環境ビジネス情報

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環境先進企業トップインタビュー

アジア一円の社会システムづくりに貢献し、環境・リサイクル会社のNo.1を目指します。 DOWAエコシステム株式会社 代表取締役社長   佐々木 憲一氏

鉱山事業から環境分野へ

御社は、グループ会社が営む鉱山事業から環境ビジネスを分離して設立されたと伺っておりますが、分社の経緯をお教え願えますでしょうか。

DOWAグループの歴史は、1884年に秋田県北東部の小坂鉱山で創業した同和鉱業株式会社(現DOWAホールディングス)に始まります。そもそも鉱山事業は、地質から資源、土木建築、選別分離、製錬、燃焼、電気、熱、化学分野など、多岐にわたる知識と技術が求められる総合エンジニアリングです。鉱山というと、山とメタルばかり注目されますが、そのプロセスには膨大なノウハウや技術が詰まっています。DOWAグループは、社内に各分野の専門技術者を有しており、その知識・技術や経験を生かせる分野が環境ビジネスだったのです。鉱山事業を営む中で培った鉱害防止技術も、現在の環境ビジネスを生み出す基礎となりました。

また、内的要因に加え、環境ビジネスを展開せざるを得ない外的要因もありました。それがご存じの1985年のプラザ合意です。急激な円高を受け、日本での鉱山事業は採算が取れなくなり、新規分野にチャレンジせざるを得なくなったのです。いくつものチャレンジの中から立ち上がったのが、弊社が担う環境ビジネスの分野なのです。

現在、DOWAエコシステムには4つの事業部があります。産業廃棄物・一般廃棄物の処理を担うウェステック事業部、土壌汚染・地下水汚染の調査から対策までを担うジオテック事業部、そして貴金属、廃家電、廃自動車などのリサイクルを担うリサイクル事業部、さらにすべての事業に関わる物流部門のロジスティックス事業部です。環境ビジネスとしては、先に挙げた3つの事業部が核となっています。

環境の時代とビジネスの盛衰

DOWAエコシステムとして独立されたのは、いつでしょうか。

当初は鉱山事業本部の下部組織でしたが、1991年に組織変更で「環境ビジネス本部」が設立され、2000年の社内カンパニー制導入を機に、エコビジネス&リサイクルカンパニーになり、持ち株会社制を導入して事業会社になったのは2006年です。

1992年のリオ地球サミットに先立っての環境ビジネス本部の設立に先見の明を感じます。その後の市場の伸びはいかがでしたか。

1990年代後半から2000年代前半にかけて、法制度の整備や需要の拡大に伴って拠点を増やし、ウェステック事業もジオテック事業も右肩上がりに発展しました。リサイクル事業は、家電や自動車については法定の回収・処理システムがあるために、市況に直接的に左右されず、企業努力のみでは拡大できない部分もあります。ただし、2009年のエコポイント制度導入時は、製造側もフル稼働し、工業スクラップのリサイクル需要が増えましたし、廃家電の入荷台数も急拡大しました。今は一段落し、市場は落ち着いてきています。

今後の環境ビジネスの展望を、どう捉えていらっしゃいますか。

社会的に3Rへの取り組みが推進されていますので、ウェステック事業で扱う廃棄物の焼却処理量そのものは、徐々に減っていくでしょう。環境の時代ですから、廃棄物の抑制は世の流れです。ただし、過去に製造・使用されたPCBや残留性の農薬など特殊なものは責任を持って処理していかなければならず、処理し終わるまで対応していく必要があります。ジオテック事業は、2006年ごろをピークにリーマンショックの影響で市場が低迷していました。ようやく2010年に底を打ち、現在は回復基調にあるといわれています。昨今では、大きな費用をかけて土壌の汚染部分をすべて除去するよりは、工場を稼働しながら汚染の拡散を防ぎ、従業員や周辺住民に健康被害をもたらさないよう管理していく企業が増えています。

国境を超えた環境ビジネス

御社は、社員の半分近くが海外というグローバル企業ですが、いつごろから海外展開を始められたのでしょうか。

海外展開は2003年の中国・蘇州への進出が最初です。改革開放政策により中国の外資系企業受け入れ態勢が整ったことが、大きなきっかけでしたね。当初は産業廃棄物に含まれる希少金属のリサイクル市場を見据えた展開でした。

