環境ビジネス情報

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環境経営の現場から

安全・安心な水供給を通じて世界の水問題の解決と持続可能な社会づくりに貢献したい 株式会社ウェルシィ 代表取締役社長 宮田 栄二氏

御社の「地下水膜ろ過システム」の特徴を教えていただけますか。

 福田氏「弊社の地下水膜ろ過システムは、安全・安心な水を担保するため、さまざまな仕組みを採用しています。まずは、100メートルほどの深井戸を掘削して地下水を汲み上げること。地下水自体は10メートル程度の掘削でも汲み上げられますが、地表からの汚水や生活用水などの影響を受けにくくするため、私どもでは安全を期して深井戸を掘削しています。安全・安心を支えるもう1つの特徴は、高度なろ過システムです。砂ろ過だけでも飲用に適した水質を実現することが可能ですが、私どもでは微細な細孔を有する膜を用いるろ過システムを併用して安全性を高めています。このシステムによって、食中毒の原因となる病原性大腸菌O-157を含む細菌類・原虫類を除去することができます。近年、上水道で塩素に耐性を持つクリプトスポリジウムという病原性原虫の存在が問題視されていますが、弊社の膜ろ過システムを使えば、この原虫も除去できます。また、二元給水体制も安全・安心を支える重要なシステムです。24時間365日、水質を監視する安全装置を設置しており、異常が発生した場合、自動的にシステムを停止して公共の水道水に切り替えます。さらに保守サービス担当者が全国各地に配置されており、異常を検知するとすぐ現場へ駆けつけて処置します。それに加えて、厚生労働省登録の水質検査機関であり、弊社の検査部門である日本エコロジィ研究所が定期的に水質検査を実施し、水道法で定められた水質基準値を満たしているか検査しています」

国内の導入件数が1,000件を超えたそうですね。

 福田氏「弊社の地下水膜ろ過システムは、北海道から九州まで全国に導入されており、病院・介護施設、スーパー、百貨店、ホテル、工場、スポーツクラブなど、多業種でご利用いただいています。特に東日本大震災以降、災害時における給水ライフラインの確保というBCP(事業継続性)の観点での引き合いが増えております」

被災地の病院では地下水膜ろ過システムが重要な役割を果たしたと伺っています。

 福田氏「茨城県の国立病院機構水戸医療センターでは、周辺地域で2週間にわたり上水道の供給が断たれる中、他病院の入院患者や救急患者を受け入れました。病院には大量の水が必要で、特に透析患者は水が使えなければ命に関わります。同病院では、地下水膜ろ過システムを導入していたため、普段通り医療活動を続けることができ、多くの尊い命を救うことができました。『備えあれば憂いなし』これが震災の大切な教訓になりました」

震災以降、給水ライフラインの確保は社会的な課題になりました。

 福田氏「以前、地下水膜ろ過システムの導入メリットは、主に経済性が注目されていました。つまり、どれだけ上水道料金を削減できるかに関心が集まっていたのです。しかし、東日本大震災以降は災害対策という視点で、地下水膜ろ過システムを導入する企業や団体が急増しました。典型的な例としては、自治体が挙げられます。滋賀県近江八幡市、東京都世田谷区をはじめとする自治体がすでに地下水膜ろ過システムを導入し、他にも多くの自治体が導入を検討しています。その目的は、自治体の責務である住民の命と財産を守ることです。日常生活に欠かせない大規模な上水道システムと、災害に強い分散型の地下水膜ろ過システムを組み合わせることが、住民の生活と命を守るために欠かせないという認識が社会全体に広まってきたのです。こうした社会の要請を受け、私どもでは2013年5月に事業継続に関する国際規格『ISO22301』を地下水飲料化事業者として初めて取得し、より社会に貢献できる企業になるべく努力を続けています」

