経理

公開日:2025.03.24

プーリングとは?基本概念からメリット・デメリットまで詳しく解説

プーリングとは?基本概念からメリット・デメリットまで詳しく解説

企業経営において資金管理の効率化が重要な経営課題となっています。その解決策として注目を集めているのが「プーリング」です。プーリングは、各地に展開するグループ会社の資金を統括会社に集約し、一元管理することで、資金効率の向上や金利負担の軽減などを実現する手法です。本記事では、プーリングの基本的な仕組みや具体的な方式、メリット・デメリット、さらには導入時の注意点について、初心者にもわかりやすく解説します。

プーリングとは?その仕組みと基本概念

昨今、企業経営において資金管理の効率化は重要な課題となっています。特に、グループ会社を持つ企業にとって、資金をいかに効率的に管理・運用するかは、企業競争力を左右する大きな要因となり得ます。そこで注目されているのが「プーリング」です。プーリングは、グループ全体の資金を統括会社に集約し、一元管理することで、資金効率の向上や金利負担の軽減などを図る手法です。ここでは、プーリングの基本的な概念、仕組み、そして代表的な方式について、初心者にもわかりやすく解説します。

プーリングの定義:グループ全体の資金効率化

プーリングとは、企業グループ内の資金を統括会社(多くは親会社)に集約し、一元管理する資金管理手法です。国内外にグループ会社を持つ企業や、国内に複数のグループ会社を持つ企業が、資金管理を効率化するために用いる手法であり、資金の集中管理により、グループ全体の資金効率を高めることが可能となります。具体的には、各グループ会社が個別に資金調達や運用を行うのではなく、統括会社がグループ全体の資金をまとめて管理することで、資金の過不足を調整し、グループ全体での最適化を図ります。この手法により、外部からの借入を減らし、支払利息を削減する効果が期待できます。

プーリングの基本的な仕組み:資金の集中と配分

プーリングの基本的な仕組みは、グループ各社の余剰資金を統括会社に集め、資金不足の会社へ配分することです。まず、グループ各社は日々の事業活動で生じた余剰資金を統括会社に預け入れます。一方、資金が不足しているグループ会社は、統括会社から必要な資金を借り入れます。これにより、グループ全体での資金の過不足が調整され、効率的な資金運用が可能となります。統括会社は、グループ全体の資金状況を把握し、必要に応じて資金の移動を指示します。この資金の集中と配分のプロセスは、通常、自動化されたシステムによって効率的に行われます。

プーリングの種類:代表的な方式を紹介

プーリングにはいくつかの方式があり、代表的なものとしてゼロバランス方式、ターゲットバランス方式、一定残高方式が挙げられます。

1.ゼロバランス方式

ゼロバランス方式は、毎日、グループ各社の口座残高をゼロにし、余剰資金をすべて統括会社に集中させる方式です。

2.ターゲットバランス方式

ターゲットバランス方式は、各社口座にあらかじめ設定した目標残高(ターゲットバランス)を残し、それを超える資金を統括会社に集中させます。

3.一定残高方式

一定残高方式は、各社口座に一定額の残高を維持し、余剰資金を統括会社に移動させる方式です。

これらの方式は、企業の資金管理ニーズやリスク許容度に応じて選択されます。自社に最適な方式を選択することが重要と言えるでしょう。

プーリングのメリット

プーリングの導入は、企業グループに多くのメリットをもたらします。金利負担の軽減、資金効率の向上、そして資金の見える化は、グループ経営の最適化に大きく貢献します。ここでは、プーリングが企業にもたらす代表的なメリットについて具体的に解説します。

金利負担の軽減:グループ内での資金の融通

プーリングの大きなメリットの一つは、金利負担を軽減できることです。グループ内に資金余剰の会社と資金不足の会社がある場合、プーリングにより余剰資金を資金不足の会社へ融通することで、外部借入を削減できます。外部金融機関から借り入れる場合、当然ながら金利が発生しますが、グループ内融資であれば、より低い金利を設定することが可能です。たとえば、外部借入金利が2%のところ、グループ内融資の金利を1%に設定すれば、グループ全体の支払利息を大幅に削減できます。その結果、グループ全体の収益力向上に繋がり、企業価値を高めることができるのです。

