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公開日:2024.11.12

リスキリングとは?リカレント教育との違いとDX時代に注目される理由を解説

リスキリングとは?リカレント教育との違いとDX時代に注目される理由を解説

デジタル化やAI技術の進展により、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、多くの職種で求められるスキルが大きく変化しています。そんな時代に、自身のキャリアを守り、さらに発展させるために不可欠なのが「リスキリング」です。本記事では、リスキリングの意味から、その重要性、導入におけるメリット・デメリットなど、幅広く解説していきます。

リスキリングの意味

リスキリングとは

リスキリングとは

リスキリングとは「目指すべき将来と現在との間のスキルギャップの充足」とされており、個人が自分のスキルや知識をアップデートし、新たな仕事や役割に対応できるようにするための学習や訓練のことです。従来のスキルが陳腐化したり、新しい技術や知識が必要になったりした場合に、自身の能力を再構築し、社会や労働市場の変化に対応していくための取組です。近年、テクノロジーの進化や社会構造の変化によって、従来のスキルが通用しづらい状況が加速しており、リスキリングは個人がキャリアを維持し、成長していくために不可欠なものとして注目されています。

項目 リスキリング リカレント教育 生涯学習
定義 個人が自分のスキルや知識をアップデートし、新たな仕事や役割に対応できるようにするための学習や訓練 人生のあらゆる段階において、学び直しの機会を提供すること 人生のあらゆる段階において、個人が自主的に学び続けること
目的 主に職業能力の向上を目的とした学び直し キャリアアップやキャリアチェンジ、教養の向上など、幅広い目的での学び直し 知識やスキルの向上、自己実現、社会貢献、人生の充実
対象
範囲
主に職業に関連するスキルや知識の習得 広範囲。職業に限らずあらゆる学びを含む 最も広範囲。職業、趣味、教養など、あらゆる学びを含む
具体例 新しい技術の習得、職種転換に必要なスキルの習得 大学卒業後の大学院進学、定年後に趣味や教養を深めるための大学通学 趣味の習得、ボランティア活動、自己啓発セミナーへの参加
特徴 より実践的で、職業に直結した学び直し 就労と学習を交互に繰り返す。学習期間中は就労を一旦中断する場合が多い 個人の自主性に基づく継続的な学習
背景 テクノロジーの進化や社会構造の変化による従来のスキルの陳腐化 社会の変化に対応し、生涯を通じて学び続ける必要性の認識 個人の成長と社会の発展のために、生涯にわたって学び続けることの重要性の認識

リカレント教育との違い

リスキリングとリカレント教育は、どちらも学び直しを意味する言葉ですが、その目的や対象範囲に違いがあります。
リカレント教育は、人生のあらゆる段階において、学び直しの機会を提供することを目的としています。例えば、大学卒業後に就職した人が、数年後に別の分野の専門知識を学ぶために大学院に進学したり、定年後に趣味や教養を深めるために大学に通ったりするケースなどが挙げられます。
一方、リスキリングは、主に職業能力の向上や転職を目的とした学び直しを指します。具体的には、新しい技術を習得したり、職種転換に必要なスキルを身につけたりするようなケースが該当します。

生涯学習との違い

生涯学習は、人生のあらゆる段階において、個人が自主的に学び続けることを指します。これは、知識やスキルを向上させるだけでなく、自己実現や社会貢献、人生の充実を目的としています。リスキリングは、生涯学習の一種と捉えることもできますが、より職業能力の向上や転職を目的とした、より実践的な学び直しと言えるでしょう。

リスキリングが注目される背景

ビジネス環境の変化への対応

現代のビジネス環境は急速に変化しており、企業は新しいビジネスモデルへの対応が求められています。特にデジタル技術の進化により、従来のビジネスモデルが通用しなくなるケースが増えています。このような状況に対応するために、従業員のリスキリングが重要となっています。リスキリングを通じて、新しいビジネスモデルに必要なスキルや知識を習得することで、企業は競争力を維持し、成長を続けることができます。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)への対応

デジタル・トランスフォーメーション(DX)は、企業がデジタル技術を活用して業務プロセスやビジネスモデルを革新する取り組みです。DXを成功させるためには、従業員がデジタル技術に精通し、新しいツールやシステムを効果的に活用できることが不可欠です。リスキリングは、従業員がDXに必要なスキルを習得し、企業全体でデジタル化を推進するための重要な手段となります。

