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人事
公開日:2024.11.12
戦略人事とは?経営戦略と人材戦略を連動させた人事施策について解説

企業の持続的な成長に不可欠な「人的資本経営」。その実現には、経営戦略と人材戦略の効果的な連動が鍵となります。
本記事では、戦略人事の重要性と実践方法を解説します。人材ポートフォリオ構築やタレントマネジメント導入などの具体的施策、組織連携の強化法や障壁の克服策を紹介します。
変化の激しい現代のビジネス環境下で、企業の競争力強化に向けAIやビッグデータを活用した先進的なアプローチにも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
戦略人事とは?
戦略人事とは、企業の経営戦略と人材戦略を密接に連携させ、人材マネジメントを通じて企業の競争力強化と持続的成長を実現する取組です。
従来の人事部門は、採用、評価、報酬、労務管理などの定型的な業務を中心に運営されてきました。しかし、戦略人事では、これらの基本機能に加えて、経営戦略の実現に直接的に貢献する役割が求められます。具体的には、経営目標の達成に必要な人材の獲得・育成、組織文化の形成、従業員エンゲージメントの向上などを、中長期的な視点で戦略的に推進します。また、人事データの分析や市場動向の把握を通じて、経営陣に対して人材に関する重要な洞察や提言を行うことも戦略人事の重要な役割です。
経営戦略と人材戦略の連動とは?
経営戦略とは?
経営戦略とは、企業が長期的に目指す方向性を定め、その実現に向けて経営資源を効果的に配分し、競争優位性を獲得するための計画です。これには、市場でのポジショニング、製品やサービスの開発、顧客ターゲットの設定、競合他社との差別化などが含まれます。
経営戦略は、企業のビジョンやミッションを具体化し、それを達成するための道筋を示すものです。
人材戦略とは?
人材戦略は、企業の人的資源資本を最大限に活用し、経営目標の達成を支援するための計画です。これには、人材の採用、育成、配置、評価、報酬設計などが含まれます。
人材戦略の目的は、企業が必要とする能力や専門性を持つ人材を適切なタイミングで確保し、彼らのモチベーションを高め、生産性を向上させることにあります。
経営戦略と人材戦略の連動の重要性
経営戦略と人材戦略の連動とは、両者を密接に関連づけ、整合性を持たせることを意味します。これは、経営戦略の実現に必要な人材を適切に確保・育成し、同時に人材の能力や可能性を最大限に引き出すことで経営戦略の実現を加速させる相乗効果を生み出すため、その重要性は多岐にわたります。
経営戦略と人材戦略を連動させるメリット
経営戦略に基づいた人材戦略を展開することで、戦略の実現可能性が高まります。
以下に、経営戦略と人材戦略を連動するメリットについて、紹介します。
企業の競争力強化
経営戦略と人材戦略の連動は、企業の競争力を大きく強化します。人事データの分析や市場動向の把握を通じて、現在の市場において必要な人材要件の整理が進み、経営陣に対しても迅速かつ的確な提言が行えるようになります。市場の変化に素早く適応できる組織体制が構築され、戦略に基づいた人材投資が実現し、無駄な採用や育成コストを削減できます。
従業員のエンゲージメント向上
経営戦略と人材戦略の連動は、従業員のエンゲージメント向上にも大きく寄与します。従業員が経営戦略を理解し、自身の役割との関連性を認識することで、仕事への意義を感じやすくなります。また、戦略に基づいたキャリア開発プランにより、従業員の将来展望が明確になり、戦略目標の達成に貢献した従業員を適切に評価し、報酬を支払うことで、モチベーションが向上します。さらに、戦略実現に必要なスキル習得の機会を提供することで、従業員の成長意欲が高まります。
組織全体のパフォーマンス最適化
経営戦略と人材戦略の連動は、組織全体のパフォーマンスを最適化します。全部門が共通の戦略目標に向かって協働することで、組織の一体感が醸成されます。また、戦略に基づいた人材配置により、組織全体でリソースの活用効率が向上します。さらに、戦略と人材の両面から定期的な評価と改善を行うことで、組織の継続的な成長が可能になります。加えて、戦略に基づいた柔軟な人材育成により、組織全体で変化への対応力が高まります。
経営戦略と人材戦略を連動させるための基本ステップ

経営戦略の明確化
経営戦略と人材戦略を連動させる第一歩は、経営戦略自体を明確にすることです。まず、企業のビジョンとミッションを再確認し、存在意義と目指す姿を明確にします。次に、市場動向、競合状況、技術革新などの外部環境を分析し、同時に自社の強みと弱みを客観的に評価する内部環境分析を行います。これらの分析を踏まえて、具体的かつ測定可能な戦略目標を設定し、その目標達成のための具体的なアクションプランを策定します。
