金属素材を扱う専門商社として、
サプライチェーン全体の脱炭素を目指す

株式会社イノウエ 代表取締役社長 井上 浩樹 氏 営業管理部 部長代理 長谷川 亮一 氏 ※所属・役職については取材当時
    公開日:2023年12月19日

    課題

    • サステナブル調達に対応したい
    • 排出量算定のための人的リソースが不足
    • 全国に広がる協力会社の脱炭素を支援したい

    導入の決め手

    • お取引先様における導入実績
    • 初期費用などのコストが低廉
    • メガバンクが提供しているという安心感

    導入効果

    • 排出量の算定業務の効率化
    • 脱炭素に対する従業員の意識の高まり
    • サステナブルに関心を持つ採用応募者の増加

    サステナブル調達への対応だけではなく、
    ビジネスチャンスとして生かしたい

    事業内容を教えてください。

    ステンレスを中心に、ニッケル合金材などの高合金を主に取り扱う金属材料専門の商社です。1960年の創業以来、合金鋼や特殊鋼を世界中のサプライヤーから調達してモノづくりの現場へお届けし、日本のモノづくり産業を素材で支えてきました。また、約300社の協力会社様と連携して、お客様の求めに応じて加工するというエンジニアリング事業などに注力するなど、商社の枠に収まらない事業を展開しています。

    脱炭素に向けて、業界にはどのような課題がありますか。

    鉄鋼の生産では、製鉄のプロセスで大量のCO2を排出するため、排出量をいかに減らすかが業界にとっての大きな課題になっています。そこで、鉄鋼の生産に大量のコークスを使う高炉を、相対的に排出量が少ない電炉に転換するなど、さまざまな動きがあります。

    ちなみに、当社が扱うステンレスや高合金は、再溶解によるリサイクルが可能なだけでなく、メンテナンスフリーで長期にわたって設備に利用できるなど、脱酸素の観点からも魅力的な素材です。

    御社にはどのような課題がありましたか。

    排出量の計算方法やデータの蓄積方法、管理方法などが調べてもよく分からなかった点です。先ほども述べたように、当社のエンジニアリング事業には約300社に協力してもらっていますが、企業規模がまちまちなだけでなく、全国に広がっていますし、脱炭素に対する考え方もそれぞれ異なります。そうした中で、当社のサプライチェーン全体の排出量を可視化していくことは容易ではありません。そこで、最初の一歩として、自社の排出量を明確に算出するとともに、小さな協力会社様をなんらかの形で支援していく必要がありました。

    もう一つの大きな課題としては、なにぶん少人数でビジネスを回しているため、人的リソースの不足がほぼ限界に達していることです。当然ながら、脱炭素の担当者を専任で置く余裕はなく、算出作業の効率化も課題でした。

    いままでどのような施策に取り組んできましたか。

    そもそものきっかけは、主要取引先様が、いわゆるサステナブル調達を2021年にスタートしたことです。脱炭素に対応しなければという危機感とともに、積極的に対応すれば調達先として優位に立てるのではないかということも感じました。

    三井住友銀行には、日本総合研究所とともに、当社のSDGsへの取組状況を分析してもらい、今後の目標達成に向けて、どのような貢献が可能で、どんな取り組みを進めていけばいいのか、アドバイスをいただき道筋をつけました。その一方で、当社の排出量を正確に把握する方策についても検討していたところ、三井住友銀行からCO2排出量を可視化するサービスを開発しているという話をお聞きしたのです。

    三井住友銀行担当者のサポートを受けながら、
    排出量を可視化

    Sustanaの採用は何が決め手になりましたか。

    その動きに興味を持っていたところ、2022年5月にはSustanaがリリースされ、当社でもサービスの導入に向けて、いくつかのサービスを比較検討しました。

    その結果、Sustanaは初期費用などのコストが低く抑えられ、サービス内容も満足できるものであることが分かりました。採用の決め手になったのは、既存ユーザーの評判です。当時、配管部材やプラント機材を手掛ける卸売会社のM&Aを進めていたのですが、その親会社である機械総合商社のお取引先様が、既にSustanaを導入していたのです。打ち合わせの際などに、脱炭素の取り組みについて伺う機会もあり、Sustanaはコストパフォーマンスに優れているだけでなく、スモールスタートもできるというお話をお聞きし、導入を決断しました。

    また、三井住友銀行が自ら開発して提供しているサービスであることも、導入の安心感につながりました。

    Sustanaの利用方法を教えてください。

    現在、主要取引先様にて、国際的なサステナビリティ・サプライチェーンの評価機関であるEcoVadis社の調査を基に、調達先各社の状況をスコア化しようとされていますので、そのスコアアップのためにSustanaを利用しています。

    導入当初は、CO2排出係数の決め方など、環境省のWebサイトを見ても分からないことがあって困りましたが、導入直後のフォローアップ面談や、ウェビナー、動画なども役に立ちました。

    Sustanaの導入はどのような効果をもたらしましたか。

    Sustanaにデータを入力するだけで排出量が自動的に可視化されるため、忙しい担当者でも効率的に作業ができて助かっています。今後も定期的に各事業所から電力量のデータを集めて可視化し、長期的な傾向を見ていきたいと考えています。

    さまざまな取り組みを通じて、従業員の脱炭素の意識も高まりつつあり、より実効性のある施策の立案にもつながっていくと思います。また、こうした取り組みを進めている最中に当社のWebサイトをリニューアルしたのですが、その際にSDGs関連のページも充実化した影響か、サステナブルに関心の高い採用応募者が増えています。人的リソースの不足に悩む当社にとっては、それも間接的な効果といえるでしょう。

    自社のサプライチェーンだけでなく、
    社会全体で可視化の動きが広がっていくことが重要

    今後の活用や取り組みについて教えてください。

    当社では、Sustanaを用いた排出量可視化の取り組みと並行して、持続可能な世界の実現を目指すエシカル協会の法人会員になりました。脱炭素だけでなく、気候危機、人権侵害、児童労働、貧困問題、生物多様性の損失など、総合的なアプローチを目指していることに共感したからです。会社のイメージアップにもつながりますし、求人の際に意識の高い人材に来てもらえるのではないかという期待もあってのことですが、やはり企業として社会的責任を果たしていきたいという思いから参加を決めました。

    脱炭素に話を絞れば、自社の電力使用によるCO2排出量はSustanaによって可視化できるようになりましたから、今後は、具体的な削減計画を立てていく方針です。いずれにせよ2023年中には、排出量の全社的な総括を行って、次年度以降の施策に生かしていきたいと考えています。

    また、三井住友銀行には、自社の協力会社様に対し可視化を支援できるようなサービスの提供を期待しています。それにより、各協力会社様も手軽に排出量を算出できるようになり、自社のサプライチェーン全体での算出も容易になるからです。

    Sustanaはどのような会社にお勧めですか。

    当社の協力会社様やお取引先様だけでなく、なるべく多くの会社に使ってもらえれば、当社のサプライチェーン全体だけでなく、日本全体の脱炭素にもつながっていくでしょう。そのためにも三井住友銀行には、Sustanaのサービスの間口をさらに広げてもらいたいと思っています。