環境ビジネス情報

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環境先進企業トップインタビュー

『&EARTH』を掲げ、「共生・共存」の理念のもと
環境と人に優しいまちづくりを目指します。 三井不動産株式会社 代表取締役社長 岩沙 弘道氏

『&EARTH( アンド・アース)』をキーワードにさらなる環境対応を推進

三井不動産の環境方針や、取り組み方針をお教え下さい。

 三井不動産グループは、当社グループのロゴである『&(アンド)マーク』に象徴される、「共生・共存」「多様な価値観の連繋」の理念のもと、社会経済の発展と地球環境への貢献を目指しています。

 また、2001年には、グループ環境方針を策定し、グループを挙げて環境対策に取り組んでまいりました。当社の考える環境との共生は単に「CO2の削減」にとどまらず、「水環境の保全」「有害物質削減」「省資源・廃棄物削減」「生物多様性の保全」も含めた幅広い視野で、設計段階から環境に配慮するとともに、建物の管理運営時の環境負荷の低減などにも取り組んでいます。

 そのような中、当社グループの環境への取り組みについて、関係各所、さらに広く世間の皆さま方にもご理解いただくため、2010年『&EARTH(アンド・アース)』という環境コミュニケーションワードを策定しました。

 当社グループのまちづくりが「地球とともにある」ということを、『&EARTH(アンド・アース)』という言葉によって再確認し、地球環境問題を幅広い視点から捉え、グループ一体となって、豊かで幸福な未来につながる新しい街をステークホルダーの皆さまとともに創り上げていきたいと考えています。

不動産業界の地球環境問題への取り組みを牽引

不動産協会の理事長としても環境問題に取り組んでおられますね。

 私が理事長を務める不動産協会では、業界を挙げて地球環境問題に取り組んでいます。日本経済団体連合会が各産業界で自主行動計画を初めて策定した1998年には、不動産協会でも自主行動計画を定めました。その後、2007年にオフィスビル、2008年には分譲マンションの新築時の環境性能に関する定量目標を定めるなどの改訂を行い、業界全体で民生部門のCO2削減の取り組みを強化してきました。

 さらに2010年には、産官学が共同で検討した「不動産協会低炭素型まちづくりアクションプラン」を策定し、地球環境問題への業界の取り組みを加速させています。

 今後、国の省エネ基準の見直しの動きなども視野に、定量目標の見直しなど、さらなる環境への取り組みを進化させたいと思っており、日本経済団体連合会ともひき続き緊密に連携しながら検討してまいります。

 民生部門における環境対応については、関係者が多岐にわたるため、事業者の努力に加えて、広くステークホルダーの皆さまの協力が重要になります。つまり、オフィスビルの入居者、住宅の居住者、商業施設の入居者・来館者といった皆さまの連携・協力が欠かせず、「見える化」のさらなる推進なども重要です。また、これまでのCO2増加要因にはグローバル化や情報化の進展といった生活や社会の高度化の影響もあります。民生部門の環境対応を考える上で、これらの特性を理解しておくことが大切だと思っています。

三井住友銀行本店ビルディングにおける先進的な環境対応

2010年のトピックとしては、三井住友銀行が本店を日比谷から大手町の貴社のビルに移転しました。このビルではどのような環境対応をなさっていますか。

 今さら申しあげるまでもありませんが、三井住友銀行さまは、当社にとってお客さまとしても、またビジネスパートナーとしても大変重要な存在でいらっしゃいます。

 2010年は、長らく本店としてご利用いただいた「日比谷三井ビルディング」から、大手町に竣工した当社の「三井住友銀行本店ビルディング」に本店を移転いただきました。当社グループの力を結集し、安全かつ快適なオフィス環境を提供してまいりますので、今後とも末永くご愛顧をいただきたいと思っております。

 「三井住友銀行本店ビルディング」では、当社ビルでは初となる自然光をビルのコア部まで引き込む「光ダクトの採用」に加え、太陽光発電、太陽光追尾型電動ブラインド、室内照明の人感センサー制御、屋上緑化など各所で環境に配慮した設計を行い、さらに外装デザインについても、「省エネ機能とデザインの融合」を図りました。これらにより、CO2排出量が東京都のテナントビルの平均より想定で約30%減となる、まさに先進の環境対応ビルとなっております。

 こうしたハードの環境性能に加え、実際にご利用になる三井住友銀行さまも大変積極的に省エネ・環境への取り組みを進めておられることから、東京を代表するトップレベルの省エネ水準を達成できるものと確信しております。

まちづくりにおいては環境に取り組む2つの視点を

まちづくりの上で環境問題に取り組む視点をお教え下さい。

 環境共生型のまちづくりのために大切なことは、全体計画の策定段階で、その街の特性を踏まえながら、どのような環境づくりを目指すのかというグランドデザインをしっかり描くことです。多様な環境対策の中で、何を訴求ポイントとするかを考えるという視点が非常に重要だと思います。

 具体的には、施設のパッシブデザイン、アクティブデザインや、交通・道路計画、水辺や緑の活用、ヒートアイランドの緩和などさまざまなテーマのうち、個々の街に何が必要なのかを考え、地域住民の皆さまにとってよりよい環境を提供していく視点が大切だと思います。また、2010年名古屋でCOP10が開催され、生物多様性保全の重要性が再認識されたように、地球環境問題のテーマは大きな広がりを持っているという意識が必要だと思います。

 さらに、都市全体を低炭素型の構造に転換していくため、最先端の環境技術を活用した、コンパクトで効率的な都市構造の実現が求められています。たとえば、注目される太陽光パネルやスマートグリッドなども、エコ住宅や、電力網などの都市インフラに組み込まれて効果を発揮するものといえ、都市政策と先端技術の融合が課題解決の大きな鍵を握っていると思います。こうした視点も踏まえてプロジェクトを進めていくことが大切だと感じています。

