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環境先進企業トップインタビュー

保険を通じて安心と安全を提供し、地球環境の保全に貢献します。 三井住友海上火災保険株式会社 取締役会長  江頭 敏明氏

保険業を通じて地球環境保全に貢献

御社は、2002年、関連事業会社14社を含めた国内293拠点においてISO14001を取得されました。これほど大規模な全店一括取得は数少ない事例だと思います。

 弊社が初めてISO14001を取得したのは、2000年のことです。これは、前身である三井海上火災保険株式会社の取り組みによるものでした。翌年、住友海上火災保険株式会社と合併し、経営規模を拡大してからも、引き続きISO14001の運用を図ってきました。この中で目指したのは、単に認証を取得することではありません。我々の目標は、環境マネジメントシステムを企業運営の中に浸透させ、環境負荷低減や経営改善を実現する仕組みをつくることです。たとえ認証取得を実現しても現場に大きな負担があれば元も子もありません。そのため、弊社は、取り組みに当たって “簡素化”をキーワードに掲げ、各地域・部署に適した活動プログラムづくりを目指してきました。全店一括取得から8年を経て、負担を感じる現場の声はなくなり、各拠点で環境配慮の意識が定着してきました。今後は国内のグループ各社にも取り組みを広げていきたいと考えています。

地球環境問題に貢献する商品・サービスについてご紹介いただけますでしょうか。

 保険金融サービスを通じた地球環境保護への取り組みについて、3つご紹介したいと思います。1つ目は、自動車部品リサイクルの普及活動です。自動車部品の製造は資源やエネルギーを消費しCO2が発生します。また、廃棄に当たっても、埋め立てや焼却などの処理により環境に影響を与えています。こうした問題に対し、弊社は、資源を有効活用する“環境にやさしい修理”の普及に取り組んできました。具体的には、お客さまや修理業者と修理内容を検討する際、リサイクル部品の使用や、補修による処理をお勧めしています。まだ日本ではお客さまが新しい部品を要望されるケースが圧倒的に多く、2008年度のリサイクル部品活用率は自動車修理費を支払った事案に対して4.3%でした。それでも、2007年度の3%と比較すると、少しずつではありますが、お客さまのご理解が浸透しています。今後、リサイクル部品がさらに普及すれば、環境面以外にもさまざまな効果を生んでいくはずです。たとえば、安価なリサイクル部品の使用は、修理費用の軽減につながります。多くの車両をお使いの企業などでは、修理費用を抑制することで翌年の保険料を抑えられる場合があるなど、お客さまの経済的ご負担を軽くする効果も考えられます。

 2つ目の取り組みは、「エコ整備・エコ車検」です。この活動では、代理店組織を通じて環境に配慮した自動車整備の普及を図っています。その核となっているのは、エンジンの燃焼室内を洗浄する特殊技術です。この技術を利用して燃焼室内に溜まったカーボンなどの有害物質を取り除くと、有害ガス排出量の抑制とともに燃費を改善することができます。また、法人のお客さまに対して、「エコ安全ドライブ」の提案も行っています。エコ安全ドライブは、自動車の運転時に「早めのアクセルオフ」や「加減速の少ない運転」などの運転術を実践することによって、環境保全と交通事故の少ない社会を目指す啓発活動です。弊社は、取り組みの手引きや、燃費集計ソフト、啓発ポスターなどをまとめた「取組推進パックCD」を作成し、この支援ツールを無料配布することでエコ安全ドライブの普及に貢献したいと考えています。

 3つ目の取り組みは「ソーラーローン」です。太陽光発電は環境に優しいクリーンエネルギーとして、環境意識の高い消費者の注目を集めています。弊社は、こうしたニーズに対して、一般家庭の太陽光発電設備購入を支援する専用ローンを開発し、信販会社を通じて提供を始めました。