世界では安全な水にアクセスできない人が7億8,000万人もおり、この社会的課題の解決に御社のシステムが重要な役割を果たせるのではないでしょうか。

 等々力氏「2012年に海外事業部を発足させ、世界の水問題に対してどのような役割を果たせるのか、各地で調査を進めパイロットプロジェクトを推進してきました。たとえば、ケニア共和国ではUNDP(国連開発計画)と共同で『アフリカにおけるインクルーシブビジネス・パイロットプロジェクト』に参画し、現地に浄水装置を設置しました。東部州マチャコス県にある当該地区は、無電化地域でポンプによる揚水も困難だったため、現地の地形を利用し電力を使わない緩速ろ過方式の浄水システムを採用しました。このプロジェクトのポイントは、浄水システムの設置だけにとどまらず、貧困問題の解決にも貢献することにあります。つまり、浄化した水と、節水型の点滴灌漑システムを利用して栽培した換金作物を販売することにより、住民の収入を増やして村を豊かにする。これを実現するために最も重要なことは、プロジェクトが終了して我々が去った後も、現地の人たちだけで浄水システムをメンテナンスし、農場を維持できる仕組みを構築することです。そのため、現地の方に浄水システムのメンテナンス方法や、野菜を栽培するための技術指導も行っています。水から始まるプロジェクトですが、水と農業を融合させ、持続可能な社会づくりに貢献することを目指しています」

海外では、BOP(Base Of the Pyramid)ビジネスをターゲットに展開するのですか。

 等々力氏「必ずしもそうではありません。たとえば、ベトナムではインフラの整備された地域で分散型給水システムの実証プロジェクトを進めています。ここでは、給水システムとクラウド型ICT(情報通信技術)を組み合わせ、運転状況や水質を遠隔監視する仕組みを導入しています。給水システムには、センサーやモニターが設置されており、現地の作業者は日本のメンテナンスセンターとWeb会議のような仕組みで対話したり、指示を受けることができます。このように、海外展開は我々が単独で給水システムを提供するのではなく、ICT事業者や研究機関、地元の行政やNPOらともパートナーを組み、水を中心とした社会ソリューションの提供を目指しています」

地下水や河川の水は、地域により組成や含有物が異なるため水処理の技術力が問われそうですね。

 等々力氏「グローバル展開における弊社の大きな強みは、地域の水質に合わせたシステムを提供できることです。その基盤は、これまで1,000件以上の実績を通じて蓄積したノウハウとデータです。水脈はどこにあるのか、水質を高めるにはどんな処理方式がいいのか、揚水限度はどのくらいかなど、環境要件に合わせた最適なシステムを導入する技術力が強みです。特に海外では、雨季と乾季で水質ががらりと変わることもあるので、いかに現地の水質に合わせたシステムを構築できるかが成功の要諦です。弊社は水質調査やシステム運用、ICT、保守などでも高い技術を持っているので、これらを組み合わせることが海外での競争力になると考えています」

三菱レイヨン株式会社の連結子会社となったことによる今後の事業への影響について教えてください。

 宮田氏「2013年12月に三菱レイヨンの連結子会社となり、弊社は三菱ケミカルホールディングス(MCHC)のグループ会社となりました。MCHCグループは、家庭用浄水器から浄水・用水・下排水処理、排水リサイクル、中空糸膜やイオン交換樹脂などの水処理部材提供まで幅広く手掛けており、今回のグループ化により川上から川下まで一貫して事業を展開できる体制が整いました。また、中国、韓国、ASEAN、中東などの成長市場にも足場があるので、弊社のグローバル展開もさらに加速することは間違いありません。お互いの強みを活かしてシナジーを発揮し、社会的課題である水問題の解決に貢献することが、このグループ化の重要な目的の1つなのです」

 福田氏「地球環境向上という大きなテーマで事業を展開するには、1社だけでは目標を達成できません。MCHCグループの力を借りることで、より大きな目標に向けた一歩が踏み出せたと思っています。私は常々、水は地球の血液だと言っています。水は地球という体に栄養を運び、生命を支えるために循環しています。しかし、都市化が進んだ結果、地表をコンクリートが覆い、森が伐採され、水という血液の循環が止まる事態が起きています。人間でいえば病気を抱えている状態です。昨今、世界で起きている大規模な自然災害は、地球の水循環障害と関係があると思うのです。水は、人間にとっても地球にとっても命を支える大切な資源です。その水を循環させる仕事を通じて、これからも社会に貢献していきたいと考えています」

会社概要

社名
株式会社ウェルシィ
所在地
東京都千代田区麹町4‐8‐1 麹町クリスタルシティ東館11階
資本金
3億7,350万円
事業内容
地下水膜ろ過システム事業および、これに関連する業務
TEL
03-3262-2431(代)
URL
http://www.wellthy.co.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.104(2014年3月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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