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環境先進企業トップインタビュー

創業の精神「先の先を読め」を継承し、社会と環境に貢献する事業を推進します。 大和ハウス工業株式会社 代表取締役会長  樋口 武男氏

環境問題が世界経済に与える影響

御社は2009年2月に発表された第18回「地球環境大賞」において、「大賞」を受賞されました。これは、「自然と調和した街づくり」を目指した越谷レイクタウン内での開発事業を通じて、住宅産業での環境への先進的な取り組みが評価された結果だと思います。御社では、環境問題と企業経営の関係をどのように捉えているのでしょうか。

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次評価報告書によると、1906〜2005年までに観測された100年間の気温上昇は0.74℃で、最近50年間(1956〜2005年)の温度上昇の傾向は、10年間に0.13℃でした。これは、過去100年間(1906〜2005年)の傾向のほぼ2倍に相当し、近年急速に温度上昇が進んでいることが確認されています。すでに、気候の変化は、集中豪雨や異常気象という形で日本全国に現れており、我々の暮らしにも影響が及んでいます。今後、さらに温暖化が進行すれば、産業にも大きな打撃を与えることが予想され、環境の悪化が経済発展の足かせになりかねません。

 2009年9月に鳩山首相は「2020年までに1990年比でCO2排出量を25%削減する」という目標を世界に向けて発表しました。環境問題によって引き起こされる社会への被害を食い止めるには、今後、先進国や新興国すべてが同様の高い目標を共有し、CO2削減に向けた取り組みを推進していくことが必要です。

 日本は、京都議定書において、2012年までに1990年比6%のCO2排出量削減が求められている一方で、住宅などの民生(家庭)部門はCO2排出量が増え続け、2007年度には1990年比41.2%も増加しています。こうした現状を鑑みると、我々のような住宅や建築に携わる企業の役割と責任は極めて重いといえます。

 これに対し、弊社では、個々の住宅における省エネ対策はもちろん、地域の自然を最大限に生かし街全体でCO2を削減する取り組みを進めています。今回「地球環境大賞」の受賞につながった越谷レイクタウン(埼玉県)内での取り組みは、その先導的な事例の1つです。2008年3月に街開きした「越谷レイクタウン」内では、戸建て住宅132戸と分譲マンション500戸を一体開発する際に、風・太陽・水といった地域の自然を最大限に活用した建築デザインを採用しました。具体的には、戸建て住宅街区では、最新の風況シミュレーション技術により、住戸内に風を取り込めるよう家の配置や窓の位置、間取りを設計したり、マンション街区では、住宅用太陽熱利用システムを導入し、給湯・暖房に活用しています。こうした自然環境との共生を図る取り組みによって、街区全体で20%以上のCO2排出量削減を実現できる見込みです。

越谷レイクタウン内の戸建て住宅街区とマンション街区

“建てて壊す”のではなく“よい家を建てて長く大切に使う”

個々の住宅における取り組みについてご紹介いただけますか。

 環境に優しい住まいを実現するには、冷暖房、給湯、照明・家電などの主要なエネルギー需要への対策が不可欠です。弊社がエコ住宅として販売している戸建て住宅商品「xevo(ジーヴォ)」は、家庭でのエネルギー消費量を抑える工夫を凝らしています。その1つが、住宅の冷暖房効率を高める「外張り断熱通気外壁」です。これは、鉄骨の外側に断熱材を施す外壁システムで、高い断熱性能により、冷暖房の使用を抑制します。さらに、メイン商品では、太陽光発電システムを標準搭載するなど、創エネにも取り組んでいます。弊社の試算では、こうした省エネと創エネへの取り組みにより、「xevo」は従来の住宅と比べて、年間光熱費約40%、CO2排出量約45%の削減効果があると見込んでいます。このほか、照明については蛍光灯の使用を提案しています。モデルプラン(延床面積:136.23平方メートル)による試算では、蛍光灯を使用した場合、白熱灯に比べ、照明に関わる電気代を約38%、CO2排出量を年間約243キログラム削減することが可能です。

 しかし、住宅の環境性能を高めても、そこに住む人々次第で省エネ効果は大きく変わってしまいます。そこで、弊社は建物の省エネ性や環境性能を「見える化」するサービスを始めました。建てる前に住宅の断熱性能や年間光熱費をシミュレートする「ecoナビゲーター」、建設時の建物環境性能を評価する「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)」、入居後の省エネ生活をアドバイスする「省エネ診断システム」を活用することで、建設前から入居後まで、環境に配慮した住まい方ができるよう配慮しています。

