環境ビジネス情報

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環境経営の現場から

防災問題は環境問題と位置づけ、かけがえのない人命と財産、環境を守り続ける防災分野のリーディングカンパニー ヤマトプロテック株式会社 代表取締役社長 乾 雅俊氏

御社の事業概要について、ご紹介をお願いいたします。

 1918年の創業以来94年間「かけがえのない人命(いのち)と財産を守りたい」との理念のもと、防災事業に取り組んできました。当初は化学泡消火器を事業の柱としていましたが、高度成長に伴う産業発展の中で幅広い分野で防災の必要性が高まり、より消火性能に優れ、誰もが容易に使える製品が求められるようになりました。当社では、こうしたニーズを先取りし、1963年に日本で初めて普通火災、油火災、電気火災すべてに効力を発揮する「ABC粉末消火器」を開発。リン酸アンモニウムを主成分としたこの消火器は"消火器の革命"といわれ、当社成長の原動力となりました。現在では、消火器をはじめ建物、プラント、船舶、駐車場などの消火設備、さらには火災報知設備、避難機具などの事業を手掛けています。

 当社の強みは、中央研究所をはじめとした業界屈指の研究開発力を誇ることと、製造から販売、施工、メンテナンス、リサイクルまですべての事業を展開できる自社一貫体制にあります。

環境問題に取り組まれた経緯について、お教え願えますでしょうか。

 かつて、この業界の仕事は、文字通り「火を消すこと」、それさえできればいいと考えられていました。そのため、消火後の環境汚染への配慮ができていませんでした。このような状況を憂慮した当社では、1999年に「防災問題は環境問題」というスローガンを掲げ「YP環境宣言」を発表。環境に配慮した消火器・消火設備の製品化やISO9001、ISO14001取得などに取り組んできました。さらに、産廃処理されていた不用消火器の薬剤をリサイクルする研究にもいち早く着手。研究の結果、使用済み消火器の薬剤に混入した異物と目的成分を分別する独自のX線回析分析技術を開発、粉末消火薬剤のリサイクル技術を初めて確立しました。2002年には、YPリサイクルセンターを稼働させ、不用消火器の回収から原料化、循環生産、出荷ができる環境を整備しました。現在では、薬剤を含めた消火器の重量比99%をリサイクルできるようになりました。

環境に配慮した消火器とは、どのような製品なのでしょうか。

 これまでは加圧式消火器と呼ばれるものが主流でした。これは内部に炭酸ガスを封入したボンベが組み込まれており、このボンベに穴をあけることで容器内を瞬間的に加圧して薬剤を噴出する仕組みでした。2009年に、この加圧式消火器による事故が発生しました。耐用年数をはるかに超え、容器が劣化していた消火器による破裂事故が起きたのです。人命(いのち)と財産を守るべき防災製品で、このような事故が起きてはならないと考えた当社では、2010年に「YP蓄圧重点化宣言」を掲げ、内部にボンベを持たず破裂リスクの少ない蓄圧式消火器への全面移行を進めることを決断。大阪府堺市の主力工場に蓄圧式消火器の生産ラインを整備しました。蓄圧式の製造には高度な生産技術が必要であるため約10億円もの投資が必要でしたが、内製率を従来の48%から82%へ向上させることによって、品質と耐久性を高めながら従来と同等の価格で製品を提供できる体制を整えました。こうした当社の活動と機を同じくして、消火器の規格と点検基準に関する法令が改正され、安全性に優れた蓄圧式消火器への移行が指導されるようになりました。しかし、国内にはまだ約4,000万本の加圧式消火器がストックされているといわれています。利用者の安全のため、これらをできるかぎり早く蓄圧式消火器に代替することが当社の使命と考えています。

蓄圧式消火器への移行に伴い、カーボンフットプリントを導入されたそうですね。

 加圧式消火器と比べると蓄圧式消火器のCO2排出量は、1本当たり約1.3キログラム小さいため、年間生産本数で換算しますと、原材料調達から流通、販売、使用、廃棄のライフサイクル全体で約3,000トンのCO2を削減することができます。このカーボンフットプリントの導入により、サプライチェーン全体でCO2排出量を「見える化」することが可能となり、排出量削減を効果的に行えるようになりました。

ほかにはどのような環境配慮型製品や設備があるのでしょうか。

 プラントなどで使用する泡消火設備用の点検用疑似液「エコブルー」という製品があります。石油プラントなどの危険物を扱う工場では、消火設備の定期点検時に泡消火薬剤を放出確認することが定められています。この点検時に放出される泡は、環境への影響が懸念されるため産業廃棄物として処理しなければならず、環境的にもコスト的にも大きな負担となっていました。エコブルーは、3%希釈時のBOD、COD値が排水基準以下となっており、そのまま放流しても環境への影響はほとんどありません。エコブルーを採用いただければ、プラントにおける消火設備点検時の環境汚染を大幅に抑制することができます。

 船舶用に開発された「マイクロフォグ」も環境への影響を配慮した消火設備です。一般的に、油火災は水では消火できないといわれていましたが、水を微粒子化して噴霧する当社の特許技術により、消火が可能になりました。これは微粒子化により水の表面積を増大させることで気化熱による冷却効果を高め、同時に発生する水蒸気による酸素供給の遮断効果で消火を行うという技術です。この技術は、水を使うので環境にも人体にも安全で、設置コストも安価であることが特徴です。さらに、このマイクロフォグ技術を応用し、通常の上水道の水圧で利用できるようにした製品が「マイクロフォグC」です。これはミストの放出により気化熱で外気を冷やすことを目的としたエコシステムです。昔ながらの"打ち水効果"を進化させたもので、ヒートアイランド現象の防止や熱中症の予防、冷房費用削減などの効果が期待され、さまざまな分野で利用されています。

 また、屋内駐車場などで威力を発揮する「CF(閉鎖型泡消火)システム」も、環境への負荷が少ない消火設備です。従来の消火設備は、わずかな火災が発生した場合でも区画全体を泡で覆ってしまうため、設備機器や環境への負荷が大きいことが問題でした。CFシステムは発火源を特定し、ピンポイントで消火を行えるので、薬剤や水資源を削減し、環境への負荷を最小限に抑えることが特徴です。

 ほかにも、従来は3%濃度が必要とされていた水成膜泡消火剤を2%で効果が出るよう改良することで、原液および水資源の削減、設備のコンパクト化などを実現しています。

環境問題に対する乾社長のご意見をお聞かせ願えますでしょうか。

 モノづくりにおける環境問題とは、ある意味で無駄をなくすことと同義ではないかと考えています。たとえば、生産ラインにおける重複作業や遅延は、そのままエネルギーの無駄遣いに直結します。作業員の動線も同様で、不要な動きは作業効率を低下させ、時間やエネルギー、労力も無駄にしてしまいます。これに対し、自然界には廃棄物はありません。エネルギーも物質も老廃物も、すべて循環して次のプロセスへつながっており無駄なものは一切ないのです。我々モノづくりに携わる企業は、こうした自然界のサイクルに学び、100のインプットをしたら100のアウトプットを出せるよう直行率を追求するべきではないかと考えています。

 これからも「かけがえのない人命(いのち)と財産を守りたい」という創業以来の理念を守るとともに、「かけがえのない環境を守る」ことにも注力していきたいと考えています。

会社概要

社名
ヤマトプロテック株式会社
所在地
東京都港区白金台5-17-2
資本金
9,900万円
事業内容
家庭用消火器からプラント用消火設備まで手掛ける総合防災メーカー
TEL
03-3446-7153
URL
http://www.yamatoprotec.co.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.95(2012年5月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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