女子学生アスリートのうち、プロ・実業団を目指すのはわずか1%―そんな現状を変えるべく、女子バスケットボールチーム「SMBC TOKYO SOLUA」が設立されました。今回は、女性アスリートとして第一線を走り続けてきた女子100mハードル元日本記録保持者の寺田明日香氏との対談を通じて、福留頭取に仕事とスポーツを両立するキャリアモデルの確立を目指す同チームの設立背景と、そこに込めた思いについて語っていただきました。
陸上競技選手 寺田明日香さんと福留頭取が対談|SMBC TOKYO SOLUAは女性アスリートの「光」となるか(PDF)
寺田明日香氏プロフィール
1990年生まれ。北海道出身。女子100mハードル元日本記録保持者(12秒86)。
2009年、世界陸上ベルリン大会に出場し、アジア陸上競技選手権大会では銀メダルを獲得。一度は引退するも、結婚・出産を経て、2016年に7人制ラグビーに競技転向する形で現役復帰。2018年にラグビーを引退し、陸上競技に復帰。2019年に日本記録を更新し、東京2020オリンピックでは日本人同種目21年ぶりとなる準決勝進出を果たす。2025年シーズンで競技生活の第一線を退き、女性アスリートのキャリア支援にも積極的に取り組んでいる。
スポンサーではなく、SMBCが自らチームを持つ理由
―これまでSMBCグループでは、経営理念やFive Values等と共通の考え方を有するスポーツ活動に共感し、寄付・協賛を行ってきましたが、今回自ら女子バスケットボールチームを設立したのはなぜでしょうか?
(福留頭取)
原点は、私がトヨタ自動車㈱に出向していた頃の経験です。バスケ、ラグビー、ソフトボール等、多くの社会人チームの応援に行き、自社の運動部を応援することの素晴らしさを実感しました。職場に選手がいて、その仲間が出る試合を従業員が応援に行き、本当に盛り上がる。あの熱量を当行の従業員にも味わってもらいたい、というのがチーム設立のきっかけです。
―金融業界でトップリーグに挑戦する企業スポーツチームを持っている会社は少ないですよね。
(福留頭取)
実は、かつては企業スポーツチームを持つ銀行も多くあったんです。当行(住友銀行、さくら銀行)にもアメリカンフットボールのチームがありましたが、バブル崩壊後、公的資金を受けた際に多くのチームが廃部になってしまいました。選手達には酷なことだったと思います。それから長らく金融業界は自社チームを持たず、スポンサーとして関わることが多かったんです。
――その中で、改めて企業スポーツに挑戦しようと思ったのはなぜですか?
(福留頭取)
他業界では多くの企業がスポーツチームを持ち、スポーツを通じた社会貢献をしているので、そろそろ銀行もチームを持って活動すべきだと思ったからです。私の認識では、公的資金完済後、メガバンクが単独で企業スポーツチームを持ってトップリーグに挑戦するのは当行が初めて。業界で先陣を切って挑戦するのもSMBCらしさだろうと思いました。
(寺田氏)
実際、SMBCさんのようなメガバンクが企業スポーツチームを持つことで、「チームを持っていいんだ」と思う企業も今後増えてくるのではないかと思います。
女子アスリートが直面するキャリアの壁
――女子学生アスリートのうち、プロ・実業団を目指すのはわずか1%というデータがあります。
(福留頭取)
このアンケート調査を見た時は、正直ショックでした。男子が10%なのに対して女子は1%と、10倍も違うんですね。
(寺田氏)
女性アスリートは、セカンドキャリアはもちろん、結婚、出産、育児と、男性以上に将来の悩みや不安を抱えています。そのため、どうしても学生から社会人になる時に仕事と競技の二者択一を迫られ、それが競技人口の減少にも繋がっているんです。
――では、アスリートの就職状況は実際どうなのでしょうか。
(寺田氏)
厳しいですね。私の周りでも、世界大会の日本代表にまで選ばれた男子選手が半年弱就職浪人しました。トラック種目は、駅伝文化がある長距離種目に比べて、圧倒的に受け皿が少ないんですよ。女子はもっと大変で、フルタイムで働いた後に出身大学に練習に行くという選手も多いです。
――寺田さんご自身は、競技を続けることに迷いはなかったのですか?
(寺田氏)
実は、高校卒業時は先生になりたくて教育大学を志望していたんですが、高校時代の恩師が定年退職後に実業団を設立して、「うちのチームへ来い」と誘ってくださったんです。当時は驚きましたが、振り返ってみるととても恵まれていたなと思います。
(福留頭取)
そうやって誘ってもらえる選手もほんの一握りですからね。自分で進路を選ばなきゃいけない人は本当に大変なんだろうなと思います。
(寺田氏)
SMBC TOKYO SOLUAのような企業スポーツチームが存在するのは、選手にとってありがたいことだと思います。競技を続けられる場所が限られていると、トップで勝ち続けようという強い気持ちを持った選手しか続けられませんから。しっかりと受け皿となる企業があることで、「競技を続ける道があるんだ」と前向きになれると思います。
仕事と競技の相乗効果、目指すは「ライフワークマックス」
―女子学生アスリートの91%以上が「競技と仕事の両立はかっこいい」と答えています。競技と仕事の両立についてどのようにお考えですか?
