環境ビジネス情報

印刷用ページを別ウィンドウで開きます



環境先進企業トップインタビュー

長年の実績とノウハウを生かし、風力発電のさらなる導入拡大を目指します。 株式会社ユーラスエナジーホールディングス 代表取締役社長 清水 正己氏

風力発電事業のリーディングカンパニー

風力発電を専門とする事業者としていち早く創業された経緯をお教えいただけますでしょうか。

弊社の始まりは、株式会社トーメン(現豊田通商株式会社)グループの電力事業部が1986年から風力発電に取り組み、翌87年にアメリカ・カリフォルニア州で発電事業をスタートさせたことです。当時の日本では、「風車を回してどうするんだ」と言う人がいるくらい、風力発電は認知されていませんでした。そうした社会環境の中で風力発電事業を始められたのは、新しいことに果敢に挑戦する総合商社特有の文化があったからだと思います。

その後、地球温暖化など環境問題への関心が早くから高かった、イギリスやイタリア、スペインなどヨーロッパへ進出。2001年11月には、風力発電事業をより大きく展開するため電力事業部を分社化、2002年10月には東京電力を株主に迎えました。現在の社名である「ユーラスエナジー」は、社内公募でアメリカのナショナルスタッフによって考案されたものです。「ユーラス(Eurus)」はギリシャ神話に登場する「東の風の神(エウロス)」を英語で発音したもので、この名にあやかり、「東」の国から新しい風を吹き起こしていこうという弊社の決意が込められています。

なぜ最初にアメリカで事業をスタートされたのですか。

アメリカでは、1970年代の2度にわたるオイルショックを契機に、石油に代わるエネルギーの導入促進を奨励した法制度がいち早く整備されていたからです。風力だけでなく、太陽光、太陽熱、バイオマス、小水力など、再生可能エネルギーによる発電事業のほとんどは、補助金や固定価格買取制度(FIT)など国の政策と支援制度に支えられています。経済的に後押しする政策がなければ、事業化はできないといってもよいでしょう。弊社は、このように支援制度が整った国から順に事業を広げ、日本では1999年、北海道の苫前町に国内初の大型風力発電所を設置しました。

「クリーンエネルギーの普及・拡大を通じ、地球環境保全の一翼を担う」という企業理念に基づき、現在、アメリカ、ヨーロッパ、アジアを中心に数多くの風力発電事業を展開しています。長年にわたって風力発電事業で培ったノウハウと経験は、2008年から始めた太陽光発電事業にも生かされています。

独自の技術力で風力発電を推進

2012年に始まった「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は、日本の風力発電市場にどのような影響を与えたのでしょうか。

国内でFITが開始されたことにより、太陽光発電設備は急増しましたが、風力発電の導入はあまり伸びませんでした。確かにFITは追い風にはなりますが、風力発電所を新設する場合、まず候補地の風況調査を最短でも1〜2年行います。そして環境アセスメント(影響評価)を行うのですが、季節の変化に配慮しながら生活環境や生態系への影響を調べるため、4〜5年くらいかかります。さらに許認可や工事期間を考慮すると、開発を始めてから発電所の稼働まで早くても7〜8年かかります。その過程においても計画の変更や縮小を求められることがあるため、「風力発電ビジネスは難しい」「事業リスクが高い」といわれることが多いのです。また、投資額は中規模発電所でも50億円に上り、操業は20年という長期間であり、結果として調査・計画から運用まで含めると30年近くに及ぶ事業となります。これらが新規参入する企業の障壁となっているのも事実です。

新規参入が難しい風力発電市場において、御社はすでに27年の実績を蓄積されています。業界における御社の強みをどのように捉えておられますか。

弊社の強みは、アメリカ、ヨーロッパ、アジアで風力発電事業を展開していることです。3地域に分散して発電設備を所有する利点は2つあります。まず1つは、風況変動による事業リスクの軽減です。発電設備の所在地を分散させることで、天候が経営に与えるリスクを抑えることができるのです。もう1つは、各国政府のエネルギー政策の転換によって生じる事業リスクの分散です。先ほどお話ししたように、風力発電事業は各国の支援制度に支えられているため、エネルギー政策の転換によってその制度が変更になると多大な影響を受けます。実際に、スペインではFITが撤廃され、同国における事業の採算は悪化しました。エネルギー政策の転換はどこの国でも起こりうることです。そのリスクを分散するため、弊社はグローバルに事業展開を拡大し、経営の安定度を高めることを目指しています。これまで弊社の拠点は北半球中心でしたが、現在はオーストラリアやウルグアイなど南半球でも風力発電事業に取り組んでいます。