資金効率の向上:余剰資金の有効活用

プーリングは、グループ全体の資金効率を向上させます。統括会社がグループ全体の資金を一元管理することで、各グループ会社が個別に資金運用を行うよりも、より効率的かつ効果的な運用が可能になります。たとえば、余剰資金をまとめて高金利の金融商品で運用したり、資金需要の高い事業に集中投資したりすることができます。また、統括会社が資金運用に関する専門知識やノウハウを有していれば、より高い運用益を得られる可能性も高まります。プーリングにより、資金を眠らせることなく有効活用し、グループ全体の収益力向上に貢献することが期待できます。

資金の見える化:グループ全体の資金状況を把握

プーリングを導入することで、グループ全体の資金状況を可視化できるメリットがあります。統括会社は、各グループ会社の口座残高や資金の動きをリアルタイムで把握できるようになり、資金管理の透明性が向上します。これにより、不正な資金流出や不適切な資金運用を未然に防ぐことが可能となります。また、グループ全体の資金状況を正確に把握することで、より精度の高い資金計画を策定し、効率的な資金運用を実現できます。さらに、資金の見える化は、内部統制の強化にも繋がり、企業統治(コーポレートガバナンス)の向上にも貢献します。

プーリングのデメリットと課題:導入前に検討すべきポイント

プーリングは多くのメリットをもたらす一方で、導入にはいくつかのデメリットや課題も存在します。特に、導入の煩雑さや統括会社への依存は、慎重な検討が必要です。ここでは、プーリングを導入する際に考慮すべきデメリットや課題について詳しく見ていきましょう。

導入の複雑さとコスト

プーリングの導入には、専門的な知識と煩雑な手続が必要となり、相応のコストがかかります。まず、プーリングを運用するためのITシステムの導入や、各グループ会社とのシステム連携にもコストがかかります。また、統括会社には専門の人材を配置する必要があり、人件費の増加も考慮しなければなりません。導入には、初期投資だけでなく、運用開始後も継続的なコストが発生する点を理解しておく必要があります。

統括会社への依存度とガバナンス上の課題

プーリングを導入すると、資金管理機能が統括会社に集中するため、統括会社への依存度が高まるという課題があります。万が一、統括会社の資金管理能力が低い場合や、ガバナンスに問題がある場合には、グループ全体の資金効率が低下するリスクがあります。また、統括会社の経営が悪化した場合、グループ全体の資金繰りに悪影響を及ぼす可能性も否めません。そのため、統括会社の選定や、統括会社に対するモニタリング体制の構築が重要となります。さらに、グループ会社間の利害調整や、資金配分のルールを明確化し、透明性を確保することも、ガバナンス上の重要な課題です。

プーリング導入を効率化するCMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)

プーリングの導入には、専門知識やシステム整備が必要であり、企業にとって大きな負担となる場合があります。そこで近年注目されているのが、金融機関が提供するCMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)の活用です。CMSは、企業グループの資金管理業務を効率化するためのサービスであり、プーリングの導入・運用をサポートします。企業はCMSを活用することで、グループ全体の資金の見える化、資金効率の向上、支払・回収業務の効率化などを図ることができます。ここでは、CMSの基本的な概念と、その導入メリット、主な機能について解説し、さらに三井住友銀行が提供する国内CMSの特徴についても紹介します。

CMSの定義:企業グループの資金管理を効率化するサービス

CMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)とは、銀行などの金融機関が提供する、企業グループの資金管理を効率化し、最適化するための包括的なサービスです。具体的には、グループ各社の資金の見える化、資金の効率的な運用・調達、支払・回収業務の効率化などを支援します。CMSを導入することで、企業は自社でプーリングの仕組みを構築・運用する負担を軽減し、金融機関の専門的なノウハウやシステムを活用することができます。また、金融機関が提供する安全性・信頼性の高いシステムを利用できるため、セキュリティ面でも安心です。

CMS導入のメリット:資金効率向上、業務効率化、内部統制強化

CMS導入のメリットは多岐にわたります。

CMS導入のメリット:資金効率向上、業務効率化、内部統制強化
  • 1. グループ全体の資金効率が向上します。各社の余剰資金を統括会社に集約し、資金不足の会社に融通することで、外部借入を削減し、支払利息を軽減できます。
  • 2. 支払や回収業務の効率化が図れます。統括会社がグループ各社の支払や回収業務を代行することで、各社の業務負担を軽減し、グループ全体での業務効率化を実現できます。
  • 3. 内部統制の強化に貢献します。資金の流れが可視化され、不正な資金移動を防止できるため、ガバナンスの強化に繋がります。さらに、資金の一元管理により、資金運用の効率化やリスク管理の高度化も期待できます。