柏の葉、東京ミッドタウン、日本橋プロジェクトでの地域特性を生かした環境への対応

具体的なプロジェクトでの環境への取り組みをお教え下さい。柏の葉キャンパスシティプロジェクトでは、国土交通省の「環境先導事業」に採択されたそうですね。

 そうですね。官民学が連携して「環境」「健康」「創造」「循環」をテーマに約273ヘクタールに及ぶまちづくりが推進されている柏の葉キャンパスシティは、東京大学や千葉大学などの教育機関、国立がん研究センターなどの先端学術機関、つくばエクスプレス・柏の葉キャンパス駅を中心とする住宅・商業施設、緑豊かな千葉県立柏の葉公園など、多様な機能の集積によるシナジーが期待されます。すでに、スマートグリッドの実証実験を検討するなど先進的なソリューションの提供を目指すスマートシティプロジェクトやユビキタス実験など、先進モデル都市実現に向けたさまざまなプロジェクトや実証実験を数多く展開しており、まさにまちづくりの将来像を描くプロジェクトです。さらに、自然エネルギーの活用などにより革新的なCO2削減を目指す商業業務街区は、その計画が評価され、国の環境先導事業に採択されています。

 また、都心の大規模複合開発である東京ミッドタウンでは、開発面積の約40%となる緑地がヒートアイランド現象の緩和にも役立っています。さらに、エネルギー消費の多い商業モールの北側配置や、オフィスビルの日よけルーバーの設置、自然光の地下階導入などといった「パッシブデザイン」と呼ばれる手法を活用し環境負荷の低減を図っています。また、「アクティブデザイン」としては、地域冷暖房などの高効率熱源システムに加え、太陽光発電などの創エネルギー技術を採用し、従来のビルと比べて約30%の省エネルギーを実現しています。

 当社グループ発祥の地である日本橋においても、「残しながら、蘇らせながら、創っていく」というコンセプトのもと、日本橋再生計画に取り組んでおります。

 将来的には、道路環境も整備され、美しい都市景観と日本橋川の親水空間の再生により東京湾の水辺と皇居や神宮などの森とがつながり、「風の道」によって都心のヒートアイランドも緩和されることを期待しております。日本橋が環境に優しい街として生まれ変わり、国内外からの観光客や多くの人々の憩いの場となることを願っています。

環境を強みにしたまちづくりの新しい海外展開への挑戦を

世界的に見ても、エコシティ(環境都市)に大きな注目が集まっています。中国が国家プロジェクトとして進める天津エコシティへの参画も予定されていると伺いますが。

 環境対応、人口減少・少子高齢化など、課題先進国と言われる日本で解決策を率先して示していくことは、グローバルな都市間競争の中で生き残るためだけでなく、遠からず世界全体の課題についての解決策を示すことにもつながると考えています。そして日本における成果をもとに、たとえば低炭素型都市開発の海外展開により、アジアなどの成長都市の需要に応え、「まちづくり」を日本の新たな成長産業としていくことは、十分可能であると考えていますし、日本の成長戦略を考える上でも、達成していかねばならないことだと思います。

 これらを踏まえ、当社グループは、環境施策の強化に取り組むとともに、成長市場である東アジアへの事業展開など、グローバルな取り組みにも積極的にチャレンジし、新たな成長を目指しています。

 天津エコシティは、多くの日系企業が拠点を持つ天津市において、約30万平方キロメートルの開発エリアに「環境共生」と「省資源・資源循環効率化」をコンセプトとした、国家レベルの大規模環境都市開発プロジェクトです。

 すでに三井不動産レジデンシャルが住宅分譲事業に参画しており、中高層、低層タウンハウス、戸建合わせて約2,650戸を2014年までに分譲する予定です。

 今後、当社グループは中国の主要都市において、商業施設、分譲住宅や当社の強みである複合開発などを積極的に展開し、中国の国民の皆さまのより豊かな生活の実現に積極的に貢献したいと思っています。

 当社は2011年に創立70周年を迎えますが、常に時代の変化を見据え、新しい時代の要請に応えるべく、高度成長期の埋め立て事業、日本初の超高層ビルである霞が関ビルディングの開発、モータリゼーション時代を先駆けた商業施設ららぽーと、本格的レジャー時代の到来を告げたディズニーランド、不動産と金融を融合させた「不動産の証券化」などにイノベーティブに挑戦し、新たな価値の創造を実現してきました。こうした当社のDNAともいえるチャレンジ精神を発揮し、日本のまちづくりのノウハウを東アジアなどでの住宅や商業施設の開発にも提供し、環境共生の時代にグローバルに貢献していきたいと考えています。


【聞き手】
三井住友銀行経営企画部CSR室長 條 晴一
日本総合研究所主席研究員 足達 英一郎

Profile

岩沙 弘道(いわさ ひろみち)
1942年生まれ。1967年慶応義塾大学大学院法学研究科修了。同年、三井不動産株式会社入社。1995年取締役プロジェクト企画本部プロジェクト第一企画部長、1996年常務取締役プロジェクト企画本部長、1997年代表取締役専務取締役プロジェクト企画本部長を経て、1998年より代表取締役社長を務める。社団法人日本経済団体連合会副会長、社団法人不動産協会理事長、社団法人不動産証券化協会理事長を兼任。



会社概要

三井不動産株式会社

設立
1941年
本社
東京都中央区日本橋室町2-1-1
資本金
1,742億9,600万円
代表者
代表取締役社長 岩沙 弘道
事業内容
ビルディング事業、商業施設事業、住宅事業、アコモデーション事業、不動産投資サービス事業など
ホームページ
http://www.mitsuifudosan.co.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.87(2011年1月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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