「Green Power サポーター」についてお教えいただけますか。

 さまざまな取り組みの成果を集約し、お客さまとともに地球環境保護に貢献しようという活動です。先ほど紹介した「リサイクル部品活用」「ソーラーローン」「エコ整備・エコ車検」に加え、紙の使用量を削減する「Web約款」「電子契約手続き」という5つの事業が、この活動の基盤となっています。また、「ソーラーローン」を除く4つの事業については、取り組み達成度に応じた金額を、再生可能エネルギーの普及・推進事業や環境保護団体などに寄付する仕組みを構築しています。これまでに約159万件(2010年5月現在)の協力をいただき、2009年度はグリーン電力基金に440万円を寄付することができました。

環境保全への貢献は保険会社の使命

インドネシアの熱帯林の再生など、環境保全活動にも取り組んでおられますね。

 熱帯林の減少は世界的に重大な環境問題です。かつてインドネシア・ジャワ島には保護林として残された優良な森林がありましたが、こうした森林の多くも不法伐採により失われてしまいました。そのため、インドネシアでは、森林復旧が重要な国策として位置づけられています。こうした中、弊社は、2005年4月から現地政府と協力して、ジャワ島中部にあるパリヤン野生動物保護林の修復と再生に取り組んできました。プロジェクト開始から現在までに、350ヘクタールの荒れ地に30万本を植樹しました。森林の回復に伴い、一度は消えてしまった保護対象動物のオナガザルをはじめ野鳥や昆虫などが戻りはじめ、多様な生物相が再生しつつあります。

 このプロジェクトでは、インドネシア在来樹種のほか、果樹などを植栽しています。これは、環境保護とともに、地域経済への貢献を重要な目標としているためです。まだ果実を実らせるまでには数年かかりますが、将来、ここで収穫される農産物が地元住民の経済的支援になることを期待しています。しかし、植栽した樹木を永続的に維持・管理していくには、地元の理解が欠かせません。そのため、森林を育成していくための説明会や子どもたちに対する森林を大切にするための環境教育など、地元住民の森林保護の意識を高めてもらう取り組みにも力を入れています。また、インドネシア現地法人では、周辺小学校へ学童品を寄付する支援活動に取り組むなど、地元との交流を深めています。

国内に目を向けると、「駿河台ビルの緑地」が特徴的です。緑地を整備された動機はどのようなものだったのでしょうか。

 駿河台ビルの屋上庭園は、ビルを竣工した1984年に周辺環境の調和を考えて整備したものです。この周辺はもともと教育研究施設や文化施設などの多い文教地区だったため、民間オフィスビルの建設に当たり、周辺住民の方々にご理解いただく必要がありました。そこで、「地域の人とともに栄える」「地域の付加価値を上げよう」というコンセプトを掲げ、緑地を最大限に活かす敷地計画を策定したのです。現在、敷地面積1万2,000平米のうち、緑化面積は5,200平米に達しています。建物周辺に植栽した街路樹や、ビル低層部に整備した屋上庭園は、歳月とともにますます豊かな緑を育んでいます。現在の課題は、都会に生まれた貴重な緑を活用して地域との共生を図ることです。その一環として、屋上菜園の無料貸出や市民環境講座、野鳥モニタリング活動など、さまざまな取り組みを行っています。

ヒートアイランド対策にも効果があるそうですね。

 調査では、盛夏の日中、緑化されている部分の地表温度は、周辺の幹線道路やビル屋上と比べ約20℃以上低いという結果が出ました。また、もう1つヒートアイランド対策として、高層部の屋上屋根に高反射率塗料を塗装しています。これは、約10℃の緩和効果があります。このほか、2008年10月からグリーン電力証書の購入を始めました。年間760万キロワット時の使用電力をグリーン電力で賄うことで、年間約3,000トンのCO2を削減できています。

 現在、本社ビルの統合に向けて、駿河台新館ビルを建設中です(2012年2月竣工予定)。これに併せて、駿河台ビル一帯の緑地拡大を計画しており、皇居と上野の森を結ぶ緑の回廊「エコロジカルネットワーク」をつくりたいと考えています。これにより、コゲラなどの行動範囲が狭い野鳥の生息域が拡大することを期待しています。

