住み替える際に住宅ローンは組めるのか?
住み替えを検討する際、多くの方が気になるのが住宅ローンについてです。結論から言えば、住み替え時にも住宅ローンを組むことは可能です。
ただし、現在の住宅ローンの状況によって、選択できる方法が異なります。具体的には、すでにローンを完済している場合と、まだローンの残債がある場合で対応が分かれます。それぞれの状況に応じた最適な方法を選択することで、スムーズな住み替えが実現できます。
特に、残債がある場合は専門的な知識が必要となるため、早めに金融機関や不動産会社に相談することをおすすめします。また、自己資金の有無や、希望する物件の価格帯によっても、選択できるオプションが変わってくる点にも注意が必要です。
住宅ローンを完済している場合は住宅ローンを改めて組む
すでに住宅ローンを完済している場合は、新しい物件の購入に際して改めて住宅ローンを組むことになります。
この場合、現在の住宅を売却して得られる資金を頭金として活用できます。例えば、新居の購入価格が4,000万円で、現在の住宅の売却代金として3,000万円が得られる場合、差額の1,000万円と諸費用分について新たに住宅ローンを組むことができます。これにより、無理のない資金計画で住み替えを実現できます。
また、完済済みの場合は、売却のタイミングと購入のタイミングを柔軟に設定できるというメリットもあります。「売り先行」で現在の住宅を売却してから新居を探すことも、「買い先行」で気に入った物件が見つかってから売却活動を始めることも可能です。ただし、売却代金が確定するまでは、新居の購入価格の上限が定まりにくいため、予算設定には慎重な検討が必要です。
住宅ローンの残債がある場合は住み替えローンを利用する
一方、現在の住宅ローンにまだ残債がある場合は、「住み替えローン」という特別な住宅ローンの利用を検討します。住み替えローンとは、現在の住宅ローンの残債と新居の購入資金を一本化して借り入れできるローン商品です。
例えば、現在の住宅ローンの残債が3,000万円で、その住宅の売却予定価格が2,000万円の場合、ローンを完済できず差額の1,000万円が残ります。新居の購入価格が5,000万円だとすると、住み替えローンでは審査に通れば合計6,000万円(残債1,000万円+新規購入資金5,000万円)の借り入れが可能になります。
この仕組みにより、一時的な資金不足を回避しながら、スムーズな住み替えを実現できます。
住み替えローンのメリットは手元に資金を残しやすいこと
住み替えローンの最大のメリットは、手元資金の確保がしやすい点です。住宅ローンの残債が売却予定額を上回るオーバーローンの状態でも借り入れが可能なため、残債の返済に自己資金を充てる必要がありません。
これにより、ダブルローンのリスクを回避できます。また、現在の住宅の売却と新居の購入を同時に進められるため、仮住まいの費用も不要になるケースがあります。
さらに、不動産仲介手数料や諸費用などの支払いにも、手元資金を柔軟に活用できるというメリットがあります。住み替えローンは、金融機関が売却と購入を一体化して管理するため、資金移動がスムーズに行えるのも特徴です。
このため、突発的な費用が発生した場合でも柔軟に対応できます。また、現在の住宅の売却代金を新居の購入資金に充てることができ、将来の返済計画も立てやすくなります。
住み替えローンは売却と購入を同時に行う必要がある点に注意
住み替えローンを利用する際の主なデメリットは、売却と購入を同時並行で進める必要があることです。これにより、現在の住宅をより高く売却するための時間的余裕が限られてしまいます。
また、気に入った物件があっても、その物件が売れてしまう前に全ての手続きを完了させなければならないというプレッシャーがかかります。
さらに、不動産業者、新居の売主、現在の住宅の買主など、多くの関係者との調整が必要となり、スケジュール管理が複雑になりがちです。タイミングの調整に失敗すると、一時的に仮住まいが必要になったり、予定より安い価格での売却を余儀なくされたりするリスクもあります。
