環境ビジネス情報

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環境先進企業トップインタビュー

生命の根源に携わっているという自負を持って仕事をしています。 サミット株式会社 代表取締役社長 田尻 一氏

食品スーパーマーケットの使命

食品スーパーマーケット業界の中でもいち早く環境への取り組みを進めてこられた御社の、背景にあるお考えをお聞かせください。

我々、現生人類が地球に登場したのは25万年前のことです。46億年に及ぶ地球の歴史を考えると、それはすごく短い期間なのですが、自分たちが生きていくために地球を破壊してきた人間は、地球の存続を脅かす存在となりました。特に、過去50年間は世界人口が爆発的に増加したことで、地球全体が大きく様変わりしました。人間のエゴは地球を破壊し、さまざまな生物を絶滅へと導きました。このままでは人間自身も滅びてしまうかもしれません。ようやく1980年代後半になって、自らのエゴを反省し"環境"への配慮が意識されるようになりましたが、たかだか20年、30年前のことなんですね。

環境破壊を止めること、それは一企業、一個人で解決できる問題ではありません。しかし、食を扱う我々は、生命の根源に携わっているという自負を持って仕事をしています。近い将来、食料危機は必ずやってきます。その要因である環境破壊にいかに立ち向かっていくか。環境を守りながら、安心安全な食をお客さまに提供することは、食品スーパーマーケットを展開する我々の最大の使命だと考えています。

循環型リサイクルへの挑戦

具体的に、どこから手をつけられたのですか?

弊社の環境への取り組みが動き出したのは、1991年のことです。第一歩として、家庭ごみとして排出される、店舗でお渡しするレジ袋を削減するため、「お買い物袋持参促進運動(スタンプサービス)」を始めました。当時、世間でも環境への関心が徐々に高まっていましたが、いち早く取り組みを始めた背景には、我々は首都圏を中心に事業を展開しているので、都心から新たな意識を広めていきたいという思いがあったんです。

杉並区でのレジ袋有料化の取り組みは有名ですが、効果はどうですか。

杉並区では、過去に清掃工場建設をめぐる紛争が起きたこともあり、全国的に見ても早くからごみの削減に取り組んできました。弊社は杉並区と協定を結び、2007年から同区の成田東店でレジ袋の有料化を始めました。今では同区内の全8店舗でレジ袋の有料化を行っています。これら店舗のマイバッグ持参率は、全店平均の約3割に対し7〜8割近くまで達していて、レジ袋の削減には明らかに効果が出ています。しかし、これは一概に喜べることではありません。杉並区だけでなく同様の取り組みを行う他の地域でも、レジ袋削減によって地域のごみ排出量が減ったという報告は上がっていないからです。実は、レジ袋の有料化を始めた店舗では、ごみ袋の売り上げが4〜5倍に増加しました。つまり、ごみ袋として使われていたレジ袋がなくなったので、代わりにごみ袋を買ってごみを出すようになったということなんだと思います。これでは、地域のごみを削減したことにはなりませんよね。難しい問題です。結局、エゴなんです。一人ひとりがエゴを捨てない限り、環境問題を解決することはできないのかもしれません。

ごみについては、食品廃棄物の削減も重要な課題ですね。日本では、米の生産量に匹敵する量の食品が廃棄されています。食品廃棄物を減らすためにどのようなことができるのでしょうか。

食品廃棄物の削減を考える上で、まず挙げられるのが賞味期限です。可能な限り安全を期すため、食品メーカーは賞味期限を実際より短く設定しています。たとえば、2年間おいしく食べられる商品でも、賞味期限を1年と表示している場合があるんです。それを見た消費者は、1年たった時点で、まだ食べられるものでも捨ててしまう。匂いをかいで食べられるかどうかを消費者自身が判断する時代ではないのです。ですから、食品ロスをなくす1つの方法として、おいしく食べられる期限である賞味期限と、食べても安全な期限を表す消費期限の両方を表示することが有効かもしれません。店頭では、賞味期限が近づいた商品の価格を下げて販売することで、「今日食べるからいいわよね」というお客さまが買ってくださいます。まだ食べられる食品が無駄にならないよう、無駄に買い込まないことも含めて、消費者に働きかけ、意識づけを図ることが大事だと思います。

