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環境先進企業トップインタビュー

復興を通じて宮城・東北・日本の絆を深めながら、環境共生型の先進的な地域づくりを目指します。 宮城県知事 村井 嘉浩氏

環境に配慮した復興計画

宮城県は、「みやぎ環境税」導入、景観・環境保全や生物多様性、地球温暖化対策などの施策を実施されてきた環境先進県ですが、震災後は環境政策をどのように位置づけていかれるのでしょうか。

 私たちには、人と自然が共生する豊かで美しい宮城の県土を構築し、将来の世代に引き継いでいく使命があります。その使命を果たすため、県では2006年3月に「宮城県環境基本計画」を策定し「ひとりひとりが環境を考えて行動する“グリーン”な地域社会への変革」を目指し、経済や社会の発展と両立する環境負荷の少ない持続可能な地域社会の構築に取り組んできました。また、2011年度からは「みやぎ環境税」を導入し、これを活用した「みやぎグリーン戦略プラン」を策定し、各種環境施策のさらなる拡充を目指してきました。

 東日本大震災の発生を受け、本年度は「みやぎ環境税」の課税目的を損なわない範囲で、「節電、省エネ対策の推進」「生活基盤の再建と災害に強い県土保全」という2つの視点を踏まえた復興事業に注力する方針を打ち出しました。

 今後は「宮城県震災復興計画(案)」に基づき、県政を運営していくことになりますが、環境政策についても、復興計画案で掲げる「持続可能な社会と環境保全の実現」を目指し、施策を推進していくことになります。

 具体的には、向こう3年間の復旧期に、今後の国のエネルギー基本計画の見直し状況を踏まえつつ、省エネルギーの促進や自然エネルギー等の導入など、環境負荷の少ない社会の形成に向けて取り組みます。次の再生期には、今後の自然環境保全に必要な調査の実施や自然エネルギーなどの導入促進を継続し、環境配慮型のまちづくりを支援していきます。その後の発展期には、人と自然が共生する豊かで美しい県土を創造するとともに、県民や企業等、すべての主体が環境負荷の低減を考えて行動し、さまざまな環境・エネルギー問題に適切に対応することにより、環境配慮と経済発展が両立した持続可能な社会の実現を図ります。

 このような復興への歩みに、県民や行政だけでなく、県内外の企業やNPO、大学などさまざまな方々と連携して取り組むことが、宮城の復興を着実なものにすると信じています。

クリーンエネルギーを活用したエコタウンを形成

復興計画案では「再生可能なエネルギーを活用したエコタウンの形成」に加え、「次代を担う新たな産業」としてクリーンエネルギーや環境産業の振興を掲げていらっしゃいます。その実現には、さまざまな困難が想定されますが、具体的な実現の方策についてお聞かせ願えますでしょうか。

 宮城県沿岸部は、比較的雪が少なく1年を通じて日射量が多いため、太陽光発電の適地といわれています。また、太陽光パネルは表面温度が上がると発電効率が落ちるので、夏場でも酷暑の少ない宮城県は好条件が整っているといえます。この好立地を活かし、これまでも県政の主要施策として「クリーンエネルギーみやぎの創造」を掲げ、環境と経済が両立した、真に豊かな地域を目指し、自然エネルギーの導入や省エネルギーの推進、また関連産業の振興に向けた取り組みを進めてきました。

 昨今では、大震災直後の停電や、ガス・石油燃料の不足、発電所の被災による電力供給の逼迫などにより、地球温暖化問題だけではなく、危機管理の観点からも、エネルギーに対する関心が高まっています。集中型エネルギーシステムが大災害に対し脆弱であることを考慮すると、復興に向けて新たに造成する町や街区は、分散型のクリーンエネルギーを大幅に取り入れた高度なエネルギー活用地域、いわゆる「エコタウン」にするべきと考えています。

 エコタウンの形成には、技術的な問題のほか、導入や運営に必要な費用、各種法令の規制といったさまざまな課題があります。県では、これまで以上にクリーンエネルギーの導入促進に取り組むとともに、国に対し、規制緩和や財政支援の要望をあげていきます。たとえば、大規模太陽光発電所の緑地率の緩和や、太陽光パネル設置時の無利子融資を創設するなどの取り組みが必要だと考えています。

 また、エコタウンの形成には、最先端技術の集結が必要であり、エネルギーや住宅など幅広い関連産業が関わります。今後、復興が進み需要が高まれば、県内にクリーンエネルギー関連産業が集積することも期待できます。これらの分野は、すでに県内で集積が進んでいる高度電子機械産業や自動車関連産業との相乗効果を生み、地元企業の製品開発力の向上や取り引き拡大につながる可能性があります。次世代の県内基幹産業となりうるクリーンエネルギー関連産業を集積させるために、県では新たな企業の誘致を積極的に進めていく予定です。

 国内各地でエコタウンやスマートシティが実証的につくられていますが、その大半は都市部の人口の減らない地域での実験です。これに対し、過疎化・高齢化が進んでいる地域におけるエコタウンの取り組みは、今後の日本の将来を見据えた、大きな意義のあるものとなると考えています。

復興に欠かせない民間活力の導入

「復興と環境」、特にエコタウンの形成や、クリーンエネルギー・環境産業の振興において、企業にどのような役割を期待されていらっしゃいますか。また、復興の過程における民間活力の導入のために、自治体・県・企業とのパートナーシップを円滑に進めるには、何が必要だとお考えでしょうか。

