海外事業も含めた算定体制を整え、
業界一体となり脱炭素の取組をしていきたい

サトーホールディングス株式会社 コーポレートコミュニケーション統括 執行役員 武井 美樹 氏 サステナビリティ推進部 部長 高島 哲也 氏 ※所属・役職については取材当時
    公開日:2024年12月6日

    課題

    • 海外事業の排出量の算定と管理が困難
    • GHG削減の取組につながる算定方法を模索
    • エクセル管理データの消失が不安

    導入の決め手

    • 多拠点を一元管理できる
    • コストを抑えつつ必要な機能を備えている
    • 集計データを可視化してくれる

    導入効果

    • データ消失の不安が解消
    • 拠点数が増えても楽に展開できる
    • 入力時間の削減

    算定後の取組

    • 可視化機能を活用したタイムリーな開示をしたい
    • サプライヤーも巻き込んだ業界横断的な取組をしたい

    海外事業が急成長する見通しの中、
    海外も含めたサステナビリティに対する対応が急務

    事業内容を教えてください。

    当社の主力商品は、ラベルやタグと、それを印字するプリンタです。ラベルやタグそのものだけではなく、それらを使ってモノや人に情報をひも付ける「タギング」によってあらゆるもの動きを可視化することで、効率化をはじめとした現場課題の解決を提供しています。バーコードやRFIDなどの自動認識技術を活用して、トレーサビリティやサプライチェーンの管理・在庫管理などの最適化を支えるソリューションサービスが強みです。

    たとえば、商品にRFIDがタギングされると、無線通信を介して商品情報の読み取り・情報伝達が可能となり、会計や棚卸にかかる時間を大幅に削減することができます。当社はこのようなソリューションを構成する商品・サービスの開発、製造、保守などをワンストップで行う企業グループです。現状、売上高の比率は国内の方がやや多く、概ね半々の状況ですが、海外事業がより成長しています。(高島氏)

    * RFID(Radio Frequency Identification:無線周波数識別):
    • 電波(電磁波)を用いて無線でデータの読み取りを行い、モノの識別や管理を行うシステム。RFIDタグは、データが入っている記録媒体を指す。

    サトーホールディングスの脱炭素方針について教えてください

    2050年度カーボンニュートラル宣言というビジョンを打ち出しています。中間目標として、2030年度までにScope1,2においてはグローバルで2016年度比50%減、Scope3は日本で2021年度比30%減を目標にしています。サプライヤーと脱炭素に関わるノウハウを共有するなど、サプライチェーンを通じたGHG排出量削減に取り組もうとしています。 (高島氏)

    具体的にどのような施策に取り組んでいるのでしょうか。

    一点目は、製品カーボンフットプリント(以下、CFP)の算定です。ヨーロッパを中心に、海外でプリンタ等のハード製品、ラベル等のサプライ製品(消耗品)のCFPが求められることが増えています。そのため、製品CFPを製造の現場側で算定できる状態を目指して取組を始めました。

    二点目は、販売製品のリサイクルです。たとえば、使用できなくなったプリンタを回収して分解し、素材別に分別して資源化しています。また、使用済みの消耗品においては産業廃棄物として処理されてきたインクリボンを回収し、RPF(固形燃料)の原料として活用する取組を2023年から始めました。ラベルの台紙(剥離紙)については、一般社団法人ラベル循環協会に加盟し、リサイクルを業界各社と共に推進しております。

    三点目は、静脈物流で強みを活かすことです。当社はモノに情報を付加してトレースができる状態にすることで、現場課題を解決します。これまでは動脈物流に関連する部分が事業の主なフィールドでしたが、静脈物流でも同様の価値提供ができると考えます。たとえば、廃棄物の素材情報や状態の可視化がリユースやリサイクル時の作業効率向上につながると考え、他社と共同でPoCを進めています。 (高島氏)

    サトーホールディングスの、サステナビリティに対する課題について教えてください。

    海外事業のGHG排出量について、算定ができていない部分があることです。現状、Scope3の算定については国内のみにとどまります。海外の事業所はそれぞれ子会社が運営をしているので、拠点ごとの情報収集と一元管理が課題です。

    海外におけるサステナビリティへの要求は年々厳しくなっています。海外の子会社が個別に対応していた開示要求について、最近では対応しきれないケースが増えており、日本本社への対応依頼が増加しています。特に欧米においては、サステナビリティ対応の遅れが、商談の土俵にすら立てなくなるという深刻な事態につながりかねません。そのため、海外事業におけるGHG排出量の一元管理を喫緊の課題として位置付けています。 (武井氏)

    横展開が容易なSustanaを海外事業所でも展開し、
    一元管理していきたい

    Scope3の算定の経緯や、算定方法について教えてください。

    算定を始めたのは2016年からです。きっかけは、今後は東証プライム上場企業にGHG排出量の開示が求められると考えたことです。当時はエクセルを使って、手入力で算定をしていました。

