環境ビジネス情報

印刷用ページを別ウィンドウで開きます



環境経営の現場から

品質力とグローバル力を軸に環境から企業価値を創造する サンデン株式会社 環境推進本部 主席 斉藤 好弘氏

「環境から企業価値を創造する」という経営方針を実践するために、
どのような取り組みをされているのですか。

 弊社に環境推進本部ができたのは1997年のことです。このとき経営陣が強く意識したのは、ごみ拾いや植林といったボランティア的活動ではなく、あくまで技術開発で製品の環境品質を高め、それをお客さまに使っていただき、地球環境に貢献することでした。我々環境推進本部のミッションは、その意識を社員に教え込むことにあります。

 今は技術開発に社会貢献を加え、これを両輪として活動を展開しています。技術開発は「製品開発・モノづくり」と「環境活動レベル向上」、社会貢献は「あらゆるムダの徹底排除」と「情報発信・外部連携」を活動の柱として「環境と産業の共存」を目指しています。

御社が実践している「製品環境指標」について教えていただけますか。

 2005年に、社内基準を設けてエコ製品を認定する「エコエクセレント2010」という活動を始めました。ところが、目標の2010年になる前に、ほぼすべての製品がエコ製品に認定されてしまったので、さらに上をいく基準として策定したのが「製品環境指標」です。これは「省エネ」「小型・軽量」「効率」の3要素について、対象機種との比較値を指数化したもので、2013年度は「0.9」を目標にしました。具体的には、DR(デザインレビュー)という製品開発の仕組みに指標を取り込み、その数値をクリアする技術開発要素を抽出し、工程ごとに達成度をチェックしています。この「0.9」という数値はあくまで最低目標で、「0.6」とか「0.8」といったように、より高い品質を実現している製品も少なくありません。

「製品環境指標」を取り入れて品質が高まった例を教えていただけますか。

 コンビニエンスストアやスーパーマーケットの店頭に置かれる「内蔵多段オープンケース」は、その好例といえます。これはオープンタイプの温冷ショーケースで、扉が付いていないため省エネ化がとても難しい製品です。しかし、庫内の空気と外気を遮断するエアカーテンの気流を工夫したり、CO2コンプレッサーやインバーター制御、LED照明などを採用し、他社製品を凌駕する環境性能を実現しました。

 「製品環境指標」が、セールスにどの程度影響するのか、実証できていませんが、1つ面白い例があります。2013年に開発した自動販売機は「製品環境指標」による評価が低く、市場でも販売台数が伸びませんでした。ところが、2014年にしっかり評価を高めた製品を開発したところ、実際に契約数が伸びたのです。市場環境が違うので一概に比較はできませんが、環境性能がセールスに貢献した例といえるのではないでしょうか。

 ただ、誤解しないでいただきたいのは、「製品環境指標」を導入した結果、こうした製品を開発できたのではないということです。弊社では、日頃から「省エネ」「小型・軽量」「効率」をテーマに掲げ、技術者自身が環境を強く意識して開発に取り組んでいます。「製品環境指標」は、数値で“見える化”して社員の意識を高め、お客さまに訴求する上で有効だと考えて実践しているものであり、これだけで環境性能を高められるわけではありません。

社員の環境マインドを育成するための取り組みを教えて下さい。

 先ほど、技術開発と社会貢献が弊社の環境活動の両輪だと説明しましたが、この両輪を推進し、支えるのが「サンデン環境マインド」を持つ社員の存在です。環境マインドを高めるため、いくつもの施策を実施していますが、特に強調したいのは「eco検定」の推奨です。2008年に始めたころは管理職のみ数十名が受験しただけでしたが、年々、受験者が増え続け、昨年は140名、関連会社を含めると200名が受験しており、今では全社員の45%、1,250名が「eco検定合格者(エコピープル)」になりました。この活動の誇るべき点は、会社が補助を出していないにもかかわらず、社員が自主的に参考書を買って勉強し、自費で受験していることです。

 ほかにも、6月の環境月間に“もう一歩先”の取り組みを募集する「プラスワンエコ活動」や自発的な環境活動を促す「環境活動レベル評価」など、さまざまな取り組みを行っています。

MFCA(マテリアルフローコスト会計)にも取り組まれているそうですね。

 ISO14001を1997年に取得して以降、廃棄物を分別し有償化していく活動に取り組みました。これは、それなりに効果を上げましたが、7、8年で廃棄物が減らなくなりました。そのとき、分別は発生したゴミを最後に分ける行為であり、発生源を減らさない限り抜本的対策にならないと気付いたのです。そこで、発生源のロスを金額で“見える化”するMFCAが有効だと考え、2005年に導入しました。