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非連続なイノベーションへの対応

非連続なイノベーションとは、従来の延長線上にはない革新的な変化を指します。これに対応するためには、従業員が新しいアイデアや技術を積極的に取り入れ、柔軟に対応できるスキルを持つことが求められます。リスキリングは、従業員が非連続なイノベーションに対応するための能力を養うための重要な手段です。企業は、リスキリングを通じて、従業員の創造性や問題解決能力を高め、革新的なビジネスチャンスを捉えることができるでしょう。

人材不足への対応

現代のビジネス環境では、特定のスキルを持つ人材が不足していることが多く、企業はその対策としてリスキリングを導入しています。リスキリングを通じて、既存の従業員に新しいスキルを習得させることで、人材不足を補い、企業の持続的な成長を支えることができます。これにより、企業は外部からの採用に依存せず、内部リソースを最大限に活用することが可能となります。

リスキリング導入のメリット

メリット デメリット
自律型人材の育成につながる 制度の導入に時間やコストがかかる
業務効率の向上 従業員の転職リスクが高まる
採用コストの削減 取り組みが長期化する可能性がある
企業文化の維持 モチベーションの維持が難しい
新しいアイデアや新規事業の創出

自律型人材の育成につながる

リスキリングは、従業員が自ら学び、成長していくことを促すため、自律的な人材育成に繋がります。従業員は、新しいスキルや知識を習得することで、自身の能力を高め、仕事に対するモチベーションや責任感も向上します。自律的な人材は、変化に柔軟に対応し、自発的に課題解決に取り組むため、企業にとって貴重な戦力となります。

業務効率の向上

リスキリングによって、従業員は新しい技術や知識を習得し、業務効率を向上させることができます。例えば、データ分析スキルを習得することで、意思決定の精度向上に貢献可能です。また、プログラミングスキルを習得することで、業務自動化ツールを開発し、業務の効率化を図ることができます。

採用コストの削減

リスキリングは、新規採用よりもコストを抑え、人材を確保することができます。企業は、既存の従業員に対してリスキリングプログラムを提供することで、新たなスキルを身につけさせ、異なる役割を担わせることができる点で、採用コストを削減することができます。

企業文化の維持

リスキリングは、従業員が企業に長く貢献できる環境を作ることで、企業文化の維持に繋がります。従業員は、リスキリングを通じて、自身のスキルや知識をアップデートし、企業の成長に貢献することで、企業への帰属意識を高めることができます。また、企業は、従業員が成長できる環境を提供することで、従業員のエンゲージメントを高め、定着率を向上させることができます。

新しいアイデアや新規事業の創出

リスキリングは、従業員が新しい知識やスキルを習得することで、新たなアイデアや新規事業の創出に繋がる可能性があります。従業員は、リスキリングを通じて、異なる分野の知識やスキルを習得することで、従来とは異なる視点で物事を捉え、新しいアイデアを生み出すことができます。また、企業は、従業員のスキルアップを支援することで、イノベーションを促進し、新たなビジネスチャンスを生み出すことができます。

リスキリング導入のデメリット

制度の導入に時間やコストがかかる

リスキリング制度を導入するには、企業は多大な時間とコストを投入する必要があります。研修プログラムの開発、教材の購入、外部講師の招聘など、さまざまな要素が関わります。これらの費用は短期的には企業の財務負担となり得ます。

従業員の転職リスクが高まる

リスキリングによってスキルを向上させた従業員は、他社からの引き抜きや転職のリスクが高まります。特に、競争力のあるスキルを持つ従業員は、他企業からのオファーを受けやすくなり、結果として企業の人材流出に繋がる可能性があります。

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取り組みが長期化する可能性がある

リスキリングは一朝一夕で成果が出るものではなく、長期的な取り組みが必要です。従業員が新しいスキルを完全に習得し、実務に活かせるようになるまでには時間がかかります。そのため、企業は長期的な視点でリスキリングプログラムを運営する必要があります。

モチベーションの維持が難しい

リスキリングは従業員にとって時間的・精神的な負担が大きい場合があります。特に、既存の業務と並行して学習を進める場合、モチベーションの維持が難しくなることがあります。企業は、従業員のモチベーションを高めるためのインセンティブやサポート体制を整える必要があります。

