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公開日:2024.03.08

会社設立には何が必要?設立準備の流れと設立後の手続を解説

会社設立には何が必要?設立準備の流れと設立後の手続を解説

会社を設立したいと考えても、何から始めれば良いのか迷っていませんか?会社を設立するにあたっては、設立準備の流れのほか、設立後に行うべきことも知っておくとスムーズに進められます。

今回は会社設立の基本的な流れと、設立後に必要な手続についてわかりやすく解説します。会社設立に伴って利用できる助成金・補助金にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。

会社設立のためにすべきこと

会社を設立する準備として、まずは何をすれば良いのでしょうか。必要なのは、会社を設立する目的を明確にし、それを事業計画書として形にしておくことです。

会社を設立する目的を明確にする

会社を設立するにあたってまず明確にしておきたいのは、「会社を設立する目的」です。後述する定款に事業目的を記載する必要があるだけでなく、設立後の事業を軌道に乗せていくためにも、なぜ会社を設立するのかをきちんと固めておく必要があります。

事業そのものは法人を設立しなくても個人事業主として営むことが可能です。一方、会社を設立することで法人と代表者とは別人格となり社会的信用度が増すほか、将来的に従業員を雇用する予定があれば、人材採用の面でも法人のほうが有利です。

こうした観点も踏まえて、なぜ会社を設立するのか目的を整理しておきましょう。会社設立後の中長期的な経営も見据えて、ご自身が取り組んでいきたい事業、実現したい目標等を明確にしておくことが大切です。

事業計画書を作成する

事業計画書は、会社設立に向けた具体的な手続に入る前に作成するのがおすすめです。事業計画書の作成は法的な必須事項ではないものの、会社設立後に経営をスムーズに進めていくためにも作成しておくほうが望ましいと言えます。

また、事業計画書を作成しておくことで、融資や出資を受ける際に役立つ場合があります。自社がどのような事業に取り組んでいくのか、売上計画をどのように考えているのかを文書にまとめ、いつでも提示できるようにしておくのが得策です。

関連記事:「事業計画書とは?作成する際の記載内容や注意点について解説」

会社設立の流れ

会社設立の目的が決まったら、いよいよ設立に向けた具体的な手続へと移ります。準備すべきことは多岐にわたるため、ひとつひとつ着実に、漏れなく進めていくことが大切です。

会社設立の流れ

1. 法人の基本情報の決定

初めに、設立する法人について種別の検討が必要です。法人種別には株式会社のほか、合同会社、一般社団法人、NPO法人等があります。株式会社や合同会社は、会社法等の定めに従い、設立後に比較的柔軟に他の営利法人に種別を変更できますが、一般社団法人やNPO法人等の非営利法人は、株式会社のような営利法人に後から法人種別を変えられない点に注意してください。

法人種別を決めたら、法人の基本情報を決定していきます。ここでは、会社の設立を中心に、決めておくべき主な項目を次の通り列挙しています。

<法人の基本情報として決める主な項目>

  • ・商号(会社名)
  • ・資本金の額
  • ・事業目的
  • ・決算期
  • ・本店所在地
  • ・発起人
  • ・公告方法
  • ・取締役および監査役、発行可能株式総数、発行済株式の総数、株式の譲渡制限の定め(株式会社の場合)
  • ・社員および業務執行社員(合同会社の場合)

これらの事項は後述する定款に記載することになるため、あらかじめ決定しておくことをおすすめします。

また、会社の意思決定、運営、管理等を行う人や組織といった機関は、会社法によって設置が義務付けられています。株式会社であれば、株主総会、取締役(取締役会)、会計参与、監査役または会計監査人等で構成されますが、中でも株主総会と取締役は必須です。
代表者1人で、唯一の株主でもある会社であれば、ご自身が発起人・株主・代表取締役を兼ねることになります。なお、合同会社の場合は、機関を設置する必要はありません。

2. 会社実印の作成

近年の商業登記法の改正により、会社実印の登録は任意となりました。しかし、会社設立後に実印が必要になるケースも想定されることから、設立時に作成し、会社実印の登録を行っておくと便利です。
一般的に法人設立時には、次の3点の印章を作成するケースが多く見られます。

