企画

公開日:2022.06.29

オープンイノベーションとは?重要性や事例、メリットなどを紹介

オープンイノベーションとは?重要性や事例、メリットなどを紹介

企業は、それぞれ得意とする分野や培ってきた独自の知見を持っています。それらは、他社にはないアドバンテージとなるものです。しかし、それらの知見を独占するがために閉鎖的なままでいると、資産を有効活用できない可能性があります。他社と協働をすれば、今までにない新たな価値を生み出せるかもしれません。
本記事では、オープンイノベーションの重要性や具体的な事例のほか、メリット・デメリットについて解説していきます。

オープンイノベーションの定義と社会に広がった背景

そもそも、オープンイノベーションとは何を指す言葉なのでしょうか。まずは、オープンイノベーションの定義と、社会に広がった背景についてご紹介します。

オープンイノベーションの定義

オープンイノベーションは、2003年に、当時米ハーバード大学経営大学院の教員であったヘンリー ・ チェスブロウが提唱し、以下のように定義しました。
「オープンイノベーションとは、企業が技術の価値を高めようとする際、内部のアイデアとともに外部のアイデアを用い、市場化の経路としても内部の経路と外部の経路を活用することができるし、また、そうすべきであると考えるパラダイムである」。(※)

オープンイノベーションは、単なる外注やアウトソーシングとは異なります。外注やアウトソーシングは、自社で対応しきれない業務やコア業務以外の業務を、外注先やアウトソーシング先といったステークホルダーに任せます。一方、オープンイノベーションは、企業同士が双方の持つ知見や財産を互いに提供し合うことで1社のみではなしえなかった新しい価値の創出を目指すものです。

ヘンリー・チェスブロウによるオープンイノベーションの定義については、文部科学省の「平成29年度科学技術白書 第1部オープンイノベーションの加速〜産学官共創によるイノベーションの持続的な創出に向けて〜」をご参照ください。

(※)出典:ヘンリー・チェスブロウ著作『Open Innovation: The New Imperative for Creating and Profiting from Technology』|Harvard Business School Press

オープンイノベーションが広まった背景

現代のビジネスシーンは、「VUCA」の時代であるといわれています。「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」にあふれ、将来の予測が困難な現代においては、従来通りの経営手法が通用しづらくなっているといえるでしょう。そんな時代において、新たな価値を生み出していくためには、自社という枠組みにとらわれず、オープンな環境で企業同士が協働していくことが大切です。
オープンイノベーションは、特に欧米企業で広く行われてきましたが、近年では、日本国内でもオープンイノベーションに取り組んで成果を上げる企業が増えてきているようです。

オープンイノベーションの種類

オープンイノベーションは、手法によって「インバウンド」「アウトバウンド」「連携」の3種類に分けられます。それぞれどのような手法なのか、くわしく見ていきましょう。

他社が持つ知見を活用する「インバウンド」

インバウンドは、他社が持つ知見を自社の研究開発や商品開発に活用する方法です。他社が持つ特許権を活用して自社の商品開発を行う「ライセンスイン」などが該当します。なお、この場合は、特許権を持つ企業にライセンス料を支払うことが多いです。
また、大学などの研究機関が持つ知見を企業が活用する産学連携も、企業側から見た場合はインバウンドにあたるでしょう。

自社が持つ知見を提供する「アウトバウンド」

自社の持つ知見やライセンスを他社に提供するのがアウトバウンドです。ライセンスの許諾契約を結んだり売却したりする「ライセンスアウト」を行うことで、自社で有効活用できていない知見等を他社で活かしてもらうことができます。
また、プラットフォームを提供して他社と共同開発を行い、自社の開発成果をよりスピーディーに商品化したり、より広く社会に展開させたりするために協働が行われることもあります。

インバウンドとアウトバウンドの両方の側面を持つ「連携」

インバウンドとアウトバウンドの両方の側面を持つ手法が連携です。企業同士が連携して商品開発を行ったり、互いに出資し合って新たな事業会社を設立したりする場合が該当します。
また、ソフトウェア開発者が集って、短期間集中的に開発を行う「ハッカソン」も連携に含まれます。

オープンイノベーションが重要視される要因

オープンイノベーションは、企業に対する消費者ニーズの変化とともに重要視されていくようになりました。なぜ企業に対する消費者ニーズの変化がオープンイノベーションを促進することになったのか、その背景を3つのポイントに絞ってご紹介します。

プロダクト・ライフサイクルの短期化

プロダクト・ライフサイクルとは、商品を市場に投入してから衰退するまでのサイクルのことです。プロダクト・ライフサイクルは、導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つに分類できます。自社商品を息の長いものにするためには、成長期と成熟期をいかに継続させるかが大切です。魅力のない商品は、成長期や成熟期を迎えるまでもなく衰退してしまうでしょう。

ただし、近年では商品の魅力いかんにかかわらず、プロダクト・ライフサイクルが短期化する傾向があります。めまぐるしく変化する消費者ニーズに対応するためには、自社の持つ知見だけでなく、他社の知見も活用していくことが求められます。

消費者ニーズの多様化

消費者ニーズは、年々多様化しています。さまざまなニーズを的確に把握し、それに合ったサービスを提供するためには、自社のリソースだけでは足りない可能性もあるでしょう。
しかし、ニーズの把握、ニーズを叶えるアイディアの創出、アイディアの商品化といった各ステップで、自社に足りない部分を外部企業の知見で補えば、スムーズな商品開発が可能になります。

企業の成長課題を解決するため

消費者ニーズに応えるためには、企業は成長し続ける必要があります。外部との協働を行えば、自社になかった新たな知見や技術、マインドなどを取り入れることができ、成長するための課題が明確化します。オープンイノベーションは、企業の成長課題を解決する上でも重要なのです。

