Sakura News Release


平成12年4月3日


入行式頭取訓示骨子


株式会社さくら銀行(頭取 岡田明重)は、4月3日に入行式を行いました。頭取訓示の骨子は以下のとおりです。

<頭取訓示>
 ご入行おめでとうございます。
 金融界は大変革期の真っただ中にあります。世界的大競争が展開される中、欧米の主要大手銀行はシティバンクやドイツ銀行にみられるように、規模や範囲の利益を追求することを目的に、銀行同士の大型合併や保険・証券など金融他業態との合従連衡を急ピッチで進めており、コングロマリット化しつつあります。一方でインターネットに象徴される情報技術の発達で金融業への参入障壁がいち早く低下し、個人取引などのリテール分野を中心にスーパーなどの異業種からの銀行業への新規参入やインターネット専業銀行の設立などの動きも活発化しております。
 翻ってわが国の金融界をみますと、総資産が100兆円規模となる大手銀行同士の合併や提携を始め、当行自身がその先駆者と言える、「インターネット専業銀行の設立」、「コンビニとの提携を通じた新しいデリバリー・チャネルの構築」、更には「消費者と直接接点のある、複数の他業態との提携による新たな金融商品・サービスの開発や提供」といった、新たなビジネス・モデルの構築も既存の銀行で急速に展開されつつあります。また一方では、異業種による銀行設立構想なども相次いで発表されるなど、日本の金融界にもまさに劇的な変化が訪れています。
 これは欧米先進国に10数年以上も遅れて実施された金融ビッグバンと情報技術を活用したネットワーク化の急進展の相乗効果により、欧米先進国を超える規模とスピードで変革が進んでいることを表すものです。
 変革の推進力は金融ビッグバンと情報技術の発達の相乗効果と申し上げましたが、就中、情報技術の革新は低コストでのビジネス・モデルの構築を容易にしているだけでなく、経済が好調な米国で指摘されているように、「企業の生産性向上」や個々人の生活行動様式をも変革するだけの影響力を持っています。それがゆえに、現在進行中の情報技術革新による諸変化は経済学者シュンペーターが言う「創造的破壊」そのものであると指摘する向きもあります。
 このような変革の中で「ユーザー・オリエンテッド」のビジネス・モデルを如何に早期に構築するかが金融機関として勝ち残るための重要な鍵となると考えています。それは、二つの理由があるからです。第一の理由は、最近のインターネット技術の発達でユーザーの金融商品・サービスに対する選択肢や利便性が飛躍的に拡大してきたため、ユーザーが金融商品・サービス選択の主導権を握る時代が到来したことであります。これまでユーザーは金融機関が提供する金融商品・サービスを比較検討することが時間とコストを伴うため、事実上これに積極的ではありませんでした。ある意味では供給者優先の構造が続いてきたわけです。ところが、金融ビッグバンによる金融商品・サービスの多様化が実現したことに加え、インターネットなどの発達で金融機関へのアクセスが低コストで実現したことなどが、ユーザー優位の構造を出現させたわけです。これが意味するところは、金融機関として勝ち残るためには従来の枠を超え、「金融サービス業」に脱皮することが必要だということです。もう一つの理由は、ネットワーク時代では「先手必勝、ウイナ・テイク・オール」の原則が支配しているといわれており、この原則を踏まえ行動することが競争優位の条件を作り出すということです。
 最近リテール分野で、当行がいち早くコンビニのam/pmと提携したり、携帯電話のiモードからアクセスできるパソコンバンキング・サービスを実施したり、またインターネット専業銀行の設立、ソニーのネット銀行への協力支援、さらにはインターネット上で様々な金融商品・情報・サービスを一つのサイトから提供する「金融ポータルサイト」を、野村証券、日本生命、三井海上火災などと立ち上げようとしていることなどは、こうした問題意識に基づく行動といえます。
 こうした行動はリテール分野だけに限りません。今後急成長が期待されている企業との電子商取引でも最近、東芝、三井物産と共同でシンガポールの情報通信会社べックス・コム社との合弁で「コマース・サービス・プロバイダー」ネットワーク事業を立ち上げました。これはインターネットを活用し、国際的な資材調達から流通、資金決済までグローバルな取引にも対応できるものであり、まさに、当行はリテール、ホールセールのいずれの分野においても競合他行などに対し、一歩先んずることができていると自負しています。
 以上、最近の銀行を取り巻く経営環境の変化と当行の対応振りを簡単に申し上げてきましたが、こうした環境変化は一過性のものではなく、持続性と広がりをもって今後も続くと考えられます。こうした中で、銀行の競争力を高めるためにはプロフェッショナリティを備えた競争力ある人材と変化に柔軟に対応しうる組織の機動性が要求されます。こうした問題意識に則って、当行は、昨年7月、年功序列を排し成果主義を取り入れた新しい人事制度と、10月には、新しいカンパニー制の組織を導入しました。
 新しい人事制度の導入は、行員の皆さんが、今まで以上に仕事を通じて「自己実現」をはかっていくことを主旨としたものであり、自分自身の働きがいや生きがいにつながるものと確信しております。また、営業店の支店長や課長、本部の専門業務といったポストに公募制を導入することにより、若くても責任あるポストにつける仕組みに変更しております。研修制度なども、若手行員ができるだけ早く専門性を身につけ、その道で能力を発揮することができるよう大幅な内容の見直しを進めてきました。今回の人事制度では、行員一人ひとりの「自主性」が強く求められております。つまり、自主性を発揮し目標に向かって努力し、成果を収めた人が報われる制度なのです。皆さんを含む、やる気のある若い行員の皆さんにとって、チャンスは限りなく広がったと思います。
 当行は1500万人の個人口座と、13万社におよぶ法人取引先があり、1日に平均して100万人のお客さまが何等かの目的をもって来店する銀行です。まず、それだけの取引基盤があり、重要な役割を担う社会的存在であるということを強く認識して、銀行員生活の第一歩を踏み出していただきたいと思います。
 そして、当行は、2002年4月までに、住友銀行と合併を基本とした統合を予定しています。企業・個人を問わず、お客さまにベストのサービスを、ベストのタイミングで提供できるような金融機関を造ろうとしています。さくら銀行と住友銀行が生み出す21世紀の新しい銀行は、まず、リテール事業で最強の力を確立し、さらに、投資銀行事業や国際業務でも、今よりさらに高いゴールを目標にして、「信頼度ナンバーワンのグローバルブランド」を有する銀行を目指していきます。また、統合による銀行同士のかたまりに安住することなく、もっとほかの業界の企業とも大胆にアライアンスを組むことで、サービスのあり方を根本から見直していきたいと思っています。
 皆さんにとっては、この上なく幅広く、かつ奥行きの深い業務のフィールドが待ち受けていると同時に、銀行という社会的な公器に務める者として、社会的責任の大きさも自覚し、十分な信頼を得られるようにならなければなりません。
 皆さんが職を求められた金融界は、今まさに「ネットワーク」「アライアンス」といった言葉に象徴されるように、大きく変わろうとしている、言ってみれば、フロンティアに飛び込んでこられたということです。
 我々は、皆さんの若くて柔らかい頭脳に期待しています。




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