から洗える超低温ワイシャツ用洗剤によりクリーニング業界の環境負荷低減に貢献 ラクナ油脂株式会社 代表取締役社長 小林 章氏

御社の事業概要について、ご紹介をお願いいたします。

 弊社は、1953年の創業以来50年以上にわたりクリーニング業界とともに歩んできました。現在、首都圏を中心に4,000軒のお客さまと取引をさせていただいておりますが、その大半は中小あるいは個人のクリーニング店さまです。創業当初は業務用石けん・洗剤のメーカーでしたが、現在では洗剤の製造販売にとどまらず、業務用洗濯機からPOSレジ、ハンガー、ガーメント(衣類カバー)などの資材、さらには工場、店舗の新築、改築、改装のサポート、業界情報の提供まで、さまざまな商材を扱う総合商社としての事業も展開しています。

 クリーニング業界は、大きくホームクリーニングと産業クリーニングに分けることができます。ホームクリーニングとは、一般家庭の衣服等を扱うおなじみのクリーニング店の業態です。一方の産業クリーニングは、病院、ホテル、飲食店、工場などのユニフォームやリネン、おしぼり、モップなどの洗浄を行う業態です。弊社の取引先の大半はホームクリーニングのお客さまですが、2005年に「新生ラクナ」というスローガンを掲げて事業拡大に乗り出し、近年は産業クリーニング分野へも進出しています。

 弊社は、業務用洗剤・加工剤のメーカーとしてはとても小さい企業ですが、首都圏4,000軒のお客さまに対する直販体制の営業力は日本一だと自負しています。営業担当者が毎日ルートセールスで取引先を訪問し、顔の見える営業活動を行っています。お客さまのニーズを直接伺える営業力、迅速な対応力、メーカーとしての開発力が、弊社の強みです。また、本社と工場の両拠点に研究開発部門を設け、新技術の研究やお客さまのニーズにお応えできるオーダーメイド製品の開発を行う体制を整えていることも、弊社の特徴といえます。

クリーニング業界における環境問題についてお教え願えますでしょうか。

 クリーニング業界はケミカル業界といってもいいほど、石油や化学物質と深く関わっており、そのことが環境問題につながっています。たとえば、ドライクリーニングの溶剤の大半は石油由来ですし、プラスチックハンガーや衣服を包むポリエチレン袋も石油由来です。また、クリーニングを行う場合の加温に重油をたくさん使用しています。さらに、洗剤にはリンや界面活性剤などの化学原料が必要です。リンそのものは無害ですが、微生物の栄養分となるため川や湖沼などに排水されると環境汚染の原因となります。現在、家庭用洗剤は無リンが主流ですが、クリーニング業界では今も有リンの洗剤が使われています。もちろん、適切な排水処理が行われているので環境汚染の心配はありません。また、化学とは関係ありませんが、洗濯には水をたくさん使用することもクリーニング業界の環境問題の1つといえるでしょう。

 整理しますと、業界における環境問題は、(1)石油依存、(2)大量のエネルギー消費、(3)洗剤の化学原料、(4)洗濯水の使用量の4点といえます。(1)石油依存については、昨今石油を使わない新しい溶剤が開発されつつありますが、コストの問題が解決していないため普及はこれからという状況です。また、プラスチックハンガーやポリエチレン袋については、弊社でも回収、リユース、リサイクルに取り組むことで環境負荷を減らすよう努力しています。

 それ以外の(2)大量のエネルギー消費、(3)洗剤の化学原料、(4)洗濯水の使用量に関する環境問題を低減するために、弊社が開発したのが超低温ワイシャツ用洗剤「エグゼスパーク30」です。

「エグゼスパーク30」についてご紹介をお願いいたします。

 ホームクリーニング業界で最も取り扱い量が多いのは、ワイシャツです。業務用洗剤には、衣類に応じてさまざまな種類がありますが、中でもワイシャツ用洗剤は最も使用量の多い洗剤といえます。現状のワイシャツ用洗剤は、水温40〜60℃で洗うものが主流です。40℃以下では汚れ落ちが悪いため、40〜60℃で洗うことが常識なのです。

