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環境先進企業トップインタビュー

保続林業の理念のもと、持続可能な森づくりを推進し、人と地域に貢献する世界一の森林会社を目指します。 住友林業株式会社 代表取締役社長 市川 晃氏

受け継がれる「保続林業」の精神

建材、住宅など、広く事業を展開されていながら、社名にはあえて「林業」という言葉を使い続けているところに、森林に対する御社のこだわりと誇りを感じます。

弊社の創業は、今から300年以上前の別子銅山開坑まで遡ります。1691年、住友家が、江戸幕府の許可を得て伊予国(現・愛媛県)にあった鉱脈の採掘を始めました。これに伴い、坑道の土砂を支える坑木や薪炭用の木材を周辺の山林から調達するようになったのです。しかし、明治に入り増産体制が強化されると、長年にわたる伐採、銅の精錬による煙害の影響もあって、銅山周辺の環境は荒廃の危機に陥りました。そこで始まったのが、年間100万本単位の木々を植林するプロジェクトです。この大規模な森林再生事業こそ、住友林業の原点といえるでしょう。

戦後、住友家の林業部門は、財閥解体によって6社に分割されたのち、幾度かの合併が行われました。そして、1955年に住友林業株式会社となり、それまでの山林事業を引き継ぐとともに、全国的な国産材の販売体制を確立して流通に乗り出します。当時は、戦後復興期で住宅資材となる木材への需要がどんどん高まっていた時代です。市場のニーズに応える形で、国産材に加え海外の木材や建材の輸入事業にも着手することになりました。新たに住宅事業が加わったのは1975年のことです。事業を始めた当初、国内ではプレハブ住宅が人気を集めていましたが、弊社は木造住宅にこだわりました。長年培ってきた森林経営のノウハウと木材の活用技術を活かして、日本古来の文化である木造住宅の進歩と豊かな住生活に貢献したいと考えたのです。現在は、国内だけでなく海外へも活躍の場を広げ、木材・建材の製造・加工・販売から住宅建築、不動産開発まで、多岐にわたる事業を展開しています。

川上の森林経営から川下の住宅販売まで、"木"を巡って一貫した事業に取り組まれていることが御社の強みですね。

住友林業の森林経営を支えているのは、木を植えて、森を育みながら、木を活用し続ける「保続林業」の理念です。適切な森林管理を行えば、持続可能な資源活用が可能になり、地球環境への貢献にもつながります。住宅事業では国産材の利用推進に取り組んでいますが、こうした取り組みも「保続林業」の実践の1つだと捉えています。

時代を超えて住友林業の理念を受け継いでいくため、弊社では、新入社員も中途採用の社員も、入社後、別子銅山での登山研修に参加します。創業の地で、林業への知識と理解を深め、弊社の歴史を学んでもらうためです。

持続可能な森林から木材を調達

「持続可能な森林から木材製品や資材を供給する」ことを重要課題とされていますが、具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか。

弊社では、持続可能な森林から木材製品や資材を調達することを重要課題として掲げ、独自の「グリーン調達ガイドライン」や「木材調達基準」を設けています。海外では、駐在員によるサプライヤーへのヒアリングやサイト調査を毎年行っており、合法性を確認した木材しか輸入しません。国内ではまだ森林認証制度が一般化していませんが、代わりにグループ会社の住友林業フォレストサービスが産地を厳正に審査しています。伐採した分を植林するという条件を満たす山林から木材を仕入れており、植林木の利用を促進するとともに、森林資源の維持に貢献したいと考えています。

生物多様性については、どのような配慮をなさっているのでしょうか。

弊社は、四国、北海道、九州、和歌山の4地域に総面積約42,900ヘクタールに及ぶ森林を保有しています。この社有林では、生態系など周辺の環境に配慮しながら計画的な管理を行っており、伐採地を分散する小面積皆伐の手法を採用しています。動物が移動できる範囲で伐採を行うことで周辺への影響を低減し、跡地では必ず植林を行います。また、地域別に生息する可能性のある希少な動植物をまとめた独自の「レッドデータブック」を作成しています。ここに記載されている動植物が発見された場合、細心の注意を払って保全方法を検討します。

