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総務
公開日:2022.10.03
OCRとは?概要や導入メリット、企業の導入事例を詳しく解説

近年、業務効率化の文脈でよく耳にするようになった「OCR」。OCRそのものは以前からある技術ですが、紙で保存されてきた資料のデータ化や、画像として保存されているデータの検索性向上などの必要性が高まるとともに、注目が高まってきています。
ここでは、OCRを業務効率化に活用する際のメリットや、具体的な活用事例をご紹介します。
OCRは手書きの文字や画像のテキスト部分をデジタルデータに変換する機能
OCRとはOptical Character Reader/Recognitionの略称で、紙に書かれている手書きの文字や、印刷された画像のテキスト部分を認識し、デジタルデータに変換する機能のことです。日本語では、「光学文字認識機能」と呼ばれます。
紙の資料をイメ―ジスキャナで読み取ったりデジタルカメラで撮影したりした場合、資料は画像として保存されるため、パソコン上で資料の内容をデータとして活用することはできません。テキスト部分をコピー&ペーストしたり、検索したりしたいときは、人の目で文字を探し、あらためて手入力をする必要があります。
しかし、スキャンや撮影したデータをOCR処理すると、画像から文字や数字が抽出され、データとして読み込むことができます。紙のデータを容易にデジタルデータに変換できるようになり、元々パソコンに入力されていたデジタルデータと同じようにスピーディーな検索、編集、更新といった作業を行えるようになるのです。
OCRが社会に求められている背景
紙の資料をデータ化することで、作業効率や生産性の向上が見込めるOCR。DX(デジタル・トランスフォーメーション)の後押しもあって、企業や自治体で急速に導入が進んでいます。OCR製品を用いた業務プロセスのデジタル化は、コロナ禍を契機として、経済産業省の「DXレポート2中間取りまとめ」でも「企業が直ちに取り組むべきアクション」に位置付けられています。
ここでは、OCRが求められる背景について、詳しく見ていきましょう。
法律改正の影響
企業には、法人税法や商法、会社法、証券取引法などで保管が義務付けられている文書、請求書、帳簿類などが多数存在します。こうした資料について、紙媒体だけでなく電子化した文書ファイルとして保存することを認める「e-文書法(電子文書法)」が2005年に施行されました。この法律が、企業において紙媒体の電子化が進むひとつのきっかけになっています。
同年には2003年に成立していた個人情報保護法が全面施行され、情報漏洩対策の視点からも文書の電子化の動きが活発化しました。
さらに、2008年には、不正会計やコンプライアンス違反を防ぐため、アメリカのサーベンス・オクスリー法(SOX法)にならって内部統制を強化する「日本版SOX法(J-SOX法)」が施行されました。
これにより、商取引文書の管理をこれまで以上に厳格化する必要性が高まり、OCRによる文書電子化はさらなるニーズの高まりを得たと考えられます。
また、2022年1月からは、電子帳簿保存法の改正によって電子取引にかかる情報の電子保存が求められています。これは、メールに添付されている取引記録について、電子データとして保存して初めて要件を満たすとするものです。
電子取引にかかる情報の電子保存は、義務化までに2年の猶予が設けられましたが、企業におけるOCRの必要性は今後さらに増していくでしょう。
働き方の変化に伴うペーパーレス化の推進
日本では少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少などを背景に、働く意欲のある人がそれぞれの事情に応じた柔軟な働き方ができるよう、労働環境の見直しを図る働き方改革が進められています。
業務効率化によって残業時間を削減したり、働く時間や場所の制約を受けないテレワークを推進したりする上でも、文書や伝票の電子化は必要不可欠でしょう。コロナ禍をきっかけにテレワークが普及し、どこにいても必要な資料にアクセスできる環境の必要性が高まったことも、OCR活用によるペーパーレス化を後押しするきっかけとなりました。
OCRで画像データをテキストデータに保存するプロセス
OCRは、どのように紙媒体から文字や数字を抽出し、データとして保存するのでしょうか。一連のプロセスは下記の通りです。

1. 画像取り込み
紙媒体をできるだけ高解像度でスキャン、または撮影し、画像データとして取り込みます。画像データの色調や向きなどを補正し、認識しやすくします。
2. レイアウト解析
取り込んだ画像データを、画像ブロックと文字ブロックに分けてレイアウト解析します。
3. 行と文字の切り出し
複数行にわたる文書について、行ごとに切り出して認識します。切り出した行から、さらに1文字ずつ切り出します。
4. 文字認識
切り出した文字のサイズを統一し、抽出した特徴をさまざまなフォントのデータとマッチングさせることで、文字を特定します。
5. フォーマット出力
前後の文字や文章全体から、認識した文字の整合性を判断した上でテキストデータ化します。OCRの機能によって、それらのデータはCSVやWordなどに書き出せる場合もあります。
OCR導入メリット
OCRを業務に取り入れることで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、OCRの具体的なメリットをご紹介します。