2003年に進出した際、将来的に中国で家電リサイクル法ができるという目算があったのですか。それとも、そういう仕組みをつくるための働きかけを行ったのですか。

日本の家電リサイクル法も欧米の法規制を参考にしながら、当時の環境庁が整備を進めていきましたから、将来的に中国や東南アジアでも同様の動きはあると想定していました。家電のように金属含有量が多くない廃棄物の適正なリサイクルが行われるためには、回収・リサイクルシステムの法制度化が大前提です。しかし、当時は規制がなかったので、まずはビジネスとして市場が確立されている希少金属のリサイクルから事業進出しました。中国版の家電リサイクル法が各都市で順次施行されたのは2011年1月以降ですので、今後家電リサイクル事業が拡大すると考えています。

ジオテック事業も海外展開されていらっしゃるのですか。

現在、中国、インドネシア、タイ、シンガポールに拠点を置いて事業を展開しています。インドネシアでは、採油関連のボーリング掘削汚泥に含まれる油の処理と土壌汚染のバイオレメディエーションに取り組んでいます。シンガポールは、早い時期に規制が敷かれ、国民の意識も高く、すでに市場が確立されています。中国では、第12次5カ年計画に土壌汚染対策が盛り込まれましたので、今後、急速に市場が立ち上がってくると予想しています。中国では、ズリ(採掘時に副生成される廃石)や排水の処理がきちんと行われていない鉱山が一部存在し、日本の足尾銅山のような鉱害が起きる可能性があります。また、都市部の公害、農薬による農用地の汚染など、弊社が貢献できる余地は大きいと思います。

アジアNo.1の環境・リサイクル企業を目指す

日本国内でも廃棄物やリサイクルなどの静脈系ビジネスは一筋縄ではいかないことが多いのではないかと思いますが、アジア諸国ではいかがですか。

おっしゃる通りで、市場参入は簡単にいきません。その中でいかにコンプライアンスに配慮していくかが重要だと思っています。なお、東南アジアでは、米国系の廃棄物処理会社がインドネシア、タイ、シンガポールにおいて、欧米並みの厳しい管理基準を採用して事業を展開していましたので、2009年に同社を買収する形で市場への参入を果たしました。

一般に、欧米企業は海外進出する際、しっかりと地元に入り込んでから事業を進めますが、日本企業はその点で非常に苦労しているように見えます。

おっしゃる通りで、欧米企業はまず行政へのコンタクトから入っていくんですね。進出国の制度がまだ確立されていない場合、行政への啓発活動を進めながら市場をつくり出していくというのが彼らのやり方です。DOWAエコシステムグループでインドネシア国内で唯一、有害廃棄物の最終処理の許可を有しているPPLi(P.T. Prasadha Pamunah Limbah Industri)社などは、その典型例です。同社にはインドネシア政府の資本が入っていますが、ここの管理型処分場は、まさに米国基準の管理方法をそのまま取り入れてつくられた処分場です。このように計画段階から携わり、一緒に汗をかいて社会システムを構築し、その結果としてその国と企業の双方が果実を得るというのが、本来のやり方だと思います。

環境ビジネスは、完成した製品を他国に買っていただくのではなく、その国の社会システムに入り込んで、その国で排出されたものを取り扱っていくわけですから、そこに外国の企業が入っていくのは相当、前さばきといいますか、行政との連携が必要です。

そうしたノウハウを御社はどこから学ばれてきたのですか。

いわば先達からの学びでしょうね。いまやグローバル化によって環境問題は地球規模の対応が必要な時代になりましたから、自国の努力だけで解決するには限界があります。日本は、早い時期に公害問題を経験したため、他国に先駆けて環境汚染対策技術を確立することができました。そういった事業に携わってきた人材が、今も弊社にはたくさんいるのです。彼らが強い使命感を持って他国に入り、情熱を持って現地の人々と協力して取り組んできたことが、弊社の海外展開の原動力になっていると思います。先輩方の使命感は、本当にすごいものがあります。

ある意味で社会システムのデザインをしていることになりますね。

そうですね。我々が目指しているのは、長年蓄積した技術やノウハウを生かして、アジア一円の循環型社会づくりに貢献していくことです。

社員の方々に、そのような事業の社会的意義をお話しする機会はあるのですか。

私自身、あらゆる機会で「アジアNo.1の環境・リサイクル会社となって、アジアの環境改善に貢献する」というコンセプトを発信するようにしています。そのコンセプトは、国内、国外問わず全社員に浸透しています。海外では、国内と同じコンセプトを共有した現地社員がマネジメントの中枢を担い、官民のネットワークを駆使し、事業を通じて各国の環境改善に貢献しています。たとえば、先ほどご紹介したインドネシアのPPLi社は、行政とタイアップしている唯一の外資系企業として非常に強い信頼を得ており、行政から助言を求められることもあります。こうした事業展開を今後も目指していきたいと考えています。

