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営業
公開日:2023.08.08
越境ECとは?立ち上げに必要な準備や注意点、成功事例を解説

ビジネスのグローバル化は、EC市場においても盛り上がりを見せています。日本は少子高齢化による国内市場縮小の懸念もあり、海外市場へ目を向ける日本企業は増えてきています。
本記事では、国内市場に閉じていたEC事業をグローバルへと展開する「越境EC」が期待されている背景や準備方法、越境ECのメリット・デメリットを詳しく解説します。併せて、越境ECに取り組む際の注意点や越境ECの成功事例についても紹介します。
越境ECとは、グローバルにEC事業を行うビジネスモデルのこと
越境ECは、国内向けに展開していたEC事業を海外に向けて展開し、グローバルにEC事業を行うビジネスモデルです。
経済産業省の調べによれば、日本国内のBtoCにおける2021年のEC市場規模は、20.7兆円(前年19.3兆円、前々年19.4兆円、前年比7.35%増)となっています。それでは世界のEC市場はどうなっているのでしょうか。ここではまず、EC市場の可能性について見ていきます。
国内電子商取引市場規模については、「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書(令和4年8月経済産業省 商務情報政策局 情報経済課)」をご参照ください。
世界のEC市場の現状
まずはEC市場の先進国であるアメリカ、中国のEC市場規模を見ていきましょう。
経済産業省の発表によると、アメリカ、中国の2021年におけるBtoC-EC市場規模は、アメリカが推計で約100兆円超え、中国が約300兆円超えです。アメリカと中国のBtoC-EC市場規模は圧倒的であり、この2国だけで全世界の70%以上のシェアを誇っています。
EC市場規模の比較については「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書(令和4年8月経済産業省 商務情報政策局 情報経済課)」をご参照ください。
越境EC市場の可能性
現在、国内のEC市場に事業を展開している企業は、次の時代に向けてどのような選択をすれば良いのでしょうか。国内市場には少子高齢化という大きな課題もあります。そこで、「次の一手」として選択肢となるのが、越境ECです。
経済産業省の発表によると、2019年の世界の越境EC市場規模は100兆円超えと推計されており、その値は2026年には600兆円超えにまで拡大すると予測されています。
これは、各国内のEC市場規模の拡大を上回るペースであり、越境ECの市場規模は急拡大していくと見ることができます。世界の越境EC市場規模については「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書(令和4年8月経済産業省 商務情報政策局 情報経済課)」をご参照ください。
越境ECを活用するメリット
越境ECを活用すると、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。越境ECのメリットを、3つに分けて紹介します。

国内よりも競合が少ない環境でビジネスを展開できる
国内EC市場は、同業他社との価格競争やブランド戦略に負荷がかかる側面があります。自社で扱っている商品がひとたび価格競争に巻き込まれると、薄利多売を選択することにもなりかねません。
一方、海外に目を向ければ、まだライバルが少ない点がメリットです。商圏に縛られずに新規顧客開拓に取り組めば、売上拡大につなげられる可能性は高いといえます。
実店舗よりも出店や店舗運営が容易
海外に実店舗を展開する場合、現地に責任者を派遣して市場調査や物件調査を行い、テナントを契約することになります。実店舗を完成させるだけで、相当なコストと時間がかかることでしょう。販売する商品も、日本から運び込まなくてはなりません。
その点、ECサイトであればインターネット上に店舗を開設するのみで、手続きがはるかに容易となります。
日本製品に魅力を感じる顧客を集客できる
訪日した観光客が大量に日本の商品を購入する「爆買い」の光景を見たことがある人は多いでしょう。日本ならではの高い技術で作られた製品や、「日本らしさ」を感じる商品に惹かれる海外の顧客は少なくありません。日本製品の品質やデザインを求める人にとって、自国にいながら日本の商品を購入できる日本企業の越境ECは、とても魅力的に映るはずです。