このほかの強みとしては、開発・建設・運営まで一貫して推進する技術力があることです。風力発電所の稼働率を上げるには、最初に風況を調査して立地を決め、どのように風車をレイアウトするかが鍵を握ります。風況分析を請け負うコンサルティング会社もありますが、弊社は社内に風況分析の専門家を確保することで、計画の精度を高めています。

建設に関しては、長年の実績を通じて蓄積した豊富なノウハウが強みです。実際に施工するのは建設会社ですが、長年、風力発電の開発に取り組んできた弊社は、こと風力発電所の工事に関して、建設会社にも負けない知識があると自負しています。

風力発電設備の運転とメンテナンスを専業とする「ユーラスエナジージャパン」という子会社があることも強みの1つといえます。同社の社員は、風車が好きで入社した人間ばかりなので、設備の不具合を敏感に読み取る力を持っています。"お母さんは子どもの体調が悪いとすぐわかる"、それと同じで、彼らは"自分たちの風車"という思いがあるから、小さな異常も見逃さないのです。

また、弊社の技術力を語る上で忘れてはいけない存在が、株主である東京電力です。現在、東京電力から弊社に10人程度の技術者が出向しています。彼らの持つ知識だけでなく、東京電力グループが持つ技術力を利用できることも、我々の強みです。同社に蓄積された電力系統の技術やノウハウを活用して、風力や太陽光発電事業を行える企業はほかにはありません。

地域との一体化を目指して

東日本大震災以降、地域再生の起爆剤として再生可能エネルギーに注目が集まっています。御社では、風力発電事業を通じて地域とどのような関わりを築いておられるのでしょうか。

弊社は、「地域とともに発展し、社会から信頼される企業」という企業ビジョンを掲げています。発電所は、製造工場などと比べて多くの雇用を生むものではありませんが、ユーラスエナジージャパンでは発電所の管理に当たる要員を地元で採用することで、少しでも雇用拡大に貢献したいと考えています。

それに加えて、発電設備に使う部品は、地元企業から調達するように努めています。風車には2万点を超える部品が使われており、その中には純正品でないものも多数あります。このような汎用部品はできる限り地元の協力メーカーさんから調達することとしています。また、大規模な風力発電事業の場合、都市銀行に加え地元の金融機関にもレンダーとして参加いただき、プロジェクトファイナンスを組成することで、地域経済活性化に貢献できればと考えています。さらに地元の金融機関さんには部品調達の協力メーカーの紹介をしてもらうこともあります。たとえば、北海道では、北洋銀行さんにビジネスマッチングをお願いしました。

このほか、発電所が立地している地域の商工会議所などに入会したり、自治体が開催する環境展やお祭りなどの行事に参加するなど、地域の一員になるべく努力を重ねています。また、地域の方々の風力発電に対する理解を深めるため、発電所の見学会を開催したり、地元の学校で出前授業を行うこともあります。地道な取り組みではありますが、こうした小さな積み重ねによって地域の皆さまとコミュニケーションをとり、信頼の構築を図っていくことが、長期にわたって円滑な発電事業を営んでいくためには重要だと考えています。

刻一刻と移り変わる市場の動きに対応

日本における風力発電の導入ポテンシャルはどのくらいあるのでしょうか。

日本のエネルギー自給率はわずか6%で、世界の主要国と比べ、極めて低い水準です。エネルギー自給率の向上は日本の最優先課題の1つであり、それには再生可能エネルギーの導入拡大が欠かせません。

再生可能エネルギーの中でも風力発電には開発の余地が多く残されています。日本風力発電協会によると、2010年度における風力発電の累積導入量は、248万キロワットです。同協会は、2020年に1,090万キロワット、2030年に3,620万キロワット、さらに2050年には7,500万キロワットまで引き上げるロードマップを目標として掲げています。

しかし、ロードマップの実現にはいくつかの課題が残されています。現在、議論されている課題の1つが、環境アセスメントの効率化です。風力発電所を操業するまでのリードタイムを短縮できれば、新規案件を進めやすくなりますが、環境アセスメントを簡略化するわけにはいきませんので、どのように効率性と環境配慮の折り合いをつけるかがポイントだと考えています。

