脱炭素ニーズは事業拡大の機会と捉え、
社内一丸となり活動することを目指す

日本電技株式会社 企画管理本部 総務部 総務課 課長 印南 剛志 氏 総務課 浦 菜摘 氏 ※所属・役職については取材当時
    公開日:2024年12月26日

    課題

    • 算定が属人化している
    • 部署間で脱炭素に対する意識格差がある
    • 脱炭素の流れをビジネスチャンスとして活かしきれていない

    導入の決め手

    • 支店への展開のしやすさ
    • 簡単な操作方法
    • 低コストであること

    導入効果

    • 算定の属人化が解消
    • 各支店での入力が定着
    • 社内の脱炭素意識の向上

    算定後の取組

    • 事業部門も巻き込んだ環境に関する推進部門の構築
    • Sustanaを活用した社内の人材育成の推進
    • 脱炭素の取組が人事評価に反映される仕組みづくり

    脱炭素に取り組むことが、事業拡大に結びつく

    事業内容を教えてください。

    主に非居住用建築物に対する空調自動制御システムを施工するビルディング・オートメーションに関する事業を行っています。空調設備がトータルで効率よく働くように、制御システムの設計・施工管理に関わるプロデュースをしています。また、自動制御の知見を活かし、工場の生産ラインの自動化事業も行っています。

    環境関連の規制が強まってきていることを受け、温室効果ガス排出量(以下、GHG排出量)の少ないビルづくりに対するニーズが高まっています。そのため、当社が手掛ける空調自動制御に関する部分については、GHG排出量を算定してクライアントに提示しています。また、近年、お客様からGHG排出量を抑えられる制御の設計や、省エネ設計製品の提案依頼が多くなっています。(印南氏)

    脱炭素方針について教えてください。

    当社は以前よりISO14001を取得していたため、Scope1,2については継続的な削減に取り組んでいました。今後は、GHG排出量の少ないビルに事業所を移すなど、可能な限り再エネ・省エネに切り替えていく予定です。また、グローバルに事業を展開するお取引先からCDP*の回答要請が来ているため、来年(2025年)中に回答ができるように準備を進めているところです。さらに、SBT*認定を目指し、それに向けた目標設定を来年以降に行う予定です。

    当社では、Scope1,2については2021年から、Scope3は2023年から算定をしています。当社の場合、GHG排出量はScope3のカテゴリ11(販売した製品の使用)が大部分を占め、Scope1,2も合わせた全体の8割以上を占めています。一方で、クライアントからの省エネニーズは高まっています。新型の機器の方が省エネ性能は高いため、古い機器を最新型に切り替え、設計を見直していただくだけでもかなり省エネになります。そうした提案をしていくことで、クライアントのニーズを叶えながら、当社のGHG排出量も削減できるはずだと考えています。(印南氏)

    * CDP:
    • Carbon Disclosure Project(国際的な環境情報開示システムを運営する非営利団体)
    * SBT:
    • Science Based Targets(科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出削減目標)。CDP、国連グローバルコンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)が共同で運営する国際的なイニシアチブ

    Sustanaとコンサル会社を活用し、
    自社で算定するベースを構築

    Scope3の算定は、どのようなことから始めたのでしょうか。

    最初は、三井住友銀行から紹介いただいた日本能率協会コンサルティングというコンサル会社に依頼して、当社グループが算定すべきScope3のカテゴリを選定しました。カテゴリの選定については、事業の中にカテゴリに該当する活動があるものを選定の候補とし、業績データや会計データを確認しながら金額や活動量が少ないものは除外して、最終的に算定対象を決めました。また、今後、当社グループ単独で算定業務が行えるよう、サプライチェーン排出量全体の算定フォーマットも作成いただきました。

    当社は多くの機器を他社から仕入れているため、必要な算定データの資料を仕入れ先と意見交換をしながら検討しました。算定方法としては、たとえばカテゴリ11に対しては空調システムに含まれる機器などを販売データから抽出し、販売数に耐用年数とエネルギー消費量、使用時間等の平均を掛けて計算しています。