オープンイノベーションの事例

オープンイノベーションによって成果を上げている企業は、多数存在しています。ここでは、オープンイノベーションの具体的な3つの事例をご紹介します。

コンピューターメーカーの事例:多様なニーズに応えられるグローバルサービスを立ち上げる

あるコンピューターメーカーでは、従来、新商品の開発はすべて社内で行っていました。しかし、オープンイノベーションを意識して以降は、外部で開発された新技術を取り入れたり、反対に社内のアイディアを外部に提供したりといった取り組みを行うようになっていきます。
そのコンピューターメーカーは、企業の中だけで業務を完結することにとらわれず、オープンな環境を構築することで、ユーザーの多様なニーズに応えられるグローバルサービスを立ち上げました。また、ベンチャー企業へのライセンス提供といった、これまでのやり方では得られなかった新しいビジネスの開拓にも成功しています。

一般消費財メーカーの事例:外部企業と提携し、自社では実現できなかった商品を開発

歴史とネームバリューはあるものの、売上が低下していたある一般消費財メーカーでは、消費を刺激するための手法として「スナック菓子にキャラクターを描いた商品の開発」を目指しました。しかし、自社の技術では実現が困難だったことから、技術を保有する企業を探し、業務提携を締結したのです。
この企業のプランは見事に当たり、スナック菓子は大ヒット商品へと成長。これは、自社だけでは不可能だった商品の開発を外部と提携することで可能にした事例といえるでしょう。

製菓メーカーの事例:オープンイノベーションのプログラムを導入し、次々と新規事業を創出

ある老舗の製菓メーカーでは、積極的にオープンイノベーションを行うプログラムを導入しました。このプログラムは、製菓メーカーと外部のベンチャー企業などが相互に不足するリソースを補完し合うことで、新規事業の創出を目指すものです。外部ベンチャーのアイディアに製菓メーカーが出資し、共同でプロジェクトを遂行するといったことが行われています。
この製菓メーカーでは、社内ベンチャー企業といった新しい組織の設立も行われ、社内で新しいアイディアを形にしていく、ゼロから物を作っていくといった風土が醸成されています。

オープンイノベーションのメリット

オープンイノベーションによって、企業が得られるメリットは具体的にどのようなものなのでしょうか。具体的なメリットをご紹介します。

オープンイノベーションのメリット

事業推進の迅速性がアップする

自社にない新たな技術が必要になったとき、ゼロから新たに知見やスキルを積み上げていこうとすると、多大な時間がかかります。これでは、変動の激しい時代に対応することはできないでしょう。
そこで、すでに該当の技術を保有している他社と協働することで、事業の迅速性をアップすることができます。また、新規事業を立ち上げる際も、同じ目的を持った他社と互いの知見などを補い合うことができれば、自社だけで事業を推進するよりもスムーズな立ち上げができる可能性が高まります。

低コストでの開発も可能に

新たな商品を開発する際、商品の発売までには一定のコストを要します。
しかし、オープンイノベーションによって他社の協力が得られれば、より短時間で開発ができる可能性が高まります。開発期間を短縮できればコストも大きく削減できるでしょう。また、自社にない設備や技術を持った企業との提携によって、少ない投資額で大きな成果を得られる可能性もあります。

オープンイノベーションのデメリット

ここまで、オープンイノベーションの重要性やメリットについて解説してきました。しかし、オープンイノベーションにはデメリットも存在しています。
下記のデメリットも理解した上で、問題が起きにくい提携方法を検討しましょう。

オープンイノベーションのデメリット

アイディアや技術などの情報漏洩リスク

オープンイノベーションでは、自社の持つ知見やスキルを外部に提供することがあります。本来、外部に出す予定ではなかったアイディアや技術まで、流出してしまう危険性がないとはいえません。
外部と共有するものと外部には出さないものを明確に区別し、線引きを徹底する必要があります。

自社開発力の低下・衰退のリスク

他社と連携して外部の知見を活用することは、時間やコストの削減につながります。一方で、自社の研究開発がおろそかになったり、技術力が低下したりするリスクもはらんでいます。

利益率低下のリスク

1つの商品を開発する際、自社だけですべてを行えば、利益はすべて自社のものになります。一方、他社と協働した場合は利益を分配することになるため、利益率が低下する可能性があるでしょう。

最適なパートナー企業を見つけるために

オープンイノベーションを行うには、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイディアなどの資源の流出入を活用し、自社だけではなしえなかった新しい価値を創出する必要があります。そのため、互いのニーズがマッチするパートナー企業とのマッチングが重要です。

協業につながるさまざまな企業と出会うためには、ビジネスマッチングサイト「Biz-Create」をご活用ください。金融機関と取引のある企業だけが利用できる当サイトでは、ニーズ検索やニーズ登録ができ、安心して企業間の出会いからマッチング成約までを無料でご利用いただけます。また、SMBCグループが提供する「PlariTown」は、DX推進に資する多様なデジタルサービスのほか、ユーザーに合った業界ニュースやレポートを、ワンストップで利用できるプラットフォームです。担当者がお客さまの業務実態に合わせたデジタルソリューションをご提示するなど、DX推進をサポートさせていただきます。

なお、SMBCグルーブでは、成長企業との協業やオープンイノベーションのサポートを促進するため、事業会社・大学・自治体などの多様なプレイヤーと連携可能な場である「未来X」を創設しています。無料で視聴可能なセミナー・イベント等も随時行っておりますので、ご関心ある方はぜひ未来Xのホームページより申込ください。

合わせて読みたい記事