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公開日:2022.03.30

労働基準法に違反したらどうなる?違反の例と罰則を解説

労働基準法に違反したらどうなる?違反の例と罰則を解説

労働基準法は、従業員を守るための法律です。従業員を雇う企業は、労働基準法の内容を理解し、遵守しなければなりません。労働基準法に違反すると、罰則が科されるだけでなくさまざまなリスクが生じる可能性も考えられます。
この記事では、労働基準法の概要と違反の例のほか、罰則について解説します。

労働基準法とは?

労働基準法は、労働時間や休暇、賃金など、労働についての最低基準を定めた法律です。1947年に制定され、その後は時代に合わせて随時見直しが行われてきました。

企業は労働基準法の内容を理解し、遵守する必要があります。労働基準法よりも悪い条件で雇用契約を締結しまたは就業規則を定めたとしても、その条件で従業員を働かせることはできません。
たとえば、労働基準法では、従業員の1日の労働時間は休憩時間を除いて8時間までと定められています。そのため、雇用契約や就業規則で8時間を超える所定労働時間を定めることはできません。

労働基準法に違反した疑いが発覚してから罰則を受けるまでの流れ

労働基準法に違反すると、社会からの信用を失ったり、従業員から損害賠償請求をされたりするだけでなく、悪質な場合には刑事責任を追及されるといったリスクがあります。
労働基準法に違反した疑いが発覚してから、罰則を受けるまでの流れについて解説します。

労働基準法に違反した疑いが発覚してから罰則を受けるまでの流れ

1. 労働基準監督署による調査

労働基準法に違反しているからといって、直ちに刑事責任を追及されるわけではありません。労働基準法違反が疑われる場合、労働基準監督署による事業所への調査が行われます。たとえば、所定労働時間を超えた長時間労働をさせた疑いがある場合、調査では従業員のタイムカードや出勤簿など労働時間の手がかりとなる記録や資料を確認されることになるでしょう。
なお、労働基準監督署の調査を拒否すると、30万円以下の罰金が科せられる場合があります。

2. 違反が認められたら是正勧告

労働基準監督署による調査の結果、労働基準法に違反しているとみなされた場合、労働基準監督署からの是正勧告が行われます。
是正勧告を受けたときは、すみやかに違反事項を是正する必要があります。違反事項を是正しなかったとしてもこの時点での罰則はありませんが、是正されなければ刑事手続に移行し、捜査の対象になる可能性があります。

3. 司法処分(送検・起訴)

労働基準法違反が是正されなければ、刑事事件に移行し、企業のみならず、役員などの使用者個人も送検され、起訴が行われるかもしれません。そうなると、事業に支障が出るだけでなく、会社のイメージが下がってしまうといったリスクもあります。

労働基準法違反となる例と罰則

労働基準法違反となるのはどのような場合で、どのような罰則が科せられるのでしょうか。ここでは、労働基準法違反とみなされるケースと罰則についてご紹介します。

労働基準法違反となる例と罰則

従業員の意思に反した労働

従業員の意思に反した労働は、労働基準法違反とみなされます。従業員の自由な意思によらず、恫喝や暴力、監禁といった手段で無理矢理労働させることはできません。
強制労働をさせた場合、1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金が科せられます。

中間搾取

中間搾取とは、従業員と使用者の間に入って、給与の一部を搾取することを指します。仕事を紹介するといって仕事を斡旋し、給与の一部を搾取するといった行為が該当します。
ただし、人材派遣会社のように法律で認められている業態の会社が、企業に従業員を派遣する行為は法律違反ではありません。
中間搾取を行った場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

従業員への違約金支払いの強制

従業員に対して、違約金の支払いを強制させることも、労働基準法違反とみなされる場合があります。たとえば、退職の際に研修費用を支払わせる、備品を壊した場合に一定額を賠償させるといったルールを定める行為です。また、このような内容が含まれる雇用契約の締結も違法です。
この場合は、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