このほか、弊社では、野菜くずのリサイクルにも取り組んでいます。各店舗では、惣菜などをすべて店内で調理しているので、野菜の皮や芯など大量の野菜くずが発生します。これは食品廃棄物の約7割を占めています。こうした野菜くずを何とか有効利用できないかと、2005年から農事組合法人和郷園をパートナーとしてリサイクルに取り組み始めました。しかし、そこから先の道のりは長かったですね。ごみの処理は法律や条例で細かく規制されているので、自治体の境を越えることが簡単ではないなどの問題があって、リサイクル体制を整えるまでに3年以上かかりました。仕組みとしては、店舗で分別した野菜くずを、専用車で千葉県香取市にある和郷園のリサイクルセンターへ搬入し、肥料化するというものです。できた肥料を使って栽培した野菜を店舗で販売することで完全な循環型リサイクルを実現しています。この取り組みを各店舗へ拡大することで、2013年度は食品廃棄物のリサイクル率が50.6%になりました。

首都圏の水を守る森林整備

山梨県丹波山村で森林整備にも取り組まれているようですが、これはどういう理由で始められたのですか。

丹波山村には、東京や神奈川に水を供給する多摩川の源流が流れています。つまり、この森を手入れすることは、首都圏の水源を守ることになるわけです。生活に欠かせない水の安定供給を目指して、2006年から丹波山の村有林11ヘクタールを「サミットの森」と名づけ、森林保全活動を始めました。

この活動は地元の森林組合や村役場と協力しながら進めています。当初は荒廃した森に植林することを考えていたのですが、現地でお話を聞いてみると、村は過疎化が進んでおり、木を植えても人手不足で十分な管理ができないことがわかりました。そこで、間伐や草刈り、切った木を運ぶための作業道づくりなど、森林整備活動の支援に切り替えました。「サミットの森」では、新入社員研修やボランティアなどの活動を年5回ほど行っており、これを通じて社員は森林整備の大切さを学んでいます。5年の活動期間を経て、森は見違えるほど健全な状態に生まれ変わりました。今は第2期として、村内の違う場所にフィールドを移し、森林整備を行っています。

「サミットの森」の整備にかかる費用は、店頭で回収した紙パックやアルミ缶の売却代金と弊社からの寄付金で賄っています。寄付金は、対象商品1品の購入につき、お客さま、サミット、商品メーカーからそれぞれ1円、合計で3円を寄付する仕組みで、期間限定のキャンペーンなどで集めています。また、森林整備活動のほか、沖縄県でのサンゴ礁再生の移植活動も支援しており、沖縄フェア開催時の売上金の一部を寄付しています。

また、夏休みにお客さまを「サミットの森」へご招待する活動も行っています。これは弊社で30年以上続く人気企画「ママとルンルン夏休みツアー」の一環です。これまで同ツアーでは、小学生のお子さまと親御さまを対象として取引先の工場見学ツアーなどを実施してきましたが、新たに「サミットの森」見学ツアーが加わり、さらに、これから始める丹波山村での農業生産の現場にもお客さまをお連れすることを検討しています。

体験を通じて食を考える

農業にも取り組まれるのですか。

近年、世界各地で発生する異常気象は、安定した食料生産に対する大きな脅威となっています。世界人口が増加の一途を辿る中、限られた農地と水を使って、いかに効率的に作物を生産するかがこれからの大きな課題です。遺伝子組み換え技術や農薬などを利用して、耕地面積当たりの収穫量を増やす試みもありますが、これらの食品はアレルギーをはじめ未知の病気につながる可能性が指摘されています。

人間が生きていく上で食べることは不可欠です。食を扱う我々は、食の大切さを世の中にもっと浸透させる努力をしなければならないと考え、2015年度から農薬や化学肥料に頼らない農業に取り組むことを決めました。一社でできることには限りがありますし、すぐに全店舗で販売できる量は確保できません。しかし、社員だけでなく、お客さまと一緒に畑を耕し収穫できないかと、さまざまな企画を検討しています。農業を行う場所は、「サミットの森」周辺の耕作放棄地を活用する予定で、森林整備と農業を通じて丹波山村全体の活性化につなげたいと考えています。

冒頭、「生命の根源に携わっている」というお話がありましたが、実際に農業を体験することで、食や生命に対する社員の方々の意識が変わることが期待できそうですね。

そうですね。しかし、こうした取り組みは農業が初めてではありません。2013年に創業50周年を記念して開催した「スーパーマーケット・ミュージアム」では、スーパーマーケットにどんな経路で商品が集まってくるのかをわかりやすく展示しました。牛や豚、魚など、さまざまな生き物から命をいただいているということを理解していただき、子どもたちに食への関心を持ってほしいという思いがあったんです。「スーパーマーケット・ミュージアム」は2カ月間という期間限定のイベントでしたが、お客さまや同業他社など各方面からご好評をいただき、近隣の小学生を中心に3万人を超える方々にご来場いただきました。

