環境ビジネス情報

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環境経営の現場から

世界各地で植樹により自然を回復する「三五の森」づくりを進め、環境と共生する製造業を目指す 株式会社三五 取締役社長 恒川 幸三氏

御社の事業概要について教えていただけますか。

 弊社の始まりは、1928年にプレス・鍛造技術をもって開業した恒川鉄工所にあります。当初は手押しポンプの座金を製造していましたが、1934年に豊田自動織機製作所自動車部(トヨタ自動車の前身)との取引を通じて、自動車部品の製造に進出、1950年には社名を三五と改めました。その後、日本にモータリゼーションの波が押し寄せる中、1954年に現在も事業の中核となっている排気系部品の製造を開始。その後、排気システム専門メーカーとして技術を磨き、国内外の自動車メーカーから「承認図メーカー」の評価をいただき、現在ではプレス・溶接技術と鉄鋼二次加工技術を併せ持った国内唯一の加工メーカーとなっています。

※製品の設計を委託されて製造を行うサプライヤー

市場における競争優位性についてご紹介いただけますか。

 第一の特徴は、部品の素材から機能部品、部品を接合する継手などの固定用部品に至るまで徹底した一貫生産を行っていることです。これが高品質・低コストの安定した製品供給という弊社の強みにつながっています。第二の特徴は、広範な金属加工技術を有していることです。昨今、排気システムの軽量化ニーズの高まりから、中空構造や部位ごとに厚みを変えるなどの特殊加工が求められており、弊社はこれに応えるため新技術の開発を進めてきました。パイプ内に注入した液体に圧力をかけて加工する「高圧ハイドロフォーミング加工」や、常温で金属を圧縮成形する「冷間鍛造」、固定した材料の周りに成形ロールを回転させて複雑な形状の成形加工を実現する「偏芯/傾斜スピニング加工」など、革新的な技術を次々に開発・導入してきました。このような豊富な技術を持つことから、弊社は業界で「金属加工技術のデパート」と呼ばれることもあります。

環境への取り組みを推進されたのはいつごろですか。

 環境問題を意識するきっかけとなったのは、1970年に米国で成立した「マスキー法(正式名称:大気浄化法改正案)」でした。この法律によって自動車の排気ガスに含まれる有害物質の量を10分の1程度まで低減しなければならなくなったのです。この規制をクリアするために研究開発に注力し、触媒の効果を高める二重管構造など新たな技術を開発することに成功しました。そのころから社内全体で環境問題に対する意識が向上し、2000年にはISO14000(現在はISO14001)認証を取得するなど、環境に関わる積極的な取り組みを進めてきました。

その歩みの中で"環境づくり"を柱とする基本理念が生まれたのですね。

 弊社の基本理念は、「ひとづくり」「ものづくり」「環境づくり」の調和を通じて、すべての国や地域の発展に貢献し、豊かで住みよい社会の繁栄に努めることにあります。「ひと」というのは、一人ひとりが一生懸命に考え、努力し、手を動かし、汗をかく、その過程を通じて鍛えられます。また、我々がつくり出す「もの」は、常に環境への配慮を忘れません。そして、「環境」を保護・回復する活動は、社会に貢献するだけではなく、取り組みを行う人自身の幸せにもつながると信じています。この「ひとづくり」「ものづくり」「環境づくり」は、すべて同じ大地に根ざした1本の大きな木の幹になるものだと考えています。

御社の環境活動の象徴となっている「ECO35」のご紹介をお願いします。

 2008年、創業80周年事業の一環として整備したのが「ECO35(エコサンゴ)」です。ここには世界初のマフラーミュージアムと、研究開発拠点、研修所という3つの施設と、弊社の理念の1つ「環境づくり」のシンボルとなる「ECO35の森」があります。ここに森をつくろうと考えたきっかけは、私があるテレビ番組を見たことでした。番組は、大分の製鉄所の周りに森をつくるという内容で、その指導をされていたのが横浜国立大学の宮脇昭先生でした。番組の中で「木が枯れたら高炉の火を止めてください」と真剣に話す宮脇先生の姿に、私は強い感銘を覚えました。製鉄所にとって高炉の火を止めることは、自動車部品メーカーでいうとプレスや溶接機を止めることに値します。経済活動よりも地域と市民を守ることを優先する宮脇先生に感銘し、ぜひ森づくりの指導をお願いしたいと考えたのです。