近年、海上に風車を設置する「洋上風力発電」も注目されています。

洋上風力発電には、浮体式と着床式の2通りの方式があります。日本は周辺海域の水深が深く、海底の地形も複雑なため、メディアでは特に浮体式洋上風力発電が注目されています。国の支援のもと実証実験も行われていますが、投資規模やリスクを考えると、浮体式洋上風力発電の事業化にはもう少し時間を要すると思います。一方、着床式洋上風力発電は、すでにヨーロッパで事業化が進んでいます。ヨーロッパと日本では海の状況が異なるものの、基礎的な技術は確立されつつありますので、国内でも5年以内には着床式洋上風力発電所が動きだすと期待しています。弊社は、その先駆けとなるべく、現在、北海道稚内市や青森で事業化を前提に風況調査を進めているところです。

今後、気候変動に関する国際的な動きを受けて、風力発電を含め再生可能エネルギーの必要性が高まることが予想されます。一方、日本では、2016年の「電力システム改革」に向けて取り組みが進められており、国内の電力事業をめぐる環境は変わりつつあります。刻一刻と変わるビジネス環境に対する今後のビジョンをお教えいただけますでしょうか。

今、ヨーロッパでは、再生可能エネルギーの買取費用が膨らみ、スペインがFITを撤廃したり、他の国でも買取価格を引き下げるなど、制度の見直しが進められています。一方、アメリカでは、シェールガスの登場によって電気価格の低迷が続き、風力発電事業も厳しい状況にあります。だからといって開発を止めてしまえば、数年先に潮目が変わったときに出遅れてしまいます。気候変動の問題を考えれば、先進国が再生可能エネルギーの導入拡大に向かう流れは変わりません。いつ市場が好転しても、確実に新規案件を獲得できるよう、途切れなく取り組みを続けていくことが重要だと考えています。

一方、国内では、「電力システム改革」に向けて、広域系統運用の拡大や電力の小売自由化、発送電分離などの議論が進められており、こうした動きに広くアンテナを張っていなければなりません。弊社は北海道の送電網整備実証事業に参画しています。北海道は風力発電の適地であるものの、送電網が脆弱なため、導入が進んでいません。送電事業は我々の本業ではありませんが、風力発電を推進するために連系設備の問題は避けられません。

また、北海道と本州を結ぶ海底送電ケーブルの「北本連系」は現在60万キロワットの送電能力を持っていますが、2019年3月までにこの能力を90万キロワットに拡大するプロジェクトが進んでいます。道内での風力発電導入が進み、余剰電力を道内で処理しきれなくなっても、この設備を利用することにより、今以上に北海道でつくった電気を本州に供給することが可能になります。

ほかにも社内には、小水力や地熱など新しい分野への挑戦を求める声がありますが、今、取り組んでいる風力発電と太陽光発電をさらに発展させていくことが最も大事だと考えています。国内の総発電量に占める再生可能エネルギーの割合はまだ数%にすぎず、ここに大きな潜在市場があることは間違いありません。風力発電のリーディングカンパニーとして、この潜在市場を開拓していくことが、弊社の使命だと考えています。


【聞き手】
三井住友銀行経営企画部CSR室長 山岸 誠司
日本総合研究所理事 足達 英一郎

清水 正己(しみず まさみ)

Profile

清水 正己(しみず まさみ)
1973年成蹊大学経済学部卒業後、株式会社トーメンへ入社。インドネシア駐在を経て、株式会社トーメンの執行役員、取締役などを歴任する。2006年に豊田通商株式会社にて常務執行役員に就任。2010年に株式会社ユーラスエナジーホールディングスの代表取締役副社長に就任したのち、2012年1月より代表取締役社長を務める。



会社概要

株式会社ユーラスエナジーホールディングス

設立
2001年(2002年に現商号に変更)
本社
東京都港区虎ノ門4-3-13 ヒューリック神谷町ビル7階
資本金
181億9,920万円
代表者
代表取締役社長 清水 正己
事業内容
風力および太陽光発電事業
ホームページ
http://www.eurus-energy.com/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.108(2014年11月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


環境先進企業 トップインタビュートップへ

印刷用ページを別ウィンドウで開きます

このページの先頭へ戻る