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公開日:2024.10.24

幹部候補の見極め方とは?選抜・採用の方法や育成フローを解説

幹部候補の見極め方とは?選抜・採用の方法や育成フローを解説

企業活動を将来にわたって安定的に継続していくには、経営幹部のポジションを担える人材を早期から育成する必要があります。将来の幹部登用を見据えた人材育成に欠かせない取組のひとつが幹部候補の選抜・採用と育成です。
この記事では、幹部候補に求めるべき資質のほか、選抜・採用の方法、育成フローについて解説します。

幹部候補とは、将来的に経営層に参加することを期待される人材のこと

幹部候補とは、将来的に企業の経営を担うポジションで活躍することが期待される人材のことです。自社の中核を担う役員職や上級管理職に就くことを想定し、幹部候補の採用・育成を行います。

そもそも「幹部」の定義は、企業によってまちまちです。中級管理職以上を幹部と位置付けている企業もあれば、上級管理職または役員を幹部と呼んでいる企業もありますが、経営視点から組織全体を把握し、中長期の戦略や計画に深く関わっていくのが幹部の役割といえます。

幹部候補が企業にとって必要な理由

企業にとって、持続的成長を実現していくには、有能な幹部候補の存在が不可欠です。将来にわたって安定した経営を行うには、企業の理念や方針、財務等の専門知識を身に付けた幹部を育てていく必要がありますが、経営の中枢を担うための能力は短期間で習得できるものではありません。
そのため、戦略的に幹部候補を選抜し、計画を立てて育成していくことが重要といえるのです。

幹部候補に求められる資質

幹部候補として求められる資質は多岐にわたり、特定の知識やスキルが身に付いていれば必ず幹部に登用できるというものではありません。ここでは、幹部候補に求められる、重要度の高い5つの資質を解説します。

リーダーシップ

幹部候補に欠かせない資質のひとつとして、リーダーシップが挙げられます。リーダーシップとは、周囲を巻き込む行動力と、困難な状況でも解決策を見いだす粘り強さによって、組織を引っ張っていく資質のことです。

「変革型リーダーシップ」が注目されてきましたが、現在では周囲を支援することで信頼を得る「サーバントリーダーシップ」や、深い自己認識と高い倫理意識を持つ「オーセンティックリーダーシップ」といった様々なスタイルがあります。
どのようなリーダーシップのスタイルであれ、組織を牽引する存在になれるかどうかが重要なポイントです。

戦略的思考

経営の中枢を担う人材にとって、戦略的思考は必須の資質といえます。幹部になれば、市場の動向やニーズの移り変わり、競合他社の状況等を俯瞰的に捉えた上で、自社がどのような戦略をとっていくべきかを多角的に判断しなければなりません。
自社の状況を客観的に把握しつつ、どうすれば組織として持続的に成長できるのかを提案・実行していく能力が求められます。

課題を発見・解決する能力

企業における課題を発見・解決する能力は、幹部候補にとって欠かせない資質のひとつです。自社が現状抱えている課題や改善すべき問題点は、自分たちで見いだしていかない限り解決できません。
自社にとってはこれまで通り事業活動を続けているつもりでも、市場や社会が変化していけば取り残されてしまうことも十分にありうるのが実情です。みずから課題を発見し、解決策を考え、実行していく能力が求められます。

コミュニケーション能力

組織の一員として活躍していくには、コミュニケーション能力を備えていることは必須条件といえます。たとえ自社が抱えている課題を鋭く見抜いたり、論理的に戦略を構築したりする能力を備えていたとしても、周囲に意図や背景をわかりやすく説明できなければ理解してもらえません。
相手の立場や状況を踏まえてコミュニケーションを図り、納得や共感を得る能力が求められます。

アントレプレナーシップ

アントレプレナーシップとは、起業家精神のことです。将来的に経営陣のひとりとして活躍するには、早期から経営者視点を持ち、大局的に組織全体を捉えていく必要があります。
起業家と同じマインドでみずから判断し、意思決定していく能力を培っていくことが重要です。経営に関心が高く、財務や会計に対する理解力があることが望ましいでしょう。