 壊滅的な被害からの復興には、多額の経費と柔軟な制度運用が必要となります。適切な財源措置が講じられなければ、被災県や市町村が描く復興計画は「絵に描いた餅」になってしまいます。そのため、県では民間投資の促進や集団移転の円滑化に向け、思い切った規制緩和や予算・税制面の優遇措置などを盛り込んだ「東日本復興特区」の創設を国に提言してきました。2011年7月29日に国の東日本大震災復興対策本部が示した復興の基本方針にも、復興特区制度の創設、民間の力による復興という文言が盛り込まれています。同様に「宮城県震災復興計画(案)」でも、民間活力導入の必要性を掲げています。

 これまで宮城県では、ものづくり産業を根づかせて県経済の成長を図る「富県宮城の実現 〜県内総生産10兆円への挑戦〜」という目標を掲げてきました。しかしながら、今回の震災により、県内のものづくり産業は沿岸部の直接的被害のほか、サプライチェーンの分断などによって大きな被害を受けました。このため、まずは生産活動を震災以前の水準に戻し、早急に生産機能を回復していくことが必要です。また、今後は新たな企業や工場の誘致にも力を入れていかなくてはなりません。

 このような状況の中で、7月にはトヨタ自動車さまが東北の関連3社を統合し、エンジン工場を県内に設置するとの発表がありました。これを受けて関連企業や部品メーカーの東北進出も期待されており、ものづくり産業の復興に大きな力を得ることができました。ほかにも数多くの企業さまが被災県への本社移転や工場、コールセンター新設などを表明してくださっており、東北地方に明るいニュースが広がっています。

 震災は、確かに大変悲しい出来事ですが、視点を変えてみれば、復興時に膨大な需要が発生する千載一遇のビジネスチャンスということもできます。県内外の企業の皆さまには、ぜひともこのビジネスチャンスを最大限に活かしていただきたいと考えています。県としても民間活力を活かせるよう、企業の皆さまのご提案を積極的に取り入れ、優遇措置を講じるなどして、協力関係を築きながら復興に取り組んでいきたいと考えています。こうした流れを加速するために、私は常に最前線に立ち、復興に関することであれば、どのような相談もお受けする準備をしています。万一、職員の対応に満足いただけなければ、私が直接出向いてお話を伺いますので、ぜひともご協力いただけますようよろしくお願いいたします。

復興の主体は県民一人ひとり

「県民一人ひとりが復興の主体。総力を結集した復興」を掲げていますが、県民一人ひとりの主体性や県民同士の絆、多様な活動主体との協力体制を盛り上げていくために何が必要になるとお考えでしょうか。

 早期の復興を成し遂げるには、県民一人ひとりが、犠牲になった方々への追悼の思いと宮城・東北・日本の「絆」を胸に、自らの役割を自覚し、主体的に国・県・市町村、企業、団体、NPOなど多様な活動主体と手を携えていくことが必要です。多様な活動主体が総力を結集して復興活動に臨まなければ、ふるさと宮城の復興と発展を実現できません。県はこうした復興活動を盛り上げるために、全力で県民をサポートする方針を打ち出しています。

 また、復興に向けて、今県民が最も必要としているのは「仕事」です。人は自分の仕事を持ち、誰かの役に立ち、収入を得ることで心の安定を得られるものです。だからこそ、国からの支援に頼る状態から早く脱却し、自分たちの手で仕事をつくり、雇用を生み出していくことが重要だと考えています。県としても全力で雇用創出に向けた施策を講じますが、県民一人ひとりが主体的に仕事をつくり出す姿勢を持ち、一緒になって復興に取り組むことが大切です。復興までの道のりは長く険しいものとなるでしょうが、復興の取り組みを通して、宮城県民のみならず、東北が、そして日本全体が手を携えて絆を深め、険しい道を歩んだ先に、必ず明るい未来が開けると、私は信じています。

批判を恐れずにビジョンを示し、目指す方向へ導く力が必要

地元でも震災後の知事のリーダーシップを賞賛する声が高まっています。有事におけるリーダーシップの在り方、リーダーとして自ら心がけておられることについて、最後にお聞かせ下さい。

 リーダーシップの在り方やリーダーの条件は、それぞれの置かれた立場によって異なりますが、県知事としての経験を踏まえて申し上げたいと思います。まず、たとえ批判を受けようともしっかりとしたビジョンを示し、それに向かって粘り強く関係者と話し合いながら、目指す方向に導いていく指導力が重要だと思います。また、リーダーは、自らが指示あるいは行動したことへの結果責任をしっかりと負うことが必要です。何か行動を起こすときには、批判は必ず出てくるものです。その批判から逃げずに体を張って受け止めることが、リーダーの役目ではないでしょうか。県民の皆さまが言っていることを全部聞いて“わかりました”というだけがリーダーシップではなく、全体の利益になることを選択し、その実現に向けて人々を説得し、ぶれずに行動する姿勢が重要だと思います。

 私も、ただ今申し上げたことを常に心に留めながら職務に当たっていますが、今後、長く険しい復興への道のりを力強く歩んでいくには、より一層の強力なリーダーシップが求められますので、これまで以上に身を引き締め、この難局に立ち向かっていきたいと考えています。


村井 嘉浩(むらい よしひろ)

Profile

村井 嘉浩(むらい よしひろ)

1960年8月生まれ
1984年3月  防衛大学校(理工学専攻)卒業
1984年4月  陸上自衛隊幹部候補生学校入校
1992年4月  財団法人松下政経塾入塾
1995年4月  宮城県議会議員
2000年7月  宮城県議会循環型社会・環境
        対策特別委員会委員長
2005年11月 宮城県知事(現在2期目)


この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.91(2011年9月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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