    GHG排出量の算定ツールについては、情報収集を行った結果、コストが抑えられ、使い方もシンプルなSustanaを選びました。支店を巻き込んで算定することを視野に入れ、Sustanaであれば導入障壁が低いのではないかと感じたことが大きな決め手でした。(浦氏)

    コンサルを受けて実感したメリットを教えてください。

    GHG排出量算定のベースを作っていただけて、とても助かりました。コンサル会社とプロジェクトを組んで算定をする中で、自分自身も少しずつ算定の方法や、勉強するべきことのイメージが湧いていきました。

    また、社内の意識にも変化が見られました。経理部や情報システム部等と連携することが多いのですが、これまでは既存業務との両立や、GHG排出量算定の目的や意義・算定に必要な知識の共有に対する課題感がありました。直接算定には携わっていないこのような部署や、各事業の推進部隊などもプロジェクトに巻き込んだことで、プロジェクトのメンバー全体がGHG排出量算定の重要性を認識し、社内が一丸となって脱炭素の取組をしていこうという意識が高まりました。(浦氏)

    Sustanaを導入して良かったことを教えてください。

    算定に係る業務負担が軽減されました。これまでは、支店から請求書などを入手して自分一人で入力していましたが、Sustanaを導入したことで、Scope1,2については支店に入力してもらえるようになり、業務負荷低減や属人化の解消につながりました。また、入力作業を通してそれぞれの支店でGHG排出量に対する意識が自分ごと化され、支店の社員が算定に関する知見を身に付けてきていると感じます。(浦氏)

    社内で一丸となり、
    脱炭素をビジネスチャンスにしていきたい

    今後の脱炭素の取組について教えてください。

    環境活動の推進に関する部門が必要だと思っています。クライアントの脱炭素を推進することは、当社のビジネスにおける機会の一つです。当社のGHG排出量を削減するための取組を、クライアントの脱炭素を支援する事業と関連させて推進するために、コーポレート部門と事業部門の両方の観点から、環境活動を推進する部門を発足できると良いと考えています。

    また、客観的な視点を取り入れた算定の精度向上に取り組むために、GHG排出量開示について第三者認証を受けようと考えています。(印南氏)

    さらに、社内での教育を進めていきたいと思います。当社のビジネスと気候変動の関連や、それをビジネスチャンスに変えるためにすべきことを、社員一人一人が考える土壌ができることが理想です。加えて、脱炭素の取組が人事評価に繋がる仕組みを作る必要もあると考えています。

    TCFD*の開示項目の中に、リスクと機会がそれぞれ含まれますが、当社の場合は機会が非常に多くなっています。脱炭素に取り組むことがビジネスチャンスにつながるということに対する社内認知を広げていきたいです。

    Sustanaには、GHG排出量を削減するためにすべきことをアドバイスしてくれる機能がありますので、うまく活用して、実際の削減や事業活動のヒントにしていくことが次のフェーズだと思っています。削減に取り組む際は、必要に応じてコンサルの助言を受けることも視野に入れています。(浦氏)

    * TCFD:
    • 気候関連財務情報開示タスクフォース

    どのような企業にSustanaを勧めたいですか

    当社のように、少数の担当者で算定を始めている企業は、導入を検討されると良いと思います。担当者の業務負荷を減らすことができますし、会社全体としての意識を高めていくことにも繋がります。

    Sustanaは、データをクラウドに上げるだけでGHG排出量が算定されるので、 属人化リスクを防ぐことができます。GHG排出量の開示は継続的に行う必要があるため、それまでの算定担当者が担当を外れてしまうと算定ができないという体制は、非常にリスクが高いです。Sustanaを導入し、算定体制を構築した状態になっていれば、知識がそれほどない人でも、過去の例に倣って入力していけば算定ができます。三井住友銀行には算定体制の構築段階から算定に関する相談をしており、コンサル会社を紹介していただいたりしましたので、削減のフェーズに入っていく際も頼れる存在だと思っています。誰かの力を借りながら脱炭素に取り組みたいという企業にとっても、心強いのではないでしょうか。(浦氏)