    当社は、カテゴリ1(購入した製品・サービス)がScope3全体の6割を占めます。その中でも一番多いのは、ラベルやカーボンリボンなどの消耗品です。この部分は、製品CFPで求めた単位当たりのGHG排出量を原単位として算定しています。

    二番目に多いものはカテゴリ12(販売した製品の廃棄)で、2割を占めます。ラベルの台紙や使用済みリボンなどが多く、使用を終えたプリンタ本体も含まれます。これらにおいては販売実績を活動量として算定しています。(高島氏)

    CO2排出量の算定で、重要だと感じる部分を教えてください。

    何のためにCO2排出量の算定をするのか、という本質を踏まえて推進することだと思います。本質的な算定ができていないと、算定したデータを削減のためにうまく活かせません。たとえば、コロナ禍はプリンタ製品の原材料調達費用が高騰したことで仕入金額が上がって排出量が上振れ、翌年は元に戻ったことで排出量が大幅に減るという算定結果になりました。これは活動量に仕入金額を用いた結果です。このような算定結果からは、有効な削減アクションを策定することができません。製品CFPの算定を現場に導入する動きを始めた背景の一つも、削減の施策を正しく評価できるようにするためです。(高島氏)

    Sustanaを導入して良かったと感じていることを教えてください。

    一点目は、データが消えてしまうリスクがないことです。エクセル管理の場合、何らかのトラブルやミスでデータが消失する心配がありましたが、Sustanaに切り替えたことで懸念がなくなりました。

    二点目は、横展開が楽だということです。Sustanaであれば、活動拠点が増えても、同じプラットフォームを活用できます。一つ枠組みを作れば、排出原単位のコピー機能を使って他拠点についても楽に作ることができるため、とても便利です。当社の場合、国内事業所はすべてSustanaで一元管理できています。さらに、当社は海外事業の割合も多く、海外でのCO2排出量算定体制を整えることも急務です。連結子会社であればSustanaを活用できますし、入力は英語や中国語にも対応しているということですので、海外も含めてSustanaで一元管理していきたいと考えています。

    三点目は、入力の効率化です。今はまだSustana導入初期のため、ミスの防止のためにダブルチェックをしています。ダブルチェックを含めると、エクセルで算定していた時と同程度の時間がかかっていますが、算定時間自体はエクセルを使っていた時と比べて半分程度になりました。 (高島氏)

    サプライヤーと一体になって、脱炭素の取組を加速したい

    Sustanaを導入して、今後取り組みたいアクションなどは出て来ましたか。

    次のステップは、蓄積したデータを元に、効果的なGHG排出量削減活動の検討を行い、実行することです。Sustanaは、GHG排出量を全社で同じプラットフォーム上で見ることができるので、活動をする際も全社一体で取り組みやすくなると期待しています。さらなる展開として、サプライヤーも巻き込んだGHG排出量の可視化と振り返りを行い、一体となって脱炭素の取組をしたいです。

    また、GHG排出量のタイムリーな開示もできるとよいと考えています。現在は入力作業や算定に時間がかかっているため、タイムラグがかなり発生していますが、Sustanaの可視化機能を生かして、算定結果を早くステークホルダーに届けられるのが理想です。 (高島氏)

    業界を横断した脱炭素の取組状況を教えてください。

    先にも述べましたが、ラベルの台紙(剥離紙)のリサイクルに取り組み始めています。そのために当社は、2023年に当社を含むシール・ラベル業界4社で一般社団法人ラベル循環協会という非営利法人を立ち上げました。
    大きな課題の一つ目は、剥離紙が再生紙原料として扱えることが知られていないことです。従来、剥離紙は再生紙原料として扱いづらく、その多くが廃棄されてきました。近年は、資源の有効活用の潮流もあり、適正分別、適正な回収を行えば、再生紙原料として扱える状況になってきています。
    二つ目の課題は、品質の均質化です。剥離紙が再生紙原料として扱いづらい要因は、さまざまな色のものが存在して品質のばらつきがあることだと言われています。解決策の一つとしては色の統一を図り、扱いやすい品質に揃えることが考えられます。また、再生品の品質許容も課題です。再生素材はバージン素材と比べて品質が均等ではありません。剥離紙として機能は満たしても、バージン素材と同じ品質を求められると製品化が難しくなります。循環型社会を目指す上で、需要者側の変化も重要なポイントになると考えます。(高島氏)

    サプライヤーなどにSustanaを勧めるとしたら、どのようなポイントをおすすめしたいでしょうか。

    特に店舗数や事業所が多い企業様は、取り入れると良いと思います。Sustanaを導入することでGHG排出量の管理を一元化できるので、算定プロセスが効率的になります。横展開がしやすいので、事業所が増えてもすぐに対応ができるので安心して利用できます。手頃な価格でありながら、機能は充実しており、算定データが溜まっていけばGHG排出量削減の具体策を立てる時の参考や、裏付けにも活用できます。また、多くのサプライヤーがSustanaを取り入れ、同じツール上で現状を認識し合うことができれば、業界横断的な脱炭素の施策も立てやすくなると感じています。ぜひたくさんの事業者様にご導入いただきたいと思います。(武井氏)