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環境先進企業トップインタビュー

モノづくりの底力で、世界での存在感を発揮してゆく。株式会社明電舎 代表取締役社長 浜崎 祐司氏

社会インフラを支える使命感

御社は、非常に幅広い領域で事業を行っていますが、およそすべての事業が、エネルギーか環境と関わりがあるように見えます。やはり、「本業即環境」なのでしょうか。

明電舎というのは、電気機器の製造販売、それらの応用システムなどを取り扱う企業です。創業は1897年、モータの修理を行う町工場から始まりました。銀座に電灯がともり、鉄道の電化が始まったころのことです。日本の電気学会が125周年を迎えましたが、弊社は今年で創業117年目。電気という技術とともに将来があるという時代の中で歩んできた企業といえます。

モノづくりのインフラも、社会のインフラも、今や電気抜きには語れません。鉄道などもほとんど電気で動いているわけで、電気は人間の活動に直結しており、経済活動が大きくなることは電気をたくさん使うことにつながります。いかに電気に象徴されるエネルギーをつくり、流通させ、効率よく使うかが、電気機器メーカーの弊社にとっての命題といえます。

環境問題が意識されるようになったのは、1972年にローマクラブが『成長の限界』を発表してからでしょう。このまま人口増加や環境破壊が続けば、資源枯渇や環境悪化で100年以内に人類の成長は限界に達すると警鐘が鳴らされました。このままエネルギーを野放図に使っていては、地球は持続できない。あれがエネルギーと環境をセットで考えなくてはいけないといわれる契機でしたね。

1973年から2011年までに、日本のGDP(国内総生産)は約2.4倍も増加しました。この間、産業部門のエネルギー消費は0.9倍、エネルギーの4分の1を使う運輸部門でも1.9倍です。いずれもGDPの増加率より低いんです。産業の海外流出などその理由はいろいろあると思いますが、企業がエネルギー効率の向上に取り組んできた効果が大きいと思います。そして、エネルギーの流通と利用を効率化するという部分において、弊社の事業は環境負荷の軽減に貢献してこられたのではないかと考えております。

事業を通じた環境貢献

東日本大震災の後、原発問題で電気やエネルギーに対する関心が急速に高まりました。電気と深いつながりのある御社も、社員の意識が変わってきたというところはあるのでしょうか。

3.11以降、原子力発電をどうするのかが、社会の大きなテーマになりました。私どもは原子力発電に直接関わる事業は持っておりませんが、「POWER5」と名づけた、今の中期経営計画では、将来の低炭素社会に向けて、重電技術を新しい領域にシフトする方針を打ち出しています。再生可能エネルギーへの取り組みも1つの重要な軸として掲げています。その中でも特にEV(電気自動車)や再生可能エネルギーを有効に使う方向の開発について、自社だけではなくお客さまとも連携しながら取り組みを進めています。近年では、こうした取り組みが弊社の事業を一定レベルで支えるものに育ってきました。

余談ですが、私が学生だった1970年代前半の学校では「日本は資源がない。資源を買わなくてはいけないから、外貨を稼がなくてはいけない。そのために知的な産業を推進しないといけない」と教えられたものです。そのことは国全体における1つのベクトルとして正しかったのではないかと、今も思っています。

世界初の量産型EVである三菱自動車の「i‐MiEV」には、御社のモータとインバータが使われています。しかし、「i-MiEV」が発売されたころは、EVに対する期待は、決して高くありませんでした。そういう中で、なぜEVの可能性にかけることができたのでしょうか。

1992年の「地球サミット」で、地球環境保全と持続可能な開発の実現のための対策が議論されました。そして、石油のピークアウトも叫ばれるようになり、石油価格はどんどん上がっていきました。そういう状況の中で、自動車メーカー各社がEVやHV(ハイブリッドカー)の開発への取り組みを始めました。私どもとしても、EVは地球温暖化対策になるイノベーションと捉え、EV用モータ・インバータの開発を1991年より始め、積極的に取り組んできたのです。

もう1つの背景として、自動車の電子化もありました。現代の自動車は、半導体とソフトウェアが搭載され、これらが全体を制御しています。つまり、電子化を通じて、エネルギーと情報が結び付いていくわけで、それは弊社にとって新たなチャンスかもしれないと考え、同領域での本格的な開発に取り組みました。これが2009年7月に世界初の量産型EVとして、三菱自動車さまが発売された「i-MiEV」へのモータとインバータ納入につながったのです。

EVは成長の期待がかかる分野ですが、HVが主流の日本では、立ち上がりに苦労されたようですね。最近の手応えはいかがですか。

私どもの事業からいえば、EVもHVもモータとインバータという切り口で考えれば同じカテゴリの製品ですから、私どもの生産自体は伸びています。

最近では、三菱自動車さまの「アウトランダーPHEV」というPHEV(プラグインハイブリッドカー)にもモータとインバータの供給を始めています。この車種は、前輪と後輪のモータ2台と発電機1台を搭載しており、これらを制御する物理レイヤーの一部も弊社が担当させていただいています。

自動車には、引き続き新しい技術が取り入れられるでしょう。ITを駆使した自動運転もそうでしょうし、材料面での革新もそうでしょう。EVやPHEVでは蓄電システムの発展が求められます。当社では電気二重層キャパシタ※1という技術にも関心を持っています。モータ、インバータと協調することでドライブトレイン※2の性能向上に寄与できる可能性があるからです。

さらに先を見ますと、燃料電池の実用化も視野に入ってきます。ここでも、EVと同じく私たちが生産しているモータやインバータが使われます。この技術開発をたゆみなく続けることが私たちの事業にとっても重要ですし、もちろん環境保全にもつながります。力を入れていく領域です。