次世代型のスーパーマーケット

少子化・高齢化の進展、女性の活躍推進など、今後、首都圏の生活環境は大きく変化することが予想されますが、スーパーマーケットにはどんな影響がありそうですか。

一般的に、高齢化が進むと、売り上げが落ちると考えられていますが、実は子育て世帯より高齢者世帯の方が支出金額は大きいことが明らかになってきました。子どもたちが独立した世帯では、惣菜などの利用頻度が高くなる傾向が見られます。首都圏の店舗周辺で世帯当たりの人数を調べた結果、単身者や2人世帯が多いことがわかりました。そのため、弊社では、地域特性を捉えて、すぐ食べられる調理品、下ごしらえをした半調理品や少量商品などの開発・販売に力を入れてきました。こうした半調理品や惣菜などの商品は、ご高齢のお客さまの需要にも合っていると考えています。

コンビニエンスストアでも生鮮食品の販売が始まっています。スーパーマーケットは、今後、どんな役割を担っていくのでしょう。

同業者の間では、どうやってコンビニエンスストアの顧客をスーパーマーケットに呼び込むか議論されることがあります。私は、それぞれが必要に応じて利用されればよいと考えています。近くて便利なコンビニエンスストア、品揃えや価格のよいスーパーマーケット、それぞれの利点がありますからね。とはいうものの、今後も我々が存続していくには、スーパーマーケットとしての機能を高めていかなければなりません。今、スーパーマーケットに求められているのは低価格ではなく、安心安全でおいしい食品です。利用者のニーズを踏まえつつ、こうした付加価値をどう提供していくか、そこが大切だと考えています。

弊社は2011年度から次世代型スーパーマーケットの創造を目指し、「MD革新プロジェクト」を開始しました。品揃え、売場づくり、接客のあり方など、さまざまな視点で検討を進めていますが、中でも注目しているテーマが「地域密着」です。新しく開店した店舗では、スーパーマーケットを中心に地域コミュニティをつくり上げていくためさまざまな実験をしています。たとえば、地域のイベントや役立つ情報を告知できる掲示板を設置したり、自由に利用できるスペースをつくったりしました。このスペースは、地元ラジオ局が出張放送をしたり、近隣の主婦の方々がクリスマスパーティーを開いたり、講師を呼んで料理教室を行ったりと、地域のコミュニケーションの場として活用されています。

これまでの地域コミュニティは、小学校を中心にしたものでしたが、少子化・高齢化が進展する中、今後は、スーパーマーケットがコミュニティの拠点になっていくのかもしれないですね。

これはコンビニエンスストアにも、大型ショッピングセンターにもできない役割だと思います。今後、開店・改修する店舗ではすべて、地域の憩いの場となるスペースを設置する予定です。また、ご高齢の方には買っていただいた商品をお宅にお届けしたり、しばらく来店されないご高齢の方がいれば安否確認をしたりといった、きめ細かなサービスを提供しながら、地域の方々とより密接なコミュニケーションを図っていきたいと考えています。サミットを中心とした半径2キロメートルに地域コミュニティが形成される、そんな構想を描いています。


【聞き手】
三井住友銀行経営企画部CSR室長 山岸 誠司
日本総合研究所マネジャー 井上 岳

田尻 一(たじり はじめ)

Profile

田尻 一(たじり はじめ)
1956年生まれ。1979年日本大学芸術学部卒業後、株式会社サミットストア(現サミット株式会社)へ入社。一般食品部、販売促進部、営業企画部でマネジャーを務めたのち、2001年に取締役に就任。2003年常務取締役。2006年専務取締役。2007年6月より代表取締役社長を務める。



会社概要

サミット株式会社

設立
1963年
本社
東京都杉並区永福3-57-14
資本金
39億2,000万円
代表者
代表取締役社長 田尻 一
事業内容
食品スーパーマーケットおよびその他生活関連商品の小売チェーン
ホームページ
http://www.summitstore.co.jp/

この情報は環境情報誌『SAFE』Vol.109(2015年2月号)の記事より引用しております。
内容については記事作成時のものとなりますので、ご了承ください。


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