環境ビジネス情報

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環境先進企業トップインタビュー

お客さま、地域の皆さまとともに環境と共生する社会を築きたい。 株式会社平和堂 代表取締役社長 夏原 平和氏

お客さま、社員、地域に喜ばれる企業

御社は経営方針の1つに「地域社会や環境との共生をはかる会社の実現」と掲げておられます。こうした経営方針の背景にあるお考えをお聞かせ願えますでしょうか。

 小売業は、お客さまに商品を買っていただいて成り立つ仕事です。お客さまに弊社を選んでいただくには、地域から信頼を得ることが何よりも重要ですから、「お客さま第一」を基本としなくてはいけません。今では当たり前のことですが、創業者である父、平次郎が滋賀県彦根市に平和堂の第1号店を開いた1957年当時は店頭交渉が当たり前の時代で、売り手の都合で価格を決めている店がほとんどでした。そんな時代、父は初めて参加した小売業セミナーで「商人は正人たれ」という言葉に出会い、大きな感銘を受けたそうです。「正人」とは正しい商売をする人、すべてのお客さまに公平に決められた価格で販売する正札販売をする人のことです。「誰かを損させるような商売ではなく、みんなが喜ぶような商売をしなくてはいけない」と学んだ父は、1961年、「正札販売・品質の保証・返品交換の自由」という3つの約束を宣言しました。正札販売は、当時では珍しく、「顔見知りでなくても誰でも同じ値段で買える」「子どもだけでもおつかいできる」と、お客さまの信頼を得ることにつながりました。その結果、平和堂は大きく成長を遂げることができたのです。

 父は、社員教育などの機会があるごとに「会社」と「社会」の話をしました。この2つの言葉は、反対から読むと「社会」「会社」と同じように読むことができます。この言葉が示すように「会社」と「社会」はまさに表裏一体の関係にあります。社会はさまざまな会社を必要とする一方、会社は社会に奉仕をしなくてはいけません。逆にいえば、社会に迷惑をかける企業は滅びてしまうのです。商売を通じた社会貢献は、「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」という近江商人の教えにつながるものです。父に近江商人を真似する気持ちはなかったと思いますが、本当の商売とは何かを突き詰めた結果、先人が営々と築き上げてきた理念と一致したようです。

 弊社は、21世紀を迎えるに当たり、全社で目標とする企業イメージを共有するため、「Good People Company」という標語を掲げました。しかし、言葉は変わっても、社員、お客さま、地域のすべての人々を大切にする企業でありたいという思いは創業当時と変わりません。創業以来、「今、地域社会のために何ができるか」を常に考え、時勢に合った取り組みを推進してきました。こうした一連の活動の中で、必然的に環境の分野にも取り組むようになったのです。

粉石けんから始まった「環境セレクト」商品

御社は全国に先駆けて環境配慮型商品の促進やレジ袋の削減などに取り組まれました。こうした環境対策を推し進めるきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

 私どもの環境への取り組みは、1977年に琵琶湖で発生した赤潮から始まっています。近畿1,400万人の水がめである琵琶湖の汚染は、地域住民に大きな衝撃を与えました。洗濯用合成洗剤に含まれていたリンが汚染原因の1つに挙げられたことで、合成洗剤の使用をやめ、天然油脂を主原料とする粉石けんを使おうという運動が始まりました。粉石けんの効果や上手な使用方法を説明する学習会が地域ごとに開かれ、1980年には、リンを含む合成洗剤の販売を禁止する条例が制定されました。これを機に、粉石けんは瞬く間に普及しました。弊社には、合成洗剤を販売しないでほしいという消費者団体からの要望も寄せられました。一方で、お客さまの中には合成洗剤を求める方もいらっしゃいますので、こうした声も無視することはできません。そのためリンを含まない合成洗剤の販売を続けましたが、チラシに掲載しないなど、販売促進につながる行為は一切行いませんでした。さらに、お中元やお歳暮でもらった合成洗剤の処分に困っているお客さまが多くいらっしゃることがわかり、合成洗剤と粉石けんの交換を始めました。

