人事

公開日:2025.03.24

組織風土とは?企業成長を加速させる「見えない力」の正体と改善策

組織風土とは?企業成長を加速させる「見えない力」の正体と改善策

優れた戦略や商品・サービスがあっても、組織風土が悪いと企業の成長は鈍化します。「組織風土」は、従業員のモチベーション、エンゲージメント、ひいては企業の業績にまで影響を与える、まさに「見えない力」です。本記事では、組織風土の基本(定義、種類)から、企業にもたらすメリット・デメリット、そして組織風土の見える化に役立つツール(SMBC Wevox等)まで、事例を交えながら解説します。強い組織を築き、持続的な成長を実現するためのヒントをご提供します。

組織風土とはそもそも何なのか?|定義と具体例

この章では、組織風土の定義を分かりやすくご説明し、具体例を挙げることで、その理解を深めていきます。

組織風土とは「組織内の共通ルールや価値観」

組織風土とは、組織の構成員の間で共有される独自のルールや価値観、考え方のことです。経営学の用語であり、組織内で暗黙のうちに了解されている行動規範や、組織特有の雰囲気等を指します。「見えない力」とも表現されるのは、組織風土が、明文化されていないものの、組織の活動に大きな影響を与えるためです。たとえば、企業であれば、「お客さま第一主義」や「コンプライアンスの徹底」、「堅実な経営」といった価値観が組織風土として根付いていることが多いでしょう。これらは、日々の業務における判断基準や行動様式に反映されます。

組織風土の具体例

組織風土は、さまざまな側面から捉えることができます。たとえば、「個人プレー」と「チームプレー」のどちらを重視するか、意思決定が「トップダウン」型か「ボトムアップ」型か、といった点が挙げられます。「成果主義」で個人の業績を重視する企業もあれば、「顧客満足度」を最優先し、チームでの連携を重視する企業もあるでしょう。また、「革新性」を重視し、新しい商品・サービスの開発に積極的な企業もあれば、「伝統」を重んじ、堅実な経営を続ける企業もあります。これらの違いは、従業員の行動や意識に大きな影響を与えます。

なぜ組織風土が重要なのか?|業績を左右する理由

組織風土は、単なる組織の雰囲気にとどまらず、企業の業績を左右する重要な要素です。ここでは、組織風土がなぜ重要なのか、具体的な事例を交えながらご説明します。

社員の行動・感情・モチベーションに影響

組織風土は、従業員の日々の行動、感情、そして仕事へのモチベーションに大きな影響を与えます。たとえば、風通しが良く、自由闊達な意見交換ができる組織風土であれば、従業員は積極的に新しいアイデアを提案し、主体的に業務に取り組むでしょう。逆に、上意下達が強く、失敗を許さない組織風土であれば、従業員は萎縮し、指示されたことだけをこなすようになる可能性があります。組織風土は、従業員の心理的安全性にも影響を与え、良好な組織風土は、従業員のエンゲージメントを高め、組織への貢献意欲を引き出すことにつながります。

良い組織風土の例:「ワークライフバランス重視」で業績向上

ある中小企業では、「ワークライフバランス重視」の組織風土を醸成することで、業績向上を実現しました。具体的には、残業時間の削減、有給休暇取得の推奨、育児・介護支援制度の充実等に取り組みました。その結果、従業員のモチベーションが向上し、顧客対応の質が改善され、顧客満足度が向上しました。また、離職率が低下し、優秀な人材の確保にもつながりました。これらの取組が、業績に反映され、地域経済の活性化にも貢献しています。

悪い組織風土の例:「トップダウン」で業績悪化

一方、ある大手企業では、「トップダウン」の組織風土が業績悪化を招いた事例があります。経営層の指示が絶対であり、現場の意見が反映されにくい環境であったため、従業員は主体性を失い、言われたことだけをこなすようになりました。また、過度なノルマが課せられ、顧客への強引な勧誘が横行し、顧客からの信頼を失墜させました。その結果、顧客離れが進み、業績が悪化するとともに、内部告発により不正が発覚し、社会的な信用も失うこととなりました。