売却と購入の2つの売買契約を同時期に進める必要があるため、各種手続きや書類作成などの事務作業も集中します。慎重な計画と準備が必要となるため、余裕を持ったスケジュール管理が重要です。
住み替えローンを組むときの流れ
住み替えローンの利用を決めたら、まずは売却予定の住宅の査定から始める必要があります。その後、金融機関との相談や新居の検討など、いくつかの重要なステップがあります。
- 住宅の売却を相談する
- 住宅ローンの残債を確認する
- 不動産業者に査定と売却を依頼する
- 住み替えローンを取り扱う金融機関を探す
- 住み替えローンに申し込む
ここでは、スムーズな住み替えを実現するための具体的な手順を説明します。
住宅の売却を相談する
住み替えを始める最初のステップは、不動産業者への相談です。住み替えの方法には、現在の住宅を先に売却する「売り先行」と、新居を先に購入する「買い先行」の2つのアプローチがあります。
新居をローンを組まずに購入できれば「買い先行」での住み替えは比較的スムーズに進みますが、現在の住宅ローンの残債状況によって最適な選択が変わってきます。経験豊富な不動産業者に相談することで、自身の状況に合った最適なアプローチを見つけることができます。
不動産業者との相談では、現在の住宅の市場価値や、売却にかかる期間の見込み、エリアの相場動向などについても詳しい情報を得ることができます。
また、住み替えローンを扱う金融機関の紹介を受けられる場合もあります。さらに、新居の購入に関する情報も得られるため、全体的な住み替え計画を立てる上で重要なステップとなります。複数の不動産業者に相談することで、より多くの選択肢と情報を得ることができます。
住宅ローンの残債を確認する
住み替えの具体的な計画を立てる前に、現在の住宅ローンの残債を正確に把握することが重要です。残債の確認は、返済予定表や残高証明書などで行うことができます。
例えば、三井住友銀行の場合はSMBCダイレクト(インターネットバンキング)で簡単に確認できます。残債の確認は基本的に無料で行えるため、まずはこの作業から始めることをおすすめします。残債の金額によって、住み替えローンの必要性や借入可能額が変わってくるためです。
また、返済期間や金利条件なども確認しておくことで、新しいローンの検討がしやすくなります。住宅ローンの完済時期が近い場合は、繰り上げ返済で完済した後に新規の住宅ローンを組む選択肢も考えられます。
将来の返済計画を立てる上でも、現在の残債状況を詳しく把握しておくことは非常に重要です。わからない点があれば、現在の住宅ローン借入先の金融機関に直接問い合わせることをおすすめします。
不動産業者に査定と売却を依頼する
住み替えローンの利用を検討する場合、不動産業者による適切な査定と売却活動が重要なポイントとなります。
まずは複数の不動産業者に査定を依頼し、売却予定価格の比較検討を行います。査定額が現在の住宅ローンの残債を上回る「アンダーローン」の場合は、新規の住宅ローンでの対応も可能ですが、残債を下回る「オーバーローン」の場合は住み替えローンの検討が必要となります。
査定を依頼する際は、住み替えを予定していることを明確に伝え、売却までの想定スケジュールや、希望する引き渡し時期についても相談しましょう。
また、査定額の根拠となる周辺相場や、物件の特徴、改善点なども詳しくヒアリングすることで、より適切な売却戦略を立てることができます。複数の不動産業者の中から、査定額だけでなく、担当者の対応や提案内容、過去の売却実績なども考慮して、最終的な依頼先を決定することが望ましいでしょう。
ただし、不動産業者の査定額はあくまで売却想定価格であり、必ずしもその価格で売れるとは限りません。売却に伴う諸費用も考慮する必要がありますので、査定額は売却時の目安として理解しておきましょう。特に住み替えローンを利用する場合は、購入と売却を同時に進める必要があるため、スケジュール管理に長けた業者を選ぶことが重要です。
住み替えローンを取り扱う金融機関を探す
新居の物件探しと並行して、住み替えローンを提供している金融機関を探す必要があります。都市銀行や地方銀行など、多くの金融機関が住み替えローン商品を取り扱っていますが、審査基準や金利条件はそれぞれの金融機関によって異なります。