データ入力の自動化でミスが減る
組織が管理・保存すべき膨大なデータを手作業で入力していると、時間とともに集中力が低下し、作業の精度も低下していきます。
一方、OCRの場合は、データ化を自動で実施してくれるため、手作業でのデータ入力に比べ、入力ミスを大幅に削減することができるでしょう。担当者がOCRの作業工程に慣れるにつれて生産性は向上し、処理時間を短縮しつつ処理量を増やすことも可能になります。なお、OCRの読み取り精度は100%ではないため、読み取った文字の確認を行うことを推奨します。
文書保管場所の省スペース化を図られる
印刷した紙の資料や手書きの紙文書は、ファイルに挟んでキャビネットなどに保管するのが一般的です。書類の量によっては、オフィス内のキャビネットすべてを紙の資料が占有することにもなりかねません。
OCRでデータ化すれば、オフィス内に保管する紙媒体を最小限に抑え、省スペース化を図ることができます。
検索が迅速にできる
膨大な紙媒体から目的の1枚を探し出すには、キャビネットを開け、ファイルを取り出し、該当する資料に行きつくまで手でページをめくるという手間がかかります。
その点、デジタルデータであれば、必要な書類のタイトルや文章内のテキストを入力して検索するだけで、迅速に目的の資料を見つけることが可能です。
紙の資料をデータ化することで修正・再利用できる
紙のプレゼン資料や、以前から使っている紙のフォーマットなど、「ここだけ直せばもっと良くなるのに、原本となるデータがない」ということはしばしばあるものです。こうしたとき、それらの文書をスキャンしてOCR処理をすれば、電子データとして簡単に編集できるようになります。
過去のデータを再利用して、新規の文書を作成する際にも有用です。
クリエイティブな時間を確保できる
読み取りや入力、保存といった作業をOCRで自動化することで、人間が単純作業に割く時間は大幅に短縮されます。
これまで入力や保存作業に費やしていた時間を、人間にしかできないクリエイティブな作業のための時間にあてることができるでしょう。
AI OCRが可能とすること
近年、一歩進んだOCRとして注目されているのが、AIによる機械学習やディープラーニングを活用する「AI OCR」です。AI OCRを使うことで、文字の認識率、補正率は高まり、手書き文字や非定型フォーマットにも対応できるようになりました。
AI OCRは紙資料をスキャンするだけで、用語や文脈を踏まえて文字を認識してくれるため、入力作業の自動化が進んだといえます。
また、AI OCRは、これまで人間のみが行ってきた業務プロセスを代行・代替するRPA(Robotic Process Automation)との連携が可能です。この2つを連携させることで、画像の読み込みから出力まで、一連の作業のさらなる自動化が促進され、より一層の業務効率化を実現できるでしょう。
AI OCRの導入事例
ここからは、実際にAI OCRを活用し、業務効率化を実現した事例をご紹介します。AI OCRを導入するとどのような業務効率化を図ることができるのか、事例をもとに見ていきましょう。
ユニフォームメーカーA社の事例:返品業務にかかっていた時間が70%以上削減した
事務服や作業服といったユニフォームを製造販売するA社。ユニフォームメーカーにとって、サイズ違いなどの理由で返品されることは日常的なことであり、年間約30万件もの返品業務が発生しているそうです。日常的なこととはいえ、FAXで届く伝票の手入力と処理業務は、現場の大きな負担でした。
そこで、AI OCRを導入したところ、手書きの伝票もスキャナーで読み取ることができるようになり、伝票のデータ化も実現。返品業務にかかっていた時間が70%以上も削減できたそうです。現場からも「この作業もAI OCRで読み取りましょう」といった提案が出るようになり、企業全体がデジタル化に対して積極的になったそうです。
不動産会社B社の事例:AI OCR導入で年間約300件の書類も楽にデータ化
新築物件やアパート、マンションなどの賃貸住宅の管理業務を手掛けているB社。従業員は10名程度でありながらも、FAXで届く年間約300件の入居申込書のデータを手入力していました。当然、それらの入力業務は時間的にも精神的にも従業員の負担となっていたそうです。
そこで、AI OCRを導入したところ、読みにくい文字や一目ではわからない難しい漢字も含めて、入居申込書のデータ化を実現でき、従業員の負担も大幅に減少しました。
また、AI OCRは議事録のデータ化や、行政とのやりとりで必要な設計関係の紙の指示書もデータ化することができ、さまざまな業務の効率化が実現しています。
AI OCRの活用で業務効率の改善を
OCR製品を用いた業務プロセスのデジタル化は、前述のように、経済産業省のDXレポートでも「企業が直ちに取り組むべきアクション」に位置付けられています。この機会に、手動のデータ入力から脱却し、さらなる業務効率化の実現を目指してはいかがでしょうか。
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