リスキリングのために対応すべき7つのこと

リスキリングを成功させるためには、組織全体での取り組みと、従業員個人への支援が不可欠です。
以下に具体的な対応方法を紹介します。

リスキリングのために対応すべき7つのこと

1. 必要な投資項目を判断

リスキリングには、研修費用、教材費、外部人材への謝礼など、様々な費用がかかります。企業はリスキリングに十分な投資を行うことで、従業員のスキルアップを支援し、企業全体の競争力強化に繋げることが重要です。人材投資を単なるコストではなく、持続的な企業価値創造を支える中長期的な投資と位置づけましょう。

2. 従業員のスキルを可視化

企業は従業員のスキルを可視化し、どの分野に人材が不足しているのか、どの従業員がどのようなスキルを必要としているのかを把握する必要があります。スキルの可視化によって、リスキリングプログラムの設計や人材配置の最適化を効率的に行うことができます。

従業員のスキルの可視化や人材配置の最適化を行ううえで、人材管理システムの利用も検討すると良いでしょう。

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3. 報酬・評価制度の整備

リスキリングは、従業員にとって時間的・精神的な負担が大きい場合があります。企業は、リスキリングに取り組む従業員に対して、適切な報酬やインセンティブを提供することで、従業員のモチベーションを高め、リスキリングへの意欲を向上させる必要があります。また、リスキリングの成果を評価する仕組みを構築することで、リスキリングの継続性を確保することができます。

4. 学習環境の整備

従業員がリスキリングに集中できるよう、学習時間や場所の確保が重要です。例えば、リモートワーク環境の整備や、社内に学習専用スペースを設けることで、従業員が効率的に学習できる環境を提供することができます。

5. メンター制度の導入

メンター制度を導入することで、従業員が学習中に直面する課題を解決しやすくなります。経験豊富なメンターがサポートすることで、従業員は安心して新しいスキルを習得でき、学習や業務の質も向上します。

6. キャリアパスの明確化

リスキリングの成果がキャリアアップに繋がることを明確にすることで、従業員のモチベーションを高めることができます。具体的なキャリアパスを示し、リスキリングがどのように役立つかを説明することで、従業員は自分の成長を実感しやすくなります。

7. 学び合う文化の醸成

リスキリングを成功させるためには、企業内で学び合う文化を醸成することが重要です。従業員同士が知識やスキルを共有し、互いに学び合う環境を作ることで、リスキリングの効果を最大化できます。例えば、社内勉強会やワークショップを定期的に開催し、従業員が自由に参加できる場を提供することが有効です。また、オンラインフォーラムやチャットツールを活用して、日常的に情報交換ができる仕組みを整えることも効果的です。このような取り組みにより、従業員は自主的に学び続ける意欲を持ち、企業全体のスキルレベルの向上につながるでしょう。

リスキリングを実施する際のポイント

リスキリングの目標設定と評価

リスキリングを行う際には、明確な目標設定と評価が必要です。目標設定は、従業員個々のキャリアプランや企業のニーズを考慮して行う必要があります。また、評価は、客観的な指標に基づいて行うことで、リスキリングの効果を測定し、今後のプログラム改善に役立てることができます。

従業員への丁寧な背景説明

リスキリングプログラムを導入する際には、従業員に対して、プログラムの内容や目的、メリットなどを丁寧に説明する必要があります。従業員がリスキリングプログラムの必要性や意義を理解することで、積極的に取り組む意欲を高めることができます。

従業員への動機づけ

従業員がリスキリングに取り組むためには、強い動機づけが必要です。企業は、従業員がリスキリングに取り組むメリットを理解し、モチベーションを高めるような取り組みが必要です。例えば、キャリアアップの機会提供、スキルアップによる報酬アップ、新しい仕事への挑戦など、従業員にとって魅力的な動機づけを提供することで、リスキリングへの意欲を高めることができます。

社外リソースを活用する

企業は、社内リソースだけでなく、社外リソースも積極的に活用することで、より効果的なリスキリングプログラムを提供することができます。例えば、外部研修機関との連携、オンライン学習プラットフォームの導入、専門家の招聘など、様々な方法を活用することで、従業員のスキルアップを支援することができます。

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デジタル化やAI技術の進展により、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、多くの職種で求められるスキルが大きく変化しています。そんな時代に、自身のキャリアを守り、さらに発展させるために不可欠なのが「リスキリング」です。とりわけ、現在多くの企業が取り組んでいるのが社内の人材をDX人材へと育成することです。DX人材育成のための知識・スキル・マインドセットを学ぶための研修や講座もあり、DX人材としての素養を持つ人材をいかにして社内から見出すかということは、企業が抱える重要な課題のひとつです。

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(※)本記事は株式会社Apolloに制作を一部委託しております。

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