自然の恵みを活かした住まいづくり

住宅事業では「環境にやさしい住まい」を掲げていますね。

再生可能な資源である木を使う木造住宅は、鉄骨造やコンクリート造に比べ、材料の調達から建設までの段階におけるCO2排出量を低減させることができます。弊社では、住宅の建設・運用・解体・廃棄までの一生涯に排出するCO2を減少させるライフサイクルカーボンマイナス(LCCM)住宅の開発に取り組んでおり、設計段階では、自然の恵みを活かす「涼温房」という考え方を取り入れています。これは日本の伝統的な家づくりの知恵や工夫を手本とする設計手法です。夏は日差しを遮り、風の通り道をつくって熱を逃がすことで涼しさを生み出します。冬は太陽の光を採り入れ、熱を逃がさないようにすることで室内を温かく保ちます。また、庭の植木も「天然の空調装置」として重要な役割を果たします。植木や窓などの配置を工夫することで、心地よい空気の流れをつくり出します。

このほか、太陽光や太陽熱などの再生可能エネルギーやHEMSを採用することによって、居住段階におけるCO2排出量を抑えます。フォーアールエナジーとの共同研究では、電気自動車に搭載されるリチウムイオンバッテリーを住宅用蓄電池として利用するシステムも開発しており、これを併用することで、家庭内のエネルギーバランスの最適化を実現します。

また、木造住宅にこだわる弊社グループならではの取り組みとして、築100年に及ぶ日本家屋の再生にも力を注いでいます。グループ会社の住友林業ホームテックが手掛けた中には、築300年という家もあります。こうした旧家をリフォームすることには、資源を長く有効に使うだけでなく、日本の住宅の歴史を守り、後世に残すという意義があります。しかし、昔の家は耐震や断熱といった点で問題もありますから、現代の技術を使って暮らしやすさを向上させることが必要です。同社内に旧家再生研究所を設立して、旧家の伝統と現代の技術を融合し、今の暮らしに適した旧家再生に努めています。

木造化・木質化で木の活用を促進

近年、「木化(もっか)」というユニークな言葉を掲げて、木の利用推進を積極化されていますね。

弊社には、社員のやる気と能力を活かして新しいビジネスを創出する「未来のちからプロジェクト」という新規事業提案制度があります。非住宅分野で木材の用途拡大を目指す「木化宣言」は、もともとはこの制度を通じて社員から提案されたものでした。建物の構造部分を対象とする「木造化」と、内装に木材を使う「木質化」の2つのアプローチがあり、学校や幼稚園など公共施設や医療・福祉施設といった大型建築での木材の利用拡大を図ることを目的としています。

このアイデアをもとに建設された東京都大田区の3階建て老人ホームは、内外装に国産の木質部材を活用しています。木質の軟らかい床材は、高齢の入居者の自力歩行を促しやすく、転倒による骨折事故の低減にも効果があります。また、木材から放たれるフィトンチッドと呼ばれる香りの中には、抗菌作用を持った天然物質が含まれており、これは消臭・脱臭・防虫などにも効果があるという実証データが出ています。このほか、木から生み出される空間は、精神的にも癒やしの効果があります。

こうした木の効用を最大限に引き出し、全社を挙げて木化事業を推進していくため、2011年4月に「木化推進室」を設置しました。東日本大震災で被害を受けた岩手県陸前高田市に東北材を活用した木造の仮設店舗を、宮城県東松島市には同様に仮設診療所を建設するなど、木化を通じて地域住民のためのコミュニティづくりにも貢献しています。

