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企画
公開日:2022.05.30
製造業におけるDXとは?よくある課題や成功事例について紹介

日本の主要産業のひとつとして、戦後の経済の成長を牽引してきた製造業。しかし、国内の製造業は、拠店を海外に移す「産業の空洞化」やコロナ禍の影響を大いに受けています。少子高齢化も相まって業界の人材不足が深刻化する中、限られたリソースで生産性を向上させ、品質向上を可能にする方法として注目されているのが製造業のDXです。また、経済産業省が公表した「2021年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)」の中で、「事前に発生や変化を想定することが難しい多くの要因が、製造業の事業判断に影響を及ぼす」と指摘されています。
同時に、「各国でDXの取組が急速に進展しており、製造業のニューノーマルに向けた展開の主軸となるのがDXである」と、不確実な社会におけるDX推進の重要性に言及しています。
ここでは、製造業がDXを図る上で直面しがちな課題や、具体的な進め方について解説し、製造業におけるDXの成功事例を紹介します。
製造業におけるDXとは、経験値を共有し生産性や品質を向上させることで生産を安定させること
製造業におけるDXとは、経験値を個人のものとして蓄積するのではなく、全体で共有できるようにすることによって、企業全体の生産性や品質の向上、安定的な生産を実現するための取り組みです。
人手不足が進む中で製造業が生き残るには、DXを推進し、移り変わる顧客のニーズにマッチしたビジネスモデルへと変革していかなくてはなりません。
DXによって解決しうる製造業の課題とは?
現在の製造業においては、人手不足とIT投資の遅れによってさまざまな問題が生じています。それぞれの課題についてくわしく見ていきましょう。
人手不足
総務省統計局が公表した「労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果の要約」によれば、国内の就業者(15歳以上人口のうち、従業者と休業者を合わせた人口)は2021年平均で6,667万人となり、前年に比べて9万人も減少しました。
これによって、製造業には下記に挙げるような課題が生じています。
・働き手の減少
労働人口の減少傾向は今後も続くことが明らかであり、製造業のようにマンパワーがカギを握る業界への影響は顕著です。限られたリソースでなんとか現場を回している企業の中には、事業の継続が困難になるケースも出てくるでしょう。
・技術が後世に残せない
製造業では個人の力に依存した現場主義の経営が行われているケースが多く見受けられます。世界を席巻する高い技術力を維持するには、意欲ある人材を採用して技術を伝承していく必要がありますが、採用は思うように進んでいません。これにより、将来に向けた技術の伝承が困難になることが考えられます。
・全体最適が難しい
個人に依存した体制と継承者の不足によって、現状の業務プロセスにおける課題は、担当者による部分的な改善に終始しています。そのため、ブラックボックス化している部分が多く、全体最適が進みません。
人手不足に起因するこうした課題を解決するには、DXによって技術やノウハウを関係者の共有財産とし、競争率を高めていく必要があります。
最適なIT投資ができていない
企業の組織力や組織の強みといったケイパビリティには、安定したビジネス環境下において経営資源を効率的に利用して利益の最大化を目指す「オーディナリー・ケイパビリティ」と、変化の激しいビジネス環境に対応できるよう企業を変革する「ダイナミック・ケイパビリティ」があります。
予定調和の世界では、企業の基本的能力であるオーディナリー・ケイパビリティが力を発揮しますが、現代は不確実性の高い時代です。企業に求められるのは、オーディナリー・ケイパビリティより、変化に臨機応変に対応するダイナミック・ケイパビリティだといえるでしょう。
これは、IT投資においても同様で、オーディナリー・ケイパビリティを重視する企業は旧来のシステムを保守する傾向があり、ダイナミック・ケイパビリティを重視する企業は業務効率化やビジネスそのものの変革、またそれに伴って必要な人材の育成など、変化に備えて先手を打つ目的でITを導入する傾向があります。
不確実性に強い企業を作るために、製造業においてもダイナミック・ケイパビリティを強化するDXへの取り組みが急務であるといえます。
製造業におけるDXの進め方