 弊社では、技術開発により住宅の省エネ化や環境性能の向上に取り組むことで、快適な暮らしを維持しながら、環境に優しい生活の実現を目指しています。

「xevo」は、国土交通省の「長期優良住宅先導的モデル事業」に採択されていますね。

 日本の住宅の平均寿命は約30年といわれています。これは、イギリスの約77年、アメリカの約55年と比べると、非常に短命です。建て替えや改築に伴い産業廃棄物が発生することを考えると、日本では大量の資源を無駄にしているといえます。

 逆にいえば、住宅の耐久性の向上や長寿命化は、将来的な省資源やCO2排出の削減につながります。この点に着目したのが、“建てて壊す”のではなく“よい家を建てて長く大切に使う”ことを理想とする「200年住宅ビジョン」です。この理念に基づき、長期的に利用できる質の高い住宅(200年住宅)の普及促進を図るため、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律(長期優良住宅普及促進法)」が2009年6月より施行されました。これに伴い、一定以上の住宅性能を確保し、維持保全に関する計画が作成された建物は、税制面でさまざまな優遇措置を受けられるようになりました。「xevo」は、標準仕様でこの認定に対応しており、長期優良住宅の普及啓発に寄与するモデル事業にも選ばれています。

 弊社が掲げた長期優良住宅のコンセプトは、「住みやすいように家を変化させて住み継いでいくこと」です。「xevo」では、住まいの耐久性・耐震性・省エネなどの基本性能はもちろん、将来の家族構成の変化に対応する間取りの可変性や維持・メンテナンスのしやすさを追求しました。

CO2を減らせる家「xevo」

省エネという点では、長期利用できる住宅の建設とともに、従来の住宅をリフォームして長く住み続けるのも有効な方法だと考えますが、いかがでしょう。

 メンテナンスや増改築などにより、既存住宅ストックを活用することは、環境を保全する上で大事なことです。高齢化社会を迎え、自宅の浴室やトイレなどのバリアフリー工事の必要性が高まっており、住宅リフォームの需要は今後ますます伸びていくでしょう。住宅リフォーム市場は、現時点で6兆円を超え、将来的には10兆円まで拡大が見込まれており、弊社でも成長分野としてリフォーム事業に力を入れていく方針です。

 しかし、今後、既存住宅ストックを有効活用していくには、消費者が中古住宅を安心して活用できる市場を整備する必要があります。現在、国内の総ストック戸数は5,750万戸、総世帯数が約5,000万世帯といわれています。このデータを見ると、利用価値のある住宅が約750万戸も残されているように見えますが、実はそうではありません。ある調査によると、5,750万戸のストックの中には、耐震不十分な住宅が1,150万戸もあると報告されています。こうした安全性に関わる問題に、建て替えと補強工事の両面から、速やかに対処することが求められます。

 弊社は、今後リフォーム分野での技術開発に努め、耐震性の強化など、既存住宅の有効活用に向けた課題に積極的に取り組んでいきたいと考えています。

“世の中に求められるもの”をつくる

リチウムイオン電池や風力発電など住宅以外の事業にも取り組まれていらっしゃいますね。

 現在、一般家庭が太陽光で発電した電力は、日中の使用や電力会社への販売だけに利用が限られていますが、リチウムイオン電池を組み合わせれば、太陽光から得た電力を蓄電し、夜間にも利用可能になります。

 弊社では、家庭におけるエネルギー利用の効率化とともに家庭におけるCO2排出量削減を目指し、住宅用電力貯蓄システムの開発に取り組んできました。その一環として、大型リチウムイオン電池の普及と低価格化を目的とした産官学協同のプロジェクトに参画し、慶應義塾大学発のベンチャー企業、エリーパワー株式会社に出資しています。現在、同社は、神奈川県川崎市にリチウムイオン電池の生産工場を建設しており、2010年までに年産20万セルの量産体制を構築する予定です。

 リチウムイオン電池に加え、愛媛県に建設した大型風力発電機(1,000キロワット機9基)による売電事業に参入したり、弊社グループの大和エネルギー株式会社が小型風力発電機「風流鯨(かぜながすくじら)」を販売するなど、エネルギー事業に積極的に取り組んでいます。

