環境ビジネス情報

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環境経営の現場から

独創的な精密ポンプ技術を活かして環境負荷の軽減に貢献 株式会社タクミナ 代表取締役社長 山田 信彦氏

御社の事業概要について教えていただけますか。

 弊社が創業した1956年当時、兵庫県朝来郡生野町(現朝来市生野町)では、上水道が普及しておらず、飲み水を原因とする伝染病が流行していました。生野町の出身であった創業者の山田利雄は、地域の健康で安全な暮らしに貢献したいと考え、自宅を工場にして吸入式塩素滅菌器を開発し、事業を始めました。その後、1965年に日本初のモータ駆動式ダイヤフラムポンプを開発しました。これが現在の中核であるポンプ事業の原点です。当時、モータ駆動式ダイヤフラムポンプは非常に高価な輸入品しかなく、弊社が開発したダイヤフラムポンプは安価で品質が高いと評判になり、広く普及しました。さらに、高度成長期に公害が社会問題化したことを受けて、産業排水を処理するpH中和処理装置や計測機器、撹拌機、脱水機などを開発し、公害問題の解決に貢献し、業容を拡大しました。

 現在では、水処理にとどまらず、電気・電子、化学、エネルギー、食品・医療、バイオなど、幅広い分野にポンプ技術を活かした製品やシステムを提供しています。

業界における競争優位のポイントを教えていただけますか。

 弊社の最大の強みは、独創的なアイデアを形にする技術力です。先ほどお話したモータ駆動式ダイヤフラムポンプをはじめ、自動流量補正付き定量ポンプ、脈動のないダイヤフラムポンプ「スムーズフローポンプ」など、これまでに数多くの世界初・国内初・業界初の製品を世に送り出してきました。このような革新的な製品を数多く世に送り出すことができたのは、創業時から受け継がれてきた“モノづくり”の社風があったからにほかなりません。弊社は創業当初から研究開発に力を入れており、1997年には総合研究開発センターを設立し、各種分析装置や流体解析・応力解析のシミュレーションシステムなど先進の設備を揃え、常に独創的な技術の開発に取り組んでいます。

 “モノづくり”におけるもう1つの特徴は、プロダクトデザインへのこだわりです。「機能を突き詰めればデザインも洗練される」と考え、プロダクトデザインにも妥協を許しません。その結果、過去に8度も「グッドデザイン賞」を受賞するなど、デザイン面でも他社との差別化を図れていると思っています。

環境に配慮した製品のご紹介をお願いいたします。

 弊社では、新しいモデルを開発する際には、前モデルより部品点数を削減し、省エネ性能を高め、リサイクル化を推進するなど、常に環境に配慮した改良を行ってきました。特に環境面で高い性能を発揮する製品が「スムーズフローポンプ」です。ポンプには、渦巻きポンプ、ギアポンプなど用途に合わせたさまざまな形式がありますが、「スムーズフローポンプ」は、ダイヤフラムポンプでありながら脈動なく正確に送液する画期的な製品です。ダイヤフラムポンプは、耐食性に優れており、さまざまな薬液を定量で送れる上、液漏れの可能性が低いため広く普及していました。しかし、従来のものは、心臓が脈を打つのと同様に脈動があり、脈動時の振動が配管や設備にダメージを与えるため、配管を太くしたり、脈動をなくすための機器が必要になるといった問題がありました。これに対し「スムーズフローポンプ」は、脈動のない連続一定流を実現し、スムーズに流体を送ることができます。脈動による振動が発生しないため細い配管を使っても問題が起きません。しかも、回転式のポンプのように流体をかき回さないため、シア(剪断)・摩擦・加圧・温度上昇などで液質が変化する心配がありません。環境面では、他方式のポンプに比べて少ない電力で駆動するのでエネルギー消費量を削減できること、完全密封構造なので薬品の液漏れを防げること、配管や設備に振動および圧力を与えないためプラント全体の長寿命化に貢献することなどの効果があります。