(福留頭取)
「かっこいい」というのが重要ですね。実際、仕事もスポーツも頑張っている人は輝いて見えると思います。ただ誤解を恐れずに言うと、私は「両立」という言葉に少し違和感があるんです。私が目指しているのは「ライフワークバランス」ではなく、「ライフワークマックス」の実現です。仕事とスポーツを50%ずつの力で二つやるのではなく、両方とも100%の力でやって、初めて両立できたと言えるのが理想です。
(寺田氏)
実際、両方に100%で取り組んでいる人は、すごくポジティブでエネルギーがあふれていますよね。苦しいことも楽しみながら取り組めるというか。一流の選手程、好奇心のままに突き詰めるのが楽しくて、何事にも100%で取り組んでいる方が多いと思います。
(福留頭取)
寺田さんも、育児も競技も100%の力で取り組まれていた方だと思います。
(寺田氏)
確かに、競技だけでなく育児も全力でしたね。嘘をつかず、楽しいことも苦しいこともありのままの感情を娘に伝える育児を意識していました。名付けるなら「劇場型育児」という感じですかね(笑)。
―「ライフワークマックス」を実現することで、どんな効果があるのでしょうか?
(福留頭取)
相互に良い影響があると思います。例えば、スポーツを続けるとメンタルが強くなりますよね。スポーツで厳しいトレーニングに耐えてきた人は、社会に出ても堂々としている人が多いのではないでしょうか。そういう人が職場にいると前向きな雰囲気になるので、周囲への影響力もすごく大きいと思います。
(寺田氏)
実際、アスリートは前向きで強いメンタリティーの人が多いですね。スポーツで培った目標設定の仕方やチームワークは、仕事に生かせるはずです。また一方で、仕事を通じて社会人としての基本的な振る舞いを学べば、アスリートとしても一層磨きがかかると思います。
(福留頭取)
トップアスリートは、スポーツの成績だけでなく人格も素晴らしくて、発信力のある方が多いですよね。周囲をよく見て自分の意見が言えるというか。そういった社会人としての基礎的な素養を育む上でも、企業での就労経験は生かせると思います。
女性アスリートと従業員、両方の「光」となる存在へ
―SMBC TOKYO SOLUAは「わたしたちは、光になる。」というコンセプトを掲げています。どのようなチームを目指してほしいですか?
(福留頭取)
仕事もスポーツも全力で取り組んで、まさに「光」になってほしいと思います。選手達自身が、キャリアに不安を抱えることなくいきいきと競技に打ち込むことで、女性アスリートの新たなロールモデルとして希望の「光」になってほしいです。
(寺田氏)
アスリート以外の人にとっても「光」になってほしいです。仕事とスポーツを両立して一生懸命頑張っている人は、ポジティブで輝いていて、見ているだけで元気付けられる存在だと思います。選手達の応援を通じて、従業員が元気になる。それを受けて、選手達も更に輝けるというサイクルが生まれるといいですね。
(福留頭取)
自社チームを応援する楽しさがどんどん広がっていくといいなと思います。従業員がスポーツ観戦を楽しんでいる姿を社会に発信すれば、他社も同じように「会社でスポーツチームを持とうかな」と考えるようになり、スポーツ界の発展に更に貢献できます。また当行にとっても、「SMBCは素敵な会社だな」という印象が高まり、より多くの方に選ばれる企業になれるはずです。
―最後に、SMBC TOKYO SOLUAと従業員の皆さんへメッセージをお願いします。
(福留頭取)
選手達には、何よりもまず目の前の試合に打ち込み、一生懸命に頑張ってほしいですね。そんな選手の姿を見て、従業員もお客さまや仲間のために頑張りたいと思えるようになるはずです。まだWリーグに参入したばかりのチームで、強くなるには時間が掛かると思いますが、まずは一生懸命やる姿を見せてほしい。従業員の皆さんには、そんなSMBCTOKYO SOLUAの選手達を長い目で温かく見守り、ぜひ応援してほしいと思います。
(寺田氏)
選手の皆さんも、従業員の皆さんも、お互いに愛や思いやりを持ってほしいと思います。選手を応援したり、サポートしたりと、一緒に働きながら支え合うことがお互いの活力になり、「もっと仕事やスポーツを頑張ろう」と思えるはずです。愛を持って支え合えるチームや組織となり、仕事とスポーツの両立を実現するリーディングカンパニーとして「光」になっていただきたいと思います。