越境EC最大のメリットは、人口が日本の数倍もある巨大なマーケットを相手に商売ができることです。国内では競合が多く売上が伸び悩んでいる場合も、越境ECで潜在顧客にアプローチできればビジネスを拡大できるかもしれません。越境ECは早期にチャレンジすることで、ビジネスを大きく飛躍させる可能性があります。
越境ECを活用するデメリット
メリットに続いて、越境ECを活用するデメリットも押さえておきましょう。デメリットは大きく、下記の2つが考えられます。

輸送コストが高額になる
国外の顧客に向けて配送する越境ECは、国内向けの配送よりも輸送にかかるコストが高くなります。送料がネックとなり、購入をためらう顧客もいるでしょう。
また、輸送プロセスが長くなる分紛失リスクも高まるため、配送パートナーの選定は慎重に行う必要があります。
国・地域によって異なる対応が必要となる
配送先の国や地域によって、荷物や個人情報に対する規制は異なります。特に、EU域内で適用されるGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)は規制が厳しく、対応に注意が必要です。
また、医薬品や食品、化粧品などを販売する際は、アメリカではFDA(アメリカ食品医薬品局)の事前申告番号の取得が必要です。中国の場合はNMPA(中国国家薬品監督管理局)の登録が必要なケースもあります。販売可能な商品やライセンスも国によってさまざまです。関税や個人情報の取り扱いなども含め、対象となる国・地域の事情を入念に調べる必要がある点はデメリットです。
越境ECを始める前に押さえておきたい注意点
越境ECを始めるにあたっては、自社のサービスや商品を客観的に分析することが大切です。下記の3つの注意点を踏まえて、越境ECに着手するか否かを判断してみてはいかがでしょうか。
商品やサービスが越境ECに向いているか
ほとんどの商品やサービスは越境ECで販売できますが、販売できることと売れることはイコールではありません。ものによっては、配送に時間がかかったり、破損などのトラブルが頻発したりする可能性があります。自社の商品やサービスが越境ECに向いているかどうかは、慎重に検討しましょう。
一般的には、物理的な配送を必要とせず、支払もオンラインで完結する商品が越境ECに向いていると言えます。
商品やサービスに対して海外ニーズがあるか
国内で人気があるからといって、安易に越境ECに展開しないことも大切です。商品やサービスに感じる価値は、文化や志向性によって大きく異なるからです。
一方、国内ではあまり売れなかった商品に、高いニーズがあることも考えられます。
為替変動リスクに対応できるか
商品の代金を日本円でサイト内に表示し、日本円で決済をするのであれば、為替変動の影響は受けないでしょう。しかし、海外への販売については外貨で支払を受ける可能性もあります。
外貨決済の場合は、為替変動のリスクがあります。受取った外貨を円に換えるときに、差損が発生することもあるため、これらのリスクに、備えることも必要です。
越境ECを始めるために必要な準備
注意点を検討し、いよいよ越境ECに取り組むことが決まったら、準備に移りましょう。続いては、越境ECに必要な準備を具体的に解説します。
商品を準備する
始めに、取り扱う商品を選定します。併せて、下記の点も確認しておきましょう。
<準備段階での確認事項>
- ・該当商品が日本からの輸出に規制がないか
- ・該当商品は国際間輸送で送ることができるか
- ・該当商品の輸入関税や輸送費はいくらくらいか
問題がないことがわかったら、配送方法を決めて在庫を確保します。
販売ターゲットを検討する
コストを抑えて効率良く販売するため、販売ターゲットを絞り込みます。世界市場は広く、多様なニーズが潜在していますが、ターゲットが定まっていない場合、効率的に売上を伸ばすことは難しいでしょう。商材の特性に応じて、国や地域、ターゲットの人物像を絞り込んでいきましょう。
海外の法律や規制、商習慣を確認する
前述した通り、法律や規制、商習慣は、国によって大きく異なります。対象地域の情報を良く調べ、ルールを確認して対処できるようにしておきましょう。