<法人設立時に作成されることの多い印章>

  • ・代表者印(実印)
  • ・銀行印
  • ・角印

上記は「法人設立3点セット」といった呼称で販売されており、オンラインで注文・購入が可能です。会社実印が届くまでに数日〜1週間程度かかることが想定されるため、作成する場合は早めに注文をしましょう。

3. 定款を作成し、認証を受ける

法人登記に必須の書類として、定款が挙げられます。定款とは、会社の基本規約や基本規則を記載した書類のことです。記載すべき事項は会社法によって定められており、記載項目は「絶対的記載事項(必ず記載が必要)」「相対的記載事項(記載しなければ効力を生じない)」「任意的記載事項(記載してもしなくても良い)」の3種類に分けられます。
ここでは株式会社を例に、絶対的記載事項を項目ごとに解説します。

<定款の絶対的記載事項>

・商号

商号とは会社名のことです。定款に記載した商号が正式な会社名となるため、誤りのないよう正確に記載する必要があります。商号には日本語の文字のほか、アルファベット、アラビア数字、字句を区切るための記号(アンパサンド・アポストロフィー・コンマ・ハイフン・ピリオド・中黒)も利用可能です。

・事業目的

事業目的として、この会社がどのような事業を行うのかを箇条書きで記載します。定款に記載した事業目的以外の事業は基本的に行うことができないため、直近で取り組む予定の事業だけでなく将来的に営む予定の事業も記載しておくのがおすすめです。事業目的の記載数に制限はないものの、業務分野間に関連性や親和性がない事業目的をあまりに多く記載すると、どのような事業を主に営む会社であるかが不明確になり、会社としての信頼性が却って低下するおそれがあります。
なお、事業目的の末尾に「前各号に附帯または関連する一切の事業」と記載することにより、事業内容に幅を持たせておく例が多く見られます。

・本店所在地

本店所在地として、会社の本店(本社)の住所を記載します。記載義務があるのは最小行政区画(市区町村)とされており、町名や番地等の記載は任意とされています。定款に記載されている本店所在地と異なる住所へ本店を移転する場合には、本店移転登記に加えて定款変更が必要になることから、実務的には町名や番地は定款に記載しないことが多いようです。

・設立に際して出資される財産の価額または最低額

設立に際して出資される財産とは、会社設立後の資本金および資本準備金のことで、発起人が出資する価額の合計額です。たとえば、発起人が2人で、発起人Aが200万円、発起人Bが100万円を出資する場合、設立に関して出資される財産の価額は300万円です。出資された価額の一部を資本金としない場合、合計額の2分の1以上を資本金とし、残りを資本準備金として計上することになります。なお、会社法上は出資金が1円でも会社を設立できますが、設立後の運営に支障をきたさないよう、現実的な出資額とする必要があります。

・発起人の氏名または名称、住所

株式会社の設立には、1人以上の発起人が必要です。1人で会社を設立するケースではご自身が発起人となるため、自分の氏名と住所を記載します。法人も発起人として記載可能です。
定款作成後は、公証役場にて公証人による認証を受ける必要があります。実務手続は本店所在地を管轄する法務局の所属公証人がいる公証役場で行われます。作成した定款の事前確認、認証の予約を入れるため、公証役場には事前に連絡しておきましょう。
なお、合同会社の場合は、公証人による認証は必要ありません。

・発行可能株式総数

株式会社が発行することができる株式の総数を記載します。

関連記事:「定款には何を記載すればいい?定款認証の流れや必要な物を紹介」

4. 出資金の払い込み

定款に記載した「設立に際して出資される財産の価額」を用意します。株式会社の場合は株式の数を決めた上で、発起人は1株以上を必ず引き受けなくてはなりません。

会社設立の手続が完了していない時点では法人口座が存在しないため、出資金の振込先は発起人が定めた個人名義の口座になります。ただし、預け入れではなく、必ず出資金として振り込む必要があります。これは、出資金が振り込まれた事実について払込証明書に記載しなければならないためです。
なお、出資金にするお金の預金口座と出資金を管理したい口座が同じ場合は、預金口座から一旦出資金相当額を引き出した後、指定した口座に振り込むという手順を踏み、振込履歴を残してください。
設立時取締役(監査役設置会社を設立する場合は、設立時監査役も含みます。)は、発起人による出資金の払込みが完了しているか、調査しましょう。