人材戦略の策定
経営戦略を踏まえた上で、人材戦略を策定します。まず、現在の従業員のスキル、経験、能力を評価し、現状の人材分析を行います。次に、経営戦略実現に必要な人材要件と現状とのギャップを分析します。このギャップを埋めるために、採用計画、育成プログラム、キャリアパス設計などの具体的な施策を立案します。また、組織構造の見直しや評価制度の改定など、人材を最大限に活用するための仕組みづくりも行います。
現状の人材データや従業員のコンディションを分析するうえで、これらを管理することができる人材管理システムの利用も検討すると良いでしょう。
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両者の連携
経営戦略と人材戦略を効果的に連携させるためには、両者を同時並行で策定し、常に整合性を確認しながら進めることが重要です。具体的には、経営戦略の各段階で必要となる人材要件を明確にし、それに応じた人材戦略を立案します。また、定期的に両戦略の進捗状況を確認し、必要に応じて調整を行います。さらに、経営層と人事部門の密接なコミュニケーションを図り、戦略の方向性や課題を共有することで、より効果的な連携が可能になります。
人的資本経営に向けた経営戦略と人材戦略の連動を実現するための人事施策例

近年、人的資本経営への注目が高まりつつあります。2023年3月期決算からは対象企業に人的資本の情報開示が求められるようになりました。人的資本経営では、データを効率的に活用し、客観的な指標にもとづく意思決定を行うことにより、企業と人材の双方が共に成長していける関係を築くことを目指すと良いでしょう。
人的資本経営について詳しく知りたい方は、こちらも合わせてご参照ください。
以下では、経営戦略と人材戦略の連動を実現するための具体的な施策例を紹介します。
人材ポートフォリオの構築
人材ポートフォリオとは、企業の経営戦略に基づいて、必要な人材の質と量を最適化するための手法です。これを構築することで、現在の人材構成と将来必要となる人材像を明確にし、効果的な採用・育成・配置を行うことができます。
人材ポートフォリオの構築には、まず現在の従業員のスキルや能力を評価し、経営戦略に基づいて将来必要となる人材要件を定義します。次に、両者のギャップを分析し、そのギャップを埋めるための具体的な施策を立案します。例えば、不足するスキルを持つ人材の採用計画や、既存社員のスキルアップのための教育プログラムの設計などが含まれます。
また、人材ポートフォリオは固定的なものではなく、経営環境の変化や戦略の見直しに応じて柔軟に調整する必要があります。定期的な見直しと更新を行うことで、常に最適な人材構成を維持することができます。
継続的なスキルアップと教育プログラム
経営戦略と人材戦略の連動を実現するためには、従業員の継続的なスキルアップと教育が不可欠です。また、リスキリングは個人がキャリアを維持しながら、企業が成長していくために不可欠なものとして注目されています。戦略の実現に必要なスキルや知識を明確にし、それらを習得するための体系的な教育プログラムを設計・実施することが重要です。
具体的には、オンライン学習プラットフォームの活用、社内外の専門家によるセミナーの開催、OJTの体系化などが考えられます。また、従業員の自主的な学習を支援するための制度(例:資格取得支援、自己啓発奨励金など)も効果的です。
さらに、経営戦略の変化に応じて必要となる新しいスキルを迅速に習得できるよう、アジャイルな学習環境を整備することも重要です。例えば、マイクロラーニング(短時間で完結する学習コンテンツ)の導入や、社内SNSを活用した知識共有の促進などが挙げられます。
これらの施策を通じて、従業員のスキルと経営戦略のニーズを常に一致させ、組織全体の競争力を高めることができるでしょう。
タレントマネジメントの導入
タレントマネジメントは、企業の人材を戦略的に管理・育成するための統合的なアプローチです。これには、採用、育成、評価、報酬、キャリア開発など、人材に関するあらゆる側面が含まれます。
タレントマネジメントの導入により、経営戦略に沿った人材の確保・育成・活用が可能になります。具体的には、ハイポテンシャル人材の早期発掘と戦略的育成、後継者育成計画の策定、キーポジションに対する適切な人材配置などが実現します。
経営戦略と人材戦略の連動を阻む障壁とその克服方法
組織内の連携不足
経営戦略と人材戦略の連動を阻む大きな障壁の一つが、組織内の連携不足です。経営層と人事部門、あるいは各事業部門間のコミュニケーション不足により、戦略の整合性が取れなくなることがあります。
