本部主導の継続的なサポートで、
脱炭素への取組意欲が向上。
脱炭素をビジネスチャンスとして活かしたい

ニッコンホールディングス株式会社 総務部 部長 神尾 敦子 氏 総務部 ESG推進室 室長 北田 潤 氏 総務部 ESG推進室 係長 瀧本 里衣子 氏 ※所属・役職については取材当時
    公開日:2024年11月26日

    課題

    • 算定内容の集計にハードルがあること
    • 算定内容の可視化が不十分であること
    • グループ各社の、脱炭素に対する知識や意識の格差

    導入の決め手

    • グループ各社への展開のしやすさ
    • シンプルで使いやすい機能性
    • 銀行が提供している安心感

    導入効果

    • グループ各社を含めたScope3算定を開始できたこと
    • グループ全体の脱炭素意識が向上したこと
    • 可視化によりグループ各社の目標設定および進捗管理が容易になったこと

    算定後の取組

    • 算定体制のブラッシュアップ
    • 脱炭素を軸としたビジネスの展開

    脱炭素の本質を理解することが、
    グループ全体に算定体制を浸透させる鍵

    事業内容を教えてください。

    当社は、運輸・倉庫・梱包・テスト事業を基盤に様々な物流サービスを提供する、総合一貫物流のパイオニア企業です。現在、国内および海外9カ国において、高品質で安定した物流サービスを展開しています。事業に関わるリソースをグループ各社が自前で保有し、お客様のニーズにワンストップで応えられる点が強みです。当社グループで約4,600台の自社車両を保有し、お客様のニーズに合わせてカスタマイズされたものも多くあります。(北田氏)

    物流業界の環境課題と主な取組について教えてください。

    物流業界の中でも日本のトラック輸送はトンキロベースでも5割以上を占め、もともとGHG排出量の多い産業です。トラック輸送のGHG排出量は、走らせる車両の排気によるものが最も多いため、この業界の脱炭素は、燃費の良い車両やEV車等へのシフトなどに依存する部分が大きくなります。しかし、現状はEV等の脱炭素効果の高い大型トラックがほとんどないため、特に大型を多く保有する当社としては大幅なGHG削減が難しく、根本的な削減策が限られることが大きな課題です。

    そのような中、トラック輸送業界の各社で取り組まれていることは、モーダルシフト(トラック等の自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換すること)や中継輸送、連結トラックの活用等により高積載率で効率よく輸送することが主流です。(北田氏)

    算定を開始した経緯や、体制構築の流れを教えてください。

    局所的な算定は、政府やお客様の要請に応じて以前から行っていました。ここ3-4年で、SDGsへの対応重視の風潮が強まり、グループ全体を取りまとめて公表する必要性を認識するようになりました。2021年にESG推進室を発足し、グループ全体の売上のうち約85%を占める8社から成るワーキンググループ(以下、WG)を作ってScope1,2の算定を開始したことが、グループをあげた算定の始まりです。また、2023年の中期経営計画策定において、非財務目標の一つにCO2排出量削減を掲げるため、グループ全体で算出し集計する必要があったことが大きな契機となっています。
    WGの定例会では、どのようにグループ全体で脱炭素に取り組むかを話し合っています。またグループ各社に対しては、e-ラーニングでサステナビリティ・マネージメントとして算定の重要性についても学んでもらったり、算定のための入力方法に関する案内をメールで定期的に周知する等の施策を行いました。当社の場合は、Sustanaを導入したことでWG以外の全ての連結子会社へ展開できました。使い方の簡易的な図解マニュアルを作成して配布したり、新しい機能や見てほしい機能の案内をすることで、算定する現場がうまくツールを使いこなせるように工夫をしています。

    グループ各社に展開するにあたって大切なことは、GHG排出量を算定する、あるいは削減する理由や重要性に対して納得してもらうことだと感じています。世の中の要請が高まっているから、といった理由だけでは、本質的な理解が伴わないため、正しい算定が難しいように思います。GHG排出量を削減することは、私たちの暮らし全体に関わる重要な取組であるという本来の意義を理解してもらうことで、正確に入力するモチベーションが上がると感じています。(瀧本氏)

    Sustanaの活用でグループ各社の排出量を時系列比較し、
    削減の成功事例展開に活かす

    Sustanaを選んだ理由と、導入した感想を教えてください。

    それまではエクセルで集計していたのですが、当社は連結子会社が多くあるため、グループ全体の算定を行うには、限界を感じていました。そのような時に、三井住友銀行からSustanaを提案していただきました。他社のツールについても話を聞いて比較検討した結果、Sustanaは、銀行が提供する安心感と、シンプルな設計で安価かつ使いやすい点、また算定の基礎知識等の動画が充実していること、クラウドを活用したツールであるためグループ各社にも展開しやすいことに魅力を感じ、導入を決定しました。(神尾氏)