未知の分野へ新規参入するのは、勇気のいる経営判断だと推察しますが。

 「先の先を読め」というのが、創業者である石橋信夫の口癖でした。弊社では、市場の潜在的需要に応える“マーケットイン”の発想に立ち、オンリーワンテクノロジーを生かして、常に新しいマーケットの開拓に取り組んできました。1959年に開発され、弊社の礎を築いた「ミゼットハウス」は、その代表例といえます。当時、「離れ」といえば木造建築が一般的でしたが、軽量鉄骨製の同商品は、戦後のベビーブームで不足する教室や勉強部屋の問題を解決し、プレハブ住宅の原点となりました。

 このように、世の中から必要とされるものを見極め、社会に貢献する事業に取り組むことが、創業者から受け継がれる大和ハウス工業のDNAです。現在、弊社では、新規事業の方向性として、「明日、不可欠(ア・ス・フ・カ・ケ・ツ)」というキーワードを掲げています。「ア・ス・フ・カ・ケ・ツ」とは、「安全・安心」「スピード・ストック」「福祉」「環境」「健康」「通信」の頭文字をとり、今後社会で重要度が増すであろう分野に経営資源を集中していく姿勢を明文化したものです。

 中でも、近年、特に力を入れているのが、福祉の分野です。老人ホームやデイケア施設などを展開するとともに、身に着けて介護作業などを補助するロボットスーツ「HAL(ハル)」の開発に投資するなど、取り組みを始めています。ロボットスーツは、重労働を強いられる介護者の負担を軽減するだけでなく、脚に障害を持つ方や脚力が弱くなった高齢者の歩行をサポートする機能も持っています。この事業に携わるきっかけは、社会の役に立ちたいという研究者の理念に共感したことでした。こうした事業を通じて、弊社は「人・街・暮らしの価値共創グループ」として、すべての人が心豊かに生きる暮らしと社会の実現を目指しています。

100年企業に向けた「人財」育成

今後の展望をお教え願えますでしょうか。

 一般に、創業から50年続く企業は約40%、100年を超えるとたった3%しか存続できないといわれています。大和ハウスグループは、2005年に創立50周年を迎えました。100周年を迎えるには、将来を担う「人財」の育成が最重要課題だと考えています。

 これを具現化するための方策の1つが、2008年5月に発足した「大和ハウス塾」です。この取り組みは、大和ハウスグループ全体から集めた将来の経営者候補に教育プログラムを実施するもので、社員がともに切磋琢磨できる場となっています。また、会社の経営に対して意欲のある人やチャレンジ精神のある人を経営幹部(支店長)として積極的に登用する「支店長公募育成研修制度」も実施しており、従業員一人ひとりの自立を促しつつ、モチベーションを高める各種制度を整えています。

 会社が永続的に成長していく基盤をつくることは、創業者から経営を任されたときの約束です。創業者の夢は、2055年の創業100周年を迎える時点で、売上規模を10兆円に乗せることでした。今後は、この壮大な目標の実現に向けて、人財の育成に努めるとともに、世の中から必要とされる事業に取り組み、大和ハウスグループをいっそう成長させていきたいと考えています。


【聞き手】
三井住友銀行経営企画部CSR室長 佐藤 耕司
日本総合研究所主席研究員 足達 英一郎

Profile

樋口 武男(ひぐち たけお)
1938年生まれ。1961年、関西学院大学法学部卒業。1963年、大和ハウス工業株式会社入社。同社特建事業部長、常務取締役、専務取締役などを経て、1993年、グループ会社である大和団地株式会社代表取締役社長に就任。2001年、大和ハウス工業株式会社代表取締役社長に就任。2004年より同社代表取締役会長兼最高経営責任者を務める。現在、大阪商工会議所副会頭、社団法人住宅生産団体連合会会長などを兼任。



会社概要

大和ハウス工業株式会社

創立
1955年
本社
大阪府大阪市北区梅田3-3-5
資本金
1,101億2,048万3,981円
代表者
代表取締役社長 村上 健治
事業内容
住宅や流通店舗などの建築事業、および都市開発事業。ほかに海外への部材の輸出入、建設・合弁事業や環境エネルギー事業など。
ホームページ
URL:http://www.daiwahouse.co.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.80(2009年11月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。

新しいウィンドウで開きます。 『SAFE』Vol.80(2009年11月号)


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