生物多様性保全への取り組み

生物多様性と保険業の相互関係について、お考えをお聞かせ願えますでしょうか。

 保険会社の使命は、お客さまが持つリスクの予防・軽減を図り、経済的な保証を提供することです。一方、生物多様性は、人間が豊かな生活を送る上で不可欠なテーマであり、現時点で問題が顕在化していなくても、将来的に個人や企業のリスクとなる可能性をはらんでいます。したがって、生物多様性は保険会社にとって無関心でいられない問題といえます。たとえば、生態系の保護を目指し荒廃した森を再生すると、保水性が高まり、洪水などの自然災害のリスクを軽減することができます。このように、生物多様性保全や自然環境保護の取り組みは、環境貢献活動であると同時に保険会社の使命であるリスクの予防・軽減につながるのです。

御社における生物多様性保全の取り組みをご紹介いただけますでしょうか。

 弊社では、インドネシアでの熱帯林の再生プロジェクトがきっかけとなり、生物多様性に関わるさまざまな取り組みを推進してきました。しかし、生物多様性の保全は、地球温暖化対策のように企業が単独で取り組めるものではなく、国や市民などとの協働が欠かせません。そこで、弊社はこうした活動を社会全体に普及させていくための行動を起こしました。その1つが、2007年から始めた生物多様性の保全活動をテーマにしたシンポジウム「企業が語るいきものがたり」の開催です。このシンポジウムを通じて、企業が生物多様性の保全に取り組むための情報提供を行っています。2008年には、同様の志を持つ企業とともに「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」を設立し、生物多様性に関する企業の取り組み方について共同研究する活動を開始するとともに、弊社が会長会社となってJBIBの活動をサポートしています。また、こうした国内の活動に加えて、国外では、2008年5月、ドイツで開催された生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)において「リーダーシップ宣言」に署名しました。今後、この宣言に明記された7つの活動項目を実現するべく努力を続けていきたいと考えています。

グローバル企業としての社会的使命

最後に、今後の抱負をお聞かせいただけますでしょうか。

 2010年4月にあいおい損害保険株式会社、ニッセイ同和損害保険株式会社と経営統合し、「MS&ADインシュアランス グループ」として新たなグループ体制を発足しました。今後、新グループ全体でISOをはじめとする高レベルの環境基準を維持していきたいと考えています。環境問題は、取り組みの規模が大きくなれば効果もそれに比例して高まります。従来の各社の活動を共有し、総合力を発揮していきたいと考えています。

 また、これから弊社がさらに成長を続けていくには、海外展開が不可欠だと考えています。現在、世界42カ国・地域でライセンスを持って営業しており、各国の状況を考慮しつつ地域に根差した事業の推進を図ってきました。中でもアジア地域を最重点地域として捉えています。新興国の多い同地域では、今後、国民の健康や社会の安定を支える“保険”がますます重要になってくるでしょう。経済発展を脅かす事故や災害による損失に備え、“保険”を普及させていくことは、我々保険会社の使命であり、国際的な社会貢献だと考えています。これからもグローバルな企業市民として国際規模で社会的使命を果たせるよう尽力していきます。


【聞き手】
三井住友銀行経営企画部CSR室長 條 晴一
日本総合研究所主席研究員 足達 英一郎

Profile

江頭 敏明(えがしら としあき)
1948年生まれ。1972年慶應義塾大学法学部卒業。同年旧大正海上火災保険株式会社に入社。同社社長室部長、商品業務統括火災新種業務部長などを経て、2001年旧三井海上火災保険株式会社と旧住友海上火災保険株式会社の合併によって三井住友海上火災保険株式会社の執行役員に就任。2010年4月よりMS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社の代表取締役社長・社長執行役員および三井住友海上火災保険株式会社の代表取締役会長・会長執行役員を務める。


会社概要

三井住友海上火災保険株式会社

設立
1918年
本社
東京都中央区新川2-27-2
資本金
1,395億9,552万3,495円
代表者
取締役社長 柄澤 康喜
事業内容
損害保険業、債務の保証、投資信託の窓口販売業務など
ホームページ
URL:http://www.ms-ins.com/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.85(2010年9月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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