この問題を克服するためには、まず経営層と人事部門の定期的な戦略会議を設けることが効果的です。ここで、経営戦略の方向性や進捗状況、人材に関する課題などを共有し、両者の整合性を確認します。また、人事部門が各事業部門と密接に連携し、現場のニーズや課題を的確に把握することも重要です。
さらに、部門横断的なプロジェクトチームを編成し、経営戦略と人材戦略の連動に関する具体的な施策を立案・実行することも有効です。これにより、部門を越えた視点で戦略の整合性を確保することができるでしょう。
データ整備・活用の難しさ
経営戦略と人材戦略を効果的に連動させるためには、適切なデータの整備と活用が不可欠です。しかし、多くの企業では人材に関するデータが分散していたり、十分に活用されていない状況があります。
この課題を解決するためには、まず人材データの一元管理を行うことが重要です。タレントマネジメントシステムやHRテックツールの導入により、採用、評価、育成、異動などに関するデータを統合的に管理し、分析することが可能になります。
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また、データ分析のスキルを持つ人材の育成や採用も重要です。HRアナリティクスの専門家を配置することで、人材データを戦略的な意思決定に活用することができます。
さらに、プライバシーに配慮しつつ、従業員の同意のもとでキャリアに関する詳細な情報を収集し、キャリア開発や適材適所の配置に活用することも効果的です。
解決策と具体的なアプローチ
上記の障壁を克服し、経営戦略と人材戦略の連動を実現するためには、以下のような具体的なアプローチが考えられます。
アプローチ | 内容 |
---|---|
CHROの配置と推進 | CHROは、経営陣の一員として、経営戦略の実現につながる人材戦略の策定・実行を行う重要な役割です。人材戦略は、各事業や技術・情報に関する戦略と密に関係するものであることから、CHROが広く重要なアジェンダに関与することが求められます。 |
戦略的人事部門の構築 | 人事部門を戦略的パートナーとして位置づけ、経営戦略の立案段階から参画する体制を構築します。 |
人材データの可視化 | ダッシュボードやレポーティングツールを活用し、人材に関する重要指標を経営層や各部門のリーダーが容易に把握できるようにします。 |
アジャイルな組織文化の醸成 | 変化に柔軟に対応できる組織文化を醸成し、戦略の変更に応じて迅速に人材戦略を調整できる体制を整えます。 |
継続的な対話の促進 | 経営層、人事部門、各事業部門の間で定期的な対話の機会を設け、戦略の方向性や課題を共有します。 |
テクノロジーの活用 | AIやデータ分析を活用し、人材データの高度な分析や予測を行い、戦略的な意思決定をサポートします。 |
これらのアプローチを組み合わせることで、経営戦略と人材戦略の効果的な連動が可能になり、組織全体の競争力向上につながるでしょう。企業価値向上へ向けた人的資本経営に関する情報をお探しの方は、こちらも合わせてご参照ください。
経営戦略と人材戦略の連動におけるKPI設定と評価方法
KPIの設定方法
経営戦略と人材戦略の連動を効果的に進めるためには、適切なKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定し、その進捗を定期的に測定・評価することが不可欠です。KPIの設定に当たっては、以下の点に注意が必要です。
まず、経営戦略の主要目標を反映したKPIを設定することが重要です。例えば、新規事業の立ち上げが戦略目標である場合、「新規事業に配置された人材の割合」や「新規事業関連のスキルを持つ従業員の増加率」などが考えられます。
次に、定量的に測定可能なKPIを選択することです。「従業員満足度」や「リーダーシップ能力」など、定性的な要素も重要ですが、これらを可能な限り数値化することで、客観的な評価が可能になります。
さらに、短期的な指標と長期的な指標のバランスを取ることも大切です。例えば、「四半期ごとの採用達成率」といった短期的な指標と、「5年後の経営幹部候補者の育成率」といった長期的な指標を組み合わせることで、戦略の実行状況を多角的に把握できます。
評価基準の明確化
KPIを設定したら、次はその評価基準を明確にする必要があります。評価基準が曖昧だと、KPIの解釈が人によって異なり、適切な改善活動につながりません。
評価基準の明確化には、以下のようなアプローチが有効です。
目標値の設定 | 各KPIに対して、具体的な数値目標を設定します。これにより、達成度合いを客観的に評価できます。 |