まずは、現在取引のある金融機関に相談するのがよいでしょう。取引実績があることで、よりスムーズな審査が期待できる場合があります。
相談の際は、年収や勤務先、年齢などの基本的な条件に加えて、現在の住宅ローンの残債状況、新居の購入予定価格、希望する返済期間なども伝えましょう。
また、住み替えスケジュールがタイトになりやすいことから、住み替えローンの事前審査を早めに行っておくのがポイントです。不動産業者から紹介を受けられる提携金融機関についても、選択肢として検討するとよいでしょう。
住み替えローンに申し込む
適切な金融機関が見つかったら、住み替えローンの正式な申し込み手続きを進めます。申し込みの際は、本人確認書類や収入証明書、現在の住宅ローンの返済予定表、新居の売買契約書・重要事項説明書、現在の住宅の売却予定価格を示す資料など、多くの書類が必要となります。
事務手数料や諸費用の支払いも発生するため、必要な資金を事前に準備しておくことが重要です。申し込み後は、金融機関による本審査が行われ、承認されれば融資実行となります。審査には通常1週間から2週間程度かかりますが、金融機関や申し込み時期によって期間は異なります。
また、審査の過程で追加書類の提出を求められることもあるため、余裕を持ったスケジュール管理が必要です。現在の住宅ローンの残債が確定しないと審査が進みませんので、住宅の売却と新居の購入のタイミングを考慮しながら、適切なタイミングで申し込みを行うことが重要です。
住み替えローン利用時の注意点
住み替えローンを成功させるうえで、以下の2点には気を付けましょう。
- 住居の売却に先行して新居の購入を進めすぎない
- 住宅ローン以外の借り入れは完済しておく
ここでは、トラブルを避けるために押さえておくべきポイントを解説します。
住居の売却に先行して新居の購入を進めすぎない
住み替えローンを利用する際の重要な注意点として、新居の購入を急ぎすぎないことが挙げられます。特に中古物件の場合、購入後すぐに引き渡しが可能な物件に関して、売却活動よりも購入を優先してしまうと、売却額や返済計画に影響が出る可能性があります。
例えば、「買い先行」で新居の購入契約を先に締結してしまうと住宅ローンの融資実行が必要ですが、現在の住宅の売却代金が充当されなければ住み替えローンの融資実行ができません。そのため、売却を急ぐ必要が出てきますが、本来よりも低い金額での売却を強いられる可能性があります。
住み替えローンは、売却物件の住宅ローンの残債が確定しないと審査に通らず、「売り先行」の場合は買い手が付く可能性が高くなってから購入契約を進めましょう。なお、新居購入の売買契約書には、「現在の住宅の売却ができない場合は売買契約を白紙解除する」旨の特約条項を追加したほうがよいでしょう。不動産会社に事前に確認することをおすすめします。
ローンの残債について上限額を設定している金融機関もありますので、現在の住宅ローンの返済が進んでいない段階ほど売却金額は重要です。短期的な仮住まいも想定しながら、購入と売却のバランスを考慮した慎重な進め方が求められます。
住宅ローン以外の借り入れは完済しておく
住み替えローンの審査は、通常の住宅ローンと比べて借入額が大きくなることから、返済比率が高くなりやすいです。返済比率が高すぎると審査で不利になる可能性があるため、住宅ローン以外の借入金は、可能な限り完済しておくことが望ましいです。
カードローンや自動車ローンはもちろんのこと、一見些細に思える携帯電話の分割払いやペットローン、教育ローンなども、審査に影響を与える可能性があります。
特に奨学金の返済が残っている場合は要注意です。これらの借入れが残っていると、総返済負担率が高くなることで借入希望額に届かず、審査に通りにくくなる可能性があります。
また、完済していない借入れがある場合、借入可能額が減少したり、金利が上乗せされたりするケースもあります。
住み替えローンの申し込みを検討する際は、まず他の借入れの状況を確認し、可能な限り完済しておくことで、よりスムーズな審査と有利な条件での借入れが期待できます。事前に返済計画を立て、計画的に借入れを整理しておくことをおすすめします。