5. 設立の登記申請

必要な書類を揃え、法務局へ登記申請します。登記申請は法務局の窓口へ直接提出するほか、郵送、オンラインといった方法が選べます。株式会社の場合、マイナポータルと連動した「法人設立ワンストップサービス」を利用してオンライン申請することも可能です。オンライン申請であれば、申請状況や申請結果についてもウェブサイト上で確認できます。
株式会社の設立登記申請に必要な書類は、下記の通りです。なお、ここでは取締役会および監査役を設置しない株式会社を前提として列挙しています。

<株式会社の設立登記申請に必要な書類>

  • ・株式会社設立登記申請書
  • ・定款(公証人による認証済みのもの)
  • ・発起人全員の同意またはある発起人の一致があったことを証する書面
  • ・設立時取締役の就任承諾書
  • ・金銭の払込があったことを証する書面(※)
  • ・設立時取締役の印鑑証明書
  • ・印鑑届書
  • ・印鑑カード交付申請書

(※)資本金の払込証明書と、預金通帳の写し(口座名義人が判明する部分を含む)・取引明細票・取引履歴照会票・払込金受取書・インターネットバンキング等の取引状況に関する画面をプリントしたもののいずれかを併せて提出

会社設立後の手続

会社設立後にも、行うべきことがいくつかあります。税金や社会保険等に関わる重要な手続のため、漏れのないよう確実に進めていきましょう。

会社設立後の手続

税務署での手続

税務署では、法人税等に関する届出を行います。提出書類と期限は次の通りです。

<法人税等に関する主な届出書類と提出期限>

  • ・法人設立届出書:会社設立から2ヵ月以内
  • ・青色申告の承認申請書:会社設立から3ヵ月以内、もしくは最初の事業年度終了日のいずれか早い日の前日
  • ・源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書:原則として提出日の翌月に支払う給与等から適用
  • ・給与支払事務所等の開設届出書:会社設立から1ヵ月以内(従業員を雇う場合)

関連記事:「法人税とは?申告期限や計算方法、納付方法を解説」

都道府県税事務所・市町村役場での手続

本店所在地を所轄する都道府県税事務所・市町村役場へ、法人住民税・法人事業税に関する手続をします。自治体によって呼称は異なりますが、「法人設立届出書」等の書類とともに、定款の写しと登記事項証明書を提出するのが一般的です。

年金事務所での手続

年金事務所にて、健康保険・厚生年金保険の加入手続を行います。代表者1人の会社であっても、役員報酬を受け取るのであればこれらの社会保険への加入は必須となる点に注意してください。

労働基準監督署での手続

労働保険については、従業員を雇用し、保険関係が成立した日の翌日から10日以内に労働保険の「保険関係成立届」を提出することに加え、保険関係が成立した日から50日以内に「概算保険料申告書」を提出する必要があります。
また、従業員を初めて雇い入れて使用するに至った時(労働基準法の適用を受ける事業所となった時)に、「適用事業報告」を遅滞なく提出しなければなりません。
加えて、常時10人以上の労働者を使用する場合は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

ハローワークへの届出

本店所在地を所轄するハローワークには、雇用保険に関する届出が必要です。雇用保険の適用事業を開始した場合は、保険関係が成立した日の翌日から10日以内に「雇用保険適用事業所設置届」を提出し、従業員を雇用し、当該従業員が雇用保険の被保険者となる場合は、被保険者となった日の属する月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出してください。

法人口座を開設する

会社の資金を代表者の個人口座で運用することも可能ですが、法人口座を開設した方が社会的信用度は向上します。また、法人カードを作るのであれば、原則として法人口座を引き落とし口座に指定する必要があることを考えても、法人口座の開設は検討すると良いでしょう。

注意点として、法人口座の開設時には金融機関側で所定の審査を行うことから、個人口座と比べて開設までに時間がかかる傾向があります。開設の申込は早めに行っておくのがおすすめです。

会社設立で利用できる助成金・補助金

会社設立時には、様々な助成金・補助金を活用できる可能性があります。助成金は労働環境の整備や雇用の確保を支援するといった目的で支給されるのに対し、補助金は国や地方自治体の政策に応じて予算や採択件数が決められている点が特徴です。
助成金・補助金ともに、融資とは異なり基本的に返済の必要はありません。中小企業が利用できる主な助成金・補助金について見ていきましょう。