木の利用を促進することで、森林再生にも貢献できますね。

学校などの公共建築物で木化に取り組み、多くの方に木の魅力を知ってもらうことによって、木材や森林への理解が深まることを期待しています。たとえば、子どもたちの中には、「木を伐る=悪いこと」と考えている子もたくさんいます。しかし、アマゾンなどの原生林とは異なり、日本の里山などは人間の手によって管理された二次的な自然です。そのため、伐採しないと逆に山が荒れてしまいます。現在、国産材の1年間の成長量は1億2,000万m3といわれていますが、実際に伐採されているのは4,000万m3だけです。このまま放置されれば、林齢構成のバランスが崩れ、将来的に森林資源の確保に問題が起こる可能性もあります。

また、植林と伐採を繰り返すことは、貴重な資源を守るだけでなく、大気中のCO2削減にも効果があります。苗を植えると、稚樹はCO2をどんどん固定し、成木へと育ちます。しかし、50年から60年たち、成熟してくるとCO2の吸収速度が低下するので、ある程度育った段階で木を伐採して再び植林すれば、効率的にCO2を吸収し続けることができます。伐採した原木は、木材や建材として使用し、住宅の解体後はパーティクルボード、バイオマス燃料などにカスケード利用していくことで、CO2を長期間固定しておくことが可能です。

サステナブルな林業を通じて環境保全の牽引役となることは、我々の社会的責任と捉えています。森林再生には、数十年という長い時間がかかりますから、できることを今すぐ始めなければなりません。弊社では、2009年から九州地域において、間伐や作業路網の整備など森林整備に官民連携で取り組んでいます。また、宮城県東松島市とは、先般、「復興まちづくりにおける連携と協力に関する協定」を締結しました。被災地跡での緑化や林業の推進のほか、公共施設の木化、木質バイオマス関連事業などに取り組み、「木化都市」という新たな都市モデルの創出を目指しています。

世界一の森林会社を目指して

「木一代、人三代」といわれるように、100年単位で考えるのが森林・林業の世界です。すでに300年以上の歴史をお持ちの御社が描く「世界一の森林会社」としての将来像は、どのようなものでしょうか。

住友林業独自のサステナブルなビジネスモデルをさらに強化し、世界各地へ横展開していく計画です。目標は「世界一の森林会社」ですが、これは単に広大な面積を持つ森林オーナーになるという意味ではありません。世界で最先端の知識と技術を活かして森林の育成や活用に取り組み、木の価値を最大限にまで高めることによって社会に役立てていきたいと考えています。中でも、特に力を入れて取り組んでいる地域が、インドネシアです。インドネシアは、世界第3位の熱帯林保有国ですが、森林火災や違法伐採、焼畑耕作などにより、森林の消失と劣化が急激に進みました。近年、我々はインドネシア政府と連携のもと、28万ヘクタールに及ぶ大規模植林プロジェクトを展開しています。現地企業とともに近郊農家などに苗木を提供し、育った木を買い上げる「社会林業」にも取り組んでおり、原料調達の安定化を図るとともに、地域経済の活性化への貢献を重要なテーマとしています。

「公正、信用を重視し、社会を利する事業を進める」という住友精神のもと、森林面積を増やすと同時に、地域の環境や人々の暮らしに寄与できる事業を世界各地で幅広く進めていきたいと思います。


【聞き手】
三井住友銀行経営企画部CSR室長 中村 研一
日本総合研究所主任研究員 井上 岳一

市川 晃(いちかわ あきら)

Profile

市川 晃(いちかわ あきら)
1954年生まれ。1978年、関西学院大学経済学部卒業後、住友林業株式会社入社。国際事業本部国際事業部長、住宅本部住宅管理部長、経営企画部長などを歴任したのち、2008年に取締役常務執行役員に就任。2010年4月より代表取締役社長を務める。



会社概要

住友林業株式会社

設立
1948年
本社
東京都千代田区大手町1-3-2
資本金
276億7,200万円
代表者
代表取締役社長 市川 晃
事業内容
山林・環境事業、木材・建材事業、住宅事業など
ホームページ
http://sfc.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.97(2012年9月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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