多通貨決済への対応とインターネットバンキングの準備
越境ECのターゲットは海外顧客のため、多通貨決済への対応が必要です。受け取り通貨を自国の通貨に変える必要も出てくる可能性があります。その際、インターネットを通じて多通貨の送金受取やエクスチェンジができるよう、インターネットバンキングを用意しておくと便利です。インターネット上で外国為替取引ができる「Global e-Tradeサービス」もご検討ください。
越境ECサイトの出店方法を決める
越境ECサイトを出店する場合、出店方法にはいくつかのパターンがあります。ここでは、3つの代表的なパターンを紹介します。
・現地法人を設立する
越境ECサイトを出店する際、豊富な資金を持つ企業が検討するのは、現地法人を設立し自社で構築・運営する出店方法です。準備の手間がかかり難度は高めですが、大規模なビジネス展開を考える企業にはおすすめです。
・現地のモールに出店する
現地のモールへ越境ECを出店する方法もあります。予算を抑えて手軽に越境ECをスタートすることができる方法です。
・自社ECサイトや日本国内のモールで対応する
自社サイトや国内のモールで、個別の海外注文に対応しながら越境ECのニーズを見極めていく方法もあります。海外の反応を見てから本格的な出店を考える場合に適した方法です。
越境ECの成功事例
実際に、日本の企業がどのように越境ECに取り組んでいるのか紹介していきます。どの企業も独自のアプローチで国際市場に挑んでいることがわかります。
気軽なリピート購入を促す越境ECを構築:ディスカウントショップA社の事例
ディスカウントショップのA社は、インバウンドの顧客が帰国後にリピート購入しやすいよう、代理購入サービスと連携した越境向けECを構築しました。
実店舗に来店した顧客に越境ECへアクセスできるURLやQRコードを記載したチラシを配布して導線を作り、販促につなげています。
ファンが多い国に向けて集中的に情報を発信:アニメ・ゲームグッズの販売業B社の事例
日本のアニメやゲームグッズを販売するECサイトを運営するB社の事例です。B社は、ファンが多い国に絞って情報を提供し、「商品を買いたいが買える場所がない」と悩んでいた層にアプローチしました。価格も手頃にすることで、リピーターも増えているようです。
現地メディアを通して認知度を上げ、集客に成功:キッチンアイテム小売業C社の事例
弁当箱やキッチンアイテムを取り扱うC社の事例です。C社は、毎年、世界の弁当を集めたコンテストを開催。その活動が現地メディアに取り上げられたことで集客率が上がりました。また、海外に「Bento」として弁当文化を伝える役割も果たしています。
越境ECを活用し、ビジネス規模を将来にわたって拡大しましょう
越境ECは、ビジネスを一気にシフトチェンジさせる可能性を秘めています。最近では、BtoBで越境ECに挑む企業も増えました。自社事業の将来性に課題がある際は、本格的に越境ECにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
海外ビジネスを拡大するなら、外国取引に関する知識の習得も重要です。三井住友銀行が提供する、外国為替取引の押さえるべきポイントやヒントが満載の情報掲載サイト、「外国為替取引のお役立ち情報」は、無料でダウンロード可能なため、ぜひご活用ください。外国送金に必要なコードや取引規制など、外国為替取引に関するポイントを押さえ、さまざまなリスクに注意を払うようにしましょう。
また、三井住友銀行が提供する「Global e-Tradeサービス」は、三井住友銀行の法人口座を入出金口座とし利用可能なインターネット版外国為替サービスです。「Global e-Tradeサービス<デビュー>タイプ」であれば、初期費用や月額費用が無料で「被仕向送金(外国からの送金の入金)」「仕向送金(外国への送金)」などがいつでも利用可能です。外国送金手数料も三井住友銀行窓口での手続きに比べて、半額以下となっています。
新たに越境ECや海外進出を検討されている方で、外国為替業務を効率化したい方はぜひ「Global e-Trade サービス<デビュー>タイプ」をご利用ください。
(※)2023年8月8日時点の情報のため、最新の情報ではない可能性があります。
(※)法務・税務・労務に関するご相談は、弁護士や税理士など専門家の方にご相談いただきますようお願い申し上げます。