MFCA導入で具体的な効果は上がりましたか。

 弊社では2000年から「あらゆるムダの徹底排除」に取り組んでいたので、MFCAを入れただけでコストダウンができたわけではありませんが、一部の自動販売機の製造プロセスでは板金部品の薄肉化により年間1,700万円、治具の改善で500万円のコストダウン効果を上げた例もあります。ほかにも定性的効果は、いろいろな現場で表れています。たとえば、アルミの塊を溶解して金型に圧入して成形加工するダイカスト工程では、今まで不良品も廃棄物もゼロだと報告されていました。これは不良品を溶かして再利用することで、見かけ上廃棄物ゼロにしていただけでした。マテリアルフローを見れば、廃棄物はなくても余分な溶解工程があり、そこでエネルギーを無駄遣いしていることが見えてきます。こうして無駄が見えてくれば、それを改善する施策につなげられると考えています。

「サンデンフォレスト・赤城事業所」のご紹介をお願いいたします。

 1996年にフランスで工場を建設したとき、高速道路から見えないように森で囲わなくてはいけない、ビオトープをつくらなくてはいけない、土壌汚染が起きないよう防水壁を設置しなくてはいけない、工場排水は一切出してはいけないなど、政府や地域住民から厳しいルールを課せられました。フランス人の高い環境意識に感銘を受けた弊社の会長は、帰国後に「環境と産業の矛盾なき共存」というコンセプトを立て、それに基づいて「サンデンフォレスト・赤城事業所」を建設しました。

 赤城事業所の造成前に、作家でナチュラリストのC・W・ニコルさんを招き、現地を見ていただいたそうです。ニコルさんは、荒廃した森を再生する必要があるとアドバイスし、「近自然工法」の第一人者である西日本科学技術研究所の福留脩文先生を紹介してくださいました。福留先生に監修いただき、自然本来の回復力で生態系を復元できるよう、人間の手でその最初の段階をつくり上げる「近自然工法」を採用して、2002年に開設されたのが赤城事業所です。敷地面積64ヘクタールの約半分が生産工場で、残りの半分は生物多様性に配慮した森として再生しました。調整池をビオトープ化し、石積み階段、散策道などを造成。伐採した2万本の代わりに現地の潜在植生に合わせた樹木を選定して3万本植林しました。

 現在、赤城事業所は、豊かな自然環境をフィールドとした小学生の環境学習をはじめ、NPO、取引先など年間1万5,000人の方が訪れるなど、さまざまな形で利用されています。

「サンデンフォレスト・赤城事業所」は、
2012年に「グッドデザイン賞」を受賞されましたね。

 「産業領域のための空間・建築・施設」というカテゴリーで「グッドデザイン賞」をいただきました。限りなく自然に近い方法で整備したこと、地域にとっての散策の場や環境教育の場としてランドスケープを超えた活動をしていること、さらに、開設から10年間かけて取り戻した美しい自然環境と、開発以前より多様な生物種が確認されたことなどが評価されたようです。

赤城事業所の環境活動がCSRを超えた企業価値につながった例はありますか。

 大手企業のトップやVIPの方が見学にいらっしゃると、「ここを建てた効果はなんですか」と聞かれることが多いのですが、そのときには「今、皆さまがここへ来ていただけていること」とお答えしています。普通の工場だったら、VIPの方々が来てくださることはありませんので、それだけでも大きな効果だと思っています。また、海外のお客さまがいらしたときに製品と環境について説明し、サンデンフォレストを見ていただくと、皆さまが感動してくださいます。会社のポリシーがよく理解できたと言われ、契約がスムーズにいくことも少なくありません。

今後の環境活動に関する方針を教えていただけますか。

 技術活動と社会貢献を両輪として人材のレベルを上げながら、徹底的に環境活動を追求していくこと、そして、その活動を広く外に発信していくことが、これからの目標です。

会社概要

社名
サンデン株式会社
所在地
群馬県伊勢崎市寿町20
資本金
110億3,700万円
事業内容
カーエアコンシステム、冷凍・冷蔵ショーケース、自動販売機、住環境機器の製造・販売
TEL
0270-24-1211(代)
URL
http://www.sanden.co.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.105(2014年5月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


環境経営の現場からトップへ

印刷用ページを別ウィンドウで開きます

このページの先頭へ戻る