幹部候補を選抜する方法

幹部候補としての資質を備えた人材は、どこにでもいるものではありません。続いては、幹部候補を選抜するための具体的な方法について解説します。

幹部候補を選抜する方法

社内で推薦制度を構築する

社内から幹部候補を見いだしていく方法として、推薦制度の構築が挙げられます。優秀な人材やリーダーとしてふさわしい人材を上長や同僚が推薦し、候補者として挙げていくシンプルな方法です。

社内推薦制度を構築する際には、幹部候補を推薦するプロセスの透明性と公平性を確保する必要があります。たとえば、発言力のある人物が独断で幹部候補を決めてしまうことのないよう、選抜のプロセスを明確に定めておくことが重要です。

社内応募制度を構築する

社内応募制度とは、従業員がみずから幹部候補として手を挙げられる仕組みのことです。社内応募制度を活用して応募する人材は、そもそも意欲が高いことが想定されるため、自己成長を遂げられる確度も高いと考えられます。
ただし、社内応募制度を制定したものの、組織内部から応募者が現れない可能性も否定できません。応募を促進するための施策も併せて講じていく必要があります。

社外からキャリア採用する

幹部候補として中途採用を募集する方法もあります。他社で優れた成果を挙げてきた人材を即戦力として採用することも、条件次第では決して不可能ではありません。
ただし、たとえ採用候補者が優秀であっても、自社の企業文化や方針になじむかどうかは別問題です。実績のみを偏重することのないよう、企業文化や経営方針との親和性を重視して採用活動を進めていくことが求められます。

社内からの幹部候補を見極めるポイント

社内からの推薦、もしくは応募で幹部候補を選抜する際の、見極めのポイントについて解説します。対象となる人材のどこを見ればいいのか、基準を決めておくことが大切です。

リーダーシップスキルを評価する

幹部候補の見極めにおいて、リーダーシップスキルの評価は重要なポイントです。評価方法としては、リーダーシップ研修を実施し、研修内での振る舞い方やパフォーマンスを観察すること等が挙げられます。

または、実務においてプロジェクトリーダーに任命し、実行力やチームマネジメント能力を評価するといった方法もあります。日頃の印象や周囲の評判だけで判断するのではなく、実際に行動してもらい、その結果に基づいて客観的に評価することが大切です。

課題解決能力を評価する

幹部候補を見極めるには、課題解決能力をひとつの指標として評価する方法もあります。たとえば、実際の業務に近い内容のシミュレーションやロールプレイを実施し、与えられた課題に対する課題解決能力を評価することにより、実態に近い評価をしやすくなるでしょう。

実際に課題を解決できたかどうかだけでなく、そこに至るプロセスについても評価対象とすることをおすすめします。みずから率先して課題解決にあたるタイプの人材もいれば、周囲をうまく巻き込んで協力体制を築き、メンバーの力を借りながら課題を解決していくタイプの人材もいるからです。

360度評価を取り入れる

360度評価とは、上司が部下を評価するだけでなく、同僚や部下からのフィードバックを加味して総合的に評価することを指します。様々な立場からの評価を取り入れることにより、協調性やコミュニケーション能力といった、数値化しにくい資質についても評価できるケースは少なくありません。

一方で、360度評価にはそれぞれの立場における主観や、感情的な要素も入り込みやすい点に注意が必要です。ほかの評価方法と組み合わせることにより、幹部候補としての資質を総合的に判断していく必要があります。

キャリア採用で幹部候補を見極めるポイント

では、幹部候補を社外から採用する際には、どのような点に留意して見極めればよいのでしょうか。主なポイントとして、下記の4点が挙げられます。

過去の実績を評価する

キャリア採用における人材の評価方法として、過去の実績は有力な判断材料になりえます。業務経歴書のほか、前職での実績を証明するものを提出してもらい、書類選考の段階である程度まで対象者を絞り込んでおくことが大切です。

面接選考においては、具体的なプロジェクトの成果について詳細に質問します。プロジェクト全体としての成果だけでなく、対象者自身がどう関わったのか、どのような考え方やスタンスで課題に向き合ったのかを尋ねるのがポイントです。

