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環境経営の現場から

日本の風土に根差した木質バイオマス発電を確立 再生可能エネルギー分野のリーディングカンパニー 株式会社ファーストエスコ 代表取締役社長 島ア 知格 氏

御社の沿革について教えていただけますか。

 設立は1997年、企業の省エネを支援するコンサルティング事業からスタートし、徐々に省エネ機器の販売や施工を手掛けるようになりました。売上が大きく伸びたのは、5年目にオンサイト発電事業を展開するようになってからです。これはお客さまの工場に自家発電設備を納めさせていただき、その代金を複数年で支払っていただくビジネスモデルです。この事業が成功して売上高は一気に40億円規模へ拡大しました。その後、2002年の「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)」成立を機に木質バイオマス発電事業へ参入しました。

 いくつかの事業計画を国の助成制度に申請したところ、3基の木質バイオマス発電事業が採択されました。しかし、採択はされたものの、年間売上高40億円の弊社に、1基当たり約50億円かかる発電所3基分の投資を行う余力はありませんでした。そこで急遽IPOに向けて準備を整え、2005年3月に東証マザーズへ上場し資金を調達しました。この資金を使い、2006年1月に岩国、10月に白河、11月に日田で木質バイオマス発電所を稼働させました。

稼働当初はご苦労されたと伺っています。

 設備は壊れるし、燃料の収集もうまくいかない。さらに、当初の想定より燃料価格が上がってしまうミゼラブルな状況になり、一時は発電事業からの撤退まで検討しました。しかし、幸運にも1号機の岩国発電所を譲渡することができ、何とか事業を継続することができました。その後も厳しい経営状態が続きましたが、2011年3月11日を機に潮目が変わりました。原発事故を発端として電源の改革を求める議論が巻き起こり、当時の菅直人首相が「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」、いわゆるFITを成立させたのです。

 FITの施行により、2013年以降、白河と日田の発電所は悲願の黒字化を果たし、さらに、今度は大分県豊後大野市に新たな木質バイオマス発電所を建設するまでに業績を拡大することができました。

燃料収集や設備面の課題は、どのようにして解決されたのですか。

 シンプルに言えば「自分たちでやった」、それが答えです。この仕事の要点は、よい燃料を安く必要なときに必要なだけ集めることにあります。では、なぜ最初にそれができなかったのか、それは燃料調達を外部に依存したからです。当時は、木質チップ燃料の出元といえば建設廃材でした。建設廃材は安定供給されるものではないので、燃料としては非常に厄介です。我々は、燃料が手に入らなければ事業が成り立ちませんから、とにかく業者に高い値段を払ってでも調達してもらうしかありませんでした。そんなことを繰り返すうちに、気が付くと調達額が当初の数倍になっていました。これでは利益が出るはずはありません。このままでは事業を継続できないという状況に追い詰められ、覚悟を決めて業者に直談判して値段を下げてもらいました。それを境に、事業は持ち直すのですが、あるところでこれ以上値段は下げられないという限界が来るわけです。そのときに「自分たちで直接仕入れるしかない」と頭を切り替え、チップの出元と直接取引を始めました。そこからは、かなりドラマチックに収益が改善しましたね。

 設備の方は、当初からトラブルが頻発し、稼働率が上がらない状態が続きました。その原因は、導入した設備の設計や構造そのものにありました。結局、木質燃料を使って発電する大規模なボイラーのオリジナルは、フィンランドやドイツ、オーストリアなどヨーロッパのメーカーなんです。我々は、そのパテントを使って製造された日本製ボイラーを導入したのですが、なにぶんにもヨーロッパの風土に合わせて設計されているので、日本の木と相性がよろしくないんですね。日本の木を使えば故障するのも当然のことでした。

 フルメンテナンス契約を結んでいましたから、故障したときはメーカーに修理してもらうのですが、これがまた問題です。当たり前ですが、メーカーの修理とは、壊れた箇所を元通りにすることなんですね。しかし、元通りにしてはダメなんですよ。元に戻したらまた壊れるので、壊れないようにモディファイしなければ意味がない。メーカーにそう要求すると、「保証の範囲外になる」と言われて対応してもらえない。そんなことを何度も繰り返しましたが、もうらちが明かないので契約を解除し、最後は我々自身の手で設備をカスタマイズするしかないと思い至ったわけです。