予告なしの解雇

企業が従業員を解雇する際には、30日以上前に解雇の予告を行う必要があります。解雇の予告ができない場合は、平均賃金の30日分以上を従業員に支払わなければなりません。ただし、事業の継続ができない場合や、従業員に問題があって懲戒解雇するといった場合などは、予告なしの解雇が認められるケースもあります。
予告なしの解雇を行った場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

法定労働時間を超えた労働

従業員に対して、1日8時間、週40時間を超える労働をさせることは原則としてできません。この時間を超えた労働をさせる場合は、労使間で労働基準法第36条にもとづく「36協定」を締結して、所轄の労働基準監督署への届出が必要になります。
ただし、36協定を結んだとしても、無制限に労働をさせられるわけではありません。法定労働時間を超えて労働できる時間は、原則月45時間、年360時間が上限です。
法定労働時間を超えて労働させた場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

休憩をとらせない

従業員に休憩をとらせない場合も、労働基準法違反とみなされることがあります。
従業員の労働時間が6時間を超えるときには45分以上、8時間を超えるときには1時間以上の休憩を労働時間の途中に与える必要があります。また、この休憩時間中に仕事をさせたり、従業員の行動を制限したりすることは基本的にできません。たとえば、休憩時間中に社内に待機させて電話をとらせたり、届いた荷物を受け取らせたりすることは実態として労働時間として取り扱われ、休憩が取得されていないとして違法となり得ます。
従業員に休憩をとらせなかった場合は、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

休日をとらせない

企業は、原則として従業員に少なくとも週1日の休日を与える必要があります。ただし、1週間に1日ではなく、4週間で4日以上の休日を与えるという対応も可能です。
従業員に休日をとらせなかった場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

産休・育児時間をとらせない

従業員から産休や育児時間(生後満1歳に達しない生児、1日2回、各々少なくとも30分以上)をとりたいという申し出があった場合、企業は拒否することはできません。また、産後6週間経過後に本人が希望し、医師が認めた場合を除き、産後8週間以内に従業員を就業させることもできません。
産休・育児時間を請求してもとらせなかった場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
また、労働基準法で定められているわけではありませんが、従業員から育児休業(育休)をとりたいという申し出があった場合においても、企業は拒否することができません。仮に、育休を請求して取得させなかった場合には、育児介護休業法に基づく行政指導の対象となり、企業名公表がされることもあります。

休業手当を支払わない

企業側の責任によって従業員を休ませる場合、企業は休業手当を支払う必要がありますが、休業手当を支払わないと労働基準法違反とみなされることがあります。ただし、地震や台風などの災害(不可抗力)によって出社できない場合、企業側が休業を指示しても、使用者の責によるものではないため休業手当を支払う必要はありません。
休業手当を支払わなかった場合、30万円以下の罰金が科せられます。

残業代未払い

従業員に時間外労働、深夜労働、休日労働をさせた場合、企業は残業代として割増賃金を支払う必要があります。時間外労働の割増賃金率は通常の賃金の25%以上で、深夜労働であれば25%以上(時間外労働かつ深夜労働の場合は50%以上)、休日労働であれば35%以上にしなければなりません(休日労働かつ深夜労働の場合は60%以上)。時間外労働をさせたら、通常の賃金にこの割増賃金率以上の額を上乗せして支払う必要があります。
残業代を支払わなかった場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があるので注意しましょう。

就業規則の未作成・届出違反

就業規則を作成しなかった場合、労働基準法違反とみなされることがあります。10人以上の従業員がいる事業所には、就業規則を作成し、過半数労働組合又は過半数代表者の意見を聴いた上で、所轄の労働基準監督署長に届け出る義務があります。また、就業規則は従業員が確認できるよう、周知しなければなりません。
就業規則を作成せず、労働基準監督署長に届け出なかった場合、30万円以下の罰金が科せられます。

確実な労務管理にはDX推進が必要

企業は労働基準法を遵守するため、労務管理を確実に行っていく必要があります。労働時間や休憩時間などをしっかり把握し、適切な企業経営を行うには、DXの推進をお勧めします。

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(※)2022年3月30日時点の情報のため、最新の情報ではない可能性があります。
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