組織風土を構成する3つの要素とは?|「ハード」「ソフト」「メンタル」

組織風土は、複雑に絡み合った要素から成り立っています。ここでは、組織風土を構成する「ハード」「ソフト」「メンタル」の3つの要素について、詳細に解説します。

目に見える「ハード要素」:企業理念、就業規則、人事制度等

ハード要素とは、組織の目に見える部分、つまり明文化されたルールや制度のことです。企業理念、経営戦略、就業規則、人事制度、組織構造、業務プロセス、コンプライアンス規定等が該当します。これらは、組織の基本的な枠組みを形作り、従業員の行動を方向づける役割を果たします。たとえば、企業であれば、厳格な審査基準、顧客対応マニュアル、リスク管理体制等もハード要素に含まれます。ハード要素は、組織が意図的に設計・変更できる部分であり、組織風土を改革する際の出発点となります。

目に見えない「ソフト要素」:ローカルルール、人間関係、モチベーション等

ソフト要素とは、組織の目に見えない部分、つまり明文化されていないルールや慣習、人間関係、従業員の意識等のことです。たとえば、部署内のローカルルール、上司と部下の関係性、チームワーク、コミュニケーションのスタイル、従業員のモチベーション、組織への帰属意識等が該当します。ソフト要素は、ハード要素よりも把握が難しく、組織風土に与える影響も大きいと言えます。企業であれば、支社ごとの雰囲気、上司のリーダーシップスタイル、顧客との信頼関係等がソフト要素に含まれます。

心理面に影響する「メンタル要素」:コミュニケーション、自発性、助け合い等

メンタル要素とは、ソフト要素の中でも、特に従業員の心理面に大きな影響を与える要素のことです。たとえば、役職に関わらず意見を言い合える環境かどうか、従業員が自発的に行動できる雰囲気かどうか、困ったときに助け合える関係性があるかどうか等が該当します。メンタル要素は、従業員のエンゲージメントやモチベーションに直結するため、組織の活性化や生産性向上に大きく貢献します。企業であれば、顧客からの感謝の言葉、チームでの目標達成、上司からの適切なフィードバック等が、メンタル要素を良好に保つ上で重要となります。メンタル要素を把握するためには、アンケートやインタビュー等の手法が有効です。

エンゲージメント測定サービス SMBC Wevox

SMBCグループが全従業員約10万人を対象に導入したWevoxは、組織力向上のデジタルソリューションとして注目を集めています。このサービスの特徴は、1回あたり2〜3分の簡単なアンケートで組織の状態を可視化できる点です。

従業員の心理状態や特性、組織のカルチャー等をタイムリーに把握し、部署・年次・職種等さまざまな切り口での分析が自動的に完了します。導入企業からは「組織状態把握の手間が大幅に削減された」「現場のマネジメントが円滑になった」「メンタルヘルスの改善や離職率の低下につながった」という声が報告されています。

特にコロナ禍以降、リモートワークの浸透により従業員間のつながりや組織の状態を把握することの重要性が高まっており、このようなデジタルツールを活用した組織力向上の取組は今後さらに重要性を増すと考えられています。

SMBCグループの「SMBC Wevox」では、同サービスを提供しています。エンゲージメントの測定方法や分析手法、効果的な改善策について知りたい方は、こちらのページも合わせてご参照ください。

組織風土との違いとは?|企業風土、組織文化、社風との関係性

組織風土と似た言葉に、「企業風土」「組織文化」「社風」があります。これらの言葉は、どのように違うのでしょうか。ここでは、それぞれの言葉の定義と関係性を解説します。

企業風土:「企業全体」のルールや価値観

組織風土が特定の部署やチーム等、組織の一部分におけるルールや価値観を指すのに対し、企業風土は、企業全体のルールや価値観を指します。つまり、企業風土は組織風土よりも広範な概念です。たとえば、大手企業と中小企業では、それぞれ異なる企業風土を持っていると言えるでしょう。大手企業は、全国規模で事業を展開し、多様な顧客層を抱えているため、組織風土も多様である可能性があります。一方、中小企業は、地域密着型の経営を重視しているため、企業風土も地域社会とのつながりを重視したものになっていることもあるでしょう。