リーダーシップ経験を評価する

リーダーシップを発揮して成果を出した経験を評価するのもひとつの方法です。これまでにリーダーシップを発揮して実績を挙げたエピソードを話してもらい、エピソードの内容について質問を重ねていくことにより、どのようなタイプのリーダーなのか判断できる場合があります。

リーダーシップの資質を見極める際には、発言の「主語」に着目するのがポイントです。自分自身に決定権や決裁権がないことであっても、自分事として捉えている人物は主語が「私」になる傾向があります。会社やプロジェクトの方針を理解しつつ、主体的に判断しているかどうかを見極めることが重要です。

コミュニケーション能力を評価する

コミュニケーション能力は幹部候補に必須の資質ですが、適切に評価するには工夫が求められます。通常の面接での受け答えと、実務におけるコミュニケーション能力には微妙な差異があることも想定されるからです。

たとえば、カジュアル面接や役員との会食の機会を設ける等して、より平常時に近い状況下でのコミュニケーションスキルを総合的に判断することをおすすめします。
ほかの候補者や従業員とグループディスカッションを行ってもらい、どのようなスタンスで周囲と関わっているのかを観察するのもひとつの方法です。

問題解決能力を評価する

問題解決能力を評価する場合には、コンサルティングファーム等でよく用いられているケース面接の手法が役立ちます。具体的な状況をテーマとして設定し、その状況への対処方法や仮説の立て方を確認する手法です。
候補者が提示する解決策の内容や仮説の正しさだけでなく、どのような思考プロセスを経てその解決策や仮説を導いたのかも重視しましょう。これにより、論理的思考力やプレゼン能力を含む問題解決能力を総合的に判断しやすくなります。

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幹部候補の選抜・育成フロー

続いては、幹部候補を選抜・育成する際の、基本的なフローを紹介します。社内外のいずれから幹部候補を選ぶにしても、基本的な流れを押さえておくことが大切です。

幹部候補の選抜・育成フロー

1. 幹部候補にふさわしい人物像を明確にする

初めに、自社の経営陣として求める人物像を、明確に定める必要があります。自社の幹部としてふさわしい人物像を、選抜する側が具体的にイメージできる状態にしておくことが目的です。
自社の理念やミッション、中長期経営計画等を起点に、必要とされる資質や能力を逆算して絞り込んでいきます。また、現状在籍している役員や従業員の中から、ロールモデルとなる人物を選ぶのもひとつの方法です。

2. コーポレート人材にこだわらず幹部候補を選抜する

次に、求める人物像に近い人材を見極めて選抜していきます。経理や財務に明るいコーポレート人材はもちろんですが、営業・マーケティング部門、製造部門、IT部門等、特定の部門にとらわれることなく多様なバックグラウンドを持つ人物を対象に選抜するのがポイントです。

3. 育成計画を策定し、実行する

幹部候補の育成には、計画的かつ体系的な育成プログラムが不可欠です。メンタリング、コーチング、リーダーシップトレーニング、部門を超えたプロジェクトへの参画等、幹部候補を育成するための具体的なプログラムを策定し、実行へと移していきましょう。
育成計画には、ステップごとに目標と期限を具体的に設定し、進捗状況を評価できるようにしておくことが大切です。

4. 育成計画の評価とフィードバック

育成計画に則って日常業務における行動を観察し、幹部候補としての行動パターンやリーダーシップの発揮状況を評価します。評価結果を幹部候補へフィードバックし、さらなる成長を支援していくのがポイントです。
定期的に評価とフィードバックを実施することにより、幹部候補は自身の課題を客観視し、解決に向けた行動を選択しやすくなります。

自社の幹部候補に求める人物像を見極めておこう

将来の幹部を着実に育成していくことは、あらゆる企業にとって重要な課題といえます。一方で、自社がどのような人材を必要としているのか、自社の経営陣として求められる能力や資質とは何かが明確になっていなければ、必要な人材を選抜・育成していくことはできません。
まずは、自社の幹部候補として求める人物像を、しっかりと見極めておくことが大切です。

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