環境ビジネス情報

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環境経営の現場から

ホタル舞い、ヤマユリ咲く、豊かな森を育み、「脱産廃」を掲げて改革に挑む、環境共生企業 石坂産業株式会社 代表取締役社長 石坂 典子氏

業界に先駆け全天候型独立総合プラントを建設したきっかけを教えて下さい。

 創業者の父は、当初解体業で事業を起こしましたが、いずれリサイクルの時代が来ると考え事業を転換し、1982年に本社を現在の場所へ移転しました。ところが、1998年ごろ、テレビ番組の報道をきっかけにダイオキシン騒動が広がり、産廃業者は苦境に立たされてしまいます。当時、この地区は60本の煙突が立つ産廃銀座と呼ばれており、大型焼却炉を持ち、ひときわ高い煙突を立てていた当社はいわれなき批判を受けました。住民や地域から出て行けと言われ、石坂産業反対ののろしが上がりました。結局、ダイオキシン問題は誤報でしたが、地域に迷惑をかけてまで営業を続ける必要はないと、焼却事業から撤退しました。

 しかし、焼却をやめても「産廃屋さん」「ごみ屋さん」のイメージは変わりません。当時、私は入社10年目の常務でしたが、家業から脱却して企業化を目指さなければダメだと父に言ったら、「生意気なことを言うなら、じゃあお前が社長をやってみろ」という話になり大役を任されたのです。そのとき掲げたのが「脱産廃」です。まず産廃業者のマイナスイメージを転換しなくてはいけない。そのために、プラントを全面リニューアルし、本社ビルを建て直すことを決めました。オールリニューアル全天候型プラントの建築には40億円もの費用が必要でしたが、生き残りをかけて投資に踏み切りました。

膨大な投資を回収するには、事業の拡大が必要になりますね。

 創業者からのバトンのプレゼントだと思っていました。当時の売り上げは25億円でしたが、33億円まで売り上げを拡大する事業計画を立てました。この高いハードルをクリアするために、他社にはない独自性を強く打ち出すことが必要でした。まず、取り組んだのは、収集運搬業務を撤廃し、受け入れ100%に特化すること。さらに、高性能な集じん機の設置、電動重機の導入、自然採光の取り入れなど、従業員が働きやすい環境を整える改革、そして人材教育に力を注ぎました。次に取り組んだのが、私たちの改革を多くの人に知ってもらうために見学通路を設けることでした。その効果は予想以上で、工場見学にいらした方が「こんなにしっかりした取り組みをしているのだから、もっと知ってもらった方がいい。多くの方に支援してもらうべきだ」とおっしゃってくださったのです。そうした声が大きくなり、地元の方々や取引先様など当社の活動を支援して下さる方々の輪が広がり、交流組織の「やまゆり倶楽部」が発足しました。現在、同組織には法人会員を含め2,600名の方が参加し、共に学ぶ共学(ともがく)という形で廃棄物のリサイクルや環境保全、地域コミュニケーションを深める活動などを行っています。

事業における御社の強みを教えていただけますか。

 焼却炉を撤去してしまったので当社は可燃物に弱く、その代わり土砂系混合廃棄物に強いことが特徴です。土砂系混合廃棄物とは、家を解体する際に発生する土とごみが混ざった廃棄物で、分別が非常に難しいんですね。これを処理できる中間処理業者は少ないので、これまで同業者さんは輸送費をかけて遠方の最終処分場まで運ぶしかありませんでした。そこで、当社には土砂系混合廃棄物を高度分別する技術があり、都心からのアクセスがいいことをアピールしました。すると、当社に持ち込めば運送距離を大幅に減らせるし、アクセスがよいので1日に2回も3回も持ち込めると評判になり、どんどん廃棄物の量が増えていきました。

 他社ができない土砂系混合廃棄物を処理できる、そこが当社の技術力の強さなんですね。運び込まれた土砂系混合廃棄物は、風力選別機やロータリーフィーダー、比重差選別装置などの機械設備に加え、従業員が手作業で選別します。手作業で精度高く選別した木材やコンクリートなどの原料は、社内のプラントで100%リサイクルできるので、相乗効果が上がります。当社の分別分級プラントは、売り上げの7割を稼ぎ出す主力事業となっています。

