自販機業界の環境課題と現状の取組について教えてください。
自販機は、昔から容器のポイ捨て(不法投棄)や、東日本大震災に伴う節電対応において自販機の電力消費が問題視されるなど、環境に対するマイナスイメージで注目されがちな側面があります。清涼飲料業界を挙げて環境課題に積極的に取り組むことでこのようなイメージを払拭し、「24時間365日稼働する自販機は大切な社会インフラである」とアピールしています。
大きな取組の一つは、容器のリサイクルです。「2030年ペットボトル100%有効利用」を目指すとともに、資源循環だけでなくGHG排出量の削減効果も高い「ボトル to ボトル*」に力を入れており、「2030年ボトル to ボトル比率50%以上」を目標として宣言しています。容器の回収については、自販機横に設置されているリサイクルボックスに空き容器以外の異物が多く投入され、回収物の約3割を空き容器以外が占めているという課題があり、入り切らない容器が散乱する原因や、空容器の回収と処理費用の負担増加、さらには回収ペットボトルの品質が低下し水平リサイクルを妨げる要因となっています。対策としては、下からのみ投入できる仕組みのリサイクルボックスを設置するといった取組を行っています。
自販機については、省エネ性能が大幅にアップしています。省エネ法のトップランナー基準*において、飲料自販機1台当たりの消費電力はこの20年間で約80%削減されています。また、当社独自の自販機に関する取組として、2008年7月に自販機において初のカーボンオフセットサービスとなる「ドリンク de オフセット」を開始しました。東日本大震災の影響で一旦頓挫したものの、近年のSDGsや政府の2050年カーボンニュートラル宣言を受け、当社の主要な取組としてリスタートさせているところです。
車両のEV化については、まだ解決が難しい課題があります。この業界のGHG排出量の多くを輸送にまつわる部分が占める中、ボトルカー(商品の補充などのためのトラック)はEV化を進めづらい状況です。EVボトルカーは大手の一部で導入が始まっているものの、現状はまだ高価な上、充電時間が長いために、稼働させたい時間との兼ね合いでオペレーションが回らないという問題点もあるため、大手の動向も見ながら見極める必要があると考えています。
GHG排出量の算定に対しては、自販機の係数に関する課題があります。現在主流となっているタイプの自販機は環境性能が高く、係数として適切なものがないため、算定方法を模索しています。(杉浦氏)
* ボトル to ボトル:
-
使用済みペットボトルを新しいペットボトルに再生させる水平リサイクル
* トップランナー基準:
-
製造事業者等に、省エネ型の製品を製造するよう基準値を設けクリアするように課した「エネルギーの使用の合理化に関する法律(以下、省エネ法) 」の中の、機械器具に係る措置