 あるとき、弊社の営業部長が研究開発部門に要望を出しました。彼によると「近年クリーニングの取り扱い量が減って中小のお店はとても困っており、コスト削減が重要な命題になっている。あと10℃低温で洗える洗剤があればボイラーのコストを減らせるし、時間も短縮できる」というのです。これを聞いた研究室長は即座に不可能だと断言したほど、このマイナス10℃は常識はずれの数字でした。しかし、私どもはこの常識はずれにあえて挑戦する決意をしました。クリーニングの取り扱い量が減少する中、お客さまのコスト削減に貢献することは弊社の使命だと考えたからです。

 研究開発には大変な労力を要しました。研究開発部門では、各温度帯における汚れ落ち成分をスクリーニングし、さまざまな組み合わせを試す日々が繰り返されました。着手から1年、独自の低温活性成分を配合することにより、ついに30℃でも抜群の汚れ落ちを実現する洗剤「エグゼスパーク30」が完成しました。なお、「エグゼスパーク30」の開発に当たっては、低温化だけではなく、環境への配慮も重要なテーマとしました。クリーニング業界が今後も成長するために、環境負荷の低減は欠かせないと考えたからです。研究開発の結果、生分解性に優れた特殊活性剤を配合することにより、無リンでありながら高い洗浄力を実現することができました。また、すすぎ性を高めることで水の使用量低減も実現しました。

「エグゼスパーク30」の業界での反応はいかがでしたか。

 2010年10月に開催された展示会で「エグゼスパーク30」の発表を行ったのですが、その反響はこれまでにないものでした。ホームページで新製品の発売予告をした程度なのですが、クチコミで評判になったらしく、当日は弊社ブースに大勢の方が詰めかけ、展示会終了前にサンプルがなくなってしまったほどです。その後も北から南まで全国から問い合わせが相次ぎ、新たな取引先を開拓することもできました。いかにコスト削減、環境負荷低減が、クリーニング業界の重要なテーマになっているのか、実感させられたエピソードです。

「エグゼスパーク30」の環境負荷低減効果についてお教えいただけますでしょうか。

 これまでワイシャツを60℃で洗浄していたとすれば、「エグゼスパーク30」に切り替えて30℃で洗浄するだけで蒸気使用量を約75%削減できます。これに伴いCO2排出量も削減できます。さらに、低温で洗うことにより、しわや縮みを抑えられるため、仕上げ工程のエネルギー消費も抑制できます。また、他の洗剤より繊維へのダメージが少ないため、脱色や変色が起こりにくく、ワイシャツを長持ちさせることが可能です。そのうえ、すすぎ性に優れ1回すすぎが可能なので、水の使用量も抑えることができますし、無リンですから水質への影響も低減できます。

今後の環境保全への取り組みやビジネスの展望について、ご紹介をお願いいたします。

 先にも申し上げましたようにクリーニング業界というのは、さまざまな面で環境に負荷を与えています。個人や中小のクリーニング店では、そのことを認識していても、コスト高につながる環境配慮を実践することは困難です。弊社は「エグゼスパーク30」のような環境配慮製品の提供や、ハンガーなどのリサイクル、洗い方の提案、廃棄物処理のお手伝いなど、さまざまな面でお客さまをサポートし、業界全体の環境負荷低減に貢献したいと考えています。

 また、一部の産業クリーニングでは保健衛生の観点から洗濯基準が定められているため、低温での洗浄が難しい分野があります。ですが、それ以外の産業クリーニングにおいては低温洗浄が有効な分野がありますので、「プロスパーク」という産業クリーニング向けの超低温洗剤の提供を始めました。

 さらに、近年では鳥インフルエンザなどの脅威から業界では除菌、抗菌が重要なテーマとなっています。この問題の解決に向け、弊社では技術力のある企業と業務提携を行い、除菌効果に優れた洗剤の開発にも取り組んでいます。

 弊社は、時代とともに変化する「洗う」へのニーズをいち早く捉え、製品開発やサービス、サポートを含めトータルソリューションを提供することを通じて、環境負荷低減に貢献していきたいと考えています。

会社概要

社名
ラクナ油脂株式会社
所在地
東京都練馬区豊玉南1-1-4
資本金
9,000万円
事業内容
業務用洗剤・加工剤の製造・販売およびクリーニング関連資材等の取り扱い
TEL
03-3993-5311
URL
http://www.rakuna.co.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.94(2012年3月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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