※1:電極と電解液との境に生じた電気二重層に電荷を蓄積し、電気をためる装置
※2:エンジンで生み出した動力をタイヤに伝達する一連の機構

海外の新市場を開拓

「POWER5」では、海外戦略の強化も掲げていらっしゃいます。

2013年度に「海外売上高比率30%」、2014年度に「海外売上高比率34%」という達成目標を掲げています。実は、海外での事業は早くから行っており、1975年にはシンガポールでMeiden Singapore Pte. Ltd. を設立し、現地で変圧器の生産を始め、それ以降も製造拠点を増やしながら、現地の電力会社に対して変電・配電設備や発電設備などの提供を行ってきました。

また、昨今は、ASEANを海外戦略の重点エリアとして考え、中国、タイ、マレーシア、インドネシアなどで、現地法人の販売要員の増強や開発機能の強化に取り組んでいます。国内と海外の営業部門が一体となって、現地の電力会社、鉄道会社や、日系メーカーの海外製造拠点の新設・能力増強案件に対して提案活動を行ってきました。受注は順調に増えています。長期的にご利用いただくには、やはり保守サービスの充実が不可欠となりますので、今後は教育を通じて人材の能力を高め、現地の生産・保守の体制を整えて、海外での売上高比率30%を超えていきたいと思っています。

海外展開を進めていく上で、環境という観点からは、どのような強みを出していけそうですか。

配電設備で使われる電流のVCB(真空遮断器)という製品があります。従来、電流を遮断するにはGCB(ガス遮断器)という装置が使われていました。電流の遮断というと、スイッチのオンオフでできるので簡単だと思われるかもしれませんが、大電力の場合アーク放電という現象が発生し、電極をいくら離しても電気が切れず、最悪の場合発火してしまうんです。これを防ぐため、アーク放電にガスを吹き付けて消滅させるのがGCBという装置です。しかし、このGCBに使われるSF6(六フッ化硫黄)というガスは、温室効果ガスの1つで環境負荷が大きいんですね。

この環境負荷の課題を解決するのがSF6を使わないエコタンク形VCBです。弊社は、1960年代にVCBが開発された当初から、一貫してVCBを電流遮断技術の中核に据えて自社開発を進めてきました。特に、機器の小型化や高電圧・大容量化を図って適用領域を広げる活動を続けてきましたが、VCBは真空化が必要なために容器製造にかかるコストが高いことと、基幹網での使用には性能が不足しているという課題があります。一方で、昨今は、中央集中型電力網のリスクが認識され、容量の小さい分散型発電の地産地消エネルギーを集約して使う考え方が注目されていますし、電鉄系のニーズも高まっています。私どもとしては、そういったニーズを取り込むため、VCBの性能向上とコストダウンに取り組み、真空技術をアピールしていきたいと考えています。VCBは、技術と環境を結び付けるところに弊社の強みがありますので、今後、海外においても、このような製品を普及させていきたいと思っています。

日本の未来を担うモノづくりの力

重電メーカーとして日本のインフラを支えてきた御社は、人口の減少が進み、経済の縮退が危ぶまれる日本の将来について、どのようにお考えですか。

活力はあってほしいと思うんですよ。人口が減って、活力までなくなってしまったら、よくないですよね。たとえ人口が減っても、日本にはこれまでに培ってきた多くの資産があります。要素技術だけでなく、過去の成功事例であったり、失敗の経験であったり、それが、日本企業が持つモノづくりの底力に他なりません。日本は、情報関連のアッセンブリーなどに象徴されるように、海外流出が増えてしんどいところも多いと思いますが、まだ製造機器などは残っていますし、まだまだ底力があると思います。材料、お客さま、同業他社、競争相手など、産業の上流から下流まで一連のものがすべて揃っていることが、日本のモノづくりの底力だと思うので、これが、櫛の歯が欠けるようになくなっていくことがないよう、これからもできる限り残したいですね。それがあれば、勤勉な国民性と資産を持つ日本は、十分に世界で存在感を発揮していけると思います。

モノをつくる、形にできる方々がいてこそ、できる話ですよね。昨今では、アメリカなどと比べて、日本は、モノよりシステムに強くならないといけない、モノづくりの力よりシステムインテグレーションの力だ、というようなこともいわれますが、やはりモノづくりの底力があってこそなんだなとあらためて思いました。

そうですね。しかし、インテグレーションの関係を無視してしまうと、モノはできなくなってしまいます。一企業だけでモノづくりを続けることはできません。日本にも学会や研究会などはありますが、もっとさまざまな人が集まり、意見交換ができる仕組みが必要だと思うんですね。そうした場があれば、日本はさらにプラスアルファの力を発揮できると思います。中長期的な思考とか、日本的なものを大事にして、産業の多様性を持ってやっていけば、まだまだ日本はやれると思います。


【聞き手】
三井住友銀行経営企画部CSR室長 中村 研一
日本総合研究所マネジャー 井上 岳一

浜崎 祐司(はまさき ゆうじ)

Profile

浜崎 祐司(はまさき ゆうじ)
1952年生まれ。東京大学大学院工学系研究科修士課程を修了後、1976年住友電気工業株式会社へ入社。同社で常務取締役情報通信研究開発本部長などを務めたのち、2010年株式会社明電舎専務執行役員に就任。取締役兼専務執行役員、代表取締役副社長などを経て、2013年6月より代表取締役社長を務める。



会社概要

株式会社明電舎

設立
1917年6月1日(創業1897年12月22日)
本社
東京都品川区大崎2-1-1
資本金
170億7,000万円(2013年3月31日現在)
代表者
代表取締役社長 浜崎 祐司
事業内容
発電機および変電機器、電子機器、情報機器などの製品やエンジニアリングとそれに関わる業務
ホームページ
http://www.meidensha.co.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.104(2014年3月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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