DXは、闇雲に進めるべきではありません。生産性を向上させること、移りゆく顧客のニーズに対応できる付加価値の高い製品を生み出すことがDXの最終目的です。目先のデジタル化ではなく、本来の目的に焦点をあてて、段階を踏んでDXに取り組みましょう。
ここからは、DXを実現するプロセスについて、4つのステップごとに解説します。

1. 現状の課題とゴールイメージを社内で共有する
DXのゴールは、現場の課題から逆算することが大切です。まずは、現場が抱えている課題を洗い出し、解決に向けた戦略を練りましょう。なお、戦略を立て、実行する過程は、経営陣が中心となって全社で取り組むようにすると、効率的に進みます。
2. 人材とデータを集める
DXを進めるために欠かせない、人材とデータを集めましょう。集めたデータを分析する際は、「顧客が求めるもの」を形にすることを意識してください。品質にこだわりすぎてしまうと、顧客のニーズと乖離したものづくりに終始してしまう可能性があります。
3. 業務を効率化する
業務プロセス全体を見直して、効率化を阻むボトルネックを見つけ出し、自動化などの改善方法を検討・実施します。最初から全体を効率化しようとすると、膨大なコストと時間がかかる上、手順変更による現場の混乱を招いて作業を停滞させる原因になります。失敗したときのリスクも考えて、まずはスモールスタートで始めていきましょう。
また、新たに開始した業務効率化の取り組みは、一定の期間を置いて必ず効果検証を行います。成果が出た施策を参考にして次の施策を進めることで、着実かつスピーディーにDXを進めることが可能です。
4. 顧客ニーズに応えて組織を変革する
時代に合った製品を送り出すだけでなく、時々刻々と変化する顧客ニーズに対応できるよう、ビジネスモデルと組織の変革を行って顧客満足度の継続的な向上を目指します。
顧客ニーズとの齟齬を生まないために、リアルデータの収集を続けることと、新たな価値を生み出すプロセスを構築することが重要です。
製造業におけるDXの成功事例
製造業において実際にDX推進に取り組んだ企業として、どのような事例があるのでしょうか。ここでは、いち早くDXに取り組み、成果を出している製造業の成功事例を2つ紹介します。
フィルムカメラ関連の事業を展開するA社
2000年代に入り、デジタルカメラが急速に普及すると、写真用フィルムの需要は激減。フィルムカメラ関連の事業を主力としていたA社は、存続の危機を察知し、すぐに新たな市場開拓に乗り出しました。
具体的には、化粧品、医薬品、再生医療など、市場ニーズの変化を適切に先読みした領域にいち早く投資。自社の事業との親和性が高い企業とのM&Aも積極的に行い、収益構造の改革を試みた結果、順調に業績を伸ばしています。
市場変化に対応できなかった同業他社の多くが利益の大幅な減少に至るなか、変化に迅速に対応することで逆境を切り抜けた好例だといえるでしょう。
空調製品関連の事業を展開するB社
空調製品関連の事業を展開するB社は、その特性上、季節要因や天候、景気などの影響を受けやすいことに課題がありました。グローバルに展開するにあたっては、各国の住宅事情やライフスタイルなど、国ごとに異なる特性への対応も求められます。
需要に対して生産量が少なければ他社に競り負け、作りすぎれば需要減少の際にコストを抱えるリスクがある状態から抜け出すため、同社は生産体制を一新。市場となる現地で、国や地域のニーズに合った製品を生産してスピーディーに提供する戦略を立て、戦略に沿った生産体制を作り上げました。
それが、生産ラインの全体構造はそのままに、構成要素をモジュール化して柔軟に生産ラインを組み替える「設備モジュール」です。市場によって自由にカスタマイズできる生産体制により、必要な分だけ、適切なコストで生産して市場に提供することが可能になり、生産量にかかわらず利益を生み出せる収益体制が確立されました。
また、国内外を問わず、新たな市場への参入もスムーズに行えるようになっています。
製造業におけるDXは、まずは自社をよく知ることから始めよう
製造業におけるDXを成功に導くためには、まず自社の現状を客観的に分析し、十分に理解した上で取り組みを開始する必要があります。他社の成功事例を参考に、不確実性の高い社会に対応できる企業づくりを始めましょう。
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また、製造業のDXでは、他社との新たなビジネスマッチングが有効な場合もあります。
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