「ECO35の森」では、熱田神宮の植生を調査して植樹されたそうですね。

 宮脇先生は、木を植えることは人を育てることと同じであり、厳しい環境になっても、理念を持ち、ぶれないものが本物だと提唱しています。本来、その土地に根づいていた自然というのは、厳しい環境を乗り越え、ぶれずに存在し続けたものであり、それを活かさなくては本物の環境づくりとはいえないのです。我々は、宮脇先生の指導を受けて、名古屋の自然植生が残る熱田神宮の植生状況を徹底的に調査して、土地本来の樹種である常緑広葉樹のシイ・タブ・カシを中心に62種類、1万8,000本の苗木を植樹しました。この森づくりにあたっては植樹祭を開催し、社員およびその家族、地域の皆さま、近隣小学校の子どもたちと一緒に進めてきました。

森づくりは、御社にどのような効果をもたらしたのでしょうか。

 自分の手で植えた苗木が成長し、やがて豊かな自然が形成され、生物が増えていく様子を間近に体験することは、社員の大きな喜びにつながりました。植樹祭では、社員だけではなく家族や地域の方々も参加して一緒に汗を流すのですが、その交流が大変よい効果を生んでいます。一昔前まで、多くの企業が運動会や夏祭りを開いて、社員の交流や地域とのつながりをつくっていた時代がありましたよね。弊社にとって植樹祭は、そうしたイベントが形を変えて復活したものだと思っています。おもしろいもので植樹祭をきっかけに、どこの工場でも社員同士や地域社会とのふれあいが増え、今では「ECO35」で社員がコンサートを開催したり、地域の学童と一緒に田んぼづくりをしたり、ビオトープをつくってホタルを育てたり、さまざまな活動が行われるようになりました。

海外でも「三五の森」づくりを進めていらっしゃいますね。

 1987年に米国で合弁会社を設立したのを機に、北米、アジア、欧州まで拠点を展開してきましたが、物理的に離れていることもあり、会社としての一体感を育むことは難しかったのです。一方、日本国内では「三五の森」を各地に広げることでよい効果が生まれたので、これを海外にも広げてみようと思ったわけです。コンセプトは日本と同じ、地域の植生を調査してその土地に合った木を各地で植えています。2011年のトルコに始まり、今では中国、アメリカ、タイにも広がっています。いずれの拠点でも現地の社員が率先して汗を流し、日本からも多くの社員が足を運ぶようになり、社員の一体感が芽生えてきたと感じています。現在、日本10カ所、海外7カ所で、計15万631本の木を植えています。

ドングリの木を育てる復興支援活動もされていますね。

 東日本大震災が起きた年、東北のあるお寺を訪ねました。そのお寺で「我々にお手伝いできることはありませんか」と尋ねると、ドングリを育ててほしいとお願いされました。深く根を張るドングリの木を沿岸部に植樹して防潮林にしたいのだが、苗木を育てる人手が足りないというのです。そのお話を受けて、今、弊社では国内8工場でドングリの苗木を育てています。ポイントは、東北産のドングリを育てて東北に戻し、地元の植生に合った森にすることです。2013年には、自分たちで育てた苗木を東北の被災地で植える活動も始まり、地元の方々と交流しながら森づくりを進めています。

今後の展望を教えていただけますか。

 これからは電気自動車や燃料電池車の時代が来ると予想されており、いずれ自動車から排気システムがなくなる可能性があります。数年でどうこうという話ではありませんが、将来に向けて今から次世代の「ものづくり」に取り組まなければなりません。弊社ではすでに、これまで蓄積してきた開発ノウハウや金属加工技術を活かして次世代の「ものづくり」を始めています。たとえば、現在研究開発中のヒートコレクタは、今まで利用されなかった排気熱を回収して、熱電素子に温度差を与えて発電する次世代技術です。このような技術は、自動車だけではなくエネルギー産業や住宅など幅広い分野で活かせるはずだと考えています。今後、これまで培ってきた技術をさらに発展させて革新的な製品を開発し、自動車産業以外の分野でも、社会や環境に貢献していきたいと考えています。

会社概要

社名
株式会社三五
所在地
愛知県みよし市福田町宮下1-1
資本金
6億800万円
事業内容
自動車部品、鉄鋼製品等の製造・販売
TEL
0561-34-0035(代表)
URL
http://www.sango.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.107(2014年10月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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