具体的には、どのようなカスタマイズをされたのですか。

 日本の木、日本の砂に広範囲に適応し、なおかつ最低1年間運用可能なヘビーデューティーさを持たせられるよう改良しました。その改良が奏功し、今、弊社の設備は年間の設備利用率が90%を超えています。エネルギー分野では、設備が100%稼働して24時間365日動いた状態を設備利用率100%と定義していますから、90%超ということは年間340日以上稼働していることになります。これは、国内すべての発電所群の中でも、相当高い数値です。その設備利用率が何によって担保されているのかというと、結局、自社メンテナンス、自社整備、日常保全なんですよ。

建設廃材ではなく、間伐材や製材所の廃材などは利用できなかったのですか。

 その質問は、FIT以前と以降で答えが異なります。FIT以前はどんな木を燃料にしても、木は木であり差はないという法律だったので、安価で高カロリーな材料がベストでした。乾燥していて燃えやすく、産業廃棄物として極めて安価に入手でき、取り扱い業者も特定しやすい建設廃材が、必然的に選ばれたというわけです。ところが、FIT以降、この流れは大きく変わります。FITでは、森林由来、製材所由来のチップを使うとインセンティブが働くからです。つまり、未利用木材で発電した電気は、高い価格で買い取ってもらえるのです。FIT施行以降、弊社の燃料の4割から5割は森林系の未利用木材に変わりました。

未利用木材は含水率が高く燃料としては扱いにくいのではないですか。

 生ものですから、季節や天候によって、コンディションは変化します。変化する生の燃料を、どうやって一定範囲のコンディションに整えるのか、整えたものを、いかにコンスタントにボイラーへ投入できるのか、そこが事業成功のカギを握る部分です。我々は、何度も何度も試行錯誤を繰り返し、ある程度クリアできるようになりましたが、まだパーフェクトだとは思っていません。それでも、現時点で弊社の技術レベルは、国内トップクラスにあると自負しています。

森林率7割といわれる日本は、
木質バイオマス発電のポテンシャルが高いといわれています。

 森林の面積と、森林の資源量は、全く別物だと考えるべきです。要は、資源化できるかどうかは素材生産力に依存しているということです。もっと平たく言えば、林業従事者の数に依存してしまうのです。いくら森林があっても、林業従事者の能力を超える資源量は絶対確保できないんですよ。

 少し論点はずれますが、これは安価な輸入材を重用し、日本の木を使わなくなったことと深く関係しています。その状況を変えるために木質バイオマス発電を推進して、林業を活性化しようと言う人もいますけど、それは間違っていると思います。たとえ、木質バイオマス発電所を増やしても、それだけでは林業は活性化しないでしょう。なぜなら、森林資源の活用という意味で、燃料としてのチップ製造は本業ではないからです。絶対に利益は上がらないと思います。

 つまり、森林面積がいくら広大でも、林業従事者がどんどん失業している現状では、木質バイオマス発電を推進してもうまくいかないということです。

木質バイオマス発電の発展が、
今後の経済や社会に与える好影響は何だと思いますか。

 円とかキロワットとかの単位で大きなインパクトを与えることはないと思います。あくまでも木質バイオマス発電は、オルタナティブなんです。主たるプレイヤーが火力や原子力であることは変わりません。もちろん再生可能エネルギーは、火力や原子力への依存度を下げ、国産エネルギーを生み出すという役割を持っていますが、そこを追求し過ぎると電気代が高くなり、経済や社会に悪影響を与えかねません。エネルギーのポートフォリオのコアは火力発電や原子力発電であり、再生可能エネルギーはバリエーションにすぎないのです。では、木質バイオマス発電にメリットはないのかといえば、そんなことはありません。本来捨てられてしまう木くずをエネルギーに変えることは有用であり、その意味では社会や環境に好影響をもたらしているといえるでしょう。

今後の事業展望を教えてください。

 政策的な環境が変化すれば、何らかの変更は必須ですが、今のところ木質バイオマス発電に立脚し、その周辺で事業領域を拡大していくという基本路線に変更はありません。現在の成長率を維持しつつ事業を拡大していくことが、弊社の基本方針です。

会社概要

社名
株式会社ファーストエスコ
所在地
東京都中央区八重洲2-7-12
資本金
20億3,000万円
事業内容
省エネルギー支援事業、再生可能エネルギーによる発電事業など
TEL
03-5299-8521
URL
http://www.fesco.co.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.109(2015年2月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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