 また、鉄や非鉄類のリサイクルを行う有価物プラントも、当社の強みです。アルミ、ステンレス、鉄、真ちゅうなどを手作業で選別できる高度な技術者がいるので、精度の高い選別を実現できます。有価物プラントだけでも同業他社の1年分に相当する額を売り上げています。

 さらに、当社は建設発生残土を固化・造粒して耐久性に優れた「NEWエコ(リサイクル埋め戻し土)」をつくる独自技術も確立しています。このリサイクル材は、土壌汚染物質を含まない土床材や盛土材として優れた機能を持っており、土木建築の現場で広く活用されています。

 このような優れた分別分級技術とリサイクル技術の両方を持っていることが、当社の大きな強みです。

御社は、広大な緑地を整備した環境共生企業としても知られています。

 最初に整備したのは、5,000平方メートルの公園でした。当時、産廃は環境汚染源のようにいわれていたので、本当に土壌や水質、大気などに影響があるのか調査・実証しようというのが、最初の目的でした。ところが、公園をきれいに整備したところ、地元の方々が「よい公園ね」ってほめてくださったんです。あまりに好評だったので、「皆さまの土地も当社にお貸しいただければ同じように手入れしますよ」と地権者の方々にお話ししたところ「ぜひお願いしたい」ということで、次々と土地が広がりました。気づいたら工場の管理敷地が東京ドーム3.5個分まで拡大していました。そのうちの2割が工場で8割が緑地、ちょっと珍しい会社ですよね。

生物多様性に配慮した環境整備に取り組まれているそうですね。

 この「花木園」を整備するに当たり、ただ緑と花できれいに飾るのではなく、きちんと生物多様性に基づき、この地にある自然を復元しようと考えました。1年間かけて調査を行った結果、この森は昔、ヤマユリが群生する土地だったことがわかったんです。先にお話しした「やまゆり倶楽部」も、そこから名づけられたものです。私たちは、地域の方々と一緒にヤマユリを植栽するなど、この土地にもともと生育していた在来植物を取り戻し、豊かな里山を復元する活動に取り組んできました。その結果、JHEP※1という生物多様性認証制度により、国内最高ランクのAAAという評価をいただきました。かつては自然を破壊する会社といわれましたが、今では自然に愛される会社になりつつあります。自然を守る活動を続けていたら、逆に自然が私たち企業を守ってくれるようになったんですね。土地を愛するということは、土地に愛されることなんだと、この1、2年つくづく実感しています。

今後の展望を教えていただけますでしょうか。

 2013年3月1日、文部科学省と環境省が推進し地方自治体が認定するESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)のプログラムに認定されました。このESDの一環として、当社ではくぬぎの森を活かし、新たな環境教育の場を整備する予定です。具体的には「森の教室」「3Rの教室」「森のカフェ」、歴史と文化を再現する「三富今昔語りべ館」、地元産の作物を使った料理が食べられる「里の恵み処」を含む「寄り道の駅」などの施設を整備し、この森全体を「三富今昔村」というエコの総合アミューズメント施設にしたいと考えています。

 また、2013年10月に経済産業省のグループ単位による競争力のモデル事業によりISO22301を取得し、ISO6統合マネジメントシステム※2を実現しました。これによってさらなるコンプライアンスの向上や環境共生を推進していきたいと考えています。

 もっと夢みたいな話でいえば、いずれは工場を地下に埋めて稼働する時代が来ると思います。そうすれば、この広い土地を活かして、その上で高齢者の憩いの場や幼稚園をつくったり、観光地を整備したり、もっと地域と一体となった活動ができると思うのです。今後は行政とも連携しながら、今まで以上に地域ぐるみの活動を進めていきたい。そうして、より多くの人に見てもらうことが、夢のある会社づくりにつながると考えています。


(注釈)
※1 JHEP:財団法人日本生態系協会による生物多様性を評価する認証制度
※2 ISO6統合マネジメントシステム認証:ISO14001、ISO9001、ISO50001、OHSAS18001、ISMS27001、ISO22301

会社概要

社名
石坂産業株式会社
所在地
埼玉県入間郡三芳町上富緑1589-2
資本金
7,000万円
事業内容
産業廃棄物中間処理事業および再生砂、砕石、木材チップの再生品販売など
TEL
049-259-1177
URL
http://ishizaka-group.co.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.103(2013年12月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。



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