地球環境を救う「分解者」の視点

「アジアの環境改善」のために、今後どのようなことが必要になるとお考えですか。

環境問題は、アクト・ローカリーでなくては目的を果たせないと思っています。理想的には、国民一人ひとりが物を大切にし、ごみを捨てるのではなく、きちんと集めてリサイクルする意識を持つことが重要だと思っています。そうなると、結局は人間の環境に対する意識レベルをどう上げていくかという話になります。つまり、「教育」の問題です。アジアの国々ではこれまで自然に溶け込む形で生活が営まれてきたため、環境を強く意識することは少なかったのではないかと思います。しかし、加速度的に産業が発展する中、環境に対する正しい認識を持たざるを得ない状況にあります。政府がビジョンを示し、国民に分別やリサイクルの協力を求めていく、そういうステップが必要になるのでしょう。

国民の意識が高まり廃棄物や汚染がなくなると、御社の事業が縮小してしまう懸念がありませんか。

意識が高まるとごみが少なくなるのは当然の流れです。それでも人類が原始時代に戻らないかぎり、廃棄物、特に人為的に生成された化学物質などの難処理物がなくなることはないでしょう。そこに弊社のビジネスがあると思っています。しかし、今の4事業が永遠に続くとは考えていません。中長期的な展開は、世の流れをウォッチしながら随時変えていかなければならないと思います。ただし、残念ながら、現時点では、無垢の自然環境は皆無であると言っていいほど人間社会が生み出した矛盾が地球を覆っています。これらの矛盾、すなわち汚染をすべて浄化するのは壮大なプロジェクトで、まだまだ弊社の出番はあると考えています。

ダーウィンは『種の起源』で、生態系を表現するのにエコノミー・オブ・ネイチャー(自然の経済)という言葉を使っています。物質やエネルギーが無駄なく使われる自然のシステムをエコノミーと定義しているわけですが、そういう社会システムをつくることが理想ではないでしょうか。

弊社が考えるエコシステムの概念は、まさに「エコノミー・オブ・ネイチャー」そのものです。これを実現することが我々の使命だと考えています。

古代エジプトではスカラベ(フンコロガシ)が再生・復活を象徴する太陽神の化身として崇められていましたが、これからは御社のような「分解者」的な役割の企業に注目が集まっていくのではないかと感じています。そして、分解者の視点で、相手国にとってよりよい社会システムを構築する仕事には、大きな可能性を感じました。

スカラベは排泄物を分解し、地球に同一化させる役割を担っています。弊社も社会が生み出す残渣を分解し、資源として上流側に戻していく循環の輪をつなぐ役割を担っています。そういった意味では、「分解者」であるとともに「統合者」でもあるのです。ただ、言うは易しで、この分野の事業はすんなり進むものではありません。それでも私は、各国の方々と一緒に循環型社会づくりに携われるこの仕事に大きな誇りを感じています。


【聞き手】
三井住友銀行経営企画部CSR室 上席室長代理 川島 哲也
日本総合研究所 主任研究員 井上 岳一

佐々木 憲一(ささき けんいち)

Profile

佐々木 憲一(ささき けんいち)
1978年3月京都大学大学院工学研究科土木工学専攻修了。同年10月千代田デイムス・アンド・ムーア株式会社(現イー・アンド・イー ソリューションズ株式会社)入社。20年以上にわたって技術部、環境部に勤務したのち、2001年取締役事業部長、2006年常務取締役環境事業部長に就任。2011年4月よりDOWAホールディングス株式会社の執行役員ならびにDOWAエコシステム株式会社の代表取締役社長を務める。



会社概要

DOWAエコシステム株式会社

設立
2006年10月
本社
東京都千代田区外神田4-14-1
資本金
10億円
代表者
代表取締役社長 佐々木 憲一
事業内容
リサイクル、廃棄物処理、土壌浄化および関連する事業
ホームページ
http://www.dowa-eco.co.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.95(2012年5月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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