 環境に配慮した製品として、もう1つ紹介したいのがインライン式のpH中和処理装置です。従来のpH中和処理装置は、中和槽に排水をためて薬品を添加・撹拌する仕組みが一般的でした。この方式で大容量の排水処理を行うには大型中和槽が必要となり、コストがかかることや、広い敷地が必要になるといった課題がありました。また、大量の雨が降ると未処理の水があふれる可能性があり、環境面の影響が心配されていました。これに対し、弊社の管内連続処理方式のpH中和処理装置は、配管内で中和剤を撹拌・混合することで、中和槽を設けることなく、大量の排水を瞬時にpH中和処理することができます。この装置は、コンパクトなシステムで大量の水を処理できるため、製鉄所での排水のpH中和や雨水の再生利用にも使われています。

御社の装置の導入が環境負荷を軽減する事例を教えていただけますか。

 たとえば、浄水場や下水処理場で「スムーズフローポンプ」を導入すれば、処理水量が大きく変化した場合でも、ポンプ1台で幅広い流量に対応できます。また、ポンプに脈動がないため正確な流量の把握が可能となり、液漏れや注入不良などの異常を早期に察知・対応することもできます。環境負荷の低減という意味では、弊社の従来型装置から「スムーズフローポンプ」に置き換えることで、30%以上の消費電力削減効果が期待できます(タクミナ従来製品との社内比較数値)。

 船舶を安定させるために使われるバラスト水の処理も環境負荷の低減につながる事例です。船舶は、航海の安定を図るため出港地で海水を船内に取り込み、貨物を積み込む寄港地で海水を排出するバラスト水を利用しています。バラスト水は、海水とともに出港地で取り込んだ生物を、移動先の寄港地で放出してしまうため生態系への影響が懸念されていました。これを受けて国際海事機関(IMO)でバラスト水に関する国際条約が採択され、2017年からバラスト水の処理装置設置が義務化される予定です。「スムーズフローポンプ」を用いた殺菌処理を行うことで、出港地で取り込んだ微生物を殺菌し、寄港地の生態系保全に貢献することができます。

環境分野での新しい技術がありましたら、教えていただけますか。

 「超臨界二酸化炭素供給装置」の開発を進めています。超臨界(流体)とは、液体と気体の両方の性質を有する物質で、液体の密度と気体の自由度を併せ持つことから、さまざまな用途での利用が検討されています。超臨界二酸化炭素とは、二酸化炭素を媒体として生成した超臨界流体のことです。弊社では、「スムーズフローポンプ」を活用することで超臨界二酸化炭素を発生させるシステムを開発しました。用途として想定しているのは、自動車や建築資材に使われる樹脂部品の軽量化・高強度化です。これまでは発泡剤を使って樹脂内部に気泡を生成して軽量化していましたが、弊社の技術を使えば、発泡剤を一切使うことなく、超臨界二酸化炭素で発泡構造をつくり、軽量化・高強度化を図ることができるので、環境負荷を軽減できます。

製品以外の環境に配慮した取り組みを教えていただけますか。

 2011年に建設した新工場は、太陽光発電パネルの設置や排熱利用、節電、雨水の再生利用、廃棄物削減、徹底した化学物質管理など、あらゆるプロセスで環境負荷の低減を目指したエコファクトリーです。ほかにも、地域社会での環境ボランティアや互いに高め合うことを目指す環境共育など、全社員一丸となって環境負荷を低減するための活動に取り組んでいます。

今後の事業展望を教えていただけますか。

 今後も“モノづくり”に注力して、これまで以上に環境負荷の少ない製品を開発し、持続可能な社会づくりに貢献していきます。また、今後は市場のグローバル化を受けて、海外での事業展開拡大が予想されます。特に、新興国では安全な水にアクセスできない人々や、工場排水による河川の汚染が問題となっておりますので、こうした環境問題の解決にも弊社の技術で貢献していきたいと考えております。

会社概要

社名
株式会社タクミナ
所在地
大阪府大阪市中央区淡路町2-2-14 北浜グランドビル10階
資本金
8億9,299万円(2013年3月現在)
事業内容
精密ポンプおよび流体制御機器の製造・販売
TEL
06-6208-3971
URL
http://www.tacmina.co.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.106(2014年7月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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