ここがポイント 自分の「ものの見方」を客観視し、その限界を知る 人生の終わりを思い描き、自分にとっての成功をイメージする 最優先事項を見極め、ノーと言えるようになる

自分の「ものの見方」を客観視し、その限界を知る

筆者は、1776年のアメリカ合衆国独立宣言以降にアメリカ国内で発刊された「成功に関する文献」を調査してきました。
その過程である傾向に気づきます。

建国から約150年間(1929年の世界大恐慌の前ごろまで)に書かれた文献の多くは、誠実・謙虚・忍耐・勤勉など、人間としての基本的な美徳を成功の条件に掲げていました。
ところがその後の50年間(1939〜45年の第二次大戦前後)では、社会的なイメージづくりや態度・会話のテクニックなど、表面的なスキルによって人間関係を円滑にすることから成功が生まれる、との主張が支配的になります。

筆者は、前者を「人格主義」、後者を「個性主義」と名付けました。

本書は、この「人格主義」の復活を目指した書籍に他なりません。
「人生を成功に導くのは表面的なテクニックではなく、土台となる人格を磨くことにある」と筆者は主張し、そのための具体的・実践的な方法を伝授します。

筆者は、まず「インサイド・アウト(内から外へ)」のアプローチが重要だと説きます。
その第一歩は、経験や環境が育んだ自分の「ものの見方」を客観視することです。

私たちは、他者も含めたこの世界を、ありのままに見ているわけではありません。
家庭環境や学校教育、あるいは「個性主義」などの通念に影響され、誰もが無意識のうちに、自分が見たいような世界を見る状態に陥っています。
これを意識し、自分の「ものの見方」を客観視することが、他者を理解し、他者と良い関係を結ぶ第一歩だ、と言うのです。

幸福な結婚生活を望むなら、自分が配偶者をどのように見がちなのか、どうあってほしいと思いがちなのかを客観視し、配偶者の「ものの見方」や自分への期待を理解しなければなりません。
「他者との関係を良くするには自分が変わらなければならない。自身の人格を磨かなければならない」と言うわけです。

筆者はこの姿勢を「主体的である」として、成功を得るための「第1の習慣」と位置付けます。

逆に自分を見つめようとせず、仕事や人間関係がうまくいかない原因を他者や環境に求める考え方や行動を、筆者は「アウトサイド・イン(外から内に)」のアプローチと呼びます。
これにとらわれている人はおしなべて幸福とは言えない状況にある、とも筆者は述べています。

人生の終わりを思い描き、自分にとっての成功をイメージする

続いて筆者は「第2の習慣」として「人生の終わりを思い描くこと」を提唱します。
あなた自身の葬儀の場で、家族や親戚、かつての同僚たちが弔辞を読む場面を想像してみてほしい、と言うのです。

「ここで深く考えてみてほしい。これらの人たちに、あなた自身あるいはあなたの人生をどのように語ってほしいだろうか。彼らの言葉で、あなたがどういう夫、妻、父、母だったと述べてほしいだろうか。(中略)どういう貢献や功績を覚えておいてほしいのか。(中略)自分の葬儀の場面を真剣に思い描いてみて、あなたは一瞬でも、自分の内面の奥深くにある基本的な価値観に触れたはずだ」

いささか長い引用になったのは、これらの文章こそ、本書の最も重要なポイントだからです。

筆者は「あなたの葬儀の場で、彼らに語ってもらいたい弔辞の言葉こそ、あなたにとっての成功の定義だ」と指摘します。
見栄や表面的な社会通念などにとらわれない、自分の内面の奥深くにある基本的な価値観に立脚した成功──そんな到達点を明確にイメージできれば、あなたはそれに向かって効果的に生きることができると言うのです。

最優先事項を見極め、ノーと言えるようになる

ではどうすれば効果的に生きられるのか?
筆者はそのための手段として「第3の習慣」である「最優先事項を優先する」生き方や、「WinWinを考える」「まず理解に徹し、そして理解される」など他者とのコミュニケーションについての「第4から第6までの習慣」を提示します。

そして「第7の習慣」として、肉体や精神、知性などを常に最良の状態に維持するための方法を伝授します。

これらの「7つの習慣」には、今を生きる私たちに参考になる指摘が数多くありますが、中でも注目したいのが「最優先事項を優先する」という「第3の習慣」でしょう。
その基本は「時間の使い方」です。

筆者は、私たちが日常、時間を費やしている仕事や活動・行動を以下の4つに分類します。

  • @「緊急かつ重要なこと」=危機への対応、差し迫った問題など
  • A「緊急だが重要ではないこと」=飛び込みの用事、無意味な接待や付き合いなど
  • B「緊急でないが重要なこと」=人間関係づくり、新しい関係づくりなど
  • C「重要でも緊急でもないこと」=取るに足らない仕事、雑用、多くのメールなど

これらの中で私たちは、@の「緊急かつ重要なこと」に加えて、Aの「緊急だが重要でないこと」にも多くの時間を取られていると筆者は言います。

しかし、人生の到達点に向けて効果的に生きるために最も大切なのは、Bの「緊急ではないけれど重要なこと」です。
そしてBに、より多くの時間を使うには、率先力と主体性が必要です。

時には無駄な仕事に「ノー」と言わなければなりません。Bにより多くの時間を振り向けようと努力することで、率先力や主体性・「ノー」言える意思を磨くことができるでしょう。

自分の人生最期を思い浮かべ、ぜひ参考にしてみてください。

渋谷和宏のコレだけ覚えて!

成功に欠かせない「信頼口座の残高」

仕事で成果を出すには同僚や顧客、取引先の担当者などからの信用が不可欠です。
また、円満な家庭を築くにはパートナーとの深い信頼関係が必要でしょう。
あなたが相手にどれだけ信用・信頼されているか、その度合いを、筆者は「信用口座の残高」と言う言葉で表現します。

どうすればそれを増やせるのか。
筆者は相手を理解する姿勢が必要だと言います。
相手を理解し、信用・信頼することで、相手もあなたを理解し、信用・信頼する──人間関係はそんな鏡のような存在だからです。
そして、そのためには、相手の話を聞く際に「共感を示す」ことが大切だと筆者は指摘します。

長い人生を生き抜くにはもちろんお金が必要です。
しかし必要なのはお金だけではありません。
家族や仕事のパートナーとの間に、深い信頼関係に築くこと。
それもまた、幸せな人生を送るために欠かせない投資だと言えるのではないでしょうか。

渋谷 和宏

渋谷 和宏

しぶやかずひろ/作家・経済ジャーナリスト。大学卒業後、日経BP社入社。「日経ビジネスアソシエ」を創刊、編集長に。ビジネス局長等務めた後、2014年独立。大正大学表現学部客員教授。1997年に長編ミステリー「錆色(さびいろ)の警鐘」(中央公論新社)で作家デビュー。「シューイチ」(日本テレビ)レギュラーコメンテーターとしてもおなじみ。

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