 現在、弊社では、粉石けんを含め環境配慮型商品の取り扱いを拡大しています。日用品や食料品などから素材や原料に配慮した商品、省エネ商品などを独自の環境基準で選定し、「環境セレクト」商品として推奨販売しています。これに加え、1991年に発足した「環境問題特別委員会」、その後身である「EMS(環境マネジメントシステム)推進会議」を中心に、買い物袋持参運動や地産地消、食育、リサイクルなど、さまざまな取り組みを行ってきました。

地域に醸成された豊かな環境意識を尊重したい

買い物袋持参運動の取り組みはどのように始められたのでしょうか。

 1980年代以降、滋賀県の環境運動が盛り上がる中、野洲市にある消費者団体から買い物袋持参運動に協力してほしいというご相談がありました。地域の声に応えるため、社内で検討を重ね、買い物袋を持参されたお客さまに対し弊社発行のポイントカードに「エコポイント」を5点(5円)付与することを決めました。近年、買い物袋持参運動は身近な環境保全活動として全国的に広がっています。しかし、弊社が取り組みを始めた1991年はほとんど認知されていませんでした。調査してみると、この活動には地域差があることが判明しました。滋賀県に比べ、北陸地域や大阪府、京都府などの都市圏では持参率が低かったのです。こうした状況を改善するため、ごみの削減を目指す行政や地域の学習グループと話し合い、北陸・東海地域の全店舗でレジ袋の有料化に踏み切ることにしました。その結果、同地域の買い物袋の持参率は飛躍的に向上し、現在では8割を超えるまでになりました。

 この成功を受け、滋賀県の店舗でもレジ袋を有料化して、さらに持参率を上げようという意見が上がりました。しかし、私は、有料化は必ずしもよい効果を生むとは限らないと考えています。滋賀県では琵琶湖の赤潮問題を地域の力で乗り越えてきた経験から県民一人ひとりに豊かな環境意識が醸成されています。その意識の高さが自発的な行動となり、買い物袋の持参や店頭での資源ごみ回収など、さまざまな取り組みにつながっているのです。これに対し、レジ袋の有料化は、環境保全という本来の動機をうやむやにしてしまう恐れがあります。たとえ買い物袋の持参率が向上しても、環境への意識が薄らいでしまっては意味がありません。そのため、滋賀県では、当面の間、有料化ではなく地域の環境意識を尊重する形で、店舗ごとに持参率向上を目指したいと考えています。

 社会全体の環境負荷を低減するには、家庭での取り組みが重要です。一人ひとりの環境意識を高めることこそ、大きな目標を達成する近道になると私は信じています。

地場野菜の普及を目指し、地域と連携

御社の地域密着の姿勢は、お客さまはもちろん、地元の農家、行政や企業との連携にも表れています。地産地消は、まさに地域に根差した取り組みといえますね。

 弊社では、農家や自治体、メーカーと協力し、地元生産品の販売に積極的に取り組んでいます。2010年度は34店舗に地場野菜コーナーを設置し、販売の強化に努めました。青果部門における販売金額構成比15%以上を目指し、今後も取り組み店舗数を増やしていく予定です。この取り組みのきっかけとなったのは、福井県の弊社ショッピングセンター内で営業していた、池田町の生産品を扱うアンテナショップ「こっぽい屋」というテナントでした。町長から「空きスペースで地元の生産品を販売させてほしい」というご提案をいただいたときは、自治体のテナントという前例のないことだったので戸惑いましたが、開店すると予想を上回る反響がありました。「こっぽい屋」で販売していたのは、家庭菜園でつくった野菜や、山菜、生花、工芸品など、すべて池田町で生産された商品です。それぞれの商品には、生産者の名前が必ず書かれています。町長に理由を聞くと、「生産者に責任を持ってもらいたかったことと、名前をつければお客さまが覚えて応援してくださると考えたから」と話してくれました。生産者の顔が見えることが安心・信頼につながり、今や「こっぽい屋」は年間売り上げ1億円を達成するまでに成長しています。