CMSの主な機能:資金集中・配分、支払代行、資金予測、他行口座管理

CMSには、資金管理を効率化するための様々な機能が備わっています。CMSはプーリング導入のハードルを下げ、そのメリットを最大限に享受するための有効な手段と言えます。
代表的な機能としては以下の4つの機能が挙げられます。

1.「資金集中・配分機能」

グループ各社の余剰資金を統括会社に自動的に集中させ、資金不足の会社に配分する機能です。

2.「支払代行機能」

統括会社がグループ各社の支払を代行することで、支払業務の効率化と資金の一本化を実現します。

3.「資金予測機能」

将来の資金繰りを予測し、資金ショートなどのリスクを未然に防ぐことも可能です。

4.「他行口座管理機能」

他行口座管理機能を備えたCMSでは、複数の金融機関にまたがるグループ会社の口座情報を一元的に管理できます。

三井住友銀行の国内CMS:国内グループ企業に選ばれる理由

三井住友銀行が提供する国内CMSは、資金の自動集中・配分機能(プーリング)はもちろん、支払代行、会計システムとのデータ連携など、資金管理業務を効率化する多彩な機能を提供しています。国内グループ企業の資金管理の効率化に強みを持っており、以下の特徴もあります。

三井住友銀行の国内CMSが国内グループ企業に選ばれる理由
  • 1. クラウド型で提供されるため、自社でサーバーを構築・運用する必要がなく、導入時の初期投資を抑え迅速な導入が可能です。
  • 2. 他行口座照会機能により、三井住友銀行以外の金融機関の口座情報も一元管理できるため、グループ内に複数の取引銀行が存在する場合でも安心です。
  • 3. 三井住友銀行のインターネットバンキングサービス「ValueDoor」を経由して、Web21等の他の決済サービスとの共通ログインが可能なため、操作性にも優れています。

さらに、三井住友銀行では、国内CMSの導入から運用までを専門スタッフが丁寧にサポートする体制を整えています。国内CMSに精通したスタッフが、お客さまの課題やニーズを丁寧にヒアリングし、最適なソリューションを提案します。導入後も、操作方法に関する問い合わせなど、きめ細かなサポートを提供しています。

三井住友銀行の国内CMS導入事例

三井住友銀行の国内CMSは、多くの企業で導入され、効果を上げています。

A社:複数口座の一元管理によるグループ統制強化

グループ各社が複数行に口座を開設していたため、情報共有のための各社によるデータ入力や統括会社での統合作業など、実態把握に多くの時間と労力を要していました。CMSの導入により他行口座の収支も一元管理が可能となり、グループ全体の効率的な資金管理体制を構築しました。その結果、プーリングによる資金効率化も実現しました。

B社:M&A後のグループ会社管理を効率化

M&Aによる企業買収でグループ会社が増加し、異なる会計システムの統合が課題となっていました。CMSを導入することで、既存の会計システムを変更することなく、資金面から買収子会社をコントロールする体制を構築し、新規に加わったグループ会社も容易に参加できる柔軟な運用を実現しました。

C社:支払代行による余剰資金の圧縮

グループ会社間でCMSによるプーリングを実施していましたが、各社で支払業務が残っていたため、余剰資金の圧縮が課題でした。CMSの支払代行機能を活用することで、グループ会社の余剰資金を本社に一本化することにしました。支払業務の集約により、資金効率と業務効率の双方を改善しました。

【まとめ】国内グループ企業の資金管理は国内CMSで効率化!

国内CMSは、国内グループ企業の資金管理に特化したソリューションであり、国内グループ企業にとって使いやすい機能が充実しているため、導入のしやすさや運用のしやすさが魅力です。
三井住友銀行の提供する国内CMSは、国内グループ企業の資金効率向上と内部統制強化に役立つ機能を備えています。

  • 1. プーリング機能により、グループ各社の余剰資金を親会社に自動的に集中し、資金不足の会社に配分できます。
  • 2. 親会社がグループ各社の支払を代行する機能も有しており、支払資金の一本化が可能です。
  • 3. グループ全体の資金効率を高め、有利子負債の圧縮や調達コストの削減に繋がります。
  • 4. 資金の流れが可視化され不正防止にも役立つため、内部統制の強化にも貢献します。

三井住友銀行では、国内CMSに関する専門スタッフが導入から運用まで丁寧にサポートします。国内グループの資金管理の効率化をお考えの企業さまは、ぜひ一度、三井住友銀行にご相談ください。

(※)本記事は株式会社Apolloに制作を一部委託しております。

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