脱炭素施策の効果を可視化し、
さらなる取組を後押し。
環境課題の解決を事業の柱に繋げたい

株式会社ユカ 取締役 管理本部長 杉浦 義行 氏 総務部 総務課 松村 尚子 氏 ※所属・役職については取材当時
    公開日:2024年12月6日

    課題

    • 算定が属人化しており、引き継ぎに不安があること
    • 算定方法が自己流で、非効率であること
    • GHG排出量削減の取組結果が可視化できていないこと

    導入の決め手

    • 必要十分な機能性
    • 算定に不慣れでもスムーズに使える操作性
    • 従来の算定手法をそのまま承継できる点

    導入効果

    • Scope3の算定体制が整えやすくなったこと
    • クラウド保存により履歴管理が容易になり、効率化に繋がったこと
    • 可視化の効果により、脱炭素に対する意思決定がスムーズになったこと

    算定後の取組

    • 可視化機能を活用した、現場のモチベーション強化
    • サステナビリティを軸とした事業の柱と効果的な脱炭素施策の模索

    環境課題に積極的に取り組み、
    社会インフラとしての自動販売機の重要性を伝えたい

    事業内容を教えてください。

    当社は、自動販売機(以下、自販機)オペレーターとして、自販機による飲料・食品の販売や卸を行う企業です。首都圏と関西圏に15事業所を展開し、約47,000台(2023年末時点)の自販機を管理運営しています。自販機の設置先(ロケーションオーナー)に自販機の導入コンサルティング・設置・運営・管理・アフターケアなどを行い、自販機を通じて、「お客様の困りごとや社会課題を解決する一助となる」付加価値の提案に力を入れています。例えば、AEDや災害対策用の備蓄飲料水、災害用のトイレ、防犯カメラなどが付帯した自販機を設置することでBCPを強化できるサービスなどがあります。

    2023年に創立50周年を迎え、次の50年に向けてCSV経営とSDGsの取組を推進していくことを、社の方針として打ち出しました。(杉浦氏)

    自販機業界の環境課題と現状の取組について教えてください。

    自販機は、昔から容器のポイ捨て(不法投棄)や、東日本大震災に伴う節電対応において自販機の電力消費が問題視されるなど、環境に対するマイナスイメージで注目されがちな側面があります。清涼飲料業界を挙げて環境課題に積極的に取り組むことでこのようなイメージを払拭し、「24時間365日稼働する自販機は大切な社会インフラである」とアピールしています。

    大きな取組の一つは、容器のリサイクルです。「2030年ペットボトル100%有効利用」を目指すとともに、資源循環だけでなくGHG排出量の削減効果も高い「ボトル to ボトル*」に力を入れており、「2030年ボトル to ボトル比率50%以上」を目標として宣言しています。容器の回収については、自販機横に設置されているリサイクルボックスに空き容器以外の異物が多く投入され、回収物の約3割を空き容器以外が占めているという課題があり、入り切らない容器が散乱する原因や、空容器の回収と処理費用の負担増加、さらには回収ペットボトルの品質が低下し水平リサイクルを妨げる要因となっています。対策としては、下からのみ投入できる仕組みのリサイクルボックスを設置するといった取組を行っています。

    自販機については、省エネ性能が大幅にアップしています。省エネ法のトップランナー基準*において、飲料自販機1台当たりの消費電力はこの20年間で約80%削減されています。また、当社独自の自販機に関する取組として、2008年7月に自販機において初のカーボンオフセットサービスとなる「ドリンク de オフセット」を開始しました。東日本大震災の影響で一旦頓挫したものの、近年のSDGsや政府の2050年カーボンニュートラル宣言を受け、当社の主要な取組としてリスタートさせているところです。

    車両のEV化については、まだ解決が難しい課題があります。この業界のGHG排出量の多くを輸送にまつわる部分が占める中、ボトルカー(商品の補充などのためのトラック)はEV化を進めづらい状況です。EVボトルカーは大手の一部で導入が始まっているものの、現状はまだ高価な上、充電時間が長いために、稼働させたい時間との兼ね合いでオペレーションが回らないという問題点もあるため、大手の動向も見ながら見極める必要があると考えています。

    GHG排出量の算定に対しては、自販機の係数に関する課題があります。現在主流となっているタイプの自販機は環境性能が高く、係数として適切なものがないため、算定方法を模索しています。(杉浦氏)

    * ボトル to ボトル:
    • 使用済みペットボトルを新しいペットボトルに再生させる水平リサイクル
    * トップランナー基準:
    • 製造事業者等に、省エネ型の製品を製造するよう基準値を設けクリアするように課した「エネルギーの使用の合理化に関する法律(以下、省エネ法) 」の中の、機械器具に係る措置

    シンプルで簡単な操作性が決め手となりSustanaを導入。
    Scope3を含めた算定には不可欠な存在に

    Sustanaを導入した経緯を教えてください。

    当社では2000年代初頭に環境管理委員会を発足させ、GHG排出量の算定にも取り組んできましたが、東日本大震災以降、委員会の活動も停滞を余儀なくされました。近年サステナビリティに対する取組の重要性が認識され出したことで、改めてGHG排出量の算定を再開し、2023年にSustanaを導入しました。