組織文化:「価値観」、社風:「人柄」

組織文化とは、組織の構成員が共有する価値観や信念のことです。組織風土の一部と捉えることもできますが、より本質的な、組織のアイデンティティを表すものと言えるでしょう。一方、社風とは、従業員が感じる組織の雰囲気や特徴のことです。組織文化が組織の「頭脳」であるとすれば、社風は組織の「人柄」と言えるかもしれません。たとえば、企業であれば、「堅実な組織文化」や「顧客志向の社風」といった表現が使われることがあります。

組織風土は「性格」、組織文化は「価値観」、社風は「人柄」

組織風土、組織文化、社風の関係性をより理解しやすくするために、人に例えてみましょう。組織風土は、その人の「性格」のようなものです。長年の経験や環境によって培われた、その人固有の行動パターンや考え方を指します。組織文化は、その人の「価値観」です。何が重要で、何が正しいと信じているか、という信念体系です。そして、社風は、その人の「人柄」です。性格や価値観が組み合わさって、周囲の人に与える印象や雰囲気のことです。これらの要素は相互に関連し合い、その人全体を形作っています。組織も同様に、組織風土、組織文化、社風が相互に影響し合い、組織全体の特徴を形成しているのです。

良い組織風土のメリットとは?|6つの効果を解説

良い組織風土は、企業に多くのメリットをもたらします。ここでは、具体的な6つの効果を、具体例を交えながら解説します。

効果 内容 具体例
⓵企業のビジョンの共有 従業員全員が同じビジョン・目標を理解し、一丸となる ・「地域社会への貢献」をビジョンに掲げる企業では、経営層が繰り返しビジョンを発信し、従業員との対話を重視。
・地域貢献活動への参加を奨励することで、日々の業務でも「地域のために何ができるか」を考える風土が醸成され、顧客からの信頼獲得につながった。
⓶関係性向上 社内コミュニケーションが円滑になり、チームワークが向上 ・部署間の垣根を越えた交流会を実施し、従業員の相互理解を深める活動を継続的に行う。
・「目安箱」制度を導入し、役職に関わらず意見を出しやすい環境を整備。
・若手とベテランの交流が活発化し、相談や情報共有がスムーズに。
⓷働きやすさ向上 従業員が安心して働ける環境を整備し、満足度向上や離職率低下を実現 ・フレックスタイムやテレワークの導入で、多様な働き方をサポート。
・育児・介護休暇制度や復職支援プログラムを充実させ、ライフイベントに合わせて柔軟に働ける環境を創出。
・仕事とプライベートの両立が容易になり、モチベーションの維持につながった。
⓸従業員の自社愛 自社への愛着・誇りを育み、エンゲージメントを向上 ・自社の歴史や強みを学ぶ研修を実施し、従業員に自社の魅力を再認識させる。
・地域社会への貢献活動を取り入れることで、会社が社会に役立っていることを体感し、自社への誇りが深まる。
・社内報やSNSで従業員の活躍事例を共有し、連帯感とモチベーションを高める。
⓹高モチベーション人材の育成 自発的に行動する従業員を増やし、組織イノベーションを促進 ・若手社員を対象とした新規事業提案制度で、自由なアイデアを募集。採用されたアイデアは実際に事業化の可能性あり。
・上司や先輩社員が定期的にフィードバックとサポートを行い、若手のチャレンジを支援。
・従業員が積極的に自分の役割を広げる意欲を持つようになり、組織が活性化。
⓺生産性向上・業績向上 組織全体のエンゲージメントや効率が高まり、企業の業績が向上 ・コミュニケーション強化や働きやすい環境づくりが進み、チームの生産性が向上。
・顧客満足度の上昇、優秀な人材確保、イノベーション創出等複合的効果が連鎖し、企業の持続的成長を実現。