御社は地域密着型企業として信頼されているからこそ、さまざまな提案が舞い込むのでしょうね。しかし、デフレの進行とともに価格競争が激化する中、環境配慮型商品や地産地消がお客さまからの支持を得ることは難しいのではないでしょうか。

 今は、安いものを求める消費者と、値段が高くても品質にこだわる消費者とに二極分化しています。一般的に若い年齢層は価格で選ぶ傾向がありますが、高齢化が進展する日本では後者にも確実に需要があります。弊社では、地場野菜などの品質にこだわった商品を、出入り口付近に配置したり、POPなどを使ったPRを強化して販売拡大に努めています。売り上げは少しずつ伸びていますが、「こっぽい屋」のように爆発的な人気にはつながっていません。地場野菜を普及するには、地域の生産者と一緒に店づくりに取り組まなくてはならないと考えています。「こっぽい屋」では、池田町の農家の方々が店頭に立ち、訪れたお客さまに「こうやって調理するとおいしいよ」「この花はお水を早く替えたほうがいいよ」と、調理方法や保存・加工方法を詳しく説明しています。このように商品の説明やつくり手の思いを伝えることで、外国産の野菜より少々高くても買っていただけるのだと思います。新鮮な野菜を提供するだけでなく、情報の発信が大事だということです。

次世代を担う子どもたちに学びの場を提供

地域と連携して、子どもたちに対する環境教育も推進されていますね。

 地域の小学生を対象にした環境学習「エコピースクラブ」では、オリジナル教材「エコみつけシート」に記載された4つの質問に沿って子どもたちが店舗内を見学します。食品売り場の地場野菜や、店舗の出入り口に設置された資源回収ボックスなどのポイントを巡りながら、エコショッピング(環境に配慮したお買い物)のヒントを探してもらいます。

 この環境学習のフィールドとなるのは、子どもたちが日常的に家族と買い物に訪れるショッピングセンターです。しかし、慣れ親しんだはずの場所であっても、地元産の野菜が販売されていることに驚く子がいるなど、“エコ”という視点を持つことで新しい発見があるようです。学校の先生からも「座学ではなく実生活との関わりの中で体験的に理解できるのがよい」と好評です。エコピースクラブの目的は、将来を担う子どもたちに環境について学んでもらうこと、そして参加した子どもたちがそれぞれの家庭で先生になることです。子どもたちがお母さんに「こっちの方が環境にいいんだよ」と教えてあげることができれば、親子の触れ合いにもなるでしょうし、家庭から地域へ環境活動がどんどん広がっていくと思うのです。

“地域との連携”の中に新しい環境活動の道筋があるのかもしれませんね。

 照明や機械設備を省エネ型に替えるなど、設備投資によって環境対策を進める方法もありますが、我々のような小売業の強みは、たくさんのお客さまとともに取り組みを推進できることだと思います。我々は30年以上にわたり、世界の名作を題材にした人形劇ミュージカル「平和堂親子劇場」を開催してきました。一見すると、こうした取り組みは企業活動と関係ないように見えますが、これも弊社とお客さまを結びつける絆になるのです。最近では、「子どもの頃、よく母と来ました」とおっしゃって下さるお客さまが増え、世代を超えて受け継がれるイベントに育ってきました。こうしたイベントを通じて、お客さまとの距離を縮め、環境に優しいまちづくりに貢献していきたいと考えています。


【聞き手】
三井住友銀行経営企画部CSR室長 條 晴一
日本総合研究所主席研究員 足達 英一郎

Profile

夏原 平和(なつはら ひらかず)
1944年、滋賀県彦根市生まれ。 1968年、同志社大学法学部を卒業後、株式会社平和堂へ入社。 1989年、代表取締役社長に就任。現在に至る。



会社概要

株式会社平和堂社

設立
1957年
本社
滋賀県彦根市小泉町31
資本金
116億1,437万円
代表者
代表取締役社長 夏原 平和
事業内容
食料品・衣料品・住居関連品等の総合小売業
ホームページ
http://www.heiwado.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.89(2011年5月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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