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公開日:2022.05.30

約款とは?契約書との違いや約款が民法の定める「定型約款」に該当する要件などを解説

約款とは?契約書との違いや約款が民法の定める「定型約款」に該当する要件などを解説

クレジットカードを作成したり、投資信託を購入したりする際に交付される規約が「約款」です。約款は、大量の同種取引を迅速・効率的に行う等のために作成された定型的な内容の取引条項です。
ここでは、約款と契約書の違いのほか、約款が定型約款に該当する要件などについて解説します。

約款の目的や特徴

約款とは、一般に、大量の同種取引を迅速・効率的に行う等のために作成された定型的な内容の取引条項をいいます。以前は、約款の定義、約款による契約の成立、約款の変更等について、法令上の定めはありませんでしたが、2020年4月に施行された改正民法では、約款のうち一定の要件を満たすものを「定型約款」として、その定義などに関する規定が新設されています。
まずは、約款がどのようなものなのか、目的や特徴について解説します。

約款を作成する目的

現代社会においては、大量の取引を迅速に行うため、詳細で画一的な取引条件等を定めた約款を用いることが必要不可欠となっています。
大量の取引を行う場合、個別に契約内容を確認して契約書を作成したり、締結手続をしたりしていると非常に手間がかかります。そこで、定型的な契約に関しては、あらかじめ約款を作成しておくことが必要となります。

定型約款に該当するもの

定型約款とは、「定型取引」において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいいます。「定型取引」とは、ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいいます。詳細については、下記「定型約款に該当する要件」をご参照ください。
定型約款に該当する契約書類には、たとえば、下記のようなものが挙げられます。

定型約款に該当する契約書類

上記のほかにも、上記の定型約款の定義を満たすものは、これに該当します。一方、事業者間で個別に締結する契約書や雇用契約書などについては、たとえひな形を利用したとしても、基本的には定型約款には該当しません。

定型約款と契約書の違い

定型約款と契約書は、どちらも契約の内容について定めたものです。しかし、契約書が当事者間で個別の交渉をした上で作成されるものに対し、定型約款は不特定多数の者を相手方として行う取引の内容を定めるもので、個別の交渉は予定されていません。
また、契約の締結後にその内容を変更する場合、契約書は特別の定めがあるときを除き、当事者間の合意が必要ですが、定型約款は民法の要件を満たすときは、事業者側が一方的に変更することが可能です。

定型約款の変更

一度準備した定型約款は、サービスの存続に応じて継続的に利用されるものです。もっとも、法改正や事情の変化などによって、定型約款の変更が必要になることもあるでしょう。
民法では定型約款を変更できる場合や手続を定めています。定型約款の変更は、その変更が「相手方の一般の利益に適合する」か、又は「契約をした目的に反せず、かつ変更に係る事情に照らして合理的なものであるか」のいずれかでなければならず、かつ、所定の事項を周知することが必要です。

定型約款の交付方法

定型約款は、書面で交付されることが一般的でしたが、現在ではPDFでの交付も増えています。定型約款は契約書とは異なり、これ自体に押印や署名が不要ですので、法規制がある場合等を除き、PDF等で交付しても問題ありません。

ちなみに、押印や署名が必要な契約書を電子的に締結する場合は、電子署名等を利用した「電子契約」を行うことが考えられます。

定型約款に該当する要件、定型約款に含まれる個別の条項が合意をしたとみなされる要件

定型約款に該当する要件、定型約款に含まれる個別の条項が合意をしたとみなされる要件

約款が定型約款に該当する要件、定型約款に含まれる個別の条項が合意をしたとみなされる要件は、下記のとおりです。どのような要件なのか、具体的に確認していきましょう。

1. 定型約款に該当する要件

(1)定型取引において用いられるものであること

定型取引とは、ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいいます。
たとえば、生命保険へ加入するにあたっては、生命保険会社と保険契約を結びます。このとき、保険契約のように、契約の性質上保険契約者ごとにその内容を変えるわけにはいかず、そのため、画一化が要請されるものなどは、定型取引に該当します。

(2)契約の内容とすることを目的として準備されていること

定型約款は、契約の内容とすることを目的として準備されたものでなければなりません。
たとえば、「たたき台として契約前に作成した条項」などは契約内容に入れることを目的に作られたものではありませんので、定型約款には該当しません。

(3)定型取引を行う特定の者により準備したものであること

定型取引を行う当事者のうちの一方が用意したものでなければ、定型約款とは認められません。

2. 定型約款に含まれる個別の条項が合意をしたとみなされる要件

(1)定型取引を行うことの合意があること

定型約款に含まれる個別の条項が合意をしたとみなされるためには、当事者が個別具体的な取引を行うことに合意していることが必要です。

(2)「定型約款を契約の内容とする合意」又は「定型約款を契約の内容とする旨の表示」があること

定型約款に含まれる個別の条項が合意をしたとみなされるためには、「定型約款を契約の内容とする旨の合意」をしたこと又は定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示することが必要です。

(3)不当条項でないこと

定型約款の個別の条項については、相手方にとって負担となるような条項(相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの)については、合意をしなかったものとみなされます。

(4)相手からの請求に対して遅滞なく定型約款の内容の表示をすること

取引合意の前又は取引合意の後、相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく定型約款の内容を表示しなければなりません。取引合意前にこの請求を拒んだときは、定型約款に含まれる個別の条項は合意したとみなされません。

電子契約をご活用ください

契約書の電子化が進む中で、約款もPDFで交付するケースが増えています。押印や署名が必要ない約款であれば、法規制がある場合等を除き、デジタル上での交付も問題ありません。

一方、契約書には押印や署名が必要となるため、ペーパーレス化するのであれば、要件に則った電子契約を行うことが考えられます。SMBCグループが提供する「SMBCクラウドサイン」は、セキュリティ性に優れた電子契約システムです。ぜひ、契約締結手続きにご活用ください。

(※)2022年5月30日時点の情報のため、最新の情報ではない可能性があります。
(※)法務・税務・労務に関するご相談は、弁護士や税理士など専門家の方にご相談いただきますようお願い申し上げます。

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