評価期間の明確化 | KPIを評価する期間(四半期ごと、半年ごと、年度ごとなど)を明確にします。 |
評価レベルの定義 | 例えば、「達成」「ほぼ達成」「未達」といったレベルを設定し、各レベルの基準を明確にします。 |
複合的な評価 | 単一のKPIだけでなく、数値達成などによる定量評価と、同僚からのフィードバックなどの定性評価、複数のKPIを組み合わせた総合評価の方法も定義します。 |
継続的な改善プロセス
KPIの設定と評価は、一度行えば終わりというものではありません。経営環境の変化や戦略の見直しに応じて、継続的に改善していく必要があります。
適切なPDCAサイクルを定期的に繰り返すことで、経営戦略と人材戦略の連動を継続的に改善し、その効果を最大化することができます。
1.Plan(計画) | 経営戦略と人材戦略に基づいてKPIを設定し、評価基準を明確化します。 |
2.Do(実行) | 設定したKPIに基づいて、各種施策を実行します。 |
3.Check(評価) | 定期的にKPIの達成状況を評価し、課題を特定します。 |
4.Act(改善) | 評価結果に基づいて、KPIの見直しや新たな施策の立案を行います。 |
経営戦略と人材戦略の連動におけるデジタル技術の活用
デジタルツールの導入例:タレントマネジメントシステム
経営戦略と人材戦略の連動を効果的に進めるためには、デジタルツールの活用が不可欠です。特に、タレントマネジメントシステム(TMS)の導入は、大きな効果をもたらします。
TMSは、採用、育成、評価、配置、報酬など、人材に関する様々なプロセスを統合的に管理するシステムです。これにより、以下のような効果が期待できます。
TMSの機能 | 効果 |
---|---|
データの一元管理 | 従業員の詳細な情報(スキル、経験、評価履歴など)を一元管理し、戦略的な人材配置や育成計画の立案に活用できます。 |
パフォーマンス管理の効率化 | 目標設定、評価、フィードバックのプロセスをシステム化することで、より客観的かつ効率的な人材評価が可能になります。 |
キャリア開発支援 | 従業員のキャリア志向や強みを可視化し、個々人に適したキャリアパスの提案や育成プランの策定が容易になります。 |
後継者計画の策定 | 重要ポジションの後継者候補を特定し、計画的な育成を行うことができます。 |
分析・レポーティング機能 | 人材に関する様々なデータを分析し、経営戦略の立案や見直しに活用できます。 |
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AIとビッグデータの活用
さらに進んだアプローチとして、AIとビッグデータの活用が挙げられます。これらの技術を活用することで、より高度な人材戦略の立案と実行が可能になります。
AI・ビッグデータの活用手法 | 内容 |
---|---|
予測分析 | 過去のデータを基に、将来の人材ニーズや従業員の離職リスクなどを予測し、先手を打った対策を講じることができます。 |
マッチング精度の向上 | AIを用いて、従業員のスキルや経験と、各ポジションの要件を高精度でマッチングすることが可能になります。 |
パーソナライズされた学習推奨 | 個々の従業員のスキルギャップや学習スタイルに基づいて、最適な学習コンテンツを推奨することができます。 |
自然言語処理の活用 | 従業員の評価コメントや社内コミュニケーションの内容を分析し、組織の課題や従業員の感情を把握することができます。 |
リアルタイムフィードバック | AIチャットボットなどを活用して、従業員に即時的なフィードバックや支援を提供することが可能になります。 |
経営戦略と人材戦略の連動とは、両者を密接に関連づけ整合性を持たせることを意味し、経営戦略に基づいた人材戦略を展開することで戦略の実現可能性が高まることや、そのための具体的な施策について解説しました。併せて、経営戦略と人材戦略の連動をより緊密かつ柔軟に行ううえで、効果的なデジタルツールをご紹介しました。
デジタルツールの導入に当たっては、データの信頼性確保やプライバシー保護などの課題にも十分に配慮する必要があります。また、デジタルツールはあくまでも手段であり、それらを使いこなす人材の育成や、組織文化の醸成も同時に進めていくことが重要です。経営層、人事部門、各事業部門が密接に連携し、デジタルツールを活用しながら、継続的に経営戦略と人材戦略の連動を図っていくことが、今後の企業競争力の維持・向上には不可欠となるでしょう。
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(※)本記事は株式会社Apolloに制作を一部委託しております。