以上のように企業のビジョンの共有、コミュニケーション促進、働きやすさ改善等を互いに強化することで、結果的には業績向上へとつなげていくことができます。

組織風土を活用する上での注意点とは?|4つの落とし穴

組織風土は、企業にとって強力な武器となる一方で、注意すべき点も存在します。ここでは、組織風土を活用する上で陥りやすい4つの落とし穴について解説します。

落とし穴 説明 注意点
洗い出しの難しさ 組織風土の実態を把握するのは難しい。特にソフト要素やメンタル要素は目に見えないため、多角的な情報収集が必要。 アンケートやインタビュー、ワークショップを活用し、従業員との信頼関係を築くために時間と手間をかける。長期的な視点で取り組む。
改革の長期性 組織風土はすぐに変わらない。改革には数年単位の時間がかかる。 短期的な成果を求めすぎない。現状分析、目標設定、施策実行、効果測定、改善を根気強く繰り返す。
悪影響のリスク 改革が必ずしも良い結果をもたらすとは限らない。現状分析が不十分だと、社内トラブルや業績悪化を招く可能性がある。 従業員の意見を十分に聞き入れ、慎重に進める。
改革失敗のリスク 改革の失敗が企業の存続を危うくする可能性がある。 経営層が現場の意見を無視しないようにし、トップのコミットメントのもと、全社一丸となって取り組む。

組織風土の「見える化」と改善に役立つツール|SMBC Wevoxの活用

組織風土の改革には、まず現状を正確に把握することが不可欠です。しかし、特にソフト要素やメンタル要素は目に見えにくく、把握が難しいという課題があります。そこで近年注目されているのが、組織の状態を可視化するエンゲージメント測定ツールです。ここでは、多くの企業で導入が進む「SMBC Wevox」をご紹介し、組織風土の改善にどのように役立つかを解説します。

エンゲージメントが高い組織を創るために必要な各プロセスへご活用可能

エンゲージメントが高い組織を創るために必要な各プロセスへご活用可能

出所:SMBC Wevox株式会社資料

データ活用による継続的改善

SMBC Wevoxは、組織力向上のデジタルソリューションとして注目を集めています。このサービスの特徴は、1回あたり2〜3分の簡単なアンケートで組織の状態を可視化できる点です。具体的には、エンゲージメントを測る質問に回答することで、従業員の心理状態や特性、組織のカルチャー等を把握できます。設問は、エンゲージメントに影響を与える9つの要素にて設計されています。
収集されたデータは、部署、年次、職種等、さまざまな切り口で自動的に分析されます。これにより、組織全体の傾向だけでなく、部門ごとの課題や、特定の属性を持つ従業員のエンゲージメントの状況等を詳細に把握することが可能です。さらに、過去のデータとの比較や、他社とのベンチマーク比較も可能なため、自社の組織風土の強みと弱みを客観的に評価することができます。
これらのデータに基づき、具体的な改善策を立案・実行し、その効果を継続的に測定することで、組織風土の改善サイクルを確立することができます。

組織の状態把握の効率化とマネジメント支援

SMBC Wevoxの導入により、組織の状態把握にかかる手間を大幅に削減することができます。従来、アンケートの実施、集計、分析には多くの時間と労力が必要でしたが、SMBC Wevoxではこれらのプロセスが自動化されています。これにより、人事部門や管理職は、データ分析に時間を費やすことなく、より重要な課題解決や、従業員とのコミュニケーションに注力することができます。
また、SMBC Wevoxは、現場のマネジメントを支援する機能も備えています。たとえば、チームのエンゲージメントが低下している場合にアラートを発したり、個々の従業員の状況に応じて適切なアドバイスを提供したりすることができます。

メンタルヘルス改善と離職率低下への貢献

SMBC Wevoxの活用は、従業員のメンタルヘルス改善や離職率低下にもつながると期待されています。定期的なアンケートにより、従業員のストレス状態や職場環境に対する不満を早期に把握し、適切な対応を取ることが可能になります。また、SMBC Wevoxのデータは、離職リスクの高い従業員を特定するためにも活用できます。勤怠状況やアンケートの回答傾向から、離職の兆候を早期に発見し、上司との面談やキャリア相談等のフォローアップを行うことで、離職を未然に防ぐことができます。特に、リモートワークの普及により、従業員間のコミュニケーションが希薄になりがちな現在、SMBC Wevoxのようなツールを活用して組織の状態を把握し、従業員のエンゲージメントを高めることは、ますます重要になっています。

(※)本記事は株式会社Apolloに制作を一部委託しております。

合わせて読みたい記事