中小企業が利用できる主な助成金

設立前または設立直後の会社を含む中小企業が利用できる助成金には、次のものが挙げられます。

■中小企業の設立前・設立直後に利用できる助成金の例

名称 内容 助成額・助成率
創業助成事業(東京都) 東京都内で創業予定の個人または創業から5年未満の中小企業に対し、賃借料・広告費・器具備品購入費・従業員人件費等の一部を助成する 助成額:300万円(下限100万円)
助成率:3分の2以内
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型) 各地の農林水産物や伝統技術を活用した商品開発・販路開拓等を支援する 利用する地域のファンドごとに異なる
キャリアアップ助成金(正社員化コース) 有期雇用労働者を正社員化した場合に助成する 助成額:有期雇用労働者1人あたり57万円(中小企業の場合)
中途採用等支援助成金 中途採用の拡大を助成する 中途採用率の拡大に対する助成額:50万円
45歳以上の中途採用率の拡大に対する助成額:100万円

助成金は、対象者や対象となる活動が要件を満たしていれば基本的には受給できます。ただし、多くの助成金が活動実施後の後払いである点に注意が必要です。
創業助成事業のように創業前から申請できるものもあるので、条件に合うものがあれば検討してみてください。

中小企業が利用できる主な補助金

中小企業が利用できる補助金には、設備投資や運転資金に活用できるものが少なくありません。一例として、次のような補助金が挙げられます。

■中小企業が利用できる補助金の例

名称 内容 補助額・補助率
IT導入補助金 ITツール導入にかかる経費の一部を補助 補助額:5万〜450万円
補助率:類型により2分の1以内、3分の1以内、3分の2以内、4分の3以内
ものづくり補助金 生産性向上等が目的の設備投資を支援 補助額:100万〜4,000万円
補助率:類型により2分の1、3分の1、3分の2、4分の3
小規模事業者持続化補助金 生産性向上や持続的な経営の発展を支援 補助額:50万〜200万円
補助率:類型により2分の1、3分の1、3分の2、4分の3

補助金には予算が定められており、採択件数に限りがあることから、条件を満たしていたとしても必ず受給できるとは限りません。
また、助成金と同様に基本的には後払いのため、採択されなかった場合のことも想定して資金を管理していくことが大切です。

会社設立における注意点

会社設立後は、会社の資金と個人の預金を明確に区別して管理しましょう。代表者1人の会社であっても、法人と個人は別人格であることを念頭に置き、事業資金とプライベートの預金は厳密に区別する必要があります。

事業に関わる資金とプライベートの預金を明確に分けるには、会社設立後できるだけ早い時期に法人口座を開設することをおすすめします。会社の資金は法人口座で扱うことにより、プライベートの預金とは別々に管理できるからです。
会社の資金と個人の預金を混同してしまうと、会社としての信用にも関わる可能性があるため、十分注意してください。

会社設立の手続が完了したら、資金管理のために法人口座を開設しよう

開業届の提出のみで手続が完了する個人事業主とは異なり、会社を設立する際には準備すべきことや届け出るべき書類が数多くあります。どのような手続が必要かを把握した上で、漏れなく設立準備を進めていくことが大切です。

また、個人の預金と会社の資金をきちんと区別して管理していくために、会社設立後に法人口座を開設する際には、三井住友銀行での法人口座開設をぜひご検討ください。口座開設に当たって、Web・電話のいずれにおいても手厚いサポートをご提供しており、初めて法人口座を開設する方でも安心です。国内の振込・振替等を初期費用・月額費用共に無料でご利用いただけるインターネットバンキングのほか、年会費永年無料の法人代表者向けクレジットカード、お取引先との契約書・発注書等を電子化できるクラウド型電子契約サービス「SMBCクラウドサイン」の無料プランを口座開設時に同時申込することが可能です。起業後に契約締結が必要になった際等でも、オンライン上でスピーディーに契約締結が完結し、コスト削減効果も期待できます。また、口座開設後に外国送金サービスを初期費用・月額費用共に無料でご利用いただける外国為替版インターネットバンキングもお申込可能です。
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※「会社設立の流れ」の内容について監修

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