    導入後の体制づくりの段階では、そのSustanaの算定に関する解説動画のコンテンツが役立ちました。概論や入力方法などについて、わかりやすくまとめられているため、導入前に見てもらうことで、スムーズに入力をしてもらうことができました。

    効果としては、大きくわけて四つ実感しています。一つ目は、入力のミスが減少したことです。使いやすさもポイントだと思いますが、ツールを導入したことで算定の重要性が理解されたことも、大きな理由だと考えています。リアルタイムにCO2排出量を見ることができるので目標を意識しやすく、どのくらい削減の努力をすれば良いかわかりやすいため、削減のモチベーションにもつながっていると感じます。

    二つ目は、集計作業が大幅に効率化されたことです。エクセルで算定していた頃は、集計に時間と手間がかかっていましたが、SustanaはCSVデータとして取り込むことで、簡単にグループ全体の排出量を集計できるため、とても助かっています。

    三つ目は、当社の取組を対外的に開示できるようになったことです。Sustanaで算定していることで、顧客や株主に対してスムーズに報告ができています。今後もさまざまな場面での開示要求が想定されますので、Sustanaでの算定がより役立ってくると思います。

    四つ目は、グループ各社の比較や、時系列での変化が容易に確認できるようになったことです。排出量を大幅に削減することが出来た子会社にその経緯を共有してもらい、他の子会社の削減策に落とし込むといった改善ができるようになったので、とても意義深いと思います。(瀧本氏)

    試行錯誤の中、Sustanaの活用でScope3の算定を開始。
    より細かい算定ができるようにブラッシュアップしていきたい

    Scope3算定の対応について教えてください。

    当社の事業は多岐にわたります。グループ各社を含めたScope3の算定方法の構築は複雑になることが想定されました。社内の知見だけでは対応するには不安があったため、外部のアドバイスを受けながら、サプライチェーンの関連性のマップ化から始めたところ、当社の事業の複雑さが再認識されました。

    図式化した内容を参考に、勘定科目を活用したシンプルな算定の仕組みを構築し、グループ全体のScope3を算定することができるようになりました。今後は削減施策による効果の数値化を含め、カーボンニュートラルに向けてより精緻な算定が課題であるため、当社事業のサプライチェーンマップは、今後の算定方法をブラッシュアップする上でさらに重要になってくると思います。(神尾氏)

    算定を行う中で、難しいと感じていることはありますでしょうか。

    Scope3の排出量の7-8割を占めるカテゴリ1と2についてはある程度網羅できている一方で、それ以外のカテゴリでは、算定が難しい部分があることです。算定の対象となる勘定科目を本社で設定しているのですが、グループ各社で会計処理に使用する勘定科目は少し異なっているため、算定対象の勘定科目自体がない場合や、対象外の勘定科目における排出量が多いケースがあります。より精緻な算定を行って分析をすることが、GHG排出量削減策のアイデアに繋がる可能性があると思いますので、より細かく正確に、誰でも算定できる方法を検討したいと考えています。(瀧本氏)

    今後の脱炭素の取組について教えてください。

    静脈物流に力を入れたいと考えています。トラックなどで輸送した先では、廃棄物や返却・返品するモノが発生します。復路でそうしたものを積んで戻ることで、全体的な輸送効率が上がり、GHG排出量の削減にもつながります。さらに、復路で運んできたものを、リサイクル等のために適切な場所へ運ぶことも当社の大切な役目です。このような取組は、社会全体のGHG排出量削減にも貢献できる部分です。さらなるニーズの高まりが想定されるため、動脈物流で培った当社のノウハウを静脈物流でより発揮できると考えています。(北田氏)

    Sustanaを導入する企業に、活用のアドバイスをお願いします。

    関係各所に算定の目的や必要性を理解してもらうことが、想像以上に重要です。導入初期は、まず算定の手順などの教育が必要だと思いがちですが、とりあえず入力をできるようにしてもらうという姿勢では、うまくいきづらいことを実感しました。入力のやり方だけではなく、算定を行う背景を深く理解してもらうことで、現場のモチベーションが上がり、入力の精度も向上すると思います。グループ各社の理解を促すために行なっている、e-ラーニングのコンテンツ作成や、Sustanaの入力案内など、脱炭素の取組を浸透させるための地道な努力の手応えを感じてきています。

    グループ全体に取組を定着させるまでには時間がかかりますが、主導する側が熱意を持って働きかければ、だんだんと理解が得られると実感しています。Sustanaのコンテンツも活用して一歩一歩進めることが大切だと思います。(瀧本氏)