    乗り越えるべき課題が山積する中、まず初めに人材の育成基盤を整えることが重要だと感じています。当初の環境活動に携わってきたメンバーが定年退職を迎えていく中で、従来のエクセルを使った担当者独自のやり方では、スムーズな引き継ぎができないという課題意識がありました。そのような時に、三井住友銀行からSustanaを案内していただきました。他社のツールも検討しましたが、機能が最もシンプルで後任に引き継ぎやすい点、それまでのノウハウをそのまま適用しやすいシステムであったことがポイントとなり、導入を決めました。

    特に、Scope3を算定する必要性が高くなってきた昨今、Sustanaがなければ算定自体が難しくなってきていると感じており、本当に導入して良かったと思っています。(松村氏)

    すぐに結果が出なくても、種蒔きが大切。
    Sustanaの可視化機能を現場のモチベーション向上に役立てたい

    脱炭素に対して、具体的にどのような取組を行なっているのでしょうか。

    一点目は、「ドリンク de オフセット」の積極的な提案です。このサービスは、J-クレジット制度*を活用し、自販機の収益の一部をカーボンオフセット*に充当するサービスです。自販機での商品購入が脱炭素の取組への参加・貢献に繋がるため、社内の意識醸成にも役立ち、大きな費用をかけずに導入できるので、コスト増が脱炭素への取組のネックになっている事業所もご活用いただけます。国がJ-クレジット制度を通じて脱炭素への取組を認める証明書を企業・団体名で取得することも可能です。また、J-クレジット取引が活発化することは、途切れのないGHG削減サイクルの構築に繋がります。ドリンク de オフセットが、その一助になればと考えています。ただ、現状はまだ馴染みの薄いサービスであるため、「ドリンク de オフセット」を広めることは、大変地道な活動です。今すぐに導入いただくことが難しかったとしても、何かのタイミングで「ユカがカーボンオフセットできる自販機を扱っていた」と思い出してもらうことで、将来的なお取引に繋がれば良い、という種蒔きのような意味合いで継続していくことが大切だと考えています。

    二点目は、幅広いステークホルダーとのパートナーシップ確立です。前述のEVトラックをはじめとして、輸送手段の脱炭素へのハードルは高く、自社の努力には限界があります。取引先だけでなく、多様なステークホルダーとの出会いを通じてイノベーションの種を探しています。まずは自治体SDGsパートナー制度への参加を通じて勉強を進めたり知見を広げたりすることで様々なヒントを得ながら、サステナブルな自販機オペレーションを作っていきたいと考えています。(杉浦氏)

    * J-クレジット制度:
    • 省エネルギー設備、再生可能エネルギーの導入や森林経営等の取組によるGHGの排出削減量や吸収量を、売買可能な「クレジット」として国が認証し、クレジットの創出者と購入者の間で排出削減量・吸収量を取引できる制度。
    * カーボンオフセット:
    • 温室効果ガス排出削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガス排出削減・吸収量等(クレジット)を購入して埋め合わせるもの。

    Sustanaを導入した効果と、今後どのように活用していきたいか教えてください。

    まず、算定の効率が上がりました。従来は、算定に関するエクセルのファイルが複数存在し、使いたいデータを探すのに苦労していましたが、Sustanaはクラウド上に全てが存在するので煩雑さがありません。更新履歴も容易に確認できるため、振り返る際も簡単に遡ることができ、効率化に繋がっています。(松村氏)

    さらにSustanaは、算定した内容を素早くグラフで可視化できるところがとても役立っています。例えば、経営会議でGHG排出量の削減策について話し合った時に、電球をLEDに切り替えたことによる電気使用量の削減データのグラフを提示して効果をアピールした結果、全事業所における電灯のLED化が決定した事例があります。

    今後、各現場に対して脱炭素の観点を根付かせるにあたっても、このような可視化機能を活用して方針や成果を見せていくことは、非常に効果的だと考えています。例えば、Sustanaを活用して、ドリンク de オフセットを増やしていくことによる効果を可視化できれば、現場のモチベーション向上や、営業活動に役立つと思います。

    また、当社は、様々な飲料メーカーの商品を販売しているため、自販機での飲料販売全体の流れに伴うGHG排出量を把握し、効果的な削減策を見出していきたいと考えています。Sustanaは非常に使いやすいツールですので、そのための仕組みが構築しやすいと感じています。

    お客様との会話の中でGHG排出量の算定の話が出た際、Sustanaのことをお伝えしたところ、非常に関心を持たれたこともあります。GHG排出量の算定を始めたばかり、あるいはこれから始めようとしているような初期段階においては特に、Sustanaのシンプルな機能と操作性は、とても効率化に繋がると思います。関係する多くの企業が取り入れ、データを共有し合うことで、業界全体としての取組が進んでいくと思いますので、ぜひ多くの企業に導入してもらいたいと思います。(杉浦氏)