葬儀やお墓のカタチは多様化、費用もさまざま

終活費(葬儀+墓代)の目安

約90〜275万円

みなさんご存知の通り、日本人の平均寿命は伸び続けています。厚生労働省によると、2017年時点で男性が81.09歳、女性が87.26歳となり、過去最高を記録しました。
また、65歳以上の単独世帯(1人暮らし)が増えているというデータもあります

こうした背景もあってか、元気なうちから自分で自身の死後の準備をする人も増えているようです。いわゆる「終活」ですね。終活のメリットは、葬儀やお墓、相続など、自分の意思を示しておけること。もしものときに、自分の希望に沿った形で、かつ周りの人への負担も最小限に、遺産の整理などを進めることができます。

では、自分の希望に添った葬儀やお墓には、どれくらいの費用がかかるのでしょうか?
経済産業省の資料によると、1件あたりの葬儀売上高は減少傾向にありますが、その費用は規模や種類によってさまざま。一概にいくらとは言えません。

今回は、葬儀とお墓について、いくつかのパターンを組み合わせてシミュレーションを行いました。1つの目安として参考にして下さい。

終活費用(葬儀代+お墓代)のシミュレーション

一般的な葬儀×お墓を新設
【約254∼274万円】

親族以外にも広く参列してもらう「一般葬」をして、1区画の土台の上に墓石を建てる「一般墓」を新規に入手する場合

<内訳>
一般的な葬儀:約100∼120万円※1
お墓を新設:約154万円※2

家族葬×納骨堂
【約173∼193万円】

家族のみで葬儀をし、お墓は建てずに納骨堂などを利用する場合

<内訳>
家族葬:約80∼100万円未満※1
納骨堂:約93万円※2

樹木葬
【約92∼112万円】

通夜・告別式は行わず、墓石の代わりに樹木を墓標とする「樹木葬」をする場合

<内訳>
火葬:約20∼40万円未満※1
樹木葬:約72万円※2

相続をスムーズにするには? 相続税はいくらかかる?

「終活」では、葬儀やお墓の費用に加えて、もう1つ準備しておきたいことがあります。それは「相続」です。

相続に関する手続きは、原則、相続人(遺産を受け取る側)が被相続人が死亡したことを知った日の翌日から、10カ月以内に行わなくてはなりません。「終活」で対象となる資産などをまとめて、遺産の分割方法を決めておくと、自分の死後も、スムーズに相続が行われるでしょう。

相続する資産別、管理のポイント

現金、預貯金、株式などの金融財産のリストアップ

ご自身しか持っていることを知らない口座などもあるのでは。銀行・証券会社などの社名と、それぞれの口座番号を一緒にリストアップしておくと良いでしょう。ただし、保管場所には充分注意して下さい。

不動産、自動車など分割できない資産の検討

相続人が複数人いる場合は、あらかじめどう相続するか話し合っておくと良いでしょう。例えば住宅の所有権と居住権は、条件を満たせば分割が可能です。

遺産分割の希望がある場合は、法的効力が認められる形での遺言書を作成しておく必要があります。何も指定しなければ、「法定相続分*」に沿って分けられる可能性が高いでしょう。

  • *遺産をどう分配するかの目安

例えば、夫・妻・長男・次男 の4人家族で、夫が亡くなった場合、妻・長男・次男が「法定相続人」(遺産を受け取る権利がある人)に。「法定相続分」に沿えば、妻(配偶者)が相続財産の2分の1、残り半分(全体の4分の1ずつ)を長男・次男(子)で分け合います。

「法定相続分」はあくまでも原則・目安であり、分割の割合は被相続人(遺産所有者)が決めることができます。法定相続人以外の人に遺産を譲ることも可能で、血縁関係の有無は問いません。

最後に、「相続税」について確認しておきましょう。

相続税は、遺産が一定額以上の場合にのみかかる税金です。基礎控除があり、「3,000万円+法定相続人の人数×600万円」という算式で計算を行います。相続人が1人の場合、3,600万円未満の金額であれば、相続税はかかりません。相続人が2人いれば4,200万円、3人いれば4,800万円ですね。これらを超えなければ、特に対策は必要ありません。
また、配偶者に対しては、1億6,000万円または法定相続分相当額のどちらか多い金額まで、相続税はかかりません。

例えば、夫が亡くなり、妻・長男・長女の3人で相続するケースを見てみましょう。

相続税のシミュレーション(妻・長男・長女の3人が法定相続分通りに遺産を相続)

遺産の総額が4,400万円の場合

相続する金額 妻  2,200万円
長男 1,100万円
長女 1,100万円
基礎控除額 4,800万円
課税遺産総額
(課税標準額)
0万円
相続税
(納付税額)
妻  0万円
長男 0万円
長女 0万円

遺産の総額が6,600万円の場合

相続する金額 妻  3,300万円
長男 1,650万円
長女 1,650万円
基礎控除額 4,800万円
課税遺産総額
(課税標準額)
1,800万円
相続税
(納付税額)
妻  0万円
長男 45万円
長女 45万円

遺産の総額が8,800万円の場合

相続する金額 妻  4,400万円
長男 2,200万円
長女 2,200万円
基礎控除額 4,800万円
課税遺産総額
(課税標準額)
4,000万円
相続税
(納付税額)
妻  0万円
長男 113万円
長女 113万円

遺産の総額が1億2,000万円の場合

相続する金額 妻  6,000万円
長男 3,000万円
長女 3,000万円
基礎控除額 4,800万円
課税遺産総額
(課税標準額)
7,200万円
相続税
(納付税額)
妻  0万円
長男 240万円
長女 240万円

このように、基礎控除を超えた分に相続税がかかりますが、基礎控除以外にも、控除として認められているものがあります。

例えば、生命保険の受け取り。法定相続人1人につき500万円までは相続税がかかりません。亡くなった人と一緒に住んでいた親族が住宅を相続する場合は、居住用宅地の評価額が原則80%減額される「小規模宅地特例」もあります。

また、生きているうちに贈与することで、年間110万円までであれば贈与税がかからない「生前贈与」もあります。相続人に毎年、少しずつ贈与しておくのも1つの手です。

ただし、不動産を含む相続や金額が大きい相続は、大変複雑です。税理士に相談することをおすすめします。

  • 2019年4月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

ファイナンシャルライター 瀧 健

『PRESIDENT Online』などの経済系Webメディアでも多数の執筆協力経験をもつ。ライフプランや資産運用の提案が得意。自らも株式・債券・投資信託などの運用を行っている。社会保障にも詳しい。

企業型イデコ知らないと損? DC+iDeCo確定拠出年金制度が2022年10月に改正されました